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ASUS「TransBook T90 Chi T90CHI-64G」

〜珍しい8.9型液晶採用のコンパクト2-in-1

ASUS「TransBook T90 Chi T90CHI-64G」

 ASUSは、薄型筐体を追求した液晶部着脱型2-in-1モバイル「TransBook Chi」シリーズを発表した。TransBook Chiシリーズは全3モデルをラインナップするが、本稿では、8.9型液晶を搭載する最もコンパクトな「TransBook T90 Chi」の中から、ストレージ容量64GBの「T90CHI-64GS」を取り上げる。発売は3月上旬を予定しており、価格は59,800円。

あの機種の再来!? 片手で持てるコンパクトクラムシェルになる

 「TransBook T90 Chi T90CHI-64G」(以下、T90CHI-64GS)は、ASUS得意の液晶着脱式2-in-1モバイルだ。TransBook Chiシリーズ3モデルの中では、最も小型な8.9型液晶を搭載。そして、最大の特徴となるのが、その8.9型というコンパクトな筐体だ。液晶部のサイズは241×137×7.5mm(幅×奥行き×高さ)と、Windowsタブレットそのもの。8型液晶搭載のレノボ「Miix 2 8」と比べてみても、幅が25mmほど、奥行きが5mmほど大きいだけ。そして、厚さはMiix 2 8の8.35mmよりも0.85mm薄い。

 T90CHI-64GSには、標準で着脱式のキーボードが付属し、合体させることでクラムシェルノートとしても利用できる。キーボードを装着し液晶部を閉じた状態でのサイズは、241×137×16.5mm(同)。キーボードを装着しても十分に薄く、他のTransBook Chiシリーズ同様に、薄さが追求されていることが分かる。

 重量は、液晶部が公称約400gに対し実測388.5g、キーボード部が実測336.5g。液晶部とキーボードを合わせた状態では公称約750gで、実測725gだった。サイズがコンパクトなこともあって、実際に手に持つと数字よりもやや重く感じるが、本体は薄く、小さなカバンにも楽に収納できるので、携帯性は十分に優れる。

 ところで、本体を見ると、液晶上下のベゼル幅は実測で約9mmと狭くなっているのに対し、左右のベゼル幅は実測で約25mmと、かなり広く取られている。これは、付属キーボードのキーピッチをなるべく広く確保するためと思われるが、その結果アスペクト比16:10の液晶を搭載する割にはかなり横長のデザインとなっている。そのため、合体した形状は、ソニーが過去に発売していた小型クラムシェルノート「VAIO type P」のような雰囲気となる。

 VAIO type Pのサイズは、245×120×19.8mm(同)で、T90CHI-64GSのサイズにかなり近い。奥行きはT90CHI-64GSの方がやや大きいため、ズボンの後ろポケットに入れるのは厳しいが、キーボードを装着した状態でもぎりぎり片手でつかんで持てる。逆に、厚さはT90CHI-64GSの方が3.3mmも薄い。重量はVAIO type P最軽量構成時の公称588gよりも140g近く重く、片手で持つとやや重い印象だが、今でもVAIO type Pのような小型軽量クラムシェルを探している人にとって、かなり気になる存在と言っていいだろう。

本体正面。フットプリントは241×137mm(幅×奥行き)。上下のベゼルが狭くなっているため、かなり横長のデザインとなっている
8型液晶搭載のMiix 2 8との比較。幅が約25mm、奥行きが約5mm大きいが、印象は小型のWindowsタブレットそのもの
天板部分。ASUSのノートPCで広く採用されているヘアライン可能は見られないが、細部までしっかり作り込まれており、安っぽさは皆無だ
下部側面。高さは7.5mmとなかなかの薄さを実現している
左側面。天板部分は側面付近がなだらかに薄くなっている
上部側面
右側面
高さはMiix 2 8(右)より0.85mm薄い
付属のキーボードに装着すると、クラムシェルスタイルで利用可能。横長なデザインのため、見た目の印象はVAIO type Pにかなり近い
キーボード装着時の前方側面。高さは16.5mmとキーボードを合わせても十分な薄さを実現
左側面。キーボード装着時には前方が薄く、後方に向かってやや厚くなる
後方側面
右側面
液晶部単体の重量は、実測388.5gだった
キーボード単体の重量は、実測336.5g
液晶部とキーボードを合わせた重量は、実測725g
片手でつかんで持つこともぎりぎり可能。ただ、手に持つと数字以上にずっしり感じる

