パナソニック「Let'snote J9 ハイパフォーマンスモデル」
~通常電圧版Core i5とSSD搭載で高い性能を実現



Let'snote J9 ハイパフォーマンスモデル

10月15日 発売

価格:オープンプライス(実売179,800円前後)



 パナソニックのLet'snoteシリーズ秋冬モデルの中で、夏モデルのマイナーチェンジではなく、唯一、完全な新モデルとして登場したのが「Let'snote J9」である。Let'snote J9は、Let'snoteシリーズで、最も小型軽量であったLet'snote R9の後継モデルとして位置づけられるが、Let'snoteの魅力である高い携帯性を損なうことなく、標準電圧版CPUとワイド液晶(Let'snote R9では4:3のXGA液晶を搭載)を採用するなど、大きく進化している。

 Let'snote J9は、店頭モデルとして、スタンダードモデルとハイパフォーマンスモデルの2モデルが用意されているほか、直販サイトのマイレッツ倶楽部でのみ販売されるマイレッツ倶楽部限定モデルとプレミアムエディションがある。Let'snote J9 プレミアムエディションについては、すでに平澤氏がレビューしているが、ここでは、店頭モデルのハイパフォーマンスモデルを試用する機会を得たので、レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機のため、細部やパフォーマンスなどは製品版と異なる可能性がある。

●ジャケットスタイルでデザインと堅牢性を両立

 Let'snote J9では、従来のLet'snoteシリーズとは全く異なる筐体デザインを採用している。従来のLet'snoteシリーズは、ボンネット構造を採用していることが特徴であり、天板に凹凸があったが、Let'snote J9では筐体デザインが一新され、天板がフラットになった。見た目もすっきりし、カバンへの出し入れもスムーズに行なえる。

 さらに、Let'snote J9では、本体をのり巻きのように巻いて保護する専用ジャケットが付属することも特徴だ。ジャケットを装着することで、耐衝撃性や堅牢性が上がり、従来のLet'snoteシリーズと同等の動作時76cm落下試験や天板への100kgf加圧振動試験をクリアする。ジャケットは、デザインや質感にもこだわっており、表面が柔らかく滑りにくいので、サッとつかんで気軽に持ち運べる。底面には、ハンドストラップが用意されており、立ったままでも片手でしっかりホールドできるので便利だ。

 ハイパフォーマンスモデルのジャケット装着時の重量は約1,205gで、ジャケット非装着時の重量は約990gである(今回の試用機の実測重量はそれぞれ1,190g、980gと少し軽かった)。ジャケット非装着時の本体サイズは、251.9×171.7×27.3~35.1mm(幅×奥行き×高さ)で、ジャケット装着時の本体サイズは、259×185×39~48mm(幅×奥行き×高さ)とひと回り大きくなるが、筆者はジャケット装着時でも携帯性は十分に高いと感じた。携帯性重視か堅牢性重視か、TPOに応じてスタイルを選ぶとよいだろう。ジャケットは、底面のネジと、ディスプレイ両側のフックで、本体に固定するようになっており、ディスプレイの開閉もスムーズに行なえる。かなり昔、日本IBM(当時)から登場したモバイルノートPC「ThinkPad 220」のオプションで、同じような形状の通称「のり巻きケース」が用意されていたが、標準でこうしたジャケットが付属した製品は珍しい。なお、店頭モデルの場合、ジャケットのカラーはモデルによって決まっており、スタンダードモデルはシフォンホワイト、今回試用したハイパフォーマンスモデルはパンサーブラックとなっている。

ジャケットを装着したLet'snote J9の上面「DOS/V POWER REPORT」誌とジャケットを装着したLet'snote J9とのサイズ比較。Let'snote J9のほうが一回り小さい「DOS/V POWER REPORT」誌とジャケットを外したLet'snote J9とのサイズ比較。ジャケットを外すと、フットプリントがさらに小さくなる
ジャケットの底面。中央に固定用のネジが用意されており、本体底面にしっかり固定できるようになっている。上部にはハンドストラップが用意されている本体底面。中央にジャケット固定用ネジ穴が、左右の上側にジャケットの爪をひっかけるための穴が用意されている本体にジャケットを固定するためのパーツ類。上がディスプレイ部分のレールをひっかけるフックで、下が底面を固定するネジ
ジャケットを装着するには、まず底面中央をネジで固定する液晶ディスプレイの左右にフックを取り付けるフックをジャケットのレールにはめ込む
ジャケット装着時の重量は実測で1,190gであったジャケットを外すと、重量は実測で980gに軽減されるハンドストラップに手を入れて持つことで、立ったまま片手でしっかりホールドできる

