第2回「LEDチェッカーキット2でハンダ付けの練習」



 やはり電子工作においてハンダ付けは重要な要素です。キット作りには必須であり、ブレッドボーディングもハンダ付けを併用したほうがスムーズに進むことがよくあります。道具を揃えてトライしてみましょう。

 ハンダ付けの練習には、小規模なキットをひとつ作ってみるのがいちばんいいと思います。今回はワンダーキットの『LEDチェッカーキット2』を題材に選びました。

 このキットはLEDを定電流回路で駆動することで、さまざまな種類のLEDを一定の条件で光らせることができます。つまり、抵抗器を直列に入れなくても常に同じ電流(10mAか20mA)が流れるので、LEDをただつなぐだけでいいわけです。ひとつ作っておくと日常的に役立つ回路です。

 動作の仕組みについては、あとでまた説明することにして、さっそく製作の準備にとりかかりましょう。

LEDチェッカーキット2』。共立電子エレショップでの価格は609円。多くのショップで取り扱っているので、入手しやすいキットです(取り扱い店リスト)

 まず必ず必要になる道具を整理していきましょう。

 ハンダゴテ、コテ台、コテ先クリーナ、ハンダ、ハンダ吸い取り線、そしてニッパが必須工具です。

 ハンダゴテは価格差が大きくちょっと選びにくい工具かもしれません。我々は温度を一定に保つ機能を持った製品をオススメします。ハンダ付けがうまくいかないときは、何らかの理由でコテ先の温度が下がっている場合が多いと思われます。温度調整機能付きのコテならば、この問題が起こりにくく、安定した仕上がりになります。

 コテ台は灰皿や机のフチなどで代用できますが、うっかり落としたり転がしたりするとヤケドにつながります。安全性を重視して、必須の道具と考えましょう。コテと同じメーカーのものは、形状が揃っていて収納時の安定感が良いかもしれません。

 コテ先クリーナーも、濡らしたスポンジや雑巾で代用可能ですが、鉛やフラックスなどの健康に良くない物質が溜まる部分ですので、専用のものを用意します。コテ台とセットになっているものは使い勝手がよく場所も取らないので便利です。

 ハンダ(糸ハンダ)は材料や太さの違うものが何種類も売られていて、やはり選択に迷うところです。鉛を含んでいるかどうかが、最初のチェックポイントになるでしょう。健康や環境のことを考えると有害物質である鉛を含まない(鉛フリー)製品が良いのですが、作業のしやすさは鉛を含む従来品のほうが上です。今回は鉛を含む従来型ハンダを使用します。太さは0.8mmが使いやすいと思いますが、1mmや0.6mmでも問題ありません。

 ニッパはブレッドボーダーズ時代に購入済みですね。もしまだならば、1本用意してください。電子工作用とか銅線用として売られている小型のものがいいでしょう。工具でちょっと贅沢したい気分ならば、ニッパに投資するのはいい考えだと思います。ハンダ付けしたあとのリード線を切る作業が楽しくなります。

【表1】ハンダ付け関連工具リスト

メーカー名型番参考価格
ハンダゴテ太洋電機産業PX-2383,780円
コテ台太洋電機産業ST-761,596円
ハンダ吸い取り線太洋電機産業CP-2015220円
ハンダ太洋電機産業SD-34300円
(価格は共立電子エレショップ)

必須の工具。今回使用したのは、ニッパ以外すべて太洋電機産業(goot)の製品です。ハンダ付けの道具を選ぶときは、gootの他に、HAKKOHOZANなどの製品を検討するといいでしょう。このコテ台は、コテと形状が一致しているので多少乱暴に扱っても安定しています。写真ではリールに巻かれた糸ハンダが見えますが、最初からこの量を買うのは抵抗があるかもしれません。後述するスティック状に巻かれたハンダでも、まずは十分です
gootのPX-238はコントローラを内蔵していて、コテ先の温度を380度に保ちます。この機能のおかげで、部品の大きさや基板の状態による影響を受けにくくなり、常に快適なハンダ付けができます。値段も手頃で趣味の電子工作には最適な製品でしょう。ただし、全体が大きめで、グリップからコテ先までが長いため、人によっては持ちにくいと感じるかもしれません。次回紹介するステーションタイプのハンダゴテはそうした問題をクリアし、さらに高度な温度調整が可能です
gootの糸ハンダ、SD-34とSD-45。鉛フリーではない、0.8mm前後の糸ハンダをまず1本用意しましょう。いくつかキットを作るうちに使いやすい太さがわかってくるので、そのあとでもっと経済的なリールタイプのものを買うといいと思います

 必須の工具が揃えばキット作りに取りかかれます。でも、この機会に「あると良い工具」についても触れておきましょう。

 ワイアストリッパはブレッドボーダーズでも紹介しましたが、今後はずっと必要性が増します。ニッパやカッタでの線剥きは慣れが必要ですので、ワイアストリッパで簡単に済ませることを薦めます。

 ピンセットもぜひ持っていたい工具です。もつれた部品をより分けるときや、DIPスイッチの設定をちょっと変えたいときにも便利です。今回とくにオススメしたいのは逆作用ピンセットです。通常のピンセットとは逆に、握ると開き、離すと掴むピンセットです。

 ある電子工作の先輩からこの工具の活用法を教わったことで、効率がだいぶアップしました。基板に部品を付ける際、それまでは書類用のクリップやメンディングテープ、ヒートシンクなどを使って押さえていました。でも、逆作用ピンセットはそのどれよりも使いやすく、応用が効きます。

 それから、これは工具ではありませんが、コンセントに挿して使うタイマの導入も一考の余地があるかもしれません。ハンダゴテとコンセントの間に、指定した時間で電源を切断するタイマを入れておけば、うっかり切り忘れる心配から開放されます。なお、ステーションタイプのハンダゴテには自動シャットダウン機能を内蔵しているものがあります。

右からエンジニアのワイアストリッパPA-06、gootの逆作用ピンセットTS-16、同じくgootのワシ口型精密ピンセットTS-15
パナソニック電工の3時間型ダイヤルタイマーWH3201。直感的なインタフェイスで電源の切り忘れを防止できます
PX-238の交換用コテ先。ハンダゴテの先端部「コテ先」は用途に応じて形状を選択できるよう交換式になっています。今回作るキットの場合は、購入時にセットされているコテ先でも不自由なくハンダ付けできますが、我々は普段使い慣れているPX-2RT-2Cに換装して作業しました。これは円柱を斜めに切った形状のコテ先で、ハンダに熱を伝えやすい形状に感じられます。もっと細かい部品を扱う場合は、鋭いキリ状のコテ先を使用することもあります

 さて、道具の準備はできました。いよいよキット作りに取りかかります。

 袋をあけて、中身を取り出してください。机の上に十分な空間をとって、他のモノと混じらないようにしましょう。キット作りで最悪の失敗は、部品の紛失です。消えたのが特殊な部品なら、キット全体がムダになってしまいます。単品で入手可能なものであっても、キットで揃えた意味がなくなりますね。

 内容物を並べて使う部品をチェックしましょう。

キット付属の説明書。初心者向けなので「ハンダ付けのしかた」も解説されています。組み立て方法の説明書は、キット作りに慣れていない人からすると少しわかりにくいと感じるかもしれません。実際の部品や基板を手にとって比較しながら読むようにすると理解しやすくなります
全部品を並べたところ。基板以外は単品としても入手できる一般的な部品です。抵抗器は3種類、トランジスタは2種類が混ざっています。今回は点数も少ないので、最初にすべて仕分けてしまいましょう
表面にK30Aと印刷されています。正しくは2SK30Aという型番です。2SKで始まるのは、電界効果トランジスタ(FET)という種類のトランジスタで、キットに入っている6個のトランジスタのうち2個がこれです(他の4個はブレッドボーダーズでも使った2SC1815です)。通常のトランジスタとは端子の名前が違いますが、今回はまだ覚えなくてもいいでしょう
カーボン抵抗器は82Ωと62Ωが2本ずつ入っています。カラーコードで見分けてもいいのですが、状態によっては判読が難しいことがあります。我々は必ずテスターで抵抗値を計って、確認します。黒い線が一本だけ印刷してある0Ωの抵抗器も1本入っていますが、説明書ではこれをジャンパー線(J1)と記述しているようです
一番重要な「部品」がプリント基板です。多くのキットは、オリジナルの基板と汎用の部品のセットです。基板にそのキットのオリジナリティが凝縮されていると考えていいでしょう。なお、この基板は表面に部品の配置が印刷されています。この印刷を「シルク」と呼ぶことがあります。トランジスタの向きや電源の極性、抵抗器の番号など、大事な情報が満載されています
基板を裏返ししたところです。この面を「ハンダ面」といいます。シルクがある面は「部品面」です。もう少し用語を覚えてしまいましょう。ハンダ付けをする丸い部分を「ランド」といいます。通常、ランド以外の部分にはハンダが付かないように加工されています。「パターン」と呼ばれる薄い銅の層が回路を構成しています。この銅箔のおかげで配線をする手間が省けるわけです

 基板と部品の状態がざっと頭に入ったら、いよいよハンダ付け開始です。

 ハンダゴテをコンセントにつなぎ、スポンジに水を含ませます。コテ先が適切な温度にあがるまで少し時間がかかります。PX-238の場合は40秒ほどでしょうか(高性能なコテはもっと早く暖まります)。頃合いをみて、ハンダをコテ先にくっつけてみましょう。スッと溶けて白い煙が一筋立ちのぼれば準備OKです。いったん、スポンジにコテ先をこすりつけてキレイにします。

 温度調整機能付きのハンダゴテを使っている場合、あとはコテ先をクリーンに保つことさえ忘れなければ、ハンダ付けはとても簡単です。部品や基板の状態によっては、手こずることもあるのですが、今回のようにシンプルなキットでは「ハンダがうまく付かない」という問題で悩むことはまずないはずです。リラックスしてどんどん付けていきましょう。

スポンジが膨らむくらいの水を染みこませます。写真ではミネラルウォーターを入れていますが、水道水で構いません
十分熱せられたコテ先にハンダを当てるとすぐに溶けて煙が出ます(コテ先の銀色の部分に当てないと溶けないかもしれません)。この煙はハンダに含まれるフラックスが原因です。フラックスが完全に蒸発すると、煙は消えます。フラックスはハンダと部品がくっつくときに必要な成分です
スポンジが汚れていて見苦しい写真ですね。このくらいコテ先は汚れるわけです。こまめにこすって、先端の銀色の部分が、銀色の状態を保つようにします

 基板に部品を取り付けるときの順番は「背の低い部品から」というのが定石です。背の高い部品を先につけてしまうと、その狭間の部品をつけにくくなるからでしょう。たいていは抵抗器を最初につけることになります。

 このキットの説明書には、抵抗器、スイッチ、トランジスタの順番で付けるよう書かれています。基板に挿す作業はブレッドボードのときと同様ですね。ただ、プリント基板の場合、ひっくり返してハンダ面を上にしたときに部品がスルッと抜けてしまうことがあります。

 そういうときは、リード線を軽く曲げてひっかかるようにしましょう。なお、このときキッチリ90度に曲げるやり方もあるようです。そのほうがハンダ付け後の強度は高そうですが、失敗したときの修正が少し面倒です。最初のうちは、あまり強く曲げない流儀のほうがいいでしょう。

 リード線を曲げにくい、あるいは曲げても落ち着かない部品は逆作用ピンセットで挟んで固定します。逆作用ピンセットがない場合は、メンディングテープで固定したり、5本の指を駆使したりと、その都度工夫します。

 最初の固定が不十分で部品が少々曲がってついてしまったとしても、隣の部品とショートさえしていなければ、今回のところは良しとしましょう。

抵抗器のリード線を穴に通したところ。必ずシルクをみて、正しい部品番号のところにささっていることをチェックしましょう。基板を裏返すと部品が抜けてしまうようならば、リード線を軽く広げて留めます
タクトスイッチは固定しにくいかもしれません。逆作用ピンセットの出番です
ランドにピンセットの先端が触れないように挟みます。この状態でハンダ付けします
ランドとリード線の両方に接するようコテ先を当てました。一拍おいて、そこにハンダを当てます。ハンダが溶けてランド全体に広がったら、ハンダを離し、その後、コテ先を離します
ハンダがピカピカの富士山みたいになれば理想的と言われています。道具がちゃんとしていれば、あとは慣れですから、最初は個々の出来映えにこだわらず、どんどん付けていくのがいいのではないでしょうか。いい感じとそうでもない感じが自然とわかってくると思います
長いリード線はハンダ付けのあとニッパで切り落とします。このときリード線が飛んでいかないよう指を当てます。押さえずに切ると、部屋の端まで飛んでいって、入ってほしくないところに入ってしまうことがあります。なお、写真の押さえ方だと、切ったリード線が指に食い込んだり、肉に反射して下方向に勢いよく撥ねることがあります。不完全な方法なのですが、作業効率がいいので、こうするクセがついてしまいました
このコネクタが一番取り付けにくい部品かもしれません。たくさんのピンが並んでいる部品は、まず1本だけハンダ付けし、そこで部品面をみて、傾いていたら写真のように指で押さえた状態でハンダを溶かします。すると、パチンと正しい位置に納まります。全部のピンを付けてから傾きを直すのは手間がかかります。なお、多少の傾きは気にしない、という方針もありだと思います
電池ボックスは2本のビニール線(撚り線)で基板に接続します。そのままではどう見ても長すぎるので、3cmくらいにカットして取り付けます
撚り線を切ったら、皮むきをします。このワイアストリッパではAWG26用の穴がちょうどいい感じでしたが、失敗して切りすぎてしまうと困るので、いきなり本番に挑むのではなく、まず切れ端のほうでテストをしたほうがいいでしょう
皮を剥いたら、下ごしらえをします。芯の細い線がばらけないよう、軽くよじってから、ハンダを使って固めます。逆作用ピンセットの出番です
ハンダ付けの要領は基板に部品をつけるときと同じです。コテを当てて、そこにハンダを当てて、しっかり溶けたら、ハンダを離し、最後にコテを離します
うまくできると気分がいい作業です。先端がクニッとなってしまってブレッドボードに刺さらなくなった電池ボックスのケーブルもこれで修復できますね
この写真は、加藤ただし著『つくる電子回路』に載っていたテクニックを実践しているところです。左手で加工対象のビニール線とハンダを保持しています。慣れが必要ですが、うまくいくと上手になった気がします。なお、『つくる電子回路』は電子工作に役立つ実践的知識を豊富なイラストで説明している良書です。我々はときどき読み直すことにしています
ビニール線を基板にハンダ付けするのは、やりにくい作業のひとつです。こんなときも逆作用ピンセット。極性(プラスとマイナス)を間違えないよう、シルクの指示に注意してください。赤がプラスです

