Hothotレビュー
ASUS「TransBook T90 Chi T90CHI-64G」
~珍しい8.9型液晶採用のコンパクト2-in-1
(2015/3/4 06:00)
ASUSは、薄型筐体を追求した液晶部着脱型2-in-1モバイル「TransBook Chi」シリーズを発表した。TransBook Chiシリーズは全3モデルをラインナップするが、本稿では、8.9型液晶を搭載する最もコンパクトな「TransBook T90 Chi」の中から、ストレージ容量64GBの「T90CHI-64GS」を取り上げる。発売は3月上旬を予定しており、価格は59,800円。
あの機種の再来!? 片手で持てるコンパクトクラムシェルになる
「TransBook T90 Chi T90CHI-64G」(以下、T90CHI-64GS)は、ASUS得意の液晶着脱式2-in-1モバイルだ。TransBook Chiシリーズ3モデルの中では、最も小型な8.9型液晶を搭載。そして、最大の特徴となるのが、その8.9型というコンパクトな筐体だ。液晶部のサイズは241×137×7.5mm(幅×奥行き×高さ)と、Windowsタブレットそのもの。8型液晶搭載のレノボ「Miix 2 8」と比べてみても、幅が25mmほど、奥行きが5mmほど大きいだけ。そして、厚さはMiix 2 8の8.35mmよりも0.85mm薄い。
T90CHI-64GSには、標準で着脱式のキーボードが付属し、合体させることでクラムシェルノートとしても利用できる。キーボードを装着し液晶部を閉じた状態でのサイズは、241×137×16.5mm(同)。キーボードを装着しても十分に薄く、他のTransBook Chiシリーズ同様に、薄さが追求されていることが分かる。
重量は、液晶部が公称約400gに対し実測388.5g、キーボード部が実測336.5g。液晶部とキーボードを合わせた状態では公称約750gで、実測725gだった。サイズがコンパクトなこともあって、実際に手に持つと数字よりもやや重く感じるが、本体は薄く、小さなカバンにも楽に収納できるので、携帯性は十分に優れる。
ところで、本体を見ると、液晶上下のベゼル幅は実測で約9mmと狭くなっているのに対し、左右のベゼル幅は実測で約25mmと、かなり広く取られている。これは、付属キーボードのキーピッチをなるべく広く確保するためと思われるが、その結果アスペクト比16:10の液晶を搭載する割にはかなり横長のデザインとなっている。そのため、合体した形状は、ソニーが過去に発売していた小型クラムシェルノート「VAIO type P」のような雰囲気となる。
VAIO type Pのサイズは、245×120×19.8mm(同)で、T90CHI-64GSのサイズにかなり近い。奥行きはT90CHI-64GSの方がやや大きいため、ズボンの後ろポケットに入れるのは厳しいが、キーボードを装着した状態でもぎりぎり片手でつかんで持てる。逆に、厚さはT90CHI-64GSの方が3.3mmも薄い。重量はVAIO type P最軽量構成時の公称588gよりも140g近く重く、片手で持つとやや重い印象だが、今でもVAIO type Pのような小型軽量クラムシェルを探している人にとって、かなり気になる存在と言っていいだろう。
小型ながら軽快な入力が可能なキーボード
付属のキーボードは、上位のT300 ChiやT100 Chiのキーボード同様、Bluetooth接続となっている。タブレット本体を後方ヒンジ部の溝に挟み込むように取り付けることで、クラムシェルスタイルでの利用が可能となる。しかも、このヒンジは回転機構を備え、液晶部の開閉も可能となるため、装着時の利便性はクラムシェルノートそのものとなる。
タブレット部とキーボード部は物理的なフックなどではなく磁石での固定となるが、装着時にタブレット側を持って持ち上げてもキーボードが落下することはない。もちろん、無線のため、タブレットと合体させなくてもキー入力が可能だ。
キーピッチは実測で横が約16mm、縦が約17mm。キー形状はわずかに縦長となっているが、違和感は感じない。より大型の液晶を採用するT300 ChiやT100 Chiのキーボードに比べるとキーピッチは狭く、タイピング時には少々窮屈に感じるが、横幅を考えるとそれほど悪い印象はない。また、ストロークは薄型筐体の割には深く、クリック感もしっかりしており打鍵感は悪くなく、思った以上に軽快なタイピングが可能だった。
キーボード側にポインティングデバイスはないため、タッチ操作併用での利用となる。ただ、クラムシェルスタイルではキーボードの後方と液晶下部のすき間が狭くなり、タスクバー付近のタッチ操作が少々やりにくくなる。できれば、キーボード中央などにスティックタイプのポインティングデバイスを搭載してもらいたかった。
液晶部とキーボードの接続部分には電気的な端子はなく、キーボード内蔵バッテリはキーボード部左側面のMicro USB端子を利用して行なう。キーボードの駆動時間は非公開だが、フル充電で少なくとも1週間は問題なく利用可能だったため、液晶部の本体側と比べて頻繁な充電は不要だろう。ちなみに、Windows上からキーボードのバッテリ残量を確認するツールが用意されているので、いきなりバッテリ切れで困ることもないだろう。
液晶は低価格Windowsタブレット同等
T90CHI-64GSに搭載される液晶パネルは、1,280×800ドット表示に対応する8.9型パネルだ。パネルの種類はIPS方式。視野角は十分に広く、どの方向から見ても視認性は申し分ない。表示品質は、低価格Windowsタブレットの液晶品質として標準的。IPSパネルの採用と、表面の光沢仕様により外光の映り込みは激しいが、発色はまずまず鮮やか。飛び抜けて表示品質が優れるということはないが、利用していて不満に感じる部分はほぼない。
唯一不満に感じるとしたら、表示解像度かもしれない。VAIO type Pの1,600×768ドットというような高解像度液晶が採用されるとよかった。だが、この液晶サイズなら実際に使っていて解像度が低すぎると感じることもなく、大きな問題はないと言える。
タッチパネルは、10点マルチタッチ対応の静電容量方式タッチパネルを搭載する。タッチ操作は非常に軽快で、ストレスなく操作が可能だ。
基本スペックもBay Trail-T搭載Windowsタブレットに近い
T90CHI-64GSが搭載するプロセッサは、Atom Z3775だ。Bay Trail-Tの中でも上位に位置付けられるプロセッサで、性能的には一般的な低価格Windowsタブレットを若干上回るだろう。メインメモリはLPDDR3-1066を2GB搭載。内蔵ストレージは64GBのeMMCとなる。
無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0を標準搭載する。5GHz帯域の無線LANに対応する点は、2.4GHz帯域の無線LANにのみ対応する低価格製品に対する優位点だ。カメラは、背面に500万画素のカメラ、液晶面に200万画素のカメラを搭載。センサー類としては、加速度センサー、地磁気センサー、ジャイロスコープ、環境光センサーを内蔵する。
側面のポートは、液晶部左側面にmicroSDカードスロットとヘッドフォン/マイク共用ジャック、右側面にMicro USB 2.0ポートがある。また、上部側面には電源ボタンと音量調節ボタンがある。Windowsボタンはない。キーボード部左側面のMicro USBポートは、先述の通りキーボード用バッテリの充電用となる。
OSはWindows 8.1 with Bingを採用。付属アプリはそれほど豊富ではないが、標準で「Microsoft Office Home and Business 2013」が付属する。
小型Windowsタブレットとしてトップクラスの性能
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.0.282」、「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.4.778」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」の5種類。比較として、NECの「LaVie U LU550/TSS」、レノボの「ThinkPad 10 20C1002PJP」、東芝の「dynabook Tab S50/23M」の結果も加えてある。なお、OSの違いや、一部ベンチマークテストのバージョンが異なるなどしているため、結果は参考値として見てもらいたい。
結果を見ると、プロセッサにCore M-5Y71を搭載するLaVie Uに比べるとさすがにほとんどの部分で下回っているものの、Atom Z3795を搭載するThinkPad 10との比較では、上回るスコアがかなり多くなっている。ただし、ベンチマークテストのバージョン違いに加え、OSが64bitと32bitという違いもあるため、このスコア差をそのまま性能差として見るのは難しい。
同じOS搭載のdynabook Tab S50/23Mと比較してみると、PCMark7ではストレージの遅さが足を引っ張り、スコアはそこそこ拮抗しているが、PCMark05や3DMarkの結果は上回る部分が多い。上位のプロセッサを搭載しているため当然の結果とも言えるが、低価格Windowsタブレットの中では、性能は上位に位置すると言えそうだ。
T90CHI-64GS | LaVie U LU550/TSS | ThinkPad 10 20C1002PJP | dynabook Tab S50/23M | |
---|---|---|---|---|
CPU | Atom Z3775(1.46/2.39GHz) | Core M-5Y71(1.20/2.90GHz) | Atom Z3795(1.59/2.39GHz) | Atom Z3735F(1.33/1.83GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics 5300 | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics |
メモリ | LPDDR3-1066 2GB | LPDDR3-1600 4GB | LPDDR3-1066 4GB | DDR3L-1333 2GB |
ストレージ | 64GB eMMC | 128GB SSD | 64GB eMMC | 64GB eMMC |
OS | Windows 8.1 with Bing 32bit | Windows 8.1 Update 64bit | Windows 8.1 Pro Update 64bit | Windows 8.1 with Bing 32bit |
PCMark 8 v2.0.282 | ||||
Home Accelarated 3.0 | 1307 | 2261 | ― | ― |
Creative accelarated 3.0 | Error | 2472 | ― | ― |
Work 2.0 | Error | 3514 | ― | ― |
Storage | 4306 | 4868 | ― | ― |
PCMark 7 v1.4.0 | ||||
PCMark score | 2468 | 4480 | 2300 | 2412 |