●通常電圧版Core i5と128GB高速SSD、ワイド液晶を搭載

 Let'snote J9は、PCとしての基本性能も非常に高い。今回試用したハイパフォーマンスモデルでは、通常電圧版のCore i5-460M(2.53GHz)を搭載。Turbo Boostテクノロジーにより、最大2.80GHzまでクロックが向上する。Let'snote R9では、超低電圧版のCore i7-640UM(1.2GHz)を搭載していたので、性能は大きく向上している。液晶サイズ10.1型以下のB5サイズノートPCで標準電圧版CPUを搭載したのは、Let'snote J9が世界初となる。

 メモリは、標準で2GB実装しているが、SO-DIMMスロットが1基用意されており、最大6GBまで増設可能だ。プリインストールOSは、Windows 7 Home Premium 32bit版だが、HDDリカバリー機能を利用することで、Windows 7 Home Premium 64bit版へのリカバリーが可能だ。ストレージとしては、東芝製の128GB SSDが搭載されている(スタンダードモデルでは160GB HDDを搭載)。SSDは、HDDに比べてランダムアクセス性能が高く、衝撃にも強い。また、消費電力が低いこともメリットだ。容量はスタンダードモデルのHDDのほうが多いが、HDDとSSDでは体感速度が大きく異なるので、パフォーマンスを重視するならSSD搭載のハイパフォーマンスモデルをお勧めしたい。

 液晶もLet'snote R9から変更され、10.1型ワイド液晶を搭載している。Let'snote R9は、アスペクト比が4:3の10.4型液晶を搭載しており、解像度は1,024×768ドットだったが、Let'snote R9ではアスペクト比が16:9になり、解像度も1,366×768ドットに向上している。縦方向の解像度は変わらないが、横方向の解像度が約1.33倍に増加しており、より快適に作業が行なえるようになった。液晶サイズが小さいため、ドットピッチはやや狭いが、視認性は十分だ。コンシューマ向けのノートPCは、コントラストが高く、色も鮮やかな光沢タイプの液晶を採用した製品が多いが、Let'snoteシリーズはノングレアタイプにこだわっており、今回のLet'snote J9もノングレアタイプの液晶を採用している。光沢タイプに比べて、発色の鮮やかさやコントラストは見劣りするものの、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目が疲れにくいことが長所だ。仕事で使うノートPCとしては、光沢タイプよりもノングレアタイプのほうが向いているといえる。

メモリスロットとしてSO-DIMMスロットが1基用意されており、最大6GBまでメモリを増設可能だLet'snote J9は、ノングレアタイプの10.1型ワイド液晶を採用。解像度は1,366×768ドットで、XGAのLet'snote R9に比べて横方向の解像度が約1.33倍になっている

●新設計のリーフ型キーボード採用で、誤入力を低減

 Let'snote J9は、新設計のリーフ型キーボードを採用していることもウリの1つだ。一般的なキーボードのキートップは長方形または正方形をしているが、Let'snote J9のキートップは、左上と右下の角が丸められており、ちょうど葉っぱのような形をしている。この形状は、ホームポジションからの指の動きを配慮したもので、指がキーの角にひっかかりにくくなっている。そのため、従来のスクエア型キーボードに比べて、誤入力率が約10%低減されたという。また、キーピッチ自体は約17mmで、Let'snote R9と変わらないが、TabキーやShiftキーなどの周辺キーが大型化されており、Rシリーズよりも快適なタイピングが可能だ。また、キートップの印字フォントには、「O」と「0」の違いなどがわかりやすい、ユニバーサルデザインフォントが使われている。