 組み立てが終わったら、部品面をよくみて、トランジスタの向きが違っていないか確認します。電池につながる線の極性(赤か黒か)も重要です。次にハンダ面も見ておきましょう。盛り上がったり、ツノ状になったハンダが、隣の部品に接触している部分はないでしょうか。ハンダが浮いて、足がぐらぐらしている部分はないでしょうか。もしあったら、いったんハンダ吸い取り線でハンダを取り除き、改めてハンダ付けを行ないます。ハンダ吸い取り線の使い方は次回説明します。

 問題無しと判断したら、電池を接続しましょう。それだけではなにも起きません(電池も消費しません)。LEDの極性に注意して(長い足がプラス=アノードでしたね)、コネクタの金属部分に突き刺します。少し固いかもしれませんが、突き当たるまで入れて大丈夫です。

 LEDが点灯したはずです。その状態でタクトスイッチを押すと、電流が倍の20mA(ミリアンペア)になります。LEDによってはあまり変化が感じられないかもしれません。いろいろなLEDを試してみましょう。

電流制限抵抗のことは考えずに、プスリと挿すだけでLEDをテストできます。10mAでもじゅうぶん明るく光り、20mAにしてもあまり明るさに変化が感じられないLEDがある一方、10mAと20mAでは顕著に違うLEDもあります。後者は古いLEDに多いようです
LEDに対して直列にテスターをつなぎ、電流を測定してみましょう。電流モードに設定してからつなぐことを忘れないでください
赤色LEDをテスト中。8.96mAと、仕様の10mAよりも低めの値でした。さまざまな(Vfが異なる)LEDを試したところ、9mAを中心に±0.1mAくらいの範囲に収まっています。ちゃんと定電流回路になっているようです
赤外線LED(L-53F3BT)を2個接続したところ。この基板には独立した2回路が載っていて、2個のLEDを同時にチェック可能です。このLEDの光(赤外線)を写真の本に当て、ビデオカメラで撮影してみると……
【動画】写る色と写らない色があるようです

紫外線LED(YSL-R547P4C-E3)で人民元紙幣を照らしてみると……
【動画】10mAと20mAでは、だいぶ見え方が変わりました
LEDが接続されていない間は電力を消費しません。このようにコンパクトにまとまるのは専用基板をベースにしたキットのいいところです

 説明書で回路の原理が簡単に解説されています。それによると、FETが電流の大きさを一定に保つ特性を2つのトランジスタでより安定させることで、実用的な定電流回路としているそうです。

 説明書には回路図も掲載されているので、自分で抵抗の値を変えるなどして、実験することができます。

 電流値の変更をスイッチではなく、半固定抵抗でする回路をブレッドボード上で作ってみました。7mAから20mAくらいまで連続的に可変できます。本当はもっと小さい電流を得られるようにしたかったのですが、うまくいっていません。実験の余地が残っています。

キットで作った回路をブレッドボードで再現してみました。回路の解説がされているキットは、こういう楽しみ方もできますね

 次回はもう少し規模の大きいキットを作ってみましょう。