どうしたことか、ここに来て「Pocket WiFi」と同様の製品が多数発表されている。
まず、ドコモが3Gネットワーク対応携帯型ルーター「ポータブルWi-Fi」を発表。期間限定とはいえ、iPhone向けの料金プランを意識していると思われる定額データ通信の割引も同時に発表した。3Gネットワーク対応携帯型ルーターは、SIMフリー、800MHz帯対応で日本通信も発売している。
前者は以前、筆者が簡単にレポートしたことのあったNTT-BPのルータを、バッファローと共同開発で仕上げたもののようだ。テスト当時はあっと言う間にバッテリがなくなってあまり使えない記憶が残っているが、製品版では6時間のスペック。ちなみに通信時間6時間というスペックは日本通信の「b-mobile WiFi」より長い。
b-mobile WiFiは、発表直前の今週月曜日に、筆者主催のイベントに同社COOの福田尚久氏が持ってきてくれていたが、軽量かつ薄くポケットに収まりやすい。これで本当に4時間の連続通信ができるなら、もっとも有力な選択肢になるかもしれない。
Pocket WiFi | ポータブルWi-Fi | b-mobile WiFi |
ちなみに、こうしたポータブルルーター類の発表は来月まで続いていくようだ。
しかし、今週は他にも色々なニュースがあった。
●Windows Phone 7への布石か? Windows Liveの大規模な刷新が“スタート”先日、北米でFacebookやTwitterとも連携する新しいバージョンのWindows Live Messengerがスティーブ・バルマー氏によって公開されていたが、現地時間17日には新たにWindows Live Hotmailのアナウンスがあった。
HotmailはWebメールサービスの中でも、もっとも古いものの1つだが、これまでのアップデートでは画期的、ドラスティックといった形容が似合う改良は行なわれてこなかった。もちろん、地味に使いやすくはなっていたのだが、ハッキリ言って機能や使いやすさに関してはライバルの後塵を拝していたと言い切っても、言い過ぎだとは思えない出来だった。
Hotmailのホームページ |
しかし新しいHotmailは、まさに名前通りに“ホットな”サービスに生まれ変わっている。
なにしろ容量は無制限。添付ファイル容量は最大50MB(Gmailの実に2倍)、SkyDrive連携で最大10GBまでの合計添付ファイル容量(実際にはSkyDriveにアップロードされ、リンクのみが先方にメールされる)、スレッド表示や携帯電話対応などなど、Gmailに勝るところこそあれ、スペックで負けるところはないサービスに生まれ変わった。
テストアカウントを使い始めているが、ユーザーインターフェイスも洗練された。機能面でも添付ファイルのあるメールのみ、写真の添付されたメールのみなど、さまざまな切り口でのフィルタリングが行なえたり、添付ファイルのプレビュー機能が付くなど大幅な改善がされている。
Office Web Appsとも連携しており、Hotmail上で受信したOffice形式の添付文書を、Office Web Appsで閲覧、編集して誰かに送信といった一連の作業がスムーズに行なえる。
残念なのはIMAP4に対応していないことだが、Exchangeのプロトコルでサービスにアクセスできる。今やExchangeは企業向けサーバの標準的な存在になっているため、MacOS XのMail.appを始め、多くのメールクライアントがサポートしている。iPhoneのメール機能も同様だ。
Microsoftの説明によると、Hotmailに内包されているカレンダーやアドレス帳も、それぞれExchange互換のプロトコルでの同期をサポートしているとのこと(現時点でカレンダー機能にアクセスできていないので未確認)。きちんと動作するなら、こちらもやはり嬉しい改良と言える。
日本の氏名、ふりがな、住所などのフォーマットに対応したデータ同期のサービスは意外に少なく、たとえばGoogleのサービスではアドレス帳のスキーマにふりがながない(このため、ソニーエリクソンのXperiaはカスタムフィールドにふりがなを記録している)などさまざまな問題もあって、信頼できる同期サービスはアップルのMobile.meぐらいしか存在しなかった。
今後、β版の進行とともに詳細に評価を進めていくつもりだが、もしまともにアドレス帳の同期サーバーとして使えるならば驚喜する人は少なくないと思う。Exchangeの同期手法を基礎に動作するということは、スマートフォンはもちろんのこと、クライアントとしてMac OS X標準のアプリケーションも利用可能になることも意味している。
Windows Liveは今後、その他のサービスやツール類も含め、秋までかけて徐々に改良を加えていくようなので注意深く見守っていきたい。というのも、新しいWindows Liveは年内に登場が見込まれているWindows Phone 7搭載スマートフォンと無関係ではないと考えられるからだ。
Windows Phone 7は従来のプラットフォームから大幅に設計ポリシーが変化していることもあり、日本語対応のスケジュールはまだハッキリしていない。北米でのWindows Phone 7搭載スマートフォンは今年秋発売のスケジュールだが、年内の日本語版登場は予定がない。このため日本語版の登場は早くとも来春以降になりそうだ。
●いずれはHTML5にアップルが頑なにFlashをサポートしない事に対しては、非難と賛同の声が入り交じっている状況だが、エンドユーザーの立場からすれば、一言“不便”というのが共通した感想だろう。2012年春まで正式勧告されないフォーマットなのに、それまでどうすれば? といった声もある。
HTML5に関しては一気に変化するのではなく、構成要素が少しずつアップデートしていく中で実装と規格策定が同時進行していく形で進化している。アップルもそれまではFlashをサポートすればいいのに……と思わなくもないが、FlashのようにWebコンテンツの上にアプリケーションを動かす仮想環境をさらにかぶせるような事をしてFlashを引きずっていくのは避けたいという気持ちも分からないではない。
米国ではGoogleの開発者向けイベントの「Google I/O」が始まったが、その基調講演に出てくるHTML 5の応用例を見ていると、その可能性の大きさに多くの人は驚くだろう。Googleは言うまでもなくHTML5の最大の支援者だ。しかし一方で、Googleは自社が開発するブラウザのChromeにFlashのランタイムを内蔵させ、アップルとは違った形でFlashに応じている。
Flashのランタイムプラグインをブラウザに呑み込んでしまえば、ブラウザの中でFlashをコントロールできるようになるわけで、なるほど制御不能な世界からブラウザ側にアプリケーションコントロールの主導権をブラウザの側に取り戻す効果があるかもしれない。
極論を言えば、それはもはやFlashのランタイムなどではなく、Webブラウザそのままなのだから、Flashコンテンツがそれなりに多い現状では、内包してしまう事で手の内に置いて、そのうちFlashの新規アプリケーション開発例が少なくなってくれば進化を止めることで移行を促す戦略かもしれない。
Google I/Oの基調講演に関しては、Webキャストを見ただけでは、とてもすぐにまとめきれないほど多くの情報があるので、そのうち情報を整理したい。しかし個人的には、今から積極的にHTML5ベースでアプリケーションを組んでいくようにすべきだろうと感じている。
プラグインのソリューションが間違っているとか、Flashが良いものではないといった議論ではない。いずれHTML5へと向かうことが決定的なのであれば、今のうちから“出来ることだけ”でもHTML5で始めていった方が将来性が高いと思うからだ。今でこそFlashでアプリケーションを組める人は多いが、5年後も同じようにFlashでインターネットの中は溢れているのだろうか?
(2010年 5月 20日)