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Intelの新ブランド戦略とロードマップの意味するもの



●CPUアーキテクチャとは一致しないブランド名

 Intelが顧客に対して正式に新CPUのブランドを明らかにした。Intelは「Nehalem(ネヘイレム)」アーキテクチャの新CPU群を投入して行くが、それらCPUファミリに「Core i」を冠したブランドをつける。

 Intelは、この世代から、CPUにコア数を示したブランドをつけることを止める。その代わりに、単純に価格帯とフィーチャだけを示すブランド名を冠することにした。つまり、Core iファミリでは新しいブランド名をつけるだけでなく、ブランドをつける規則も変更する。

 当初、IntelはNehalem系クライアントCPUのブランドを、単純にBloomfield(ブルームフィールド)=Core i7、Lynnfield(リンフィールド)=Core i5、Clarkdale(クラークデール)=Core i3とすると見られていた。しかし、デスクトップの廉価クアッドコアLynnfieldはCore i7とi5にまたがり、デュアルコアClarkdaleはCore i5とCore i3とPentiumにまたがる。モバイルではクアッドコアClarksfield(クラークスフィールド)はCore i7だが、デュアルコアArrandale(アランデール)はCore i7とCore i5にまたがる。

 このように、Intelの新ブランドは、CPUのダイ(半導体本体)とは全く一致しない。ダイとは関係なく、ブランド階層が作られている。Intelは、こうしたブランディング方式を先月、公式ブログで予告していたが、詳細が見えてきた。

デスクトップ向けCPUのロードマップ
デスクトップCPU比較
モバイル向けCPUのロードマップ
モバイルCPU比較

●実は単純に価格で切っただけのブランディング

 IntelのCore iファミリの新ブランディングは、一見、複雑怪奇なように見える。しかし、実際には、あっけないほど簡単な論理に基づいている。ほぼ単純に価格階層を反映しているに過ぎないからだ。

 デスクトップでは、CPU価格で280ドル台〜1,000ドル台のレンジがCore i7ブランド、170ドル台〜280ドル台がCore i5ブランド、120ドル台〜140ドル台がCore i3ブランドで、100ドル以下がPentiumブランドとなる。ノートPCもほぼ同様で、CPU価格で270ドル台〜1,000ドル台のレンジがCore i7ブランド、220ドル台〜250ドル台がCore i5ブランドとなっている。

 ブランドがオーバーラップする価格はたった1カ所しかない。デスクトップCPUの284ドルの価格ポイントで、ここには、Core i7-920/i7-860とCore i5ブランドのClarkdaleが並ぶ。しかし、それ以外は価格帯できれいにブランドが切り分けられている。

Core iシリーズの価格階層

 このブランドスキムの意味することは明瞭だ。それは、IntelがCPUコア数でブランドを切り分けることを止めたことだ。クアッドやデュアルといったサブブランド名で、CPUコア数を示すことは終わりにする。サブブランドの数字は、もはやどんな形でもCPUコア数を示さない。その代わりに、ブランドは価格帯とそれに伴うフィーチャだけを示すものとなる。

 では、Intelがこの新ブランドに込めたメッセージは何なのか。それも明瞭だ。「CPUコア数はもはや最大の重要事項ではない」そのメッセージが、ブランディングで示されている。

 そのメッセージの意味する内容もある程度は推測できる。1つは、今後はCPUコア数よりも機能の方が、より重要になるという点。もう1つは、メインストリームのクライアントCPUでも、CPUコア数が次第に増えて行く、つまり、ブランドを超えてCPU数の移行が進んで行くという点だ。

 価格階層で区切られた新ブランドの内容をさらに詳しく見ると、Core 2系ブランドと価格帯で対照関係にあることが見えてくる。ノートPCではそれが明瞭だが、デスクトップでも、よく見ると対照関係がわかる。具体的には、Core i3ブランドは従来のCore 2 Duo E7000系に対応する。Core i5のデュアルコアはCore 2 Duo E8000に、Core i5のクアッドコアはラフに言ってCore 2 Quad Q8000に対応する。Core i7の下位SKU(Stock Keeping Unit=アイテム)は、Core 2 Quad Q9000系の12MB L2版に対応する。

Intel CPUの価格階層の相関図

●Hyper-ThreadingとTurbo Boost、L3キャッシュでブランドを切り分け

 では、Intelの新ブランディングで、どの機能が差別化のポイントとなっているのだろう。

 まず、何がブランドに関係しない要素なのかをチェックする。CPUコア数、GPUコアの有無、TDPとFMBスペック、動作周波数、インターフェイス仕様、CPUソケットと対応チップセット、製造プロセス技術、これらはブランドと結びつけられていない。一部はプロセッサー・ナンバーと結びついてるが、「Core i“?”」のナンバー部分には結びつけられていない。

 では、何がブランドと結びついているのか。つまり、何がブランドの差別化のポイントとなっているのか。これは下のチャートを見れば明瞭だ。

Core iシリーズのブランディング

 まず、デスクトップではSMT(Simultaneous Multithreading)技術である「Hyper-Threading」と、動作周波数の向上技術である「Turbo Boost」、この2つの技術を有効にするかどうかがCore iブランドでの差別化ポイントとなっている。クアッドコアLynnfieldを見ると、Core i7ブランド版ではHyper-Threadingが有効になっているのに対して、Core i5ブランド版では無効になっている。

 一方、デュアルコアClarkdaleを見ると、Core i5版ではTurbo Boostが有効で、Core i3版ではTurbo Boostが無効だ。そして、ClarkdaleのPentiumブランド版ではHyper-ThreadingとTurbo Boostの両方が無効となっている。さらに、Pentium版ではL3キャッシュも4MBから3MBに削られている。

 ノートPCでは差別化はもっと単純だ。L3キャッシュの量だけが切り分けのポイントとなっている。ノートPC向けデュアルコアArrandaleで、Core i7ブランド版はL3が4MBであるのに、Core i5ブランド版はL3が3MBに制約されている。ノートPC向けクアッドコアClarksfieldは全てがCore i7ブランドだが、プロセッサー・ナンバーが900番台と800番台はL3が8MBであるのに、700番台はL3が6MBに制約されている。

 デスクトップとノートPCとも、こうした主要な差別化要素に加えて、他の機能もブランドによってON/OFFが切り分けられている。DRAMインターフェイスのサポートメモリとVT(Virtualization Technology)の機能、vPro/SIPPなどだ。

 Intelの新ブランディングの結果、IntelのデスクトップCPUのブランド構造は限りなく複雑なものになった。Intelは、少なくともデスクトップではメインストリーム&バリュー向けNehalem系CPUの投入後も、Core 2系のメインストリーム&バリューCPUを販売し続ける予定だ。そのため、ブランドマップは、新旧入り乱れた複雑なものになる。

Intel CPUのブランドマップ

●Core 2 Duoとほぼ同じ周波数に保つデュアルコアCore i

 NehalemアーキテクチャのデュアルコアCPU群の動作周波数も明らかになった。簡単に言うと、デスクトップとノートPCのほとんどの製品分野で、Nehalem系デュアルコアは、Core Microarchitecture(Core MA)系デュアルコアの動作周波数とほぼ同じレンジの周波数となる。つまり、同じ価格帯のCPUなら、Core 2 DuoでもCore iでも、周波数に大きな違いはない。

 例えば、デスクトップCPUでは、3.33GHzのCore 2 Duo E8600より少し高い価格で登場するCore i5 Clarkdaleはベース周波数が3.46GHzとなる。ノートPCでは、2.8GHzのCore 2 Duo P9700より、少しだけ低い価格で登場するCore i7 Arrandaleは2.66GHzだ。微妙なさじ加減で、動作周波数の差が価格差に還元されている。Intelが、同じ価格で同じ動作周波数を維持することに腐心していることがわかる。ただし、ULV(超低電圧)版だけは例外で、Core 2 Duo ULV SU9600が1.6GHzであるのに対して、Arrandale ULVは1.2GHzとなっている。

 TDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)も明らかになった。Clarkdaleでは、CPUコアに加えて、CPUパッケージ内にGMCH(Graphics Memory Controller Hub)の機能が統合される。そのため、従来のCPU+GMCH分に相当するTDPを予定していると言われていた。ClarkdaleのTDPは一律73Wで、従来の65Wに13W分が上乗せされている。

 同様に、ノートPC向けのArrandaleでは従来のパワーオプティマイズドCPUの25Wに10Wが載せられ35WのTDPとなる。ULV(超低電圧)版とLV(低電圧)版は、8Wが載せられ、ULVが18W、LVが25Wとなる。

モバイルCPUのTDP

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