後藤弘茂のWeekly海外ニュース

これがIntelの次世代Atom「Lincroft」の実チップだ



●MoorestownのCPU LincroftがCOMPUTEXで公開
IntelのAnand Chandrasekhe氏

 Intelは台湾台北で開催されているCOMPUTEXで、Atomベースのウルトラモバイルを担当するIntelのAnand Chandrasekher(アナンド・チャンドラシーカ)氏(Senior Vice President, General Manager, Ultra Mobility Group, Intel)は発表会を開催。次世代Atomプラットフォーム「Moorestown(ムーアズタウン)」のデモを行ない、MoorestownのCPU「Lincroft(リンクロフト)」の概要やダイも公開した。また、待機時に20mWとなるMoorestownの省電力技術の概要や、次々世代Atomプラットフォーム「Medfield(メドフィールド)」についても明らかにした。

 下の図の左が、今回公開されたLincroftのウェハ上のダイだ。Lincroftは、CPUコアにノースブリッジ(GMCH)機能であるメモリコントローラやGPUコアを統合している。具体的には、CPUの右側にCPUコアが配置され、左にノースブリッジ(GMCH)機能が、両サイドにインターフェイスが配置されている。右は現行のAtom「Silverthorne(シルバーソーン)」のダイだ。Silverthorneでは、CPUコアの回りをFSB(Front Side Bus)ユニットが囲っていた。真ん中はSilverthorneのCPUコア部分だ。

Lincroftのダイ
Moorestownの概要

 CPUコア自体を比較すると、Lincroftの中のCPUコアは、ほとんどSilverthorneのCPUコアと同じであることがわかる。写真上に見える各ブロックの大きさや配置が共通している。Silverthorneをそのまま入れ込み、ノースブリッジ(GMCH)機能を統合したのがLincroftだ。

 Lincroftのダイのサイズは推定で70平方mmを切る60平方mm台後半と見られる。Silverthorneのダイは24.2平方mmなので、Lincroftは約2.x倍のサイズとなる。Lincroftの内部を見ると、ノースブリッジ部分がCPUコアの2倍以上の面積を占めていることがわかる。

 Intelによると、CPUコアの横に、メモリコントローラ、ビデオプロセッサ、グラフィックスコアの順番でノースブリッジ(GMCH)機能が収まっているという。また、CPUコアの下の部分にディスプレイコントローラブロックが配置されているという。


●20mWと極めて低いMoorestownのアイドル時電力

 COMPUTEXでの発表会では、IntelのAnand Chandrasekher氏が、Moorestownの省電力について強調した。スタンバイ時のアイドル電力が、現在のMenlow(メンロー)の1/50に当たる20mWに下がることを、実シリコンの評価システムを使ってデモを行なった。下のグラフの上の水色がMenlowシステムの待機時の電力、下のグリーンがMoorestownの待機時の電力だ。写真でChandrasekher氏が指さしているのがMoorestownの評価システムだ。

消費電力の比較 Moorestownの評価システム MenlowとMoorestownのアイドル時消費電力比較

 また、発表会では、Moorestownの動作時の電力も、Menlowよりかなり低いことが明らかにされた。下のスライドの、左がMenlow、右がMoorestownのシステムで、光っている部分が動作している部分右のスライドが消費電力を示している。Webブラウズ時でも、Moorestownの方がチップ数が少なく、電力消費が小さい。オーディオプレイ時はさらに差が大きく、Lincroftに対応するI/Oチップ「Langwell(ラングウェル)」のオーディオコーデック以外は、LincroftもDRAMも消費電力が低い。HDビデオ再生でも、Moorestownの方が数分の1の電力消費に抑えられる。

インターネットブラウジング時の消費電力 オーディオ再生時の消費電力 各処理実行時の消費電力比較

●19のアイランドでパワーゲーティングを効率的に行なう

 Intelによると、Moorestownの低消費電力の重要な要素は、Lincroftのパワーゲーティングであるという。従来、PC向けCPUでは、使われていないブロックへはクロック供給を停止するクロックゲーティングで電力制御が行なわれていた。クロックをストップすると、アクティブ電力を止めることができる。しかし、Lincroftでは、各ブロックへの電力供給を完全にオフにする。スイッチング電流だけでなく、リーク電流(Leakage)もカットされるため、パワーゲートされたブロックの消費電力はアイドル時でもゼロになるという。パワーゲーティングは、組み込み向けプロセッサなどで使われてきた技術で、Intelもそれを応用する。

 Intelによると、LincroftではCPUコアだけでなく、CPU全体に渡ってパワーゲーティングが行なわれるという。Lincroftの内部は、19のパワーアイランドに分かれているという。アイランドが19と多いため、CPUコアやGPUコアといった単位より、さらに小さく分かれている可能性がある。

 19のブロックそれぞれにつき、個別に電力のON/OFFができる。そのため、CPUコアとノースブリッジ(GMCH)のうち、使われていないブロックをきめ細かにOFFすることで、アイドル時のリーク電流を抑えることができる。

 IntelはSilverthorneでは「Deep Power Down C6」ステイト技術を実装した。SilverthorneのC6では、CPUのダイ(半導体本体)上に、ステイト保持用のオンダイSRAM「State Storage」を実装。電力を保持したSRAMにCPUステイトを待避させることで、CPUコアの電圧をSRAM内容を保持できるレベル以下に落とせるようにした。

アイドル時の消費電力比較

 Moorestownでは、CPUコアだけでなく、CPU全体のさまざまなステイトをSRAMに保持できるようになっているという。また、C6ステイト時には、パワーゲーティングを行なうことで、リーク電流をほぼゼロにする。C6とパワーゲーティングの組み合わせを、CPU全体で行なうことで、従来より大幅に待機時の電力を抑えることを可能にした。

 さらに、C6ステイト時でもオンダイSRAMのために消費される電力をオフにする、C6以下の省電力ステイトを設けたという。Intelはこの省電力ステイトの内容を明かしていないが、原理的にはオンダイSRAMに待避したステイトデータを、電力を消費しない不揮発性メモリなどに待避する以外は考えられない。その場合、復帰のレイテンシが長くなるはずだが、Intelは数百ms(ミリ秒)で復帰できると説明している。そのため、オンダイフラッシュメモリを持っている可能性もある。

●QuantaなどがMoorestown搭載デバイスの開発を発表

 COMPUTEXの発表会では、Moorestownを採用するパートナー企業も紹介された。下がパートナーのリストで、発表会ではQuanta ComputerのBarry Lam氏(Chairman)などが登壇、Moorestown搭載デバイスのデザインを紹介した。発表会に合わせて設置されたショウケースでは、Moorestownデバイスのデザインが展示された。Moorestown搭載製品は、2010年に登場が予定されている。

2010年以降に登場予定のデバイス 会場では参考展示も
さまざまなソフトウェア互換性

 Intelはまた、Atomプラットフォームのソフトウェア環境についても説明。Intelの推進するMoblinを紹介した。ただし、AtomプラットフォームでのWindowsサポートについても、Chandrasekher氏は次のように説明している。

 「Windowsについては、常に我々のプラットフォームのオプションに考えている。我々がMoblinについて語るのは、Atomのプラットフォームが要求するのが、非常に低消費電力で使いやすい環境で、インターネットアクセスとコミュニケーション、ソーシャルネットワーキングなどを効率的に使えることだからだ。だから我々は、Moblinに多くの労力を投じている。

 また、我々はAndroidについても語っている。それは、アプリケーションプラットフォームの1つとして、この市場では非常に重要だからだ。だが、それは、我々がWindowsをサポートしないことを意味してはいない。我々は、市場の流れに従うだけだ」。

●Moorestownの次のMedfieldはSOC(System on a Chip)に

 Chandrasekher氏は、Moorestownの次のMedfieldプラットフォームについても言及した。Medfieldは、全ての機能がワンチップに統合されたSoC(System on a Chip)製品で、32nmプロセスで製造される。ワンチップ化によって実装面積はさらに小さくなる。Medfieldは、2011年に登場予定だ。

 IntelはMoorestown、MedfieldとAtomプラットフォームを次々に進化させるが、それまでのプラットフォームを置き換えるのではなく、併存させる。Chandrasekher氏は次のように語る。

 「全てのプラットフォームが併存する。これらの製品は、比較的長いライフサイクルを持つことになるだろう。Moorestownが登場しても、Menlowは依然として市場に残る。Menlow向けに新しい機器の設計が進行しており、それは今後も続くだろう。また、我々もMenlowにリフレッシュを行なっており、2010年にもそれは続くだろう。

 Menlowは継続され、Moorestownはその上に機能を加えて市場を広げる。同様に、Moorestownが続きつつ、Medfieldが登場する。MedfieldはMoorestownを置き換えるのではなく、Moorestownを超えた機能で、市場を拡張する。しばらくの間は、これらプラットフォームは併存することになる」。

低消費電力製品のロードマップ 基板のさらなる小型化 スマートフォンも視野にいれる
Atomプラットフォームの進化
Lincroftのウェハ Lincroftのウェハ拡大

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