■西川和久の不定期コラム■
マウスコンピューター「G-Tune MASTERPIECE i1500BA6」
編集部から「Core i7-980X搭載マシンを送ります」と連絡があり、Core i7の最高峰6コア/12スレッドを触れるとワクワクしていたところ、内容はそれどこれではなく、GeForce GTX 285×2のSLI構成、そしてRAID 0のSSD×2と、現在考えられる最強に近いコンフィグレーションになっているモンスターマシンだった。その実力はどれほどのものか。早速使用レポートをお届けする。
届いたマシンはマウスコンピューターのゲームPCブランド「G-Tune」のハイエンドライン「MASTERPIECE」シリーズの最上位にあたるプレミアムモデル。今回はゲームPCとしてよりは、ハイパフォーマンスPCという視点で評価しているが、それにしてもハイエンドだ。
Intel Core i7-980Xは、32nmプロセスを採用し、1CPUで6つのコアを内蔵、Hyper-Threadingで12スレッドと言うコンシューマ向けCPUとしては最上位モデルだ。クロックは3.33GHz、Turbo Boost時3.6GHz、L2キャッシュ256KB×6、共有L3キャッシュ12MB、そしてTDPは130Wとなる。このスペックを見るだけでもいかにも速そうだ。対応するチップセットはIntel X58 Express。2010年1月に出荷されたCore i3/5とは違ってGPUは内蔵していないものの、これだけのパフォーマンスを持つCPUだけに外部GPUで強力なものを使いため、特に問題は無い。
そして、肝心のGPUはNVIDIA GeForce GTX 285を搭載。GTX280のSP 240基、メモリインターフェイス 512bitなど、多くの仕様が同じであるが、65nmから55nmへシュリンクし、消費電力を抑え、クロックアップしたモデルとなる。1つでもかなりのパフォーマンスを誇るGPUであるが、2台使いSLIで動かし、更にパワーアップしている。その他の仕様は下記の通り。
・OS Windows 7 Professional 64bit
・CPU Intel Core i7-980X(3.33GHz/TB時最大 3.6GHz、256MB×6 L2 キャッシュ + 12MB 共有L3 キャッシュ)
・チップセット Intel X58 Express
・メモリ 標準12GB(2GB×6使用/トリプルチャンネル)
・SSD 80GB×2/RAID 0、HDD 1TB
・グラフィックス NVIDIA GeForce GTX 285/1GB×2/SLI
・スーパーマルチblueドライブ
・PCIe x16 ×2(空0)、PCIe x1 ×1(空1)、PCI ×2(空2)
・IEEE 1394
・USB 2.0×2(フロント)/×6(リア)
・eSATA ×1
・オーディオ ライン入力/出力(ステレオミニジャック メス)、マイク入力(モノラルミニジャック メス)、リアスピーカー出力(ステレオミニジャック メス)、センター・サブウーハー出力(ステレオミニジャック メス)、サイドスピーカー出力(ステレオミニジャック メス)、S/P-DIF Out(Optical)
・11in1+4 マルチカードリーダー
・LAN 10/100/1000M
・850W電源ユニット
・ケース ATXフルタワー(W205×D580×H543mm/約13kg)
・価格 389,970円(税込/ディスプレイ無し)
OSはメモリを標準で12GBも搭載している関係上、もちろん64bit版のWindows 7 Professonalをインストール済。32bit版と違って12GB全てのメモリ空間を利用可能だ。用途は違うかも知れないが、もちろんVTにも対応しているため、これだけのメモリがあれば、VMwareなどを使い仮想マシンをいくつでも快適に動かせる。
システムドライブはIntel X58 ExpressのRAID機能を使い、80GBのSSD×2をRAID 0(ストライピング)構成にしている。このRAID 0は容量がそのまま2倍になり、アクセス速度も向上する反面、どちらか一方が壊れた場合、使用不能になるため、信頼性は下がる。ドライブは「Intel SSDSA2M080」が使われていた。
セカンダリHDDは別途1TBのHDD(HDS721010CLA332)を搭載しているので、動画データでもデジタルカメラのRAWデータでもかなりの量を保存できる。光学ドライブはHL-DT-ST BD-RE BH08NS20。Blu-ray Disc BD-R 6倍速記録+HD DVD-ROM 3倍速読込対応+DVD スーパーマルチ対応となる。
