Hothotレビュー
レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Carbon」
~6列の物理キーボードに戻った第3世代ThinkPad X1 Carbon
(2015/1/31 06:00)
レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad X1 Carbon」は、14型液晶を搭載したUltrabookであり、2014年1月に登場した「新しいThinkPad X1 Carbon」の後継となる製品だ。昨年登場した「新しいThinkPad X1 Carbon」は、第2世代のThinkPad X1 Carbonなのだが、今回登場したThinkPad X1 Carbonは第3世代となる(以下、第3世代ThinkPad X1 Carbon)。「新しい」が付かないモデルの方が新しいという混乱しそうな状況であるが、2014年モデルの新しいThinkPad X1 Carbonは、すでに流通在庫を残すのみとなっているので、そう問題はないだろう。今回は、この第3世代ThinkPad X1 Carbonを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
ThinkPad X1 Carbonの「Carbon」は、筐体に軽くて丈夫なカーボンファイバーを採用していることを意味している。今回登場した第3世代ThinkPad X1 Carbonのサイズは、331×226.5×13.5~17.7mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.3kg(最小構成時)であり、14型液晶搭載Ultrabookとしてはトップクラスの薄さと軽さを誇る(なお、前モデルの新しいThinkPad X1 Carbonの最小構成時の重量は約1.28kgであり、わずかだが重くなっている)。なお、今回試用したのは通常モデルであるが、500台限定の特別モデル「ThinkPad X1 Carbon Japan Limited Edition」が直販サイトで販売される。これは、今回よりThinkPad X/TシリーズのWebモデルが米沢のNEC PCの工場で生産開始されることを記念したモデルであり、天板がカーボンファイバーの編み込み柄になり、キーボード面に「Japan Limited Edition」、ヒンジ部分にシリアル番号がそれぞれ刻印される。
最新のBroadwell-UとPCIe接続の超高速SSDを搭載
第3世代のThinkPad X1 Carbonは、PCとしての基本性能も向上している。CPUやメモリ、液晶、ストレージなどが異なるいくつかのモデルが用意されているほか、BTOによるカスタマイズも可能だが、今回試用したモデルは、Core i7-5600Uを搭載する。Core i7-5600Uは、開発コードネームBroadwell-Uと呼ばれていたCPUで、TDPはわずか15Wしかなく、消費電力あたりの性能が非常に高い。Core i7-5600Uの定格動作周波数は2.6GHzだが、自動オーバークロック機能のTurbo Boostテクノロジーにより、最大3.2GHzまで動作周波数が向上する。Core i7-5600Uはデュアルコアだが、1つのコアで2つのスレッドを同時に実行可能なHyper-Threadingテクノロジーの搭載によって、最大4スレッドの同時実行が可能だ。メモリは8GB実装されており、増設はできない。ストレージは256GB SSDだが、一般的なSATA 3.0接続ではなく、PCI Express経由で接続されていることが特徴だ。SATA 3.0の帯域幅では、最近の高速SSDを接続するには不足するようになっており、より帯域幅の広いPCI Express経由で接続することで、インターフェースがボトルネックにならず、SSDの性能を最大限に引き出せる。PCI Express接続の高速SSDを採用した製品はまだ珍しく、第3世代ThinkPad X1 Carbonの魅力の一つといえる(なお、モデルによってはSATA 3.0接続のSSDが搭載されている)。OSは、Windows 8.1 Pro 64bit版がプリインストールされている。
最新CPUと超高速SSDを搭載した第3世代ThinkPad X1 Carbonは、Ultrabookとしてトップクラスのスペックといえるだろう。
2,560×1,440ドットのWQHD IPS液晶を採用
液晶ディスプレイとして、2,560×1,440ドット(WQHD)の14型IPS液晶を搭載する。IPS液晶なので、視野角が広く、斜めから見ても色調の変化が少ない。試用機の液晶はマルチタッチ対応だが、タッチ非対応のWQHD IPS液晶やタッチ非対応のフルHD(1,920×1,080ドット)液晶も選択できる。WQHD液晶は、一度に表示できる情報量が一般的なフルHD液晶の約1.78倍なので、複数のウィンドウを同時に開いても快適で、写真などもより精細に表示される。
6列キーボードとクリックボタンが復活
新しいThinkPad X1 Carbonは、従来の6列キーボードに代わり、5列キーボード+タッチパネルキーボードという構成のAdaptiveキーボードを採用していたが、今回登場した第3世代ThinkPad X1 Carbonは、以前の6列キーボードに戻っている。キーピッチは約19mmで、不等キーピッチはなく、キー配列も標準的なので快適にタイピングが行なえる。Adaptiveキーボードの最上段のタッチパネルキーボードは、モード切替によって複数の機能を果たすのだが、慣れないと使いこなすのが難しい。第3世代ThinkPad X1 Carbonの6列キーボードなら、そうした不満はない。
また、ポインティングデバイスとしては、スティック状のトラックポイントと、パッドタイプのトラックパッドの2種類が搭載されている。新しいThinkPad X1 Carbonでは、トラックポイント用のクリックボタンが省略され、トラックパッド自体をクリックボタンとして使うようになっていたが、第3世代ThinkPad X1 Carbonでは、クリックボタンが復活している。こちらも操作性の向上という点で、評価できる。
こうした変更はユーザーからのフィードバックを反映したためと思われるが、鳴り物入りで登場したAdaptiveキーボードをあっさりと捨て去ったことは、賞賛すべきであろう。
Gigabit Ethernetや指紋センサーを搭載
インターフェイスとしては、USB 3.0、Powered USB 3.0、Lenovo OneLink、Mini DisplayPort、HDMI出力、Gigabit Ethernet、マイク/ヘッドフォン端子を備えており、必要にして十分と言える。コンシューマ向けのUltrabookでは、Gigabit Ethernetに対応しない製品が多いが、第3世代ThinkPad X1 Carbonは、Gigabit Ethernetをサポートしているため、ビジネス用途に適している。ただし、薄型化を重視したため、Gigabit Ethernet端子は専用コネクタとなっており、付属のネットワークアダプタを介して利用する必要がある。SDカードスロットが用意されていないのは残念だ。
ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LAN機能とBluetooth 4.0を備えている。キーボード右側にスライド式の指紋センサーを搭載しており、指紋による本人認証が可能だ。また、液晶上部に720pのWebカメラが内蔵されており、ビデオチャットなどに利用できる。
ACアダプタは45W仕様で、軽くてコンパクトなので携帯性も良好だ。公称バッテリ駆動時間はモデルによっても異なるが、Core i7-5600Uと256GB PCIe SSD搭載モデルでは、JEITA 1.0準拠で約13.9時間、JEITA 2.0準拠で約9.2時間となっている。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、10時間25分という結果になった。無線LAN常時オンで、これだけ持てば非常に優秀といえる。ちなみに、前モデルの新しいThinkPad X1 Carbonでは、同条件でのバッテリ駆動時間計測結果は7時間39分であり、3時間近くも延びている。
ThinkPadシリーズは、独自のユーティリティがプリインストールされていることも魅力の1つであり、第3世代ThinkPad X1 Carbonでも、ユーザー専用コンテンツやトラブルシューティング用ツール「Lenovo Companion」やシステム診断ツール「Lenovo Solution Center」といった、実用的なユーティリティがプリインストールされている。
Ultrabookとしてはトップクラスのパフォーマンスを実現
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark 8」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」である。比較用として、レノボ・ジャパン「新しいThinkPad X1 Carbon」の値も掲載した。結果は下の表に示したとおりで、ほとんどの項目で、第3世代ThinkPad X1 Carbonが新しいThinkPad X1 Cabonの値を上回っている。特にCrystalDiskMarkのシーケンシャルリードと512Kランダムリードは2倍以上、シーケンシャルライトと512Kランダムライトは5倍以上と、非常に高速だ。PCIe接続のSSDの真価が発揮できているといえる。
ThinkPad X1 Carbonのベンチマーク結果 | ||
---|---|---|
ThinkPad X1 Carbon | 新しいThinkPad X1 Carbon | |
CPU | Core i7-5600U(2.6GHz) | Core i7-4600U(2.1GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 5500 | Intel HD Graphics 4400 |
PCMark 7 | ||
PCMark score | 5290 | 5294 |
Lightweight score | 3903 | 3632 |
Productivity score | 2898 | 2695 |
Entertainment score | 3544 | 3824 |
Creativity score | 10214 | 10006 |
Computation score | 14466 | 18443 |
System storage score | 5959 | 5339 |
Raw system storage score | 12188 | 5344 |
PCMark 8 | ||
Home conventional | 2446 | 未計測 |
Home accelerated | 2949 | 未計測 |
Creative conventional | 2575 | 未計測 |
Creative accelerated | 3757 | 未計測 |
Work conventional | 2842 | 未計測 |
Work accelerated | 3851 | 未計測 |
3DMark | ||
Fire Strike Ultra | 164 | 未計測 |
Fire Strike Extreme | 320 | 未計測 |
Fire Strike | 721 | 604 |
Sky Diver | 2605 | 未計測 |
Cloud Gate | 5235 | 4522 |
Ice Storm Extreme | 34609 | 未計測 |
Ice Storm | 48912 | 42672 |
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | ||
1280×720ドット 最高品質 | 1831 | 1621 |
1280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 1895 | 1635 |
1280×720ドット 高品質(ノートPC) | 2413 | 2314 |
1280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 3738 | 3471 |
1280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 3709 | 3473 |
1920×1080ドット 最高品質 | 979 | 未計測 |
1920×1080ドット 高品質(デスクトップPC) | 984 | 未計測 |
1920×1080ドット 高品質(ノートPC) | 1293 | 未計測 |
1920×1080ドット 標準品質(デスクトップPC) | 2037 | 未計測 |
1920×1080ドット 標準品質(ノートPC) | 2035 | 未計測 |
CrystalDiskMark 3.0.3b | ||
シーケンシャルリード | 1,328MB/sec | 510.5MB/sec |
シーケンシャルライト | 1,257MB/sec | 252.2MB/sec |
512Kランダムリード | 977.1MB/sec | 427.8MB/sec |
512Kランダムライト | 1,235MB/sec | 250.1MB/sec |
4Kランダムリード | 44.33MB/sec | 31.42MB/sec |
4Kランダムライト | 105.6MB/sec | 102.5MB/sec |
4K QD32ランダムリード | 347.9MB/sec | 382.9MB/sec |
4K QD32ランダムライト | 234.5MB/sec | 224.4MB/sec |
ビジネス向けUltrabookとしての完成度がさらに向上
第3世代ThinkPad X1 Carbonは、薄くて軽くて高性能という三拍子揃ったUltrabookであり、その完成度は非常に高い。前モデルの新しいThinkPad X1 Carbonでは、キー配置にも難があったAdaptiveキーボードの採用やクリックボタンの省略など、古くからのThinkPadユーザーには受け入れにくい部分もあったが、第3世代Thinkpad X1 Carbonは、Adaptiveキーボードをやめ、元の6列キーボードに戻すなど、これまでThinkPadシリーズを愛用してきたユーザーも歓迎できる方向に舵を切り直している。価格は高めだが、同社のモバイル向け製品の中でも上位に位置する製品であり、信頼性や耐久性も高い。バッテリ駆動時間もさらに長くなっており、出張や営業などで外出する機会が多い人にお勧めの製品だ。