Lightweight score | 1406 | 2973 | 1392 | 1458 |
Productivity score | 1053 | 2269 | 1041 | 1014 |
Entertainment score | 1618 | 3146 | 1548 | 1620 |
Creativity score | 4557 | 8040 | 4266 | 4647 |
Computation score | 5941 | 13609 | 5631 | 5884 |
System storage score | 3692 | 5001 | 3860 | 3946 |
Raw system storage score | 1221 | 3965 | 1501 | 1520 |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 4526 | 7662 | 4632 | 3278 |
Memory Score | 3123 | 8327 | 2983 | 2881 |
Graphics Score | N/A | 2862 | 807 | N/A |
HDD Score | 9806 | 41756 | 13259 | 12985 |
3DMark Professional Edition v1.4.828 | 3DMark Professional Edition v1.3.708 | |||
Ice Storm | 16841 | 36275 | 10605 | 15701 |
Graphics Score | 16573 | 41190 | 10207 | 16487 |
Physics Score | 17855 | 25589 | 12284 | 13456 |
Ice Storm Extreme | 9909 | 24794 | ― | 9555 |
Graphics Score | 8872 | 24622 | ― | 8870 |
Physics Score | 16772 | 25417 | ― | 13102 |
Ice Storm Unlimited | 16520 | 38617 | ― | ― |
Graphics Score | 16148 | 43449 | ― | ― |
Physics Score | 17971 | 27798 | ― | ― |
Cloud Gate | 1287 | 3593 | ― | ― |
Graphics Score | 1249 | 4429 | ― | ― |
Physics Score | 1444 | 2164 | ― | ― |
Sky Diver | 497 | 1738 | ― | ― |
Graphics Score | 437 | 1638 | ― | ― |
Physics Score | 1512 | 2797 | ― | ― |
Combined score | 515 | 1571 | ― | ― |
Fire Strike | Error | 464 | ― | ― |
Graphics Score | 138 | 516 | ― | ― |
Physics Score | 2177 | 3058 | ― | ― |
Combined score | Error | 154 | ― | ― |
3DMark06 Build 1.2.0 1901 | ||||
3DMark Score | 1933 | 5160 | 1387 | ― |
SM2.0 Score | 627 | 1812 | 480 | ― |
HDR/SM3.0 Score | 761 | 2191 | 505 | ― |
CPU Score | 2212 | 2508 | 1956 | ― |
次にバッテリ駆動時間だ。公称のバッテリ駆動時間は約9.9時間(JEITAバッテリ動作時間測定法Ver2.0)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を40%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測した場合の結果は、約9時間14分だった。公称の駆動時間にわずかに届かなかったが、これなら通常利用でも7~8時間は十分に持つ思われるため不満はない。筐体の薄さや小ささと合わせ、携帯性は申し分ない。
VAIO type P的な小型クラムシェルを使いたい人にお勧め
T90CHI-64GSは、スペックは低価格Windowsタブレットそのものだが、コンパクトながら操作性に優れる着脱式キーボードとの併用で小型クラムシェルとして快適に利用できる点や、薄型筐体で携帯性に優れる点などが魅力となる。性能的には、Core MやCore搭載製品に及ばず、拡張性もある程度妥協が必要だが、Office系アプリは十分快適に利用でき、外出先で資料を修正したりテキストを入力するという用途であれば全く問題なく活用できるし、動画の視聴も問題ない。
そう考えると、位置付け的にはまさにVAIO type Pそのものといった感じだ。これでSIMロックフリーのLTE/3G通信機能が搭載されていると完璧だったが、それは次期モデルへの要望としたい。
WIndows 8.1 with Bing採用タブレットとして考えると、59,800円という価格はやや高く感じる。ただ、標準で専用キーボードが付属する点や、細部まで洗練されたデザインなどを考えると、まずまず納得できる範囲内。キーボードを利用した快適な文字入力が可能で、外出時に気楽に持ち出せるサブマシン的位置付けの小型モバイルPCを探している人にお勧めしたい製品だ。