~モバイル・マルチベイ採用の12.1型モバイルノート |
富士通は、12.1型ワイド液晶を搭載するモバイルノート「LIFEBOOK PH」シリーズの新モデル「LIFEBOOK PH75/DN」を発表した。従来モデルとなるLIFEBOOK PH75/CNをベースに、光学式ドライブや増設バッテリなどを取り付けられるモバイル・マルチベイ構造を採用し、魅力が大幅に向上している。LIFEBOOK PH75/DNは、富士通の直販サイト「WEB MART」での限定販売モデルとなっている。今回いち早く試用する機会を得たので、詳しく紹介していこう。なお、今回の試用機には指紋センサーが無いが、製品版では搭載されている。
●モバイル・マルチベイ採用で、光学式ドライブや増設バッテリを搭載可能LIFEBOOK PH75/DN(以下、PH75/DN)は、12.1型ワイド液晶を搭載する2スピンドルモバイルノート「LIFEBOOK PH75/CN」(以下、PH75/CN)の後継モデルとして位置付けられている。仕様面や本体デザインはPH75/CNとかなり似通っているが、双方には大きな違いがある。それは、PH75/DNに搭載されている光学式ドライブが、「モバイル・マルチベイ」と呼ばれる専用ベイに取り付けて利用する、着脱式構造となっているという点だ。
このモバイル・マルチベイは、13.3型ワイド液晶を搭載する「LIFEBOOK SH」シリーズ(旧BIBLO MG)に採用されているものと同じだ。もちろん、光学式ドライブ専用というわけではなく、オプションとして用意されている「増設用内蔵バッテリユニット」や、デスクトップ映像を大画面に投影できる「モバイルプロジェクターユニット」などを取り付けて利用できる。また、軽量のカバーを取り付けて本体の軽量化を実現することも可能だ。PH75/DNはDVDスーパーマルチドライブが搭載されているが、LIFEBOOK SHの直販モデルではBlu-ray Discドライブも用意される。
今回は、DVDスーパーマルチドライブと同時に、増設用内蔵バッテリユニットやカバーを試すことができた。ただ、非常にユニークなモバイル・マルチベイ用のオプションユニットであるモバイルプロジェクターユニットは、機材の用意ができず残念ながら試せなかった。
天板部分。天板は光沢感の強いプレミアムブラックで、高級感がある | フットプリントは、282×215mm(幅×奥行き)。DOS/V POWER REPORT誌とほぼ同等で、従来モデルと同じサイズだ | 本体正面。ラッチレス構造ですっきりとしている |
左側面。高さは29.9mmで、前方から後方までほぼ均一だ | 背面。中央下部にはバッテリが取り付けられている | 右側面。光学式ドライブはこちらに取り付けられている |
モバイル・マルチベイ構造のDVDスーパーマルチドライブを搭載 | 光学式ドライブは着脱式で、右側面のモバイル・マルチベイに取り付けられている |
モバイル・マルチベイには、光学式ドライブだけでなく、増設用内蔵バッテリユニットや、モバイルプロジェクターユニットなどが取り付けられる | カバーを取り付けて軽量化も可能 |
まず、モバイル・マルチベイに取り付けるユニットの違いによる本体重量の違いを確認しよう。まず、光学式ドライブを取り付けた、基本仕様の状態での本体重量は1,279g(実測値)であった。それに対し、増設用内蔵バッテリユニットを取り付けた状態では1,418g(実測値)、光学式ドライブを外してカバーを取り付けた状態では1,201g(実測値)であった。もともと光学式ドライブは軽量化が実現されていることもあり、カバーを取り付けた状態と比較しても78gしか重量が変わらない。この差なら、軽さを追求するとしても光学式ドライブを外してカバーを取り付ける必要性は低そうだ。増設用内蔵バッテリユニットを取り付けると、さすがに重くなるが、それでも1.5kgを大きく下回っており、実際に手にしてもそれほど重いとは感じなかった。後ほどバッテリ駆動時間は検証するが、バッテリ駆動時間を重視した場合でも、モバイル性が大きく失われることはないと考えて良さそうだ。
ちなみに、従来モデルのPH75/CNでは、標準バッテリ搭載時約1.26kg、大容量バッテリ搭載時で約1.39kgとなっている。PH75/DNでモバイル・マルチベイの採用が重量の点でマイナスにはなっていない点は嬉しい。
本体サイズは、282×215×29.9mm(幅×奥行き×高さ)と、従来モデルと全く同じだ。こちらも、モバイル・マルチベイ採用による影響は全くない。
標準の内蔵バッテリパックを取り付けた状態での重量は、実測で1,279gだった | 光学式ドライブを外し、増設用内蔵バッテリユニットを取り付けた状態では、実測で1,418gだった | カバーのみを取り付けた状態では、1,201gだった |
●Sandy Bridgeシステムに強化
PH75/DNは、基本スペックも強化されている。最も大きな変更点は、CPUとしてIntelの第2世代Coreプロセッサー・ファミリーが採用されているという点だ。搭載可能なCPUは、Core i5-2520MまたはCore i3-2310Mとなっており、Core i7は用意されていない。とはいえ、従来モデルと比較すると大きくパフォーマンスが向上していることは間違いない。もちろん、CPUが第2世代Coreプロセッサシリーズとなったことで、グラフィックス機能がIntel HD Graphics 3000へと強化され、描画能力も向上している。
