Hothotレビュー

日本HP「HP EliteDesk 800 G1 DM」

〜容積約1Lで高性能なビジネスデスクトップ

HP EliteDesk 800 G1 DM
発売中

価格:BTO

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は、容積が1.05Lの超小型ビジネス向けデスクトップPC「HP EliteDesk 800 G1 DM」(以下EliteDesk 800)を発売した。直販価格は85,000円(税別)からとなっている。今回、いち早くお借りできたので、試用レポートをお届けしたい。

容積1.05Lで35WデスクトップCPUを搭載

 EliteDesk 800は、本体サイズがわずか34×177×175mm(幅×奥行き×高さ)、容積にして約1.05Lの超小型デスクトップPCだ。単純にこのサイズであればNUCのようなほかの製品も存在するが、本製品の最大の特徴は、TDP 35Wまでの低電圧版デスクトップCPUを搭載できる点だ。

 具体的に、BTOで選択できるプロセッサは、Celeron G1820T(2.4GHz、ビデオ機能内蔵)、Pentium G3220T(2.6GHz、同)、Core i3-4130T(2.9GHz、同)、Core i5-4570T(2.9GHz、同)、Core i7-4765T(2GHz、同)の5モデル。このうちCore i5-4570はTurbo Boost時3.6GHz、Core i7-4765Tは最大3GHzで動作し、さらに4765Tはクアッドコアとなっている。

 一般的にこのクラスのデスクトップは、より低いTDPでモバイル向けのUプロセッサを転用したり、Bay Trail-Dを搭載することも少なくないが、EliteDesk 800はこのサイズにしてLGA1150ソケット版のデスクトップCPUを採用することで、高い性能を実現している。

 性格は異なるが、同じようなコンセプトの製品としては、ZOTACの「ZBOX IQ01」が挙げられる。ZBOX IQ01の本体サイズは51×188×188mm(同)のため、本製品の方が一回り小型だ。ただしZBOX IQ01は45Wのプロセッサも搭載可能である。

 本製品はその小型さを活かすために、本体側面(横置き時では底面と呼ぶべきところ)に、100mmのVESAマウントホールを搭載。このため、ディスプレイ壁掛け用のマウントキットなどに装着可能だ。工夫次第では、同社の「HPフラットパネルモニター Quick Release」を利用して木製の机の下に固定したりできる。

スタンドに立てた状態。無線LANルーターとほぼ同じような大きさである
「HPフラットパネルモニター Quick Release」を利用すれば、木製の机の下などにも設置できる

質感の高い外観

 今回お借りしたのは、もっとも高クロックでデュアルコアのCore i5-4570T搭載モデル。メモリ4GB、500GB HDD、OSにWindows 7 Professional(64bit)などが搭載されている構成であった。

 ビジネス向けだけあって、パッケージは簡素なもので、付属品はキーボードとマウス、ACアダプタとドライバDVD、説明書など、最低限のもののみ。キーボードとマウスは、ビジネスで使用する分には過不足がない程度の品質のものである。

 本体はマットなブラックで、スチール製のため剛性が高く、ぎっしりパーツが詰まった印象で質感も高い。前面にはスリッドが入っているが、こちらは吸気口、後部のスリットからブロアーファンが見えるが、こちらは排気側となっている。

 前面にはHP EliteDeskのロゴは入っており、電源ボタン、USB 3.0×2、音声入出力などのインターフェイスを搭載。背面はUSB 3.0×4、DisplayPort×2、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、音声出力、DC入力などのインターフェイスを備えている。USB 2.0がなかったり、DisplayPortが2ポートあったりする点は、かなり思い切った設計と言えるだろう。

 一見LEDインジケータがないように見えるが、前面のUSB 3.0ポートの横にしっかり白色の電源/HDDアクセスLEDが備わっている。白色LEDは輝度が高く眩しいものが多いが、HP EliteDeskに搭載されるものはかなり控えめな光量で、動作していることを“主張”することなく、動作していると確認するのに適度なものとなっている。さすがオフィスに置かれることを前提としている製品だけのことはある。

質感の高い筐体
前面。スリッドは吸気口となっており、全体に空気が行き渡るようになっている
LEDインジケータは見えないが、USB 3.0ポートと電源ボタンの間に設置されている
本体背面。ブロアーファンが見えるが、排気用となっている。USB 2.0ポートがないのもユニークだ
本体天板。MADE IN TOKYOのシールが貼られている
付属のACアダプタ。同社のノート用65W ACアダプタと共通だ

小型の秘密を徹底解剖

 中身が気になったので、分解してみることにした。とは言え、本製品はビジネスでの利用を考慮し、修理にかかるダウンタイムを最小限に抑えるため、本製品は背面の手回しネジ1本で取り外せるツールレス構造になっているほか、すべてのネジがマイナスドライバーで回せるなど、メンテナンスに配慮した設計となっている。分解というほど大掛かりな仕事ではない。

 内部を開けると、左側に2.5インチHDD、右側に平べったい大型のCPUクーラーを備えていることが分かる。HDDも、コネクタを外せばツールレスで取り外し可能。HDDの下にはSO-DIMMスロットが2つあり、今回お借りしたモデルではうち1つのみが使われていた。

 一方、CPUクーラーは2ピース構成となっている。まず、上からネジ3本を外すとヒートシンクが取り外しできる。ヒートシンクのベースは銅製でずっしり重量があり、放熱効果は高そうだ。その後ろには、ブロアーファンを1基搭載。こちらはネジ4本で取り外しできる。

 そして、HDD固定用リテンションフレームを外すと、無線LANモジュールが搭載されているM.2スロットにアクセスできるほか、ブロアーファンの下にもM.2スロットが1基隠されていることが分かる。試しにPlextorの「M6e」を当ててみたが、問題なく装着できることを確認できた(今回、留めるネジが見つからなかったので、試用していない)。小型のフォームファクタでありながら、拡張性は高い。

