Hothotレビュー
デル「Precision 5510」
~Xeonや4K液晶を選べる15.6型ワークステーションノート
(2016/1/20 06:00)
デルの「Precision 5510」は法人向けのワークステーションノートPC。本製品からコンシューマ向け製品と同じくポジショニングルールが変わり、3000シリーズがエントリー、5000シリーズがメインストリーム、7000シリーズがプレミアムになっており、Precision 5510は法人向けの中核製品として位置付けられている。
デルの直販サイトにはCore i5-6300HQ/8GBメモリ/512GB M2.SSD/15.6型フルHDディスプレイを搭載した「Precision M5510 プレミアムモデル」、Core i7-6820HQ/16GBメモリ/512GB M2.SSD/タッチパネル内蔵15.6型4Kディスプレイを搭載した「Precision M5510 プラチナモデル」、Core i5-6300HQ/8GBメモリ/500GB HDD/15.6型フルHDディスプレイを標準搭載するカスタマイズ対応モデル「Dell Mobile Precision 5510」の3モデルがラインナップされている。
Precision M5510 プレミアム | Precision M5510 プラチナ | Dell Mobile Precision 5510 | |
---|---|---|---|
CPU | Core i5-6300HQ (2.3~3.2GHz) | Core i7-6820HQ (2.7~3.6GHz) | Core i5-6300HQ (2.3~3.2GHz) |
メモリ | DDR4 SDRAM 8GB | DDR4 SDRAM 16GB | DDR4 SDRAM 8GB |
ストレージ | 512GB M.2 SSD(PCI Express) | 500GB HDD | |
GPU | Intel HD Graphics P530、NVIDIA Quadro M1000M(2GB GDDR5) | ||
ディスプレイ | 15.6型フルHD InfinityEdgeディスプレイ | 15.6型4K InfinityEdgeタッチディスプレイ | 15.6型フルHD InfinityEdgeディスプレイ |
OS | Windows 7 Professional | ||
価格 | 259,980円 | 329,980円 | 338,702円 |
Precision 5510は底面金属カバーの刻印を除けば筐体外観はコンシューマ向けの「New XPS 15」とまったく同じで、Skylake世代のプロセッサ、DDR4メモリを搭載し、Adobe RGBの色域を100%カバーするタッチ対応15.6型4Kディスプレイを選択可能な点も共通している。大きく異なるのは、プロセッサに「Xeon E3-1505M v5」、ストレージに1TBのM.2 SSD(PCI Express)や256GBのM.2 SED(自己暗号化ディスク) SSD、OSに「Windows 7 Professional」を選択可能なことと、外付けGPUとして「NVIDIA Quadro M1000M」が搭載されている点だ。ちなみにXeon E3-1505M v5/16GBメモリ/1TB M.2 SSD/タッチパネル内蔵15.6型4Kディスプレイという構成で、価格は657,102円となる。
今回、Xeon E3-1505M v5/16GBメモリ/256GB M.2 SSD(サムスン製「PM951 MZVLV256HCHP」)/タッチパネル内蔵15.6型4Kディスプレイというカスタマイズ構成のモデルを試用する機会を得た。最上位パーツを搭載した構成ではないが、それでも472,002円とかなり豪華なカスタマイズ内容となる。PC Watchには既にNew XPS 15の詳細な(レビュー記事)が掲載されているので、本稿では外観説明など重複する箇所はおさらいするに留め、主にベンチマークなどの話題を中心にレビューしていく。
外観はNew XPS 15とまったく同一、異なるのは底面金属カバーのみ
本体サイズは357×235.3×11.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量は56Whrバッテリ/SSD/タッチ対応ディスプレイ搭載時で1.78kgと製品公式サイトには記載されている。ところが今回の仕様機の重量を実際に計測したところ、1.96kgという値が出た。バッテリレポートを実行したところ、バッテリ容量は55,997mWhと表示されたので、貸し出し機に内蔵されているバッテリ容量は56Whrで間違いない。デルに確認したところ、試用機は液晶ディスプレイにGorilla Glassを採用しているとのことで、その分の重量が加算されているのが理由だったようだ。
同梱されるACアダプタはNew XPS 15と同じ130W仕様で、電源ケーブル込みで計測すると実測429gとなった。New XPS 15のACアダプタは電源ケーブル込みで実測448.5gとわずかに重かったが、この違いは個体差または電源ケーブルが異なることによるものだろう。
インターフェイスは、左側面に電源アダプタ端子、USB 3.0×1(電源オフでも給電可能なPowerShare仕様)、HDMI端子、Thunderbolt 3×1、ヘッドセット端子、右側面にSDカードスロット、USB 3.0×1(PowerShare仕様)、バッテリ充電ステータスライトボタン、セキュリティケーブルスロットが用意されている。
製品公式サイトには、Thunderbolt 3端子がUSB 3.1 Type-C端子を兼ねていることを示す記述はないが、デバイスマネージャーには「インテル(R) USB 3.1 eXtensible ホスト・コントローラー」と「インテル(R) USB 3.1 ルートハブ」が読み込まれている。実際にエレコム製USB Type-C-HDMI変換アダプタ「AD-CHDMIBK」が正常に使用できることを確認した。執筆時点では公式サイトのUSB 3.1 Type-C端子に関する記載が洩れているものと思われる。
New XPS 15同様の堅牢性と高いデザイン性
繰り返し記載している通り、Precision 5510の外観はNew XPS 15とまったく変わらない。この筐体は、天板と底面にアルミニウム合金、ディスプレイ面にCorning Gorilla Glass NBT、パームレスト面にカーボンファイバー素材を採用した上で裏にはマグネシウム合金が貼り合わされた堅牢性を重視した設計となっている。そのぶん重量は多少かさむ結果となっているが、企業内で酷使するユーザーには歓迎されるはずだ。
キーボード、タッチパッドについてもおさらいしておこう。標準で搭載されるのは日本語キーボード。カスタマイズ対応のDell Mobile Precision 5510のみ、1,100円で英語キーボードに変更できる。日本語キーボードはキーの数が多いため、¥キー、Back Spaceキー、Enterキーの横幅が狭くなっている。等幅のキーボードを好むなら、英語キーボードを選択すると良いだろう。タッチパッドは105×80mm(幅×奥行き)と十分な広さが確保され、またWindows 10の高精度タッチパッドに対応している。Windows 7ではこの広さをあまり活かせないが、Windows 10にアップグレードすれば新搭載されたジェスチャを快適に利用できる。
プロのクリエイティブ用途に応える4K解像度とAdobe RGB 100%の色域
写真や映像などプロのクリエイティブ現場では、高い解像度と正確な色再現性が求められる。その点、Precision 5510で選択できる15.6型4Kディスプレイの解像度は3,840×2,160ドット(282dpi)で、色域はAdobe RGBを100%カバーするので、プロの高い要求にも十分応えるレベルだ。実際Adobe RGBとsRGBの色域で撮影した写真を並べて比較してみたが、赤色と緑色の微妙な違いがより際立って発色されていることを確認できた。
プリインストールされている「Dell PremierColor」はきめ細かな設定変更が可能で、色域、明度、コントラスト、ガンマ、黒レベル、色温度を微調整し、設定したプロファイルをインポート/エクスポートできる。撮影現場や用途ごとに素早くプロファイルを変更する際に便利に活用できそうだ。
サウンド面については、Precision 5510に内蔵されているスピーカーの仕様は公開されていないが、おそらくNew XPS 15と同じパーツが使われているはずなので、コンシューマ向けにはともかくプロユースには力不足と言わざるを得ない。サウンド面についてもプロクオリティを求めるのであれば、USB DACアンプと外付けスピーカーなどを接続するべきだろう。
GPUの差が如実に表われた結果に
今回Precision 5510のベンチマークスコアを比較するに当たって、New XPS 15のスコアを引用している。前者が法人向け、後者がコンシューマ向けということで価格に大きな開きがあるが、モバイルXeonプロセッサ、NVIDIA Quadro M1000M、M.2 SSDを搭載したことにより、各種ベンチマークソフトのスコアや実アプリケーションの処理時間がどのように変化するのか比較するために最も適したモデルと言えるはずだ。
ベンチマークプログラムには「PCMark 8 v2.5.419」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark v1.5.915」、「CINEBENCH R15」、「Geekbench 3.3.2」、「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、「CrystalDiskMark 5.1.0」を使用した。合わせて連続動作時間を計測するために「BBench」、実アプリの性能を計測するために「Adobe Photoshop Lightroom」、「Adobe Premiere Pro CC」も使用している。またPrecision 5510でベンチマークを実施するにあたっては、New XPS 15と同じく「NVIDIAコントロールパネル」で「3D設定の管理」の「優先するグラフィックスプロセッサ」を「高パフォーマンスNVIDIAプロセッサ」に設定している。
なお今回の計測実施時、Precision 5510にはWindows 7 Professional、New XPS 15にはWindows 10 Homeがインストールされている。大差とはならないものの、OSが異なればベンチマークソフトのスコアや、実アプリケーションの処理時間はある程度変わってくる。そのため今回のベンチマーク結果は、傾向を判断する参考材料に留めて欲しい。
Precision 5510 | New XPS 15 | |
---|---|---|
CPU | Xeon E3-1505M v5(2.8GHz~3.7GHz) | Core i7-6700HQ(2.6GHz~ |
3.5GHz) | ||
GPU | Intel HD Graphics P530、 NVIDIA Quadro M1000M(2GB GDDR5) | Intel HD Graphics 530、 GeForce GTX 960M(2GB GDDR5) |
メモリ | PC4L-17000 DDR4 SDRAM 16GB | PC4L-17000 DDR4 SDRAM 16GB |
ストレージ | 256GB M.2 SSD(PCI Express) | 512GB SSD(PCI Express) |
OS | Windows 7 Professional | Windows 10 Home |
PCMark 8 v2.5.419 | ||
Home Accelarated 3.0 | 3175 | 3033 |
Creative Accelarated 3.0 | 3954 | 4230 |
Work 2.0 | 4225 | 3907 |
PCMark 7 v1.4.0 | ||
PCMark score | 5032 | 5633 |
3DMark v1.5.915 | ||
Ice Storm | 41498 | 54244 |
Graphics Score | 41475 | 60791 |
Physics Score | 41582 | 39396 |
Cloud Gate | 16134 | 16624 |
Graphics Score | 23569 | 27217 |
Physics Score | 7668 | 7038 |
Sky Diver | 10835 | 12742 |
Graphics Score | 10934 | 13592 |
Physics Score | 9712 | 9016 |
Combined score | 12117 | 15006 |
Fire Strike | 3312 | 3953 |
Graphics Score | 3491 | 4234 |
Physics Score | 9535 | 9757 |
Combined score | 1402 | 1654 |
Geekbench 3.3.2 Intel(32-bit) | ||
Single-Core Score | 3638 | 3485 |
Single-Core Score Integer | 3602 | 3441 |
Single-Core Score Floating Point | 3545 | 3233 |
Single-Core Score Memory | 4150 | 4079 |
Multi-Core Score | 13429 | 12211 |
Multi-Core Score Integer | 15287 | 14066 |
Multi-Core Score Floating Point | 16028 | 14273 |
Multi-Core Score Memory | 4517 | 4379 |
Geekbench 3.3.2 Intel(64-bit) | ||
Single-Core Score | 3878 | 3729 |
Single-Core Score Integer | 3882 | 3750 |
Single-Core Score Floating Point | 3721 | 3597 |
Single-Core Score Memory | 4188 | 3951 |
Multi-Core Score | 14138 | 13406 |
Multi-Core Score Integer | 16196 | 15356 |
Multi-Core Score Floating Point | 16941 | 15921 |
Multi-Core Score Memory | 4416 | 4478 |
CINEBENCH R15 | ||
OpenGL | 99.46 fps | 50.19 fps |
CPU | 730 cb | 676 cb |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】 | ||
1,280×720ドット | 15228 | 17242 |
SSDをCrystalDiskMark 5.1.0で計測 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 1570.666MB/sec | 1725.760MB/sec |
Q32T1 シーケンシャルライト | 309.084MB/sec | 586.763MB/sec |
4K Q32TI ランダムリード | 768.933MB/sec | 519.003MB/sec |
4K Q32TI ランダムライト | 309.380MB/sec | 448.075MB/sec |
シーケンシャルリード | 1184.353MB/sec | 1225.261MB/sec |
シーケンシャルライト | 309.595MB/sec | 586.980MB/sec |
4K ランダムリード | 40.722MB/sec | 40.527MB/sec |
4K ランダムライト | 228.960MB/sec | 177.455MB/sec |
SDカードをCrystalDiskMark 5.1.0で計測 (SanDisk Extreme Pro 45MB/sec SDHC UHS-I) | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 42.630MB/sec | 41.996MB/sec |
Q32T1 シーケンシャルライト | 40.400MB/sec | 36.909MB/sec |