小型ながら軽快な入力が可能なキーボード

 付属のキーボードは、上位のT300 ChiやT100 Chiのキーボード同様、Bluetooth接続となっている。タブレット本体を後方ヒンジ部の溝に挟み込むように取り付けることで、クラムシェルスタイルでの利用が可能となる。しかも、このヒンジは回転機構を備え、液晶部の開閉も可能となるため、装着時の利便性はクラムシェルノートそのものとなる。

 タブレット部とキーボード部は物理的なフックなどではなく磁石での固定となるが、装着時にタブレット側を持って持ち上げてもキーボードが落下することはない。もちろん、無線のため、タブレットと合体させなくてもキー入力が可能だ。

 キーピッチは実測で横が約16mm、縦が約17mm。キー形状はわずかに縦長となっているが、違和感は感じない。より大型の液晶を採用するT300 ChiやT100 Chiのキーボードに比べるとキーピッチは狭く、タイピング時には少々窮屈に感じるが、横幅を考えるとそれほど悪い印象はない。また、ストロークは薄型筐体の割には深く、クリック感もしっかりしており打鍵感は悪くなく、思った以上に軽快なタイピングが可能だった。

 キーボード側にポインティングデバイスはないため、タッチ操作併用での利用となる。ただ、クラムシェルスタイルではキーボードの後方と液晶下部のすき間が狭くなり、タスクバー付近のタッチ操作が少々やりにくくなる。できれば、キーボード中央などにスティックタイプのポインティングデバイスを搭載してもらいたかった。

 液晶部とキーボードの接続部分には電気的な端子はなく、キーボード内蔵バッテリはキーボード部左側面のMicro USB端子を利用して行なう。キーボードの駆動時間は非公開だが、フル充電で少なくとも1週間は問題なく利用可能だったため、液晶部の本体側と比べて頻繁な充電は不要だろう。ちなみに、Windows上からキーボードのバッテリ残量を確認するツールが用意されているので、いきなりバッテリ切れで困ることもないだろう。

付属のキーボード。Bluetooth接続の無線キーボードとなっている
このように、液晶部とキーボードを合体させなくてもキー入力が可能
後方のヒンジ部に液晶部を装着して合体。液晶部の固定は磁石を利用
ヒンジは回転機構も備え、液晶部の開閉が可能
液晶部の重さで後方に倒れないよう、ヒンジの回転範囲は余り大きくない
装着は磁石式だが、しっかりと固定され、液晶部を持って持ち上げてもキーボードが落下することはない
キーピッチは実測で横約16mm、縦約17mm。やや窮屈ではあるが、サイズを考えるとまずまず余裕があり、慣れればタッチタイプも問題ない
ストロークは筐体の薄さを考えるとまずまずの深さ。クリック感もしっかりしており打鍵感は悪くない
キーボード装着時に、タスクバー付近のタッチ操作がやややりづらくなる点は気になった
キーボード底面
キーボード左側面には、充電用のMicro USBコネクタを用意
キーボードのバッテリ残量は、専用ツールでWindows上から確認できる

液晶は低価格Windowsタブレット同等

 T90CHI-64GSに搭載される液晶パネルは、1,280×800ドット表示に対応する8.9型パネルだ。パネルの種類はIPS方式。視野角は十分に広く、どの方向から見ても視認性は申し分ない。表示品質は、低価格Windowsタブレットの液晶品質として標準的。IPSパネルの採用と、表面の光沢仕様により外光の映り込みは激しいが、発色はまずまず鮮やか。飛び抜けて表示品質が優れるということはないが、利用していて不満に感じる部分はほぼない。

 唯一不満に感じるとしたら、表示解像度かもしれない。VAIO type Pの1,600×768ドットというような高解像度液晶が採用されるとよかった。だが、この液晶サイズなら実際に使っていて解像度が低すぎると感じることもなく、大きな問題はないと言える。

 タッチパネルは、10点マルチタッチ対応の静電容量方式タッチパネルを搭載する。タッチ操作は非常に軽快で、ストレスなく操作が可能だ。

液晶は、1,280×800ドット表示対応の8.9型パネルを採用。IPSパネルのため視野角が広く、発色もまずまず鮮やかだ
情報量は小型Windowsタブレットとして標準的。外光の映り込みはやや気になる
専用ツールで、用途に応じた発色のカスタマイズが可能。ブルーライト低減にも対応する

基本スペックもBay Trail-T搭載Windowsタブレットに近い

 T90CHI-64GSが搭載するプロセッサは、Atom Z3775だ。Bay Trail-Tの中でも上位に位置付けられるプロセッサで、性能的には一般的な低価格Windowsタブレットを若干上回るだろう。メインメモリはLPDDR3-1066を2GB搭載。内蔵ストレージは64GBのeMMCとなる。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0を標準搭載する。5GHz帯域の無線LANに対応する点は、2.4GHz帯域の無線LANにのみ対応する低価格製品に対する優位点だ。カメラは、背面に500万画素のカメラ、液晶面に200万画素のカメラを搭載。センサー類としては、加速度センサー、地磁気センサー、ジャイロスコープ、環境光センサーを内蔵する。

 側面のポートは、液晶部左側面にmicroSDカードスロットとヘッドフォン/マイク共用ジャック、右側面にMicro USB 2.0ポートがある。また、上部側面には電源ボタンと音量調節ボタンがある。Windowsボタンはない。キーボード部左側面のMicro USBポートは、先述の通りキーボード用バッテリの充電用となる。

 OSはWindows 8.1 with Bingを採用。付属アプリはそれほど豊富ではないが、標準で「Microsoft Office Home and Business 2013」が付属する。

液晶部左側面には、ヘッドフォン/マイク共用ジャックとmicroSDカードスロットを配置
右側面にはMicro USB2.0ポートを用意。細かな穴の部分はスピーカーだ
上部側面に電源ボタンとボリュームボタンを配置。こちらにもスピーカーがあり、ステレオでのサウンド再生に対応。Windowsボタンは搭載しない
背面には約500万画素のカメラを搭載
液晶面にも約200万画素のカメラを搭載
付属のACアダプタは非常に小型だ
本体のMicro USBポートにACアダプタを接続して充電。汎用のUSB ACアダプタを利用した充電も可能だ

小型Windowsタブレットとしてトップクラスの性能

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.0.282」、「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.4.778」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」の5種類。比較として、NECの「LaVie U LU550/TSS」、レノボの「ThinkPad 10 20C1002PJP」、東芝の「dynabook Tab S50/23M」の結果も加えてある。なお、OSの違いや、一部ベンチマークテストのバージョンが異なるなどしているため、結果は参考値として見てもらいたい。

 結果を見ると、プロセッサにCore M-5Y71を搭載するLaVie Uに比べるとさすがにほとんどの部分で下回っているものの、Atom Z3795を搭載するThinkPad 10との比較では、上回るスコアがかなり多くなっている。ただし、ベンチマークテストのバージョン違いに加え、OSが64bitと32bitという違いもあるため、このスコア差をそのまま性能差として見るのは難しい。

 同じOS搭載のdynabook Tab S50/23Mと比較してみると、PCMark7ではストレージの遅さが足を引っ張り、スコアはそこそこ拮抗しているが、PCMark05や3DMarkの結果は上回る部分が多い。上位のプロセッサを搭載しているため当然の結果とも言えるが、低価格Windowsタブレットの中では、性能は上位に位置すると言えそうだ。