TDP 130WのCPU、そしてGTX 285を2台使う関係上、電源ユニットも850Wと大容量のものが使われている。調べたところユニット自体は「CORSAIR TX850W」だった。
そしてキーボードに「Microsoft Reclusa Gaming Keybord」、マウスは「Logicool G9x Laser Mouse」。筆者はゲームを全くしないので、何がどう普通のキーボード・マウスと違うのかイマイチ分からないものの、どちらもゲーマーご用達のアイテムらしい。
インターフェイス関連は、USB 2.0×8、IEEE 1394、Gigabit Ethernet、S/PDIF Out(Optical)を含めたオーディオIN/OUT、そして11in1+4 マルチカードリーダなど、十分な内容となっている。ただし、面積的に2スロットを占有するGTX 285を2台搭載している関係で、実質使える空きスロットが少ないと言うのは仕方ないところだろう。
サイズ205×580×543mm(幅×奥行き×高さ)、重量約13kgのフルタワーケースの外観はアルミシャーシを使用し高級感タップリだ。サブフロントパネルもずっしり重い。ファンはフロントに1つ、リアに2つ使われている。また、電源ONにするとフロントのG-Tuneロゴ周辺がブルーに光り、雰囲気を醸し出している。
内部へのアクセスは、向かって左側のロックを押せばドライバーレスで側面が外れる。正面下側にドライブベイがあり、正面に向き専用レールで止めるだけと、メンテナンスは簡単だ。その下に見える黒い箱は、専用レールなどの収納ボックスとなっているため、パーツを無くさずに済む。
サブフロントパネルの中には、Blu-ray Discドライブと、11in1+4 マルチカードリーダーを収納。電源スイッチとリセットボタンもある。また、5inchのベイが4つと、3.5inchのベイが1つが空きだ。一般的にはフロントのこの位置かボディ下側にある、USBとIEEE 1394、オーディオIN/OUT、POWER/HDDアクセスランプなどは、フロント向かって右側のサイドに付けられている。各コネクタの高さを考えると、右側を例えば壁などへピッタリ付けられないものの、設置場所を工夫すれば特に問題にはならないだろう。
さすがにノイズはケースに3つ、CPUに1つ、GPUや電源などにファンがあるため静音ではない。起動時にフォーンという音がするが、落ち着くとあまり気にならない程度となる。パワーを考えると逆に静かな方ではないだろうか。
標準搭載の「Microsoft Reclusa Gaming Keybord」は、ゲーマー向けPCデバイスメーカーとして有名なRazerとの共同開発で、キーが反応するまでの遅延時間を減少させた「Razer HYPERESPONCEキー作動」や「青色バックライトを内蔵」、パンパーキー、ホットキー、ジョグダイヤルなどを加えゲームに最適化、更にプロファイル設定にも対応している。
「Logicool G9x Laser Mouse」は、トラッキング速度やトラッキング解像度など向上、付属する2種類のグリップカバーでいろいろな持ち方に対応し、更にウェイトカートリッジで重量も調整できる。
●Windows エクスペリエンス インデックス「7.8」!ブートドライブはSSDのIntel SSDSA2M080を2つ使い、RAID 0構成でボリューム名は「Volume0」となっている。容量は約148GB。この構成を変更する場合は、起動時BIOSのロードが終った後、「Ctrl+I」で専用のメニューを呼び出し修正することになる。Iドライブは1TBのHDDを1パーティションで約931GBだ。
冒頭で書いた通り、CPU、GPU、SSD/HDD、そしてメモリと、PCを構成する主要パーツが凄い組合せになっているため、ベンチマークテストをするまでもなく、Windows 7を触った感じはかなり速い。パフォーマンスディスプレイのCPU 12個並んだところは圧巻! 筆者のメインマシンもそれなりに速い方だと思うのだが、明らかに体感上それ以上と言うのが即分かるほどの爆速だ。
付属ソフトウェアは、「マカフィー・インターネットセキュリティ(90日期間限定版)」、「CyberLink Blu-ray Disc Suite」など割と控えめだ。価格を考えると、ユーザーはかなりハイエンド志向&玄人なので、特にあれこれ予めプリインストールする必要も無く、逆に邪魔になる。もちろんBTOではMicrosoft Officeを含め、いろいろ選べるので、必要であればプリインストール可能だ。