 ポインティングデバイスとしては、Let'snoteシリーズではお馴染みの円形ホイールパッドが採用されているが、パッドのデザインは筐体のデザインにあわせて一新されている。円形ホイールパッドは、周囲をクルクルとなぞることで、連続的にスクロールを行なえることが利点だ。

キーボードは、新設計のリーフ型キーボードを採用。キーピッチは約17mmで、Let'snote R9と変わらないが、TabキーやShiftキーなどの周辺キーが大型化されているキートップの形状が、葉っぱのように左上と右下が丸められているので、指がひっかかりにくいLet'snoteシリーズではお馴染みの円形ホイールパッドを採用しているが、デザインは一新されている

●HDMI端子やUSB 2.0を3基搭載するなど、インターフェイスも強化

 Let'snote J9は、インターフェイスも強化されている。Let'snote R9では、USB 2.0ポートが2基しか用意されておらず、その配置も右側面のみだったが、Let'snote J9では、USB 2.0ポートが3基に増え、配置も左側面に1つ、右側面に2つと左右に分散されたため、より使いやすくなった。また、Let'snote R9には搭載されていなかったHDMI端子も新たに搭載。HDMI対応の大画面TVやプロジェクターなどに接続することが可能になった。従来通り、ミニD-Sub15ピンのアナログRGB出力も備えているので、アナログRGBのみ対応のプロジェクターなども問題なく利用できる。メモリカードスロットとしては、SDXCメモリーカードスロットを搭載する。また、ワイヤレス機能も充実しており、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとWiMAXをサポートしている。本体前面には、ワイヤレススイッチが用意されており、素早くワイヤレス機能のON/OFFを行なえるので便利だ。

ジャケット装着時の左側面。HDMI端子とアナログRGB出力、USB 2.0ポートが用意されているジャケット非装着時の左側面
ジャケット装着時の右側面。USB 2.0ポートが2基と有線LAN、SDメモリーカードスロットが用意されているジャケット非装着時の右側面
ジャケット装着時の前面。マイク入力やヘッドホン出力、ワイヤレススイッチが用意されているジャケット非装着時の前面

●クイックブートマネージャーで超高速起動を実現

 Windows 7では、スタンバイからの復帰が高速化され、数秒で復帰するようになっているが、電源オフの状態からのWindowsの起動には早くとも30秒から1分程度かかってしまう。Windowsの起動をイライラして待った経験のある人も多いことだろう。Let'snote J9では、そのWindowsの起動を大幅に高速化していることも高く評価できる。Let'snote J9の高速起動を利用するには、「クイックブートマネージャー」と呼ばれる専用ユーティリティを利用して設定を行なう必要がある。

 クイックブートマネージャーでは、かんたん高速起動設定モードと高速起動詳細設定モードの2種類の設定モードが用意されており、前者はわずか2ステップでWindowsの起動を簡単に高速化でき、後者は必要に応じて詳細な設定が可能だ。高速起動モードでは、BIOSの初期化手順を一部省略し、デバイスとサービスの開始を遅延するなどの工夫によって、起動時間の短縮を実現している。その効果は大きく、SSD搭載のハイパフォーマンスモデルでは、従来のLet'snote R9(夏モデル)の約半分の約15秒でWindowsを起動できる。従来のノートPCのように、起動を待たされるという感覚がなく、非常に快適だ。なお、HDD搭載のスタンダードモデルでもクイックブートマネージャーを利用できるが、SSD搭載のハイパフォーマンスモデルに比べるとやはり起動時間は長くなる。

クイックブートマネージャーでは、「かんたん高速起動設定モード」と「高速起動詳細設定ウィザードモード」の2種類の設定モードが用意されているかんたん高速起動モードでは、細かな設定は不要で、最大約9秒起動を高速化できる高速起動詳細モードでは、ウィザードに従って、順次設定を行なえる
デバイスとサービスの開始を遅延することで、最大約3秒起動を高速化できるログオン前にネットワークを必要とするかどうかの選択も可能復元ポイントを削除することで、最大2秒起動を高速化できる
高速起動詳細モードでは、さらに細かな設定も可能だ高速起動詳細モードで、すべての設定を有効にすると、最大約10秒起動時間を短縮できる
【動画】かんたん高速起動モード有効時の起動の様子。約20秒
【動画】高速起動詳細モードで、すべての設定を有効にした状態での起動の様子。約15秒で起動が完了する

