Hothotレビュー
マウスコンピューター「DAIV-DGZ500S1-RAW」
(2016/5/2 12:18)
マウスコンピューター株式会社は、カメラの国際展示会「CP+2016」で一般展示していたデスクトップPC「DAIV-DGZ500S1-RAW」の販売を4月6日より開始した。
本製品はクリエイター向け、エンジニア向けPCブランドであるDAIVの「RAW現像向けPC」として位置付けられている。標準構成モデルは、Core-i5 6400(2.7GHz)を搭載したエントリーモデル「DAIV-DGZ500E1-RAW」が109,800円、Core i7-6700(3.4GHz)を搭載したミドルレンジモデル「DAIV-DGZ500S1-RAW」が149,800円、Core i7-6700K(4GHz)を搭載したハイエンドモデル「DAIV-DGZ500M1-RAW」が179,800円で用意されており、それぞれ用途に応じてカスタマイズが可能だ。
【表1】標準構成モデルのラインナップ一覧 | |||
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製品型番 | DAIV-DGZ500E1-RAW | DAIV-DGZ500S1-RAW | DAIV-DGZ500M1-RAW |
OS | Windows 10 Home 64bit | ||
CPU | Core i5-6400(2.70/3.30GHz) | Core i7-6700(3.40/4.00GHz) | Core i7-6700K(4.00/4.20GHz) |
GPU | GeForce GTX 750(1GB) | GeForce GTX 950(2GB) | GeForce GTX 960(2GB) |
メモリ | 8GB PC4-17000 DDR4 SDRAM (8GB×1) | 16GB PC4-17000 DDR4 SDRAM(8GB×2/デュアルチャネル) | 32GB PC4-17000 DDR4 SDRAM(8GB×4/デュアルチャネル) |
SSD | 120GB(SerialATA III接続) | 240GB(SerialATA III接続) | RAID 0 480GB Crucial BX200(ストライピング 240GB×2/Serial ATA接続) |
HDD | 2TB(SerialATA III接続、7,200rpm) | ||
チップセット | Intel Z170 | ||
カードリーダー | USB 3.0接続高速カードリーダー(UHS-II 対応) | ||
拡張ベイ | 3.5インチHDD用リムーバブルベイ(セキュリティキー付属/Serial ATA接続) | ||
電源 | 500W(80PLUS SILVER) | 700W(80PLUS BRONZE) |
今回ミドルレンジモデルの「DAIV-DGZ500S1-RAW」を試用する機会を得た。クリエイターをターゲットにした「RAW現像向けPC」として位置付けられている本製品ではあるが、一般ユーザーにとっての使い勝手も含めてレビューしていこう。
クリエイターの要望に応えつつ、低価格にこだわったハードウェア
本体サイズ/重量は190×490×490mm(幅×奥行き×高さ)/約10.9kg。ATXタワー型としては標準的なサイズだ。特徴的なのが前面上部のハンドル。1,800円でアップグレード可能なキャスター付きのDAIV-Dシリーズ用ケースを選んでいれば、机の下などから軽い力で引き出し、背面の端子類にアクセスすることが可能だ。
本体上部には、マイク端子、ヘッドフォン端子、USB 3.0端子×2、ストレージアクセスランプ、本体電源ランプ、電源ボタンなどを集中配置。これら端子類には傾斜が付けられており、USBメモリなどを本体上部から差し込みやすくなっている。
高級オーディオ機器のボリュームのような電源スイッチは、右にひねる操作で電源をオン/オフできる。デザイン的には高級感があるが、感触がやや軽く安っぽいのが残念だ。回転操作に抵抗するスプリングをもう少し強くした上で、回転操作最後のクリック感をもう少し軽くした方が、高級感を演出できるはずだ。
「RAW現像向けPC」ならではの装備が、3.5インチHDD用リムーバブルベイとUSB 3.0接続カードリーダ。3.5インチHDD用リムーバブルベイはPCを分解せずにHDDを脱着できるので、あたかもHDDをメディアのように利用できる。またUSB 3.0接続カードリーダには、M2、SDカード/MMC、microSD、CF/microdrive、メモリースティックの各スロットが用意されており、デジカメで撮影した写真をすぐに読み込める。
増設済みのビデオカード「ZOTAC GTX950 2GB 128BIT GDDR5」にはDisplayPort×3、HDMI端子、DVI端子が装備されており、マザーボードにはUSB 3.0端子×4(内1つはUSB 3.0接続カードリーダが占有)、USB 2.0端子×2、PS/2端子、LAN端子、オーディオ端子、DVI端子、ミニD-Sub15ピン端子、DisplayPortが用意されている。入出力端子が足りなくて困ることはまずないだろう。
パッケージには、USB日本語キーボード(102キー)、USB光学式スクロールマウスが同梱されているが、率直に言ってセットアップ用と割り切ったほうがよい。マウスコンピューターの通販サイトでは、キーボードは800~26,800円の間で7製品、マウスは1,200~12,800円の間で8製品が用意されている。ポイントを考慮して、同じ製品を家電量販店などで入手するのもいいだろう。
ややアクセスしにくいPCケース内部
