後藤弘茂のWeekly海外ニュース

IntelがMoorestownとClarkdaleの新情報を公開



●Menlowよりさらに携帯機器向けの仕様のMoorestown

 Intelは、8月23日~25日に米スタンフォードで開催されたチップカンファレンス「HotChips 21」で、次世代のAtomプラットフォーム「Moorestown(ムーアズタウン)」の技術概要を明らかにした。また、Intelは、来年(2010年)の初めに投入する予定の、PC向けのデュアルコア版Core i系CPU「Clarkdale(クラークデール)」「Arrandale(アランデール)」についても、一部の情報を公開した。

Lincroftのダイ

 MoorestownのCPU「Lincroft(リンクロフト)」は、Intelの45nm SoCプロセスで製造される。45nm SoCプロセスは、PC&サーバー向けCPUに使っている通常の45nmプロセスよりリーク電流(Leakage)が少ない。そのため、今のAtomと同じ45nm Atomコアであっても、Lincroftに使われているコアの方が、電力消費が少なく、その反面、より低速であることが予想される。下がMoorestownシステムの全体像だ。

Moorestownの概要
Moorestownのプラットフォーム

 Lincroftでは、CPU側にGPUコアやDRAMコントローラを内蔵する。Hotchipsでは、その仕様の概要が明らかになった。Lincroftの内蔵グラフィックスコアのサポートするAPIは、OpenGL ES 2.0とOpenVG 1.0となっている。DirectXがリストされていない。

 ディスプレイ出力はLVDSとMIPI-DSIをサポートする。ビデオ系ハードウェアでは、ビデオデコーダだけでなくビデオエンコーダも内蔵する。しかし、エンコーダの詳細はまだ明らかにされていない。

 サポートメモリ種類はLPDDR1とDDR2。メモリはシングルチャネルで32-bitインターフェイスとなっている。低消費電力のLPDDRをサポートするx32インターフェイスという仕様からは、このチップがMenlowより、さらに携帯性の高いデバイスを狙っていることがよくわかる。Moorestownプラットフォームは、これまでのAtom「Menlow(メンロー)」プラットフォームのターゲットだったMID(Mobile Internet Device)よりさらに小さなハイエンドスマートフォンを狙うとIntelは説明しているが、メモリの仕様からもそれが伺える。

 それぞれのコンポーネントは、それぞれ異なる周波数で駆動できる。コアとバスはもちろん、メモリ、グラフィックス、ビデオデコーダ、ビデオエンコーダ、ディスプレイそれぞれのエンジンが独立している。

異なる周波数で動くコンポーネント

●ターボモードで性能を引き上げるLincroft

 Lincroftでは、性能を向上させるための「バーストモード(Burst Mode)」が新たに実装された。これは、IntelのPC向けCPUのバーストモードと似たように、熱処理に余裕がある場合に、動作周波数を引き上げるものだ。また、CPUコアの動作周波数の向上に応じて、バスの周波数も引き上げる「バスターボモード(Bus Turbo Mode)」も実装された。

Lincroftもバーストモードを搭載する
システムバスの周波数を上げる機能も搭載する

 低消費電力化では、従来のSpeedStep(Geyserville:ガイザービル)の最低周波数(LFM)よりも、さらにCPUコアとバスの動作周波数を引き下げる「Enhanced Geyserville(eGVL)」モードが追加された。

SpeedStepにEnhanced Geyservilleを追加

 また、Lincroftでは、CPUコアなど各ブロックへの電力供給を完全にストップしてリーク電流を抑えるパワーゲーティングも実装されている。下のスライドの左はLincroftがフルに動作している状態、右がC6ステイトで完全にパワーゲーティングがされている状態。左の図で唯一、赤い電力消費状態にある左下の四角い部分は、CPUコアのステイトなどを保持するためのオンダイSRAM「State Storage」と見られる。

パワーゲートの追加で消費電力を抑える

●ClarkdaleとArrandaleのグラフィックスコア

 Intelは、来年の初めに投入する予定の、デュアルコア版Core i系CPUである「Clarkdale」、「Arrandale」についても、一部の情報を公開した。Clarkdale/Arrandaleは、デュアルコアCPUのダイと、GMCH(Graphics Memory Controller Hub)のダイの2つを、ワンパッケージに封止している。

ClarkdaleとArrandale

 Hotchipsでのプレゼンテーションのバックアップスライドでは、Clarkdale/Arrandaleの統合グラフィックスの概要が明かされた。Clarkdale/Arrandaleのマイクロアーキテクチャは、Intel G965/GM965の進化形となっている。

 ハードウェアでサポートしているのはDirectX 10のShader Model 4.0。DirectX 11についてはサポートの記述がない。コアには多数のシェーダプロセッサ「EU(Execution Unit)」を備えており、EUは複数個でクラスタ「Mathbox」にまとめられている。各EUは6スレッドまでをサポートする。ビデオデコード支援では、AVC、VC1、MPEG-2をハードウェアサポートする。

ビデオコアの概要