●最大約12時間の長時間駆動を実現

 Let'snoteシリーズは、バッテリ駆動時間が長いことでも従来から定評がある。Let'snote J9でも、その長所はそのまま受け継いでおり、バッテリーパック(L)が付属するハイパフォーマンスモデルでは公称約12時間の長時間駆動が可能だ。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、10時間15分もの駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。無線LANをオンにした状態でこれだけ持てば、ACコンセントのないところでも安心して使える。

 また、オプションのバッテリーパック(S)を利用すれば、公称駆動時間は約8時間になるが、重量は約1,115gに軽減される(ジャケット非装着時は約900g)。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優秀だ。

Let'snote J9のバッテリ最新の3,100mAh大容量セルを採用し、6セルで7.2V/9,300mAhを実現CDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優秀だCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●A4スタンダードノートを上回る性能

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にNEC「VersaPro UltraLite タイプVC」、「LaVie M」、レノボ「ThinkPad T410s」、デル「Studio 15 OPIデザイン」の値も掲載した。

 PCMark05の総合値であるPCMarksのスコアは7746と高く、同じカテゴリーの製品であるVersaPro UltraLite タイプVCはもちろんのこと、筐体が大きなThinkPad T410sのスコアをも上回っている。特にストレージに高速SSDを搭載しているため、HDD Scoreの値は非常に高く、CrystalDiskMarkの結果も優秀だ。実際の使用感も非常に快適であり、モバイルノートPCとは思えないパフォーマンスであった。


Let'snote J9ハイパフォーマンスモデルVersaPro UltraLite タイプVCLaVie MThinkPad T410sStudio 15 OPIデザイン
CPUCore i5-460M (2.53GHz)Core i7-620UM (1.06GHz)Celeron SU2300 (1.2GHz)Core i5-430M (2.26GHz)Core i5-430M (2.26GHz)
ビデオチップCPU内蔵コアCPU内蔵コアIntel GS45内蔵コアCPU内蔵コアMobility Radeon HD 4570
PCMark05
PCMarks7746509228265677N/A
CPU Score71493596296673756677
Memory Score56293965306661845738
Graphics Score22391684139726105234
HDD Score2831916265494842914646
3DMark03
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)334527142048410110687
CPU Score114477149510681604
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH24451631136724585991
LOW38932410199538088933
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP98.2710076.4396.63100
HP99.9710099.9799.97100
SP/LP99.9710099.9710099.97
LLP99.9710099.9799.97100
DP(CPU負荷)2927682119
HP(CPU負荷)1313421211
SP/LP(CPU負荷)882878
LLP(CPU負荷)682268
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード189.4MB/s164.2MB/s60.31MB/s36.20MB/s60.85MB/s
シーケンシャルライト154.6MB/s39.58MB/s66.25MB/s40.05MB/s60.53MB/s
512Kランダムリード172.5MB/s142.6MB/s27.50MB/s23.30MB/s27.79MB/s
512Kランダムライト106.2MB/s34.53MB/s31.19MB/s24.25MB/s40.09MB/s
4Kランダムリード12.8MB/s7.629MB/s0.369MB/s0.425MB/s0.424MB/s
4Kランダムライト20.91MB/s13.66MB/s0.984MB/s0.961MB/s1.399MB/s
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)未計測4時間23分3時間39分4時間15分4時間6分
Lバッテリ10時間15分未計測7時間26分なしなし

●携帯性と性能の両方を重視する人にお勧め

 Let'snote J9 ハイパフォーマンスモデルは、これまでLet'snoteシリーズで培ってきたノウハウが注ぎ込まれた、完成度の高い製品だ。ジャケット非装着時は1kgを切る軽量モバイルノートながら、A4スタンダードノートに負けない性能を実現していることが特徴であり、クイックブートマネージャーによる高速起動も大きな魅力だ。バッテリ駆動時間も長く、携帯性と性能のどちらも犠牲にしたくないという人にお勧めの製品だ。

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(2010年 10月 13日)

[Text by 石井 英男]