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Sandy BridgeとNehalemとCore MAが併存するIntelの2011年



●Core MAは2010年も依然としてIntelデスクトップの主流

 Intelの2010年のCPUロードマップの全貌が見えてきたことで、Nehalem(ネヘイレム)マイクロアーキテクチャへの移行ステップも明瞭になってきた。Intelは、NehalemアーキテクチャCPUを、現在のパフォーマンスPC主体のブランド「Core i7」だけでなく、メインストリームPC向けブランド「Core i5」、そしてバリューPC向けブランドの「Core i3」と「Pentium」へと段階的に降ろして行く。下位の廉価ブランドのNehalemマイクロアーキテクチャを導入することで、Nehalem系CPUの普及を促進する。

 これで、ようやくNehalem系CPUは最上位の999ドルレンジからバリューの80ドル台まで、ラインナップが揃うことになる。最初のNehalem系CPUである「Bloomfield(ブルームフィールド)」の発売から1年と1四半期かけて、ついにメインストリーム市場全体へと浸透が始まる。

 だが、IntelはCore Microarchitecture(Core MA)からNehalemへと、急激に切り替えることはしない。現在のデスクトップロードマップでは、IntelはCore MA系CPUも多くの市場セグメントで継続することになっている。下のデスクトップロードマップ図にあるように、ほとんどの価格帯で、NehalemとCore MAの両系統のCPUが併存する二重構造がしばらく続くことになる。Intelの製品計画でも、来年(2010年)の後半のデスクトップCPUのうち、Nehalem系は半分を切る程度と予測されていた。

デスクトップ向けCPUのロードマップ
デスクトップCPU比較
モバイル向けCPUのロードマップ
モバイルCPU比較

●デュアルコアNehalemの普及は32nmプロセスに依存

 理由の1つとして想定されるのは、製造プロセス技術だ。Intelは、45nmプロセス版のデュアルコア版Nehalemをキャンセルしたため、デュアルコアは32nmプロセスの製品しか存在しない。Intelはプロセス技術の完全な転換には、通常、4〜6四半期ほどかかる。

 下は、Intelが5月に開催した投資家&アナリスト向けのカンファレンス「Investor Meeting 2009」で示した、CPU製品のプロセスノードの移行スライドだ。45nmプロセスの場合、45nm製品の生産をスタートしてから完全に45nmへと切り替え終わるまで約6四半期かかっている。また、45nmプロセスは出だしの生産量が多かったが、32nmプロセスはそれと較べると出足はややにぶい。

 こうした事情を考えると、Intelは2010年末時点でもCPU製品の出荷量のある程度は45nmのまま残るだろう。CPUのうち、実際にボリュームの大半を占めるのはデュアルコアであることを考えると、2010年後半でようやく半分がNehalem系というのもうなずける。実際には、2010年の第4四半期に限れば、Nehalemの比率は50%を大きく超えるだろう。しかし、全量をNehalemへと移行させることは、プロセス技術の移行が伴うことを考えると難しそうだ。

プロセス技術の推移

 もっとも、Intelは45nm版のデュアルコアNehalemがキャンセルになる前から、Nehalemの浸透に時間がかかるとするロードマップを示していた。そのため、ハードルは製造面以外の部分にもありそうだ。

 今回、Nehalem系では、従来の3チップソリューション(CPU+GMCH+ICH)から、2チップソリューション(CPU+PCH)へと移行する。ソケットも、従来のCore 2系のLGA775とは全く互換性がないLGA1156へと変わる。移行のハードルは、より高い。また、メーカー製PCのライフサイクルを考えると、急激な移行は難しい。

●Sandy Bridge登場時にもCore MAがまだ健在

 いずれにせよ、こうした事情から、Intelの2010年のCPUマップは極めて複雑なものになってしまう。

 下のチャートは、2010年の第1四半期の時点での、IntelのデスクトップCPUの価格とブランドの推定図だ。同じ価格帯に、Core i(Nehalem)系クアッドコアとデュアルコア、Core 2(Core MA)系クアッドコアとデュアルコアが並ぶ。最も混み合っている260ドル〜280ドル台のレンジでは、それぞれの派生品も含めて6つものSKU(Stock Keeping Unit=アイテム)がひしめき合う。

Intel CPUの価格相関

 次は、同じく2010年の前半時点での、CPUのブランド毎の占める価格帯を示したマップだ。このマップにあるCPUが、同時期に併存する。ブランド階層だけでも、非常に複雑なものになることがわかる。そして、CPUソケットはAtomを除いても3種類が入り乱れる。

Intel CPUのブランドマップ

 複合化して複雑化するIntelのデスクトップCPUロードマップ。移行期だから仕方がないとの見方もできるが、この状況はそう短期間には収斂しない。それどころか、Intelは新マイクロアーキテクチャCPU「Sandy Bridge(サンディブリッジ)を投入する2011年でも、Nehalem系だけでなくCore MA系も併存させると説明しているという。

 つまり、2011年には、Core MAとNehalemとSandy Bridgeの3世代のマイクロアーキテクチャが併存する。これまでにない複雑な状況になる。そして、その時点になると、Sandy BridgeのLGA1155パッケージが加わるため、CPUソケットは4種類が併存するようになる。