 さらにネジを2本外し、無線LANやスピーカーケーブルを外せば、マザーボード全体を取り外し可能だ。

 CPUのPWM電源部を見てみると、ON Semiconductor製品で固められていることが分かる。コントローラには「NCP81102」を採用。ON Semiの製品情報にはなかったが、電子部品販売サイトDigikeyによると、145WまでのHaswellに対応したVR12.5準拠VRMコントローラのようである。VRMにはDriverMOSFETタイプの「NCP5369」を採用。こちらは製品情報によると、最大1MHzの速度でスイッチングでき、35Aまでの電流に対応するようである。

 EliteDesk 800のマザーボードではこのチップを2基搭載するので、仮に電圧が1.2V程度であった場合、TDP 84Wまで問題なく供給できることになる。よって本製品のTDP 35Wという制限は、回路的なものではなく、ACアダプタや冷却機構によるものだと考えられる。

 本体のシャーシも、小型ながらスピーカーを内蔵したり、無線LANアンテナを2本内蔵したりと、かなり機能を凝縮しているのが特徴だ。Windowsを起動したら本体から起動効果音が聞こえた時は驚いた。スピーカー内蔵のデスクトップPCは、筆者としては実に「PC-9821V12」以来である。

 汎用規格ではなく、メンテナンスすることを前提としている特殊なフォームファクタは、やはり完成度が高い。また、これだけの機能と拡張性をこの小さな筐体に詰め込んだだけに、HPの設計力の高さが窺い知れる。

ネジ1本で内部にアクセス可能
天板を取り払ったところ
HDDはツールレスで取り外し可能
HDDを外せば、メモリにアクセスできる
ネジ3本でCPUヒートシンクを取り外しできる
さらに、ネジ3本でHDDのりテンションフレーム、ネジ4本でブロアーファンを取り外し可能。無線LANモジュールなどのM.2スロットへアクセスできる
有線LANコントローラはIntelの「I217LM」
電源コントローラにはON Semiconductorの「NCP81102」、VRMにはDriverMOSFETタイプの「NCP5369」を採用
マザーボードの背面。チップセットが見える
Intel Q87 Expressチップセット。ヒートシンクは装着されていない
novotonのSuper I/Oらしきチップ「NPCD379HAKFX」
裏面にも電源回路が装備されている
マザーボードを取り外した後のシャーシ
前面にはスピーカーと無線LANアンテナを内蔵
背面にも無線LANアンテナがあり、キャップで保護されている
ブロアーファン下部のM.2スロットに、Plextorの「M6e」を装備してみたところ

デスクトップらしい高性能

 最後に、EliteDesk 800の性能について見てみよう。筆者はこれまで本コラムでノートを多数ベンチマークしてきたが、デスクトップは初めてだ。ノートPCではSSDが一般的のため、PCMark 7の結果はそちらの方が高いことが多い。そのため今回は、AMDのA6-5200と1TB HDDを搭載したメインストリーム向け15.6型ノートPC「Pavilion 15-n200(AMDモデル)」の結果も参考比較用として掲載することにした。

 使用したベンチマークは、「PCMark 7」、「ファイナルファンタジー XIオフィシャルベンチマーク3」、「SiSoftware Sandra」の3種類。

HP EliteDesk Pavilion 15
CPU Core i5-4570T A6-5200
メモリ 4GB 4GB
ストレージ 500GB HDD 1TB HDD
OS Windows 7 Pro Windows 8.1
PCMark 7
Score 2861 1765
Lightweight 2555 1358
Productivity 1841 964
Entertainment 2712 1883
Creative 5326 2762
Computation 10278 3712
System storage 1844 1475
RAW system storage score 494 313
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3
Low 11527 5258
High 7632 3791
Sisoftware Sandra
Dhrystone 42.75GIPS 38.51GIPS
Whetstone 31.23GFLOPS 22GFLOPS
Graphics Rendering Float 263.22Mpixel/sec 262.08Mpixel/sec
Graphics Rendering Double 57.6Mpixel/sec 39.53Mpixel/sec

 PCMark 7の結果は、HDD搭載のため、思ったほど高いスコアではない、というのが印象的。しかしすべての項目においてPavilion 15-n200を上回っているほか、演算性能のComputationでは4物理コア対2物理コアという不利な条件にも関わらず3倍近いスコアで、このあたりはHaswellアーキテクチャの面目躍如と言ったところだ。

 ファイナルファンタジー XIオフィシャルベンチマーク3は、さすがデスクトップCPUとも言うべき高いスコアを発揮。つまり、数世代前のCPU性能重視の3Dゲームなら、このサイズで十分快適に遊べるということだ。SiSoftware Sandraの結果も、CPU/GPUともに申し分なく、ビジネス用途を考えれば十分だと言える。

コンパクトで高性能を求めるユーザーに最適な選択肢

同社の最近のモデルには必ず、「Hewlett-Packard」のロゴが印字されている。個人的にはカッコいいと思う

 以上、内部構造も含めてEliteDesk 800を見てきた。ツールレス機構や、凝縮したギミックや機能など、さすがサーバーやワークステーションを手広く手がけているHPだけあって、ビジネスPCは高い次元の完成度を誇っていると言えよう。

 高い性能が求められるカウンター業務や、スペースが限られていてもある程度のCPUパワーやGPUパワーが求められるデジタルサイネージなどで、本製品が活きると思う。しかし、価格もそれほど高くはないため、住宅事情が厳しい日本においては、家庭でも便利に使える1台だと言えるだろう。

(劉 尭)