T90CHI-64GS LaVie U LU550/TSS ThinkPad 10 20C1002PJP dynabook Tab S50/23M
CPU Atom Z3775(1.46/2.39GHz) Core M-5Y71(1.20/2.90GHz) Atom Z3795(1.59/2.39GHz) Atom Z3735F(1.33/1.83GHz)
ビデオチップ Intel HD Graphics Intel HD Graphics 5300 Intel HD Graphics Intel HD Graphics
メモリ LPDDR3-1066 2GB LPDDR3-1600 4GB LPDDR3-1066 4GB DDR3L-1333 2GB
ストレージ 64GB eMMC 128GB SSD 64GB eMMC 64GB eMMC
OS Windows 8.1 with Bing 32bit Windows 8.1 Update 64bit Windows 8.1 Pro Update 64bit Windows 8.1 with Bing 32bit
PCMark 8 v2.0.282
Home Accelarated 3.0 1307 2261
Creative accelarated 3.0 Error 2472
Work 2.0 Error 3514
Storage 4306 4868
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score 2468 4480 2300 2412
Lightweight score 1406 2973 1392 1458
Productivity score 1053 2269 1041 1014
Entertainment score 1618 3146 1548 1620
Creativity score 4557 8040 4266 4647
Computation score 5941 13609 5631 5884
System storage score 3692 5001 3860 3946
Raw system storage score 1221 3965 1501 1520
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score N/A N/A N/A N/A
CPU Score 4526 7662 4632 3278
Memory Score 3123 8327 2983 2881
Graphics Score N/A 2862 807 N/A
HDD Score 9806 41756 13259 12985
3DMark Professional Edition v1.4.828 3DMark Professional Edition v1.3.708
Ice Storm 16841 36275 10605 15701
Graphics Score 16573 41190 10207 16487
Physics Score 17855 25589 12284 13456
Ice Storm Extreme 9909 24794 9555
Graphics Score 8872 24622 8870
Physics Score 16772 25417 13102
Ice Storm Unlimited 16520 38617
Graphics Score 16148 43449
Physics Score 17971 27798
Cloud Gate 1287 3593
Graphics Score 1249 4429
Physics Score 1444 2164
Sky Diver 497 1738
Graphics Score 437 1638
Physics Score 1512 2797
Combined score 515 1571
Fire Strike Error 464
Graphics Score 138 516
Physics Score 2177 3058
Combined score Error 154
3DMark06 Build 1.2.0 1901
3DMark Score 1933 5160 1387
SM2.0 Score 627 1812 480
HDR/SM3.0 Score 761 2191 505
CPU Score 2212 2508 1956

 次にバッテリ駆動時間だ。公称のバッテリ駆動時間は約9.9時間(JEITAバッテリ動作時間測定法Ver2.0)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を40%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測した場合の結果は、約9時間14分だった。公称の駆動時間にわずかに届かなかったが、これなら通常利用でも7〜8時間は十分に持つ思われるため不満はない。筐体の薄さや小ささと合わせ、携帯性は申し分ない。

VAIO type P的な小型クラムシェルを使いたい人にお勧め

 T90CHI-64GSは、スペックは低価格Windowsタブレットそのものだが、コンパクトながら操作性に優れる着脱式キーボードとの併用で小型クラムシェルとして快適に利用できる点や、薄型筐体で携帯性に優れる点などが魅力となる。性能的には、Core MやCore搭載製品に及ばず、拡張性もある程度妥協が必要だが、Office系アプリは十分快適に利用でき、外出先で資料を修正したりテキストを入力するという用途であれば全く問題なく活用できるし、動画の視聴も問題ない。

 そう考えると、位置付け的にはまさにVAIO type Pそのものといった感じだ。これでSIMロックフリーのLTE/3G通信機能が搭載されていると完璧だったが、それは次期モデルへの要望としたい。

 WIndows 8.1 with Bing採用タブレットとして考えると、59,800円という価格はやや高く感じる。ただ、標準で専用キーボードが付属する点や、細部まで洗練されたデザインなどを考えると、まずまず納得できる範囲内。キーボードを利用した快適な文字入力が可能で、外出時に気楽に持ち出せるサブマシン的位置付けの小型モバイルPCを探している人にお勧めしたい製品だ。

(平澤 寿康)