出荷時期によって使用されるパーツが異なる可能性は高いが、借用機ではメモリは「Crucial CT8G4DFD8213」、SSDは「Kingston RBU-SC400S37/180GA」、HDDは「SEAGATE ST2000DM001」、ビデオカードは「ZOTAC GTX950 2GB 128BIT GDDR5」、電源は「FSP500-50ERN」が搭載されていた。
本製品はサイドパネルを固定するために、手で回せるハンドルネジではなく、ドライバーでなければ回せないインチネジが使用されている。このことから、ユーザーが内部パーツを増設、または換装することを推奨していないように思える。また、電源とマザーボードを結線する電源ケーブルが、ビデオカードの下を通り、ほかのPCI Expressスロットの上に配線されているため、新たにPCI Expressカードを装着するのはかなり大変そうだ。
とは言っても一般的なユーザーであれば、メモリの増設、SSDやHDDの増設/換装ができればまず支障はない。またM.2スロットが1本用意されているので、対応SSDを増設することも可能だ。CPUやビデオカードを換装するような自作PCファンでなければマイナスポイントにはならないだろう。
クリエイティブ系には十分なパフォーマンス
それではベンチマークの結果を見てみよう。今回はベンチマークプログラムには「PCMark 8 v2.7.613」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark v2.0.2067」、「CINEBENCH R15」、「Geekbench 3.4.1」、「モンスターハンターフロンティアベンチマーク大討伐】」、「CrystalDiskMark 5.1.2」を使用した。合わせて実アプリの性能を計測するために「Adobe Photoshop Lightroom」、「Adobe Premiere Pro CC」を使用している。ブラウザーのJavaScriptの実効速度を計測する「JetStream 1.1」、「Octane 2.0 Java Script Benchmark」、「Kraken JavaScript Benchmark(version 1.1)」は、ベンチマークプログラムをインストールせずに手軽にスコアを比較できる指標として掲載している。
【表】ベンチマーク結果 | |
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DAIV-DGZ500S1-RAW | |
CPU | Core i7-6700(3.40/4.00GHz) |
GPU | GeForce GTX 950(2GB) |
メモリ | PC4-17000 DDR4 SDRAM 16GB |
ストレージ | 240GB SSD + 2TB HDD |
OS | Windows 10 Home 64bit |
PCMark 8 v2.7.613 | |
Home Accelarated 3.0 | 4588 |
Creative Accelarated 3.0 | 5940 |
Work 2.0 | 5256 |
PCMark 7 v1.4.0 | |
PCMark score | 6640 |
3DMark v2.0.2067 | |
Fire Strike Ultra | 1041 |
Fire Strike Extreme | 2911 |
Fire Strike | 5750 |
Sky Diver | 18663 |
Cloud Gate | 22246 |
Ice Storm Extreme | 125072 |
Ice Storm | 148374 |
CINEBENCH R15 | |
OpenGL | 112.11 fps |
CPU | 730 cb |
Geekbench 3.4.1 Intel(32-bit) | |
Single-Core Score | 4046 |
Single-Core Score Integer | 4056 |
Single-Core Score Floating Point | 3938 |
Single-Core Score Memory | 4244 |
Multi-Core Score | 15265 |
Multi-Core Score Integer | 17236 |
Multi-Core Score Floating Point | 18618 |
Multi-Core Score Memory | 4621 |
Geekbench 3.4.1 Intel(64-bit) | |
Single-Core Score | 4243 |
Single-Core Score Integer | 4348 |
Single-Core Score Floating Point | 4132 |
Single-Core Score Memory | 4256 |
Multi-Core Score | 15858 |
Multi-Core Score Integer | 18156 |
Multi-Core Score Floating Point | 19178 |
Multi-Core Score Memory | 4625 |
【モンスターハンターフロンティアベンチマーク大討伐】 | |
1,280×720ドット | 25614 |
JetStream 1.1 ※アップルが開発したJavaScriptベンチマーク、数値が大きいほど高速 | |
トータルスコア | 276.75 |
Octane 2.0 JavaScript Benchmark ※グーグルが開発したJavaScriptベンチマーク、数値が大きいほど高速 | |
