~4スピーカー搭載の高音質Ultrabook |
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)から、Ultrabookの新モデル「HP ENVY SPECTRE XT 13-2000」が登場。すでに海外では発売済みとなっているが、ようやく日本でも販売が開始された。品質重視のメタルボディに、高音質サウンドシステムを内蔵しており、ワンランク上のUltrabookと位置付けられている。HP ENVY SPECTRE XT 13-2000には、直販専用モデルと量販店モデルの2モデルが用意されるが、今回はスペック面で上位となる直販専用モデル「HP ENVY SPECTRE XT 13-2014TU パフォーマンスモデル」を取り上げる。価格はオープンプライスで、直販価格は99,960円から。
●細部まで美しい仕上げのメタルボディ「HP ENVY SPECTRE XT 13-2014TU パフォーマンスモデル」(以下、XT 13-2014TU)は、日本HPが投入する3機種目のUltrabookだ。同社のノートPCのプレミアムブランドである「ENVY」シリーズとして位置付けられており、当然質感や性能を重視した仕様を実現している。
ENVYシリーズのUltrabookとしては、14型液晶を搭載する「HP ENVY14-3000 SPECTRE」が登場済みだ。こちらは、天板にガラスを採用するなど、質感に優れるボディデザインが特徴だった。それに対しXT 13-2014TUは、天板とパームレストにアルミニウム素材、シャシーにマグネシウム合金と、オールメタルボディとなっている。
ボディは、前方が薄く、後方が厚い、いわゆるくさび形デザインを採用。また、本体の角や側面、底面などに、大胆に曲線が取り入れられており、メタルボディの力強さの中に柔らかさも感じられる。ボディカラーはシルバーで、天板やパームレストはヘアライン処理が施されている。また、底面はラバー素材でコーティングされ、手で持った場合でも滑りにくいよう配慮されている。ただ、天板やパームレスト部は、HP ENVY14-3000 SPECTRのガラスボディよりは目立たないが、若干指紋の痕が残るのは気になった。
カラーやデザインは、メタルボディのノートPCとしては比較的オーソドックスで、HP ENVY14-3000 SPECTREのような個性はあまり感じられないが、細部の仕上げは抜群で高級感があり、デザイン性はこちらも十分に優れている。デザイン面へのこだわりは、プレミアムブランドであるENVYシリーズらしい特徴と言える。
ボディサイズは、316×224×14.5~20.6mm(幅×奥行き×高さ)。高さは、薄さを極めたUltrabookと比較すると少々見劣りするものの、13.3型ワイド液晶搭載のUltrabookとして標準的なサイズといえる。重量は、公称で約1.39kg、実測では1,414gと1.4kgを若干上回っていた。もちろん、より軽い方が魅力が高まるとは思うが、メタルボディの13.3型Ultrabookとしては標準的な重量であり、持ち運びもそれほど苦にはならないだろう。
●高音質4スピーカーシステム搭載
ENVYシリーズでは、世界的に有名な音楽プロデューサ「Dr.Dre(ドクター・ドレー)」が手がける「Beats Audio」テクノロジーを採用した、高音質サウンドシステムの搭載がおなじみだが、XT 13-2014TUにももちろん搭載されている。それも、キーボード後方に2つ、本体底面に2つ、合計4個のスピーカーを搭載。これにより、AV性能重視のノートPC顔負けの、非常に優れたサウンド再生能力を実現している。
実際に、映像や音楽などを再生させてみたが、大音量にしても音割れが非常に少なく、低音域から高音域まで、クリアで迫力のあるサウンドが再生される。もちろん、自在な音質調整が可能な「Beats Audioソフトウェア」も搭載しており、好みの音質の実現も容易。現在登場しているUltrabookの中で、トップクラスのサウンド再生能力を備えているのは間違いないだろう。
HPのノートPCでおなじみの「Beats Audio」テクノロジーを採用。Beats Audioロゴマークもしっかり刻印されている | キーボード後方のメッシュ部分に2つのスピーカーを搭載 |
底面左右にもスピーカーを2つ搭載し、合計4個のスピーカーを内蔵している | 「Beats Audioソフトウェア」を利用し、好みの音質に調整可能 |
●1,366×768ドット表示対応の13.3型液晶を搭載
液晶パネルは、1,366×768ドット表示対応の13.3型ウルトラクリアビュー液晶を搭載している。液晶表面は光沢処理が施されているため、発色は十分に鮮やかで、輝度も高い。ただ、外光の映り込みがやや激しい点は気になる。
1,366×768ドットという表示解像度は、13.3型液晶搭載のUltrabookとしては標準的。ただ、より高解像度の液晶パネルを採用する製品が増えていることを考えると、1,600×900ドットやフルHD表示に対応する液晶パネルも選択できると良かったように思う。
液晶上部には、約92万画素のWebカメラを標準搭載しており、ビデオチャットなども簡単に楽しめる。
1,366×768ドット表示対応の13.3型ウルトラクリアビュー液晶を搭載。光沢液晶のため発色は鮮やかだが、外光の映り込みはやや激しい | キーボード上部には約92万画素のWebカメラを搭載 |
●英語配列のバックライト付きキーボードを搭載
キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのキーボードを採用。ただし、キー配列は英語配列のみとなっており、日本語配列のキーボードは用意されない。HP ENVY14-3000 SPECTRでもそうだったが、ENVYシリーズでは、キーボードは英語配列のみとなっている。英語配列のキーボードと日本語配列のキーボードでは、記号などの位置が異なるため、慣れるまでは入力に戸惑うことも考えられる。この点はあらかじめ注意が必要だ。
キーボード自体は、HP ENVY14-3000 SPECTRとほぼ同等のものを採用している。キーピッチは19×19mmのフルサイズ。ストロークは約15mmとHP ENVY14-3000 SPECTRより若干浅いが、薄型ボディのUltrabookとしては深い方で、それほど違和感は感じない。配列も自然で扱いやすいが、唯一カーソルキーの上下が幅の狭いキーとなっている点は気になった。
キーボードにはHP ENVY14-3000 SPECTR同様バックライトが搭載されており、キートップの表記が明るく浮かび上がるようになっている。バックライトの輝度を3段階に調節できる点もHP ENVY14-3000 SPECTRと同じ。これなら、暗い場所でのタイピングも安心だ。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッド「イメージパッド」を搭載する。パッド面の面積が広く、複数の指を利用したジェスチャー操作にも対応している。独立したクリックボタンがない点は少々残念だが、使い勝手は他のUltrabookに搭載されるタッチパッドと同等で、大きな不満はない。
●充実したスペック
では、基本スペックを確認しよう。CPUはCore i7-3517U(1.90GHz、最大3GHz、ビデオ機能内蔵)、チップセットはIntel HM76 Expressを採用。メインメモリは、低電圧駆動対応のPC3-12800 DDR3L SDRAMを4GB搭載。メモリはオンボード搭載となり、増設は不可能だ。
ストレージデバイスは、256GBのSSDを標準搭載。このSSDはmSATA仕様のものを搭載している。グラフィックス機能は、CPU内蔵のIntel HD Graphics 4000が利用される。無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANとBluetooth 4.0を標準搭載する。
側面のポート類は、左側面にGigabit Ethernet、HDMI出力、USB 3.0×1、右側面にヘッドフォン/マイク共用ジャック、SDXCカードなどに対応する2in1メディアスロット、USB 2.0×1、電源コネクタを備える。USBポートが左右に1ポートずつしかない点は少々残念だが、必要十分なポートを備えると言っていいだろう。ちなみに、右側面のