第3回「キットを通して部品や回路に親しもう」



 前回はハンダ付けの練習をしてみました。ある程度ハンダ付けの方法や感覚を覚えたら、もう少し部品数の多いキットを作ってみましょう。今回の題材は『マイコンデジタル時計キット Ver.3(卓上型)』です。秋月電子通商にて2,100円で購入しました。

『マイコンデジタル時計キット Ver.3(卓上型)』が完成した状態。ワンチップマイコン(PIC16F57)により1.1インチの7セグメントLEDを時計やタイマーなどとして駆動するキットです
キットに含まれる主な部品。中央に見える基板に、周囲の部品をハンダ付けして組み上げます
キットの実体配線図。この図と基板や部品を見比べながらハンダ付けしていけば容易に組み上げられます。(図は『マイコンデジタル時計キット Ver.3(卓上型)』説明書から抜粋)

 できれば、キットを作る前に、付属説明書やPDF説明書をじっくり見ましょう。部品の機能や回路などに詳しくなければ、配線図を見てなんとなく動作を想像するだけでもかまいません。

 例えば回路図の7セグメントLEDの接続部分です。7セグメントLEDの点灯方法については『武蔵野電波のブレッドボーダーズ7セグメントLEDを使ってみよう』を参照してください。

 回路図をよく見ると、4つの7セグメントLEDの各端子が直結されています。これでは、各7セグLEDが同じ表示になってしまいそうです。しかし、もっとよく見ると、7セグLEDのアノード・コモン(各LED素子共通の+極)端子は、それぞれ別の回路に接続されているようです。

キットの回路図。左の縦長の四角形がPICマイコンで、その右が7セグLEDに電流を与えて点灯させるドライバICです。さらにその右に並ぶ4つが7セグLEDです。(『マイコンデジタル時計キット Ver.3(卓上型)』説明書から抜粋)
4つの7セグLEDの(コモンを除く)端子がそれぞれつながっています。しかし、7セグLEDのコモン(COM)はそれぞれ別の回路につながっているようです

 この接続方法は、複数の7セグLEDをダイナミック点灯させる1つのスタイルです。

 このキットでは7セグLEDで4桁の数値(時間など)を表示しますが、実際には同時に点灯する7セグLEDは1つだけです。1つの桁を一瞬だけ光らせて消灯し、次の桁を違うパターンなどで光らせて消灯し……という動作を高速で連続的に行なっています。その様子を肉眼で見ると、全ての7セグLEDが同時に点灯しているように見えます。これがダイナミック点灯です。

 ダイナミック点灯について知らなくても、上のような回路図を見て「なぜこの配線なんだろう?」、「2つのトランジスタがある回路は何?」と思うことが大切です。

 実体配線図に基づいてキットを組み上げ、完成したデジタル時計を楽しむというのも悪くありません。しかし、回路図や基板のパターンを眺め、その仕組みに対する好奇心や疑問が出てくれば、それらが新たな知識につながるはずです。

 説明書で頭と目を使ったら、今度は手を動かしましょう。

 早速、キットを組み上げていきますが、部品の多いキットの場合、基板の表面をよく見て、部品を取り付ける位置をしっかり確認しつつ作業を進めましょう。極性などがある部品(LED、コンデンサ、トランジスタ、ICなど)は逆向きに取り付けると動作せず、部品によっては破損(焼損や破裂)の危険もありますので十分に注意してください。

キットに付属する基板。部品を取り付ける面(部品面)には、取り付ける部品の部品番号がプリントされています。部品記号は説明書のそれと合致するようになっています
説明書にある部品表。表にある部品記号が、基板上にある部品記号と一致していますので、これに従って部品を取り付けます。(『マイコンデジタル時計キット Ver.3(卓上型)』説明書から抜粋)
部品記号の頭に「R」が付くのは抵抗器です。手前の部分には、6本の抵抗器を並べて取り付けますが、抵抗値の違いに注意が必要です。基板中央にIC取り付け箇所がありますが、左側の切り欠き記号でICの取り付け向きを判断します
Cはコンデンサです。C1とC4は電解コンデンサで極性があります。C1やC4の円の上にある「+」とコンデンサの+極を合わせて取り付けます。C2やC3は積層セラミックコンデンサで、極性はありません
TRはトランジスタです。取り付けるべき向きがありますので、部品の形を「(]」のような記号に合わせます。全く同じ形でも種類があり、PNP型とNPN型では違う動作をしますので間違えないようにします。部品表面の刻印は、2SA1015GRならA1015GR、2SC1815GRならC1815GRなどとなっています

