西川和久の不定期コラム
日本HP「Pavilion Wave 600-a072jp」
~無指向性スピーカーと一体化したデスクトップPC!
2016年9月26日 06:00
日本HPは9月15日、無指向性スピーカーと一体化したこれまでにないコンパクトデスクトップPC「Pavilion Wave 600」シリーズを発表、10月上旬より販売を開始する。発売に先立って編集部から試作機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
ちょっとお洒落なデスクトップPC
デスクトップPCと言えば、四角四面か、ゲーミング用のように少しカッコいい(変わった?)的なルックスがほとんどだ。大きさにもよるが、筆者のように机の下に置くケースだと、あまり見栄えは気にならなかったりもする。
そこに登場したのが今回ご紹介するHP「Pavilion Wave 600」。扉の写真からも分かるように、PCというより、アクティブタイプの無指向性スピーカーそのもののようなルックスだ。似たような系統として「Mac Pro」もあるが、こちらは円柱形。また少し雰囲気が違う印象だ。
搭載するプロセッサやメモリ、ストレージなどの違いで4モデルあり、最下位の「600-a031jpエントリーモデル」は、Core i3-6100T/4GB/1TB HDDで税別64,800円と、結構安価なスタートだ。下位(1つ上)の「600-a051jpスタンダードモデル」は、Core i5-6400T/8GBに強化し、税別69,800円。内容と差額を考えると、後者からのスタートでも良さそうな気がしないでもない。
今回届いたのは、最上位の「600-a072jpパフォーマンス(グラフィックス搭載)モデル」である。主な仕様は以下の通り。
日本HP「Pavilion Wave 600-a072jp」の仕様 | |
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プロセッサ | Core i7-6700T(4コア/8スレッド、クロック2.8GHz/3.6GHz、キャッシュ8MB、TDP 35W) |
チップセット | Intel H170 |
メモリ | 8GB(8GB×1)PC4-17000(2133MHz)/最大8GB |
ストレージ | 128GB M.2 SSD(PCIe Gen3x4 NVMe)+2TB HDD/7,200rpm |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
グラフィックス | Intel HD Graphics 5300、Radeon R9 m470、HDMI×1、DisplayPort×1(2画面対応) |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.2 |
インターフェイス | USB 3.0×1(前面)、USB 3.0×2、USB 3.0 Type-C ×1(背面)、メディアカードリーダ、音声入出力 |
その他 | Bang & Olfusenサウンドシステム、無線式キーボード&マウス、ACアダプタ(180W) |
サイズ/重量 | 約174×169×259mm(幅×奥行き×高さ)/約3.0kg |
価格 | 税別99,800円 |
プロセッサはCore i7-6700T。4コア/8スレッド、クロックは2.8GHzから最大3.6GHz。キャッシュ8MBでTDP 35W。最上位モデルなだけに強力なものを採用している。チップセットはIntel H170。メモリはPC4-17000(2,133MHz)で最大の8GB搭載済みだ。
ストレージは128GB M.2 SSD(PCIe Gen3x4 NVMe)に加え、2TB HDD/7,200rpmを装備。システム側は高速作動、データは余裕の大容量と理想的な構成となっている。光学ドライブはないものの、今時特に必要ないだろう。OSは64bit版のWindows 10 Home(TH2)。
グラフィックスはこのモデルと1つ下のモデルのみ、プロセッサ内蔵に加え、Radeon R9 m470/2GBを搭載している。基本的にモバイル用だが、スペースや発熱を考慮すると、この手のデスクトップPCには向いていると思われる。HDMI×1、DisplayPort×1を装備し、4K(3,840×2,160)対応ディスプレイ出力時には1画面、最大WQHD対応ディスプレイ(2560×1440)出力時は2画面に対応する。
ネットワークは有線LANにGigabit Ethernet、無線LANにIEEE 802.11a/b/g/n/acを備える。Bluetooth 4.2も内蔵。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×1(前面)、USB 3.0×2、USB 3.0 Type-C×1(背面)、メディアカードリーダ、音声入出力。USB 3.0 Type-Cあり、ポイントが高い。電源は外部にACアダプタを使用。
そして特徴的なのは、無指向性のスピーカーを搭載しているところ。しかも製品それぞれに適したサウンドを共同でチューニングしているBang & Olfusenサウンドシステムなので、音質も期待できる。
筐体のサイズは約174×169×259mm(幅×奥行き×高さ)、重量約3.0kg。無線式のキーボードとマウスも付属する。
筐体は少し丸みがかった三角柱だ。側面にはオフィスなどでよく見かけるパーティションに貼られているような布が使われている。そのほかの黒い部分は基本プラスチック。写真からも分かるように、布で覆われている部分が多く、一見PCに見えないのが最大の特徴だろう。なおこのファブリック(布)素材はPCとして世界初採用ということだ。
前面中央下にB&Oのロゴ、音声入出力とUSB 3.0、両側面には何もなく、背面中央一直線に電源ボタン、メディアカードリーダ、USB 3.0 Type-C、USB 3.0×2、Ethernet、DisplayPort、HDMI、電源入力、ロックポートが並んでいる。メディアカードリーダがこの位置にあるのは頻繁に使う場合、扱いにくいかもしれない。
上部の「パラボリックリフレクター」と呼ばれる部分は、放熱と無指向性スピーカーの機能を兼ね備えている。簡単に分解できないので、今回は見送ったが、同社のサイトや文末の記事から、正面はファンなど放熱系、左サイドはストレージ、右サイドはマザーボードを配置、それらの中央上向きにスピーカーが埋め込まれている。
このタイプの筐体は(Mac Proがそうだったように)比較するものがない単独の写真だと大きく見えがちだが、サイズ約174×169×259mm(幅×奥行き×高さ)は、側面に置いたiPhone 7 Plusからも分かるように結構コンパクトだ。これなら机の上に設置しても邪魔にならない。
ただ構造上、電源を内蔵するスペースがなく、結構巨大(約165×80×40mm/重量798g)なACアダプタが必要となっている。見えないところに転がしておけば気にはならないものの、これが嫌な人も少なからずいるだろう。
付属のキーボードとマウスは無線式だ。USBタイプのドングルも付属する。どちらも黒を基調としたスッキリとしたデザインであり本体にマッチする。
試用した範囲で振動やノイズはほぼなく、筐体が近くにあっても大丈夫だ。発熱は通常使用では問題ないが、ベンチマークテストで高負荷をかけると、主に左上が熱を持つ。少し高めだが、手に持つような製品ではないので問題はないだろう。
さて期待のサウンドだが、多くのノートPCやデスクトップPCと比べれば、十分な鳴りっぷりだ(参考までにスピーカーユニットは55mm径、容積は513cc)。ただし、筆者が期待していたほどの品質ではなく、高音/低音ともにこもり気味で、抜けがあまり良くない印象だった(言い方を変えればマイルドな音だが)。
基本的に無指向性ということもあり、正座してじっくり聴く的なタイプではなく、BGM的な使われ方を想定していると思われる。後述する「B&O Play Audio Control」でオン/オフができるものの、オフ時はかなり残念な音なので、常時オンで使った方が良さそうだ。
Core i7とM.2 SSD、Radeon R9 m470で十分以上のパフォーマンス
OSは64bit版のWindows 10 Home。Anniversary UpdateではなくTH2だ。初期起動時のスタート画面は1画面。右半分、5つのライブタイルがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更のみ、タスクバーへ若干のショートカットが置かれている。
Core i7、M.2 SSD、Radeon R9 m470、メモリ8GBの構成なので、起動も動作もサクサクで気持ち良い。高性能を要求する3Dゲームでもしない限り、性能に不満は出ないと思われる。
ストレージはC:ドライブが「SAMSUNG NVMe MZVPV128」。119.23GBが割り当てられ空き89.6GB。D:ドライブは「SEAGATE ST2000DM001」が使われ、リカバリー用に約10GB割り当てられている以外はフリーとなっている。
Wi-FiとBluetoothはIntel製、GbEはRealtek製。サウンドも含め、特に珍しいデバイスは使われていない。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは「Netflix」程度。デスクトップアプリは、「AMD Setting」、「B&O Play Audio Control」、「CyberLink Power Media Player 12」、「CyberLink PowerDirector」、「HP Audio Switch」(デバイス切替)、「HP ePrint SW」、「HP JumpStart」(ユーザー登録など)、「McAfee LiveSafe」。
「HPヘルプとサポート」フォルダに、「HP Documentation」、「HP Recovery Manager」、「HP Recovery Media Creation」、「HP Support Assistant」などが入っている。UIは変わっているが、同社のPCには以前から入っているものだ。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、3DMark、CrystalDiskMark。またCrystalMarkの結果も掲載した(4コア8スレッドと条件的に問題あるので参考値)。
winsat formalの結果は、総合 5.2。プロセッサ 8.3、メモリ 8.3、グラフィックス 5.2、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 9.1。メモリのバンド幅は14086.25791MB/s。PCMark 8 バージョ2は4414。3DMarkは、Ice Storm 70243、Cloud Gate 15627、Sky Diver 10907、Fire Strike 3123。
CrystalDiskMarkは、シーケンシャルQ32T1リードが1,929MB/s、同ライトが452.6M/s。4K Q32T1ランダムリードが562.2MB/s、同ライトが209.0MB/s、シーケンシャルリードが1,209MB/s、同ライトが296.1MB/s、4Kランダムリードが39.61MB/s、同ライトが127.1MB/s。CrystalMarkは、ALU 81691、FPU 75038、MEM 65193、HDD 46040、GDI 16356、D2D 4827、OGL 15483となった。
総じてこの手のPCとしては高スコアだ。プロセッサとストレージの性能がいいだけに、操作感に直結する。ゲームは先に書いたように、3DMarkのFire Strikeに似たスペックを要求するようなものでなければ、それなりに楽しめるだろう。
以上のようPavilion Wave 600-a072jpは、無指向性スピーカーと一体化したデスクトップPCだ。従来の四角四面のデスクトップPCとは全く雰囲気が違う筐体は、自宅で使うのにピッタリ。お洒落なオフィスでも置けるだろう。サウンドはBGM用途に向いている。プロセッサやメモリ、ストレージの構成により、税別64,800円スタートなのも嬉しいポイントとなる。
試用した範囲では、特に性能面にも優れている印象であり、このインテリアチックな外観を観て「おっ!」と思った人に是非お勧めしたい逸品だ。