また、USB 3.0ポートが2ポート用意された点も、大きな強化ポイントと言っていいだろう。外付けHDDを利用する場合でも、USB 3.0接続であれば内蔵ドライブとほぼ同等の速度で利用できるため、大容量のデータをコピーする場合などに重宝する。拡張性が低くなりがちなモバイルノートでは、標準でUSB 3.0が搭載されている点は大いに歓迎できる。ちなみに、USB 3.0ポート2ポートのうち一方は、マシンが起動していない状態でも携帯機器やUSB機器の充電が可能な、「電源オフUSB充電」機能に対応している。
その他の基本スペックをまとめておこう。チップセットは、Intel HM65 Expressを採用。メインメモリは、PC3-10600 DDR3 SDRAMを標準2GB、最大8GBまで搭載可能。ストレージデバイスは、320GB/500GB/640GBのHDDまたは、256GBのSSDが搭載可能。試用機では256GB SSDが搭載されていた。ストレージデバイスには、本体底面のフタを開けることで簡単にアクセスできる。
無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/nおよびモバイルWiMAXに対応する無線LANユニットを標準搭載。また、Bluetooth 3.0の搭載も可能だ。
●液晶パネルはノングレアタイプも選択可能
搭載する液晶パネルは、従来モデル同様、1,280×800ドット(WXGA)表示対応の12.1型ワイド液晶だ。モバイルノートでもアスペクト比16:9の液晶パネルを採用する製品が増えている中、縦の表示領域が広い16:10の液晶パネルを採用している点は大きな特徴だ。
試用機では、液晶パネル表面に光沢処理が施された、スーパーファイン液晶が搭載されていた。発色が鮮やかで表示品質に優れ、光沢処理とはいえ低反射処理も施されているため、他の光沢液晶に比べ外光の映り込みが少ない点は嬉しい。また、従来モデル同様、非光沢処理が施されている、いわゆるノングレア液晶も選択可能となっている。ホビー用途での利用がメインならスーパーファイン液晶、ビジネス用途での利用がメインならノングレア液晶と自由に選択できる点も、他の製品にはない魅力だ。ちなみに、ノングレア液晶を選択した場合には、価格がプラス3,000円となる。
1,280×800ドット表示対応の12.1型ワイド液晶を搭載。試用機では光沢パネルのスーパーファイン液晶が搭載され、鮮やかな発色が実現されていた。購入時にノングレア液晶を選択することも可能だ | 液晶中央上部には、約200万画素のWebカメラを搭載している |
●キーボードは従来同様、スクロールパッドも搭載
最近では、キーの間が開いたアイソレーションタイプのキーボードを採用する製品が多数を占めるようになったが、PH75/DNのキーボードは従来モデル同様の、一般的なキー形状のキーボードが採用されている。キーピッチは約18mmで、ピッチの狭くなっている部分や変則的な配列などはなく、扱いやすさは申し分ない。
ポインティングデバイスは、パッド式のフラットポイントを搭載する。ジェスチャー機能にも対応し、パッド面積も十分広く扱いやすい。また、フラットポイント右側には、円形のスクロールパッドも搭載している。スクロールパッドで指をジョグダイヤルのようにくるくるなぞることで軽快なスクロール操作が行なえる。
キーボードは、従来モデルと同じ、一般的なキー形状のキーボードを採用。変則的な配列やピッチの狭くなっているキーなどはなく、扱いやすい | キーピッチは約18mmと余裕があり、タッチタイプも余裕で行なえる | キーボード上部には、ブラウザやメーラー、ECOモードへの切り替え、登録したアプリケーションを起動するワンタッチボタンを用意。電源ボタンはワンタッチボタンの横に配置されている |
ポインティングデバイスはパッド式のフラットポイントを搭載。面積は十分に広く、ジェスチャー機能にも対応しており、扱いやすい | フラットポイント右には、円形のスクロールパッドを用意。ジョグダイヤルのような感覚でスクロール操作が可能だ |
●優れた省電力機能を搭載
PH75/DNには、従来モデル同様、優れた省電力機能が搭載されている。付属の独自ツール「省電力ユーティリティ」を利用することで、CPUパフォーマンス、光学式ドライブのON/OFF、無線機能や有線LANのON/OFF、液晶バックライト輝度の変更など、さまざまな内蔵機能の動作を細かく設定できる。ACアダプタ接続時にフルパワーで動作させつつ、バッテリ駆動時には光学式ドライブや無線機能の電源をオフにしたり、CPUパワーを低減させて長時間のバッテリ駆動を実現するといったことが可能だ。また、ACアダプタ接続時でも、光学式ドライブや無線機能の電源をオフにでき、消費電力を低減できる。この夏はこれまで以上の節電が求められることから、もともと消費電力の低いノートPCでも、細かな電力管理によりさらなる消費電力の低減が実現できる点は大きな魅力となるはずだ。