 ほとんどのキットの場合、部品の種類と値、取り付ける位置を確認していれば、無事に完成させられます。急がずリラックスしてハンダ付けを楽しみましょう。

 しかし、我々はリラックスし過ぎてしまったようです。ハンダ付けを失敗しました。部品の足(リード)を通す穴をハンダで埋めてしまいました。

 こんなときは、ハンダ吸い取り線やハンダ吸い取り器と呼ばれる道具を使います。

部品を取り付けるための穴にハンダが流れて塞がってしまいました
ハンダ吸い取り線は、基板上などからハンダを除去する平らな撚り線です。我々はフラックス入りで幅2mm程度のものをよく使います
10mm程度に切り、ピンセットで挟んで使うと、細かな部分のハンダ除去が容易です。この作業にも逆作用ピンセットが便利です
使い方は簡単です。まず、吸い取りたいハンダの上に吸い取り線を当てます
次にハンダ吸い取り線の上からハンダゴテを当てます。すると、基板から吸い取り線へ、溶けたハンダが移ります。吸い取り線にハンダが染み出てくれば、巧く吸い取れています
このようにハンダを除去できました。なお、使用後の吸い取り線部分は、ハンダを吸い取る力を失っていたり、ハンダをたっぷり含んでしまっているので、再度使うのはあまりお勧めできません

 ハンダ吸い取り線は必需品ですが、そのほかにもいくつか便利な道具がありますのでご紹介しましょう。

 まずは万力(バイス)の類です。これがなくてもキット作りや電子工作はできますが、1つあると作業の効率が上がります。

PanaVisePanaVise Jr.という小型バイスです。adafruits industriesにて28ドルで購入しました
このように基板などを挟んで固定することができます。小型なので、卓上で使うのに便利です。
ジョー(挟む部分)の根本は自由に回転する構造です。基板を裏返すのも容易なので、小型基板のハンダ付け作業にも役立ちます

 今回作っているキットにはICが2つ使われており、基板上へのIC装着にはICソケットが使われています。

 DIPタイプのICをICソケットに填めるとき、困るのはICのピンが若干外側に広がっていることです。この場合、机面を使ってICのピンを適切な角度/幅に修正することが多いのですが、専用の道具を使うとその面倒もありません。また、修正作業に失敗してピンを折り曲げてしまう心配もなくなります。

サンハヤトのICピンそろったICS-01。IC幅は3/10と6/10インチに対応していて、今回のキットや、電子工作に一般的に使われるICのピンに使えます
このようにICをセットします。
グッと握れば処理は完了です。DIPタイプのICのピンを、ソケット挿しやすい幅に整えられました
6/10インチ幅のDIP ICにも使えます

 部品の足を揃える、という点ではフォーミング用の道具もあります。基板上にきれいに部品を並べたい、手とラジオペンチでフォーミングするのが面倒、という人は使ってみてはどうでしょう。

サンハヤトのリードベンダーRB-5は、トランジスタのリードやアキシャルリード部品(部品本体と足が一直線になっている部品)を手早くフォーミングするための道具です
トランジスタ(TO-92タイプ)の足を2.54mmピッチの基板に合うように加工することができます。写真の金属製加工棒は付属品です
ペンチなどでは時間のかかるフォーミングも簡単に行なえます
抵抗器やダイオードなどのアキシャルリード部品のフォーミングが非常に簡単に行なえます
セットした抵抗器をリードベンダーに乗せ、指でリードを折り曲げます
このように基板に挿しやすい状態へのフォーミングができます。足幅は2.5mmから30mmまで、2.5mmピッチで調節できます

 ハンダ付け自体をもっと快適に行ないたい、という人にはステーション型のハンダゴテが便利かもしれません。

 ステーション型のハンダゴテは、温調ハンダゴテの一種で、コテ部分と電源/コントローラ部が分かれています。コテ先温度を100℃前後~400℃以上にまで細かく設定できたり、コテ先を容易に交換できるなど、ハンダ付け作業の効率を上げる機能があります。我々もgootのRX-802ASというステーション型のハンダゴテを使っています。

gootのRX-802AS。ステーション型のハンダゴテです
電源部でコテ先の温度を調節できます。設定温度は、1℃刻みで50℃~450℃まで可能です
専用のコテ台が付属しています。コテ台には交換用コテ先を立てて置ける穴もあります
コテ部分は細身で、コテ先は40mm程度の長さしかありません。一般のハンダゴテと比べると小さく細いコテです。作業中にコテ先を交換することができます。

 我々がRX-802ASを使っている理由はいくつかありますが、コテ先温度を自在に調節できることと、コテ先の短さなどが主な理由です。

 コテ先温度の調整ですが、これはハンダ付け対象となる部品や基板(ランド部の広さなど)に応じて微調整しています。ハンダ付けに最適なコテ先温度は一概に言えませんが、ハンダ付け作業中に「思ったよりフラックスが速く蒸発する」とか「端子部の金属が大きいので温度が上がりにくい」といったとき、設定温度を変えると快適にハンダ付けを進められます。

 例えば、一般的なキットのハンダ付けなら370℃前後とし、気温など状況に合わせて±15℃程度の温度調整を行なっています。また、SMD(表面実装タイプの部品)のハンダ付けをする場合はより温度を低くし、大きめの端子が対象になる場合はもっと温度を上げたりしています。

 これにより、1セットのハンダゴテでさまざまなハンダ付け作業に対応できるので、道具を交換するなどの手間が省けて効率が上がるというわけです。

 また、RX-802ASはコテ先の短さ、コテ先交換の容易さ、コテ先種類の豊富さも魅力です。コテ先が40mm程度でグリップ部も細く軽量なので、ペンを持つような感覚でハンダ付けできます。作業中にコテ先を交換することも容易なので、SMD部品のハンダ付け直後にケーブルのハンダ付けをするというのも現実的です。

 使用してみるとさまざまなメリットが感じられるステーション型ハンダゴテですので、皆さんもご自分に合ったステーション型ハンダゴテを探してみるといいかもしれません。

 さて、キットが完成しました。

 そのままでは少し物足りないので、身近にあるものを利用してインテリア風に改造してみました。

キットが完成した様子。基板部分はマイコンチップ側と7セグ側がピンヘッダ/コネクタで接続されています。この部分をつなぐケーブルなどを自作すれば、違った形の時計に改造できそうです。なお、電源はDC9V~12Vですので、006P 9V電池でもどうにか動作します。ただし電池では短時間しか動かず、時計としての機能は果たしそうにありません。なお、このキットは時計としての精度もあまり高くなく、校正の手間(トリマコンデンサで微調整)もかかりますので、正確な時刻表示を求める人にはあまりおすすめできません
コネクタ部分を改造し、7セグ表示パネル部を本来の裏返しにセットできるようにし、ガラスの筒に入れてみました。昼間、肉眼では7セグLEDによる時刻が浮き上がるインテリア、というイメージで見えます
夜間はこんな雰囲気で見えます。後方に黄色LEDを追加し、赤と黄色に光るオブジェとしてみました
厚みのあるフォトフレームに本体一式を詰め込んでみました。ピンヘッダとピンソケットを使ってケーブルを自作し、7セグ基板とマイコン基板を接続しています。7セグLEDはありきたりな表示デバイスながらも、こうして眺めると何だか和める雰囲気です

 電子工作キットが組み上がった後、オリジナルのケースに入れるとひと味違った存在感になりますね。

 今回作ったキットはわりあい短時間で組み上げられ、改造もしやすいと思います。皆さんも週末のプロトタイプ作りを楽しんでみてください。