トータルスコア | 45145 |
Kraken JavaScript Benchmark(version 1.1) ※Mozillaが開発したJavaScriptベンチマーク、数値が小さいほど高速 | |
トータルスコア | 864.3 ms |
SSDをCrystalDiskMark 5.1.2で計測 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 542.547 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 287.601 MB/s |
4K Q32TI ランダムリード | 204.929 MB/s |
4K Q32TI ランダムライト | 173.105 MB/s |
シーケンシャルリード | 439.566 MB/s |
シーケンシャルライト | 289.807 MB/s |
4K ランダムリード | 25.943 MB/s |
4K ランダムライト | 81.191 MB/s |
HDDをCrystalDiskMark 5.1.2で計測 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 209.716 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 205.794 MB/s |
4K Q32TI ランダムリード | 1.551 MB/s |
4K Q32TI ランダムライト | 1.343 MB/s |
シーケンシャルリード | 209.472 MB/s |
シーケンシャルライト | 205.936 MB/s |
4K ランダムリード | 0.629 MB/s |
4K ランダムライト | 1.353 MB/s |
SDカードをCrystalDiskMark 5.1.2で計測(SanDisk Extreme Pro 280MB/s SDHC UHS-II) | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 196.077 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 126.196 MB/s |
4K Q32TI ランダムリード | 4.029 MB/s |
4K Q32TI ランダムライト | 1.793 MB/s |
シーケンシャルリード | 207.622 MB/s |
シーケンシャルライト | 177.834 MB/s |
4K ランダムリード | 4.021 MB/s |
4K ランダムライト | 1.625 MB/s |
4094枚(10GB)の画像をファイルコピー | |
SSD→SSD | 1分30秒74 |
4094枚(10GB)の画像をファイルコピー | |
HDD→HDD | 3分13秒85 |
「Adobe Photoshop Lightroom」で50枚のRAW画像を現像 | |
4,912☓3264ドット、自動階調 | 1分43秒62 |
「Adobe Premiere Pro CC」で実時間5分のフルHD動画を書き出し | |
1,920×1080ドット、30fps | 3分9秒21 |
今回は比較対象機種を用意していないが、Core i7-6700とGeForce GTX 950を搭載した機種としては、ベンチマークの結果は順当な結果と言える。
50枚のRAW画像を1分台で現像したり、フルHD動画を実時間未満で書き出し終了するなど、「Adobe Photoshop Lightroom」や「Adobe Premiere Pro CC」などクリエイティブ系アプリケーションでは実用十分なパフォーマンスを発揮している。しかしPCMark 8のCreativeでFuturemarkが定めるGaming PCに迫るスコアを出している一方で、3DMarkのFire StrikeではGaming PCの62%に相当する「5750」というスコアにとどまっている。標準構成モデルではグラフィック描画性能はやや物足りないというのが正直なところだ。
最新3Dゲームをプレイしたり、「Oculus Rift」や「HTC Vive」などVRヘッドセットを利用したいのであれば、DAIV-DGZ500S1-RAWが選択可能な最上位ビデオカードGeForce GTX970(4GB)にアップグレードした方が良いだろう。
標準構成モデルはコスパに優れるが、用途によってはカスタマイズすべき
クリエイター向け、エンジニア向けPCブランドであるDAIVの「RAW現像向けPC」と言えども、マウスコンピューターが手がける製品だけにコストパフォーマンスは非常に高い。しかし予算が許すのであれば、いくつかのパーツをアップグレードしておきたい。前述したとおり、最新3DゲームをプレイするならビデオカードにGeForce GTX 970を選んでおきたい。合わせて電源も3,800円追加で選べる「700W 電源(80PLUS BRONZE)」にしておきたい。それに加えてCPUファンを静音性能と冷却性能に優れる「Cooler Master Hyper 212 EVO」に変更しておきたいところだ。オフィスなどでは気にならないかもしれないが、自室で使うなら標準CPUクーラーはややファンの音が大きいように感じた。
後からパーツを換装するのは手間がかかるし、元のパーツも無駄になる。コストパフォーマンスに優れる標準構成モデルを活かしつつ、ポイントを押さえてアップグレードして、仕事にもプライベートにも活躍してくれるマシンにぜひ仕上げて欲しい。