付属の省電力ユーティリティを利用することで、省電力モード時の各種機能の動作を細かく設定でき、消費電力を自在にコントロールできる | ECO Sleep機能により、休止やシャットダウン時の消費電力も低減可能だ |
●使い勝手に優れるモバイルノートを探している人にオススメ
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」に加え、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」の5種類。比較用として、東芝のdynabook R731/39Bと、Arrandale世代のCPUを搭載しているパナソニックのLet'snote J9 プレミアムエディションの結果も加えてある。また、試用機の仕様は表にまとめたとおりだ。
試用機の仕様 | |
CPU | Core i5-2520M |
チップセット | Intel HM65 Express |
メインメモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2 |
グラフィック機能 | Intel HD Graphics 3000(CPU内蔵) |
ストレージデバイス | 256GB SSD(THNSNC256GG8BBAA) |
光学式ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
結果を見ると、Arrandale世代のCPUであるCore i7-640Mを搭載するLet'snote J9 プレミアムエディションに対し、ほぼすべての項目で結果が上回っていることがわかる。特に、3D描画能力の結果は圧倒的な差があり、これなら軽めの3Dゲームであれば十分快適にプレイできそうだ。ちなみに、ほぼ同等のスペックであるdynabook R731/39Bとは、ほぼ同じ結果となっている。
LIFEBOOK PH75/DN | dynabook R731/39B | Let'snote J9 プレミアムエディション | |
---|---|---|---|
CPU | Core i5-2520M (2.50/3.20GHz) | Core i5-2520M (2.50/3.20GHz) | Core i7-640M (2.80/3.46GHz) |
チップセット | Intel HM65 Express | Intel HM65 Express | Intel HM55 Express |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2 | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 | PC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB |
ストレージ | 256GB SSD (THNSNC256GG8BBAA) | 128GB SSD (THNSNC128GMLJ) | 256GB SSD |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit SP1 | Windows 7 Professional | Windows 7 Professional 64bit |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a | |||
PCMark Suite | 12207 | 11170 | 10081 |
Memories Suite | 6624 | 6574 | 5129 |
TV and Movies Suite | 4834 | 4860 | 3484 |
Gaming Suite | 9374 | 8338 | 5677 |
Music Suite | 15079 | 12622 | 12765 |
Communications Suite | 13143 | 12352 | 10729 |
Productivity Suite | 15262 | 12466 | 14057 |
HDD Test Suite | 25488 | 26206 | 22773 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |||
PCMark Score | N/A | 10714 | N/A |
CPU Score | 8753 | 9307 | 8622 |
Memory Score | 9884 | 9994 | 6455 |
Graphics Score | 5448 | 4819 | 2392 |
HDD Score | 32509 | 35408 | 30735 |
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1280×1024ドット | |||
3DMark Score | 1896 | 1941 | N/A |
GPU Score | 1519 | 1535 | N/A |
CPU Score | 7439 | 9398 | N/A |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | |||
3DMark Score | 4568 | 4596 | 1395 |
SM2.0 Score | 1554 | 1586 | 403 |
HDR/SM3.0 Score | 1861 | 1802 | 571 |
CPU Score | 3036 | 3557 | 3125 |
Windows エクスペリエンスインデックス | |||
プロセッサ | 7.1 | 7.1 | 7 |
メモリ | 7.5 | 5.5 | 5.9 |
グラフィックス | 6.2 | 5.6 | 3.5 |
ゲーム用グラフィックス | 6.2 | 6.2 | 4.8 |
プライマリハードディスク | 7 | 6.8 | 6.8 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】 | |||
1,280×720ドット | 2120 | 2126 | N/A |
1,920×1,080ドット | 1119 | 1079 | N/A |
次に、バッテリ駆動時間だ。今回の試用機では、標準の内蔵バッテリパック(容量31Wh)に加えて、モバイル・マルチベイに取り付ける増設用内蔵バッテリユニット(容量27Wh)が利用できたため、標準の内蔵バッテリパックのみでの駆動時間と、内蔵バッテリパックと増設用内蔵バッテリユニット双方を利用した場合の駆動時間を計測した。
まず、内蔵バッテリパックのみを利用して、富士通オリジナルの省電力ユーティリティを利用して省電力モードに変更し、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測した。このときの省電力ユーティリティの設定は、光学式ドライブ、Bluetooth、カードスロット、有線LANが無効、ディスプレイ輝度が3/12、リフレッシュレートが40Hz、CPUパフォーマンスは低パフォーマンスという状態で、無線LANは有効にしてある。この状態での駆動時間は、約3時間49分だった。公称値は約5時間のため、若干短い気もするが、無線LANが有効になっていることを考えると、妥当な結果と言えるだろう。また、同様の省電力設定のままで、増設用内蔵バッテリユニットも取り付けて計測したところ、結果は約7時間12分だった。こちらも、公称では約9.2時間なので、妥当だろう。
ただ、せっかく2個のバッテリを搭載するのに、もう少し駆動時間が長くてもいいのでは、という気もしないでもない。とはいえ、標準のバッテリパックと増設用内蔵バッテリユニットの容量は、実際にはそれほど大きくないため、結果としては特に悪い数字とは言えない。ちなみに、本体のバッテリスロットに取り付ける、内蔵バッテリパック(L)もオプションで用意されている。こちらは、単体で容量が67Whと、標準の内蔵バッテリパックと増設用内蔵バッテリユニットを加えた容量よりも多く、公称の駆動時間は約11.4時間となっている。そして、内蔵バッテリパック(L)と増設用内蔵バッテリユニットを同時に利用した場合には、約15.2時間の駆動が可能とされている。バッテリ駆動時間を優先させたい場合には、内蔵バッテリパック(L)の利用がオススメだ。
バッテリ駆動時間 | |
省電力設定 | 省電力モード(富士通オリジナル)、BBench |
内蔵バッテリパックのみ | 約3時間49分 |
内蔵バッテリパック+増設用内蔵バッテリユニット | 約7時間12分 |
ところで、PH75/DNには標準のACアダプタに加えて、スリムボディの軽量ACアダプタが用意されており、購入時にどちらかを選択可能となっている。電源ケーブル込みの重量は、標準ACアダプタが実測で290gだったのに対し、軽量ACアダプタは223.5gと60g以上軽量だった。本体もスリムで携帯性に優れるため、常にACアダプタを持ち歩きたいなら、軽量ACアダプタの選択をオススメしたい。価格は、軽量ACアダプタ選択時がプラス5,000円となる。
PH75/DNは、見た目は特に華やかさは感じられず、どちらかというと地味な印象のモバイルノートだ。しかしその中身は、十分なパワーを備えるとともに、機能面も非常に充実しており、他の人気モバイルノートと比較しても、全く遜色のない魅力を備えた製品だ。モバイル・マルチベイの搭載で、光学式ドライブや増設バッテリを取り付けたり、新オプションのプロジェクターを取り付けたりと、さまざまな活用が可能になっている点や、非光沢液晶パネルが選択できるなど、他にはない特徴も見逃せないポイントで、ビジネスからホビーまで、幅広い用途に活用したいモバイルノートを探している人にオススメしたい。
ちなみに価格は、最小構成で114,800円からとなっており、今回試用した構成では267,420円となる。ただ、WEB MARTでは定期的に割引きキャンペーンが実施されており、今回試用した構成でもキャンペーンを適用すれば202,810円で購入可能となる。
(2011年 5月 17日)
[Text by 平澤 寿康]