Microsoft Reclusa Game Keyboardコントロール | CyberLink Blu-ray Disc Suite | Intelラピッド・ストレージ・テクノロジー |
ベンチマークテストは、いつものWindows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark 2004R3に加え、ゲーム用としての実力が分かるよう、3DMark Vantage、そして筆者が個人的に興味のある動画のエンコードとデジタルカメラで撮影したRAWデータの現像処理時間を測定した。
まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合7.3(7.8)。内訳は、プロセッサ7.8(7.8)、メモリ7.8(7.8)、グラフィックス7.3(7.9)、ゲーム用グラフィックス7.3(7.9)、プライマリハードディスク7.9(7.9)。カッコ内はSLIをONにした場合だ。驚く事に、最大の7.9に近いスコアばかりとなっている。特にSLI ONだと全てが7.8以上。これだけでも、とんでもない爆速マシンと言うのが分かる。
CrystalMark 2004R3も同様に、これまで見たことの無い値ばかりになっている。CPU、RAID 0のSSD、GTX 285、どれをとっても見惚れてしまうほど。RAID 0のSSDのスコアは3万超え。これは2.5インチ7,200rpmのHDDの3倍の速度だ。ただしGDI、D2D、OGLに関しては、SLI ON/OFFでの差があまり出ていない。グラフィックス関連は、ヘビーなゲームをやらない限り本領が発揮できないレベルなのだろう。
3DMarkの値は、23,428 3DMarks(SM 2.0/8,282、SM v3.0/11,451、CPU/7,296)。この値にも驚いたのだが、さらにオーバークロックも含め、上のマシンがあるとは、世の中は広いものだ。
TMPGEnc 4.0 XPressのフィルタリング&エンコード時間、そしてRAW現像比較は、以前同じテストを行ったCore i7-920 +GTX260と比較した。
【4月1日12時訂正】 CUDAを組み合わせた動画エンコードについて、おかしな結果が出たので、調べてみたら、検証時に素材として使ったファイルが、同じ名前、同じ内容なのだが、エンコード条件が違っていた。マシン返却後だったので、同じ条件で筆者のメインマシンCore 2 Quad Q9550+GTX 260で再計測したところ、08:21と、Core i7-980X+GTX 285の方が172秒(約2.8分)速いことが分かった。この場を借りて訂正すると共に、お詫びを述べたい。
純粋なCPUパワーだけの比較として、RAW現像を行なった。比較対象は同じく、Core i7-920。素材はNikon D3XのRAW画像(6,048×4,032ピクセル)、現像ソフトは「Nikon ViewNX」だ。30枚の画像を同じ条件で現像したところ、5分19秒対と4分43秒と36秒の違いが出た。これについては十分マシンパワーの差が現れる結果となっている。
いずれも、異次元のパフォーマンスだ。ここまで速いとベンチマークテスト中、妙に笑ってしまった筆者だった。
3DMark(どちらもSLI ON)。23,428 3DMarks(SM 2.0/8,282、SM v3.0/11,451、CPU/7,296) | |
TMPGEnc 4.0 XPress/Core 2 Quad Q9550+GTX 260。処理時間8:21 | TMPGEnc 4.0 XPress/Core i7-980X+GTX 285。処理時間5:28。 |
価格が40万円近くと、最近のデスクトップPCとしてはかなり高価なマシンであるが、CPUパワー、ディスクパフォーマンス、そしてSLI構成のGPUなど、どれをとってもとんでもない速度だ。更にメモリ12GB標準搭載、Microsoft製のゲーマー用キーボードやLogicoolの高性能マウスなども同梱。フルタワーとサイズは大きいものの質感やデザインも良い。ディスプレイとスピーカーさえ接続すれば即、異次元のパフォーマンスを体感できる環境となる。予算無制限で、とにかく爆速マシンを触ってみたい人にお勧めの1台だ。