●ゆるやかなNehalem系CPUの浸透と急激なSandy Bridge

 下はIntelが今年の2月頃に説明していたデスクトップでの製品ミックス(Atomは除く)の状況だ。ちょっと古い情報だが、おそらく、Intelの基本戦略はこの時点とそれほど大きくは変わっていない。図はCPUソケット毎の移行チャートだが、これはCPUマイクロアーキテクチャの移行を示している。

・LGA775がCore MA系CPU
・LGA1366がNehalemのBloomfield/Gulftown
・LGA1156がNehalem系のLynnfieldとClarkdale
・LGA1155がSandy Bridge系のメインストリーム&バリューCPU群

デスクトップCPUの移行

 これを見ると、今年(2009年)前半まではNehalem系はデスクトップ全体のわずか1/20程度しか占めていない。LGA1156ベースのLynnfieldの登場で、ようやくNehalemの普及が加速され、来年前半のClarkdaleの投入で合計30%近くにまで出荷量を伸ばす。2010年後半になると、すでに述べたように、デスクトップCPUの半分がNehalem系になる。2010年後半で、ようやくNehalemの全盛期になる。それでも、まだ半分はCore MAが残っている状況だ。

 その状況で、2011年前半にはSandy Bridgeが登場する。Sandy Bridgeは、最初の半期で一気に二十数%の出荷量に達する見込みとなっている。つまり、Sandy Bridgeは、最初からパフォーマンスCPUだけでなく、メインストリームCPU市場にも入る。2010年の前半のCore iと同程度の量のSandy Bridgeが、2011年前半には登場する見込みだ。さらに、2011年後半にはSandy Bridgeの出荷量は60%を超える。

 Sandy Bridgeのハイペースは、最初の出荷から1年1四半期で、ようやくメインストリームCPUに浸透するNehalemとは大きく異なる。Nehalemは、2010年前半に本格的な普及が始まったと思ったら、2011年前半にはSandy Bridgeに取って代わられ始める。PCではNehalem時代が短いことが、Intelの出荷予測からも見て取れる。

 Sandy Bridgeの浸透スピードが速い理由は至極簡単だ。Sandy Bridgeは、IntelのノートPCを担当するMobility Groupに属するイスラエルのハイファ(Haifa)の開発センターで開発されている。同センターは、Mobility Groupの傘下にあるため、ノートPCにも搭載できるメインストリームCPUを優先的に開発して来た。例えば、Core 2 Duoでは、ノートPC向けとメインストリームCPU向けから製品化が行なわれた。

 それに対して、Nehalemは、サーバー&デスクトップを担当するEnterprise Groupに属する米オレゴン州ヒルズボロ(Hillsboro)の開発センターが開発した。そのため、Nehalemでは、サーバー&ハイエンドデスクトップをターゲットにした構成から製品化が行なわれた。メインストリーム&バリューPCへの浸透ならSandy Bridgeの方が速くなるのは当然だ。

●長期的にはソケット互換は困難に

 もっとも、メインストリーム&バリュー向けのSandy Bridgeは、Nehalem系CPUとある程度の互換性を持つ。LGA1155パッケージのSandy Bridgeは、LGA1156ソケットのシステムで使うことができると言われている。ただし、原理的に言うなら、今後のCPUでは、ソケット互換戦略は取りにくくなって行く。

 Intelは、これまで、いったんCPUソケットを決定したら、5年といった長期間、同じソケットを継承するパターンが多かった。短命に終わったソケットもあるが、基本戦略はソケット互換に置いていた。そして、ソケット互換戦略は、CPUのI/Oとしては、チップ間インターコネクトのFSB(Front Side Bus)しか実装しないことで成り立っていた。

 しかし、今後は、ソケット互換は、原理的に取りにくくなる。なぜなら、CPUがシステムレベルの統合時代に入るからだ。CPU側に機能を統合して行くと、必然的に次々にI/Oも取り込むことになり、そのためにソケット互換が取りにくくなる。

 実際、Sandy Bridge世代の上位のサーバーCPUは、QuickPath Interconnect(QPI)に加えてPCI Expressをオンダイで実装するため、Nehalem世代とのソケットの互換性を保つことができない。

 また、クリティカルなパラレルのシングルエンデッドメモリインターフェイスを取り込んだため、メモリ互換性はシビアな問題になっており、これもソケット互換性を維持する上での制約となっている。ちなみに、この問題があるため、Intelは以前、メモリインターフェイスがシリアル化されるまでは、CPUに統合しないと説明していた。だが、コモディティDRAM側がパラレルのシングルエンデッドインターフェイスのまま高速化する道を選んでしまったため、CPUは互換性の面での困難を抱え込んでしまった。

 そのため、現状では、たとえソケットのピンアサインを同じにできる場合でも、メモリとの互換性検証などでCPUとプラットフォームの関係が制約される。新CPUが旧マザーボードに対して後方互換を取ることはできても、旧CPUが新マザーボードに対して前方互換を取ることは難しい。Intelが、Sandy Bridgeでピン数を減らしたということは、Nehalem系CPUはSandy Bridge用ソケットには挿せないように配慮していることを意味する。

 こうした事情から、必然的に、今後は、かつてのような長期にわたるソケット互換戦略は難しくなる。実際には、これまでも、チップセットがサポートするCPUが限定されるため、ソケット互換と言っても真に互換が取れていたわけではない。長期的に見ると、今後は、ますますソケット互換性は意味が薄くなって行くだろう。

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