4K Q32TI ランダムリード | 3.547MB/sec | 3.701MB/sec |
4K Q32TI ランダムライト | 1.043MB/sec | 1.131MB/sec |
シーケンシャルリード | 45.096MB/sec | 44.883MB/sec |
シーケンシャルライト | 43.001MB/sec | 43.415MB/sec |
4K ランダムリード | 3.832MB/sec | 3.354MB/sec |
4K ランダムライト | 1.036MB/sec | 1.050MB/sec |
SDカードをCrystalDiskMark 5.1.0で計測 (SanDisk Extreme Pro 280MB/sec SDHC UHS-II) | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 229.773MB/sec | 251.303MB/sec |
Q32T1 シーケンシャルライト | 216.431MB/sec | 191.243MB/sec |
4K Q32TI ランダムリード | 8.066MB/sec | 7.903MB/sec |
4K Q32TI ランダムライト | 1.734MB/sec | 1.700MB/sec |
シーケンシャルリード | 272.692MB/sec | 272.657MB/sec |
シーケンシャルライト | 233.865MB/sec | 232.809MB/sec |
4K ランダムリード | 7.256MB/sec | 6.571MB/sec |
4K ランダムライト | 1.618MB/sec | 1.686MB/sec |
Adobe Photoshop Lightroomで50枚のRAW画像を現像 | ||
4,912×3264ドット、自動階調 | 1分45秒82 | 1分56秒53 |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し | ||
3,840×2,160ドット、30fps | 8分54秒39 | 9分29秒26 |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し | ||
1,920×1,080ドット、30fps | 3分45秒72 | 3分53秒92 |
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%) | ||
バッテリ残量5%まで | 3時間16分6秒 | 6時間41分15秒 |
まず注目したいのは3DMarkとモンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】、そしてCINEBENCH R15のOpenGLのスコア。3DMarkとモンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】ではNew XPS 15が、CINEBENCH R15のOpenGLではPrecision 5510が他方を上回るスコアを記録している。これはDirectXに最適化されているGeForce GTX 960Mと、OpenGLに最適化されているNVIDIA Quadro M1000Mの特性がそのまま表われた結果だ。
CPU単独の性能については、モバイルXeonを搭載するPrecision 5510がGeekbenchのMulti-Core Score で約1.05倍、CINEBENCH R15のCPUで約1.08倍のスコアを記録している。Precision 5510のカスタマイズメニューで、Xeon E3-1505M v5はその下のCore i7-6820HQより2万円高くなる。その価格差に値する性能差かどうかは、どれだけ重たい処理を行なうかにかかってくるだろう。
SSDの速度については、シーケンシャルアクセスはNew XPS 15、ランダムアクセスはPrecision 5510の方が速いデータ転送速度を記録した。しかし「4K Q32TIランダムライト」のみスコアが逆転している。
実アプリケーションについては、すべてPrecision 5510が短い時間で処理を終えているが、CPU単独の性能差にほぼ並ぶ結果となっている。
連続動作時間についてはPrecision 5510が約2分の1以下という結果に終わっているが、これはバッテリ容量が大きく異なるため。今回の計測に使用したPrecision 5510は56WHr、New XPS 15は84WHrの内蔵バッテリを搭載していた。Precision 5510に1.5倍の容量の84WHr内蔵バッテリが搭載されていれば、New XPS 15と約2時間差となる約4時間54分連続動作する計算となる。
CADや3D CGアプリの動作が検証されていることが法人向けPCの必須条件
OpenGLに最適化されたNVIDIA Quadro M1000Mを搭載したPrecision 5510は、DirectXに最適化されたGeForce GTX 960Mを搭載したNew XPS 15よりも、OpenGLが利用されているCADや3D CGアプリケーションが高速に動作する。しかし法人向けユーザーにとって最も大事なのは動作保証。ISV認証テストでCADや3D CGの独立系ソフトウェア/アプリケーションがカバーされていることこそ重要なのだ。同社のコンシューマ向けPCと比べて約20万円高価なPrecision 5510だが、ISV認証を取得していることはその価格差を覆すだけの必須条件と言えるだろう。