井上繁樹の最新通信機器事情

プラネックス「MZK-USBSV」
~手のひらサイズのお手軽NASアダプタ



MZK-USBSV

発売中
参考価格:5,200円



●シンプル、コンパクト、お手軽なNASアダプタ

 プラネックスの「MZK-USBSV」は、USBストレージを接続するとNASになるいわゆる「NASアダプタ」と呼ばれる製品だ。単体ではNASとしては機能しないが、USBストレージを必要に応じて差し替えて使えるメリットがある。国内ではあまり見かけないのだが、米国に目を向けるとカテゴリが1つ必要なくらいの種類の製品が流通している。

 MZK-USBSVはそのNASアダプタの中でもシンプルな製品だ。USB 2.0ポートは1ポートのみで、USB Hubには対応せず、接続できるのもUSBストレージのみ。ファイルシステムはFAT32のみ対応。LANポートも100Mbps対応が1ポートのみであり、速度に関しては割り切った仕様だと言える。その代わりと言っては何だが、本体はとてもコンパクトでわずか58g。手のひらにACアダプタと並べて置いてもまだ余るくらい小さく機動力はピカイチだ。ちなみに消費電力はUSBメモリを使った場合で3~4Wだった。

 搭載されている機能は、SMB(Samba)サーバー(ファイル共有、16ユーザーまで登録可能)、FTPサーバー(32ユーザーまで登録可能)、メディアサーバーの3つ。設定はWebベースの管理画面から行なう。シンプル設計な上、設定をあまりいじらなくても使えるように初期設定されているので、接続後数分とかからず実用稼働可能だ。

同梱物。本体、ACアダプタ、LANケーブル、CD-ROM、注意書き2枚。マニュアルはPDF形式でCD-ROMに収録されている天面。ロゴがプリントされている。本体寸法は63×74×30mm(幅×奥行き×高さ)底面。シリアル番号とノードIDがプリントされている
天面から見て左側の側面。USB 2.0ポートがある天面から見て右側の側面。Ethernet、Powerランプ、USBランプ、AC電源ポートがある
天面から見て上側の側面。排気口がある天面から見て下側の側面。Resetボタンと排気口がある

●初期設定

 MZK-USBSVはとても簡単に使える製品だが、1点だけ慣れた人でも戸惑うだろうポイントがある。それが初期設定のIPアドレスだ。というのも、MZK-USBSVの初期設定のIPアドレスは「192.168.1.254」なので、IPアドレスの範囲が「192.168.0.1~255」に設定されているPCからは接続できないからだ。

管理画面の[設定]-[TCP/IP]。初期設定のIPアドレスが「192.168.1.254」であることに注意管理画面の[サービス]-[ディスクユーティリティ]。ディスクのフォーマットやディスクスキャン(詳細情報確認、エラーチェック)、節約モードの設定ができる

 そのため初回起動時は、設定に使うPCのIPアドレスを一時的に「192.168.1.x」で始まるアドレスに変更して管理画面を開くことになる。末尾の数字は2から253までの適当な数字を使えばよい。その状態でブラウザを開いてアドレスに「192.168.1.254」と入力すれば管理画面は開ける。同梱CD-ROMに入っている「Search Disk」がインストールしてあればそちらから管理画面を開くこともできる。

 ちなみに初期設定のIPアドレスはマニュアルに書かれていて、そのマニュアルはCD-ROMにPDF形式で収録されている。というわけで、マニュアルを読まずに突貫してしまうタイプの人は管理画面が開けず戸惑うことになる。

 なお、IPアドレスは自動設定にすることもできるが、後述するようにFTPサーバーとして使うなら、ルーターのDMZ設定やポートフィルタリング設定との兼ね合いもあるので、適当な値を固定で設定する必要がある。同じLANにつないでいる機器のIPアドレスを確認してバッティングしにくい適当な値を決めるといいだろう。

 それから、使用するUSBストレージについてだが、つなぐ前にあらかじめFAT32でフォーマットしておくか、管理画面で使用前にフォーマットしておく必要がある。なお、USBストレージには管理用のフォルダやファイルが書き込まれるので、何も入っていない空のものを使うのがおすすめだ。

同梱ソフトの「Search Disk」を使うとMZK-USBSVの管理画面を簡単に開ける接続したUSBストレージには管理用のフォルダやファイルが自動で書き込まれる

 管理画面にて変更した内容は接続しているUSBストレージに保存される。だから、一旦設定を変更した後はUSBストレージの内容をうっかりフォーマットしてしまわないよう注意したい。

●SMBサーバー(ファイル共有)

 SMB(samba)サーバーはWindowsのファイル共有互換の機能だ。MZK-USBSVにつないだUSBストレージを、同じLANにつないだWindows PCから読み書きできるようにしてくれる。使い方は他のWindows PCの共有フォルダを開く時と同じようにネットワークフォルダから目当てのフォルダを開けばよい。なお、SMBサーバーに関しては初期設定のままでも実用になる。

 共有フォルダを初めて開く時は資格情報の入力を要求されるが、初期設定のままであればユーザー名に「Guest」と入力してOKボタンをクリックすればよい。パスワードの入力は不要だ。

管理画面の[サービス]-[SMBサーバー]。初期設定ではGuestアカウントのみ登録されている初期設定のままで使っているならユーザー名に「Guest」を入力してOKボタンをクリックすれば共有フォルダは開く共有フォルダが開けるようになった状態

 共有フォルダのベンチマーク結果は以下の通り。接続元はWindows 7 PC、接続には100Mbps有線LANを使用した。測定にはCrystalDiskMark3.0を使用した。

USB HDDを接続した時のベンチマーク結果USBメモリを接続した時のベンチマーク結果

●FTPサーバー

 FTPはインターネット経由でファイルをやり取りするためのベーシックな手段だ。メール添付で送るには容量が大きかったり、数が多いファイルを扱う時に適している。最近ではより簡単に使えるWebベースのストレージサービスも登場しているが、今後も長きに渡って使われ続けていくことは間違い無いだろう。

 FTPを使う上で最もハードルが高いのがFTPサーバーのセットアップだ。PCをFTPサーバーとして使う場合は、セキュリティ面についても気を回す必要もある。さらに、インターネット経由でファイルのやり取りをするには、ルーターのDMZホストの設定やポートマッピングの設定を変更して、FTPサーバーに外部からアクセスできるようにする必要がある。

 その点、MZK-USBSVではユーザーアカウントを作成するだけで即FTPサーバーが使えるようになるし、セキュリティについても専用機だけにPCのように気を回す必要が無い。心配なら使わない時はルーターの設定を元に戻して外部からアクセスできないようにするなり、いっそのことMZK-USBSVのケーブルを外してどこかにしまっておけばよい。もちろん、大切なファイルを守るためにアカウント情報の管理はしっかりやる必要はあるが、それはどんな場合でも同じだ。

 各ユーザーがアクセスできるフォルダについてだが、ユーザーアカウント作成直後はユーザーアカウントと同名のフォルダにしかアクセスできないが、管理画面で変更追加が可能だ。複数のユーザーがアクセスできる共有フォルダも作成できる。

 初期設定で入っている「anonymous」ユーザーについてだが、FTPサーバーを使って不特定多数の人とファイルを共有する時のためのお約束のユーザー名であり、おそらく個人では使うことはあまりないので、ユーザー自体削除しておくか使えないように無効にしておくのがオススメだ。

管理画面の[サービス]-[FTPサーバー]。FTPサーバーを使うには「anonymous」以外のユーザーを最低限1人追加する必要があるエクスプローラーを使って外部からFTPサーバーにアクセス

 セットアップしたFTPサーバーにアクセスするにはWindowsであればエクスプローラーを使うのが簡単だ。エクスプローラーのアドレスバーに「ftp://」と入力して、ルーターに割り当てられているグローバルIPアドレスをその後に入力すればいい。ユーザー名とパスワードを入力する画面が開くはずなので先に登録したものを入力すればftpフォルダが開ける。

 グローバルIPアドレスが度々変更されるので不便だというのであればダイナミックDNSサービスを利用するといいだろう。グローバルIPアドレスが変更されてもいつも同じ名前(アドレス)でアクセスできるようになる。

●メディアサーバー

 MZK-USBSVのメディアサーバー機能(DLNAサーバー)はWMPやPS3、Xbox360から利用可能だ。対応しているファイル形式は、画像はJPG、音楽はMP3、動画はWMV、MPEG(MPEG-1/2/4)、AVI。主要なファイル形式はカバーしていると言える。メタデータについてだが、音楽ファイルも含め読み込みに対応していない。だから大規模なメディアライブラリを作るのには向かないが、その分レスポンスは良い。

 有線LAN部分が100Mbpsということで負荷のかかる動画再生の使い心地が気になる人も多いだろう。そこで実際に試してみたのだが、容量の大きいHD画質の動画でも問題なく再生、早送り、巻戻しができた。ただし、PS3のシーンサーチ(動画再生中に□ボタンを押すと開くサムネイル表示)のようにネットワーク負荷の大きい処理はやはり厳しかった。快適に使うには、ネットワーク負荷の小さい、よりファイルサイズを小さくできるMPEG-4やWMV形式で圧縮しておく必要がある。

管理画面の[サービス]-[メディアサーバー]。メディアファイルを保存しているフォルダを種類別に割り当てることができるPS3から本機MZK-USBSVを確認したところWMPで本機MZK-USBSVのメディアライブラリを確認したところ

●まとめと感想

 MZK-USBSVはコンパクトで持ち運びしやすいNASアダプタ兼FTPサーバー兼メディアサーバーだ。有線LAN部分が100Mbpsだったりメタデータが扱えないなどメディアサーバーとしては機能面に不安があるが使い方次第で不便さは解消可能だ。

 また、特に外部ネットワークに晒すことになるFTPサーバーとして、これほど簡単で使いやすいものは見当たらない。PCをFTPサーバーにするとセキュリティ面も含め色々と準備が必要になるが本機を使えば5分とかからずセットアップは完了する。起動にかかる時間もUSBメモリを使えば30秒もかからない。消費電力もPCと比べて圧倒的に少ない。

 ただ1点、FTPに関してはよりセキュアなFTPSやSFTPにも対応して欲しかったところだが望みすぎだろうか。

 1点無いものねだりしてみたが、持ち運べるNASアダプタとして、机とディスプレイの隙間に収まるNASアダプタ兼FTPサーバーとして便利に使える製品であることは確かだ。

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(2010年 8月 2日)

[Text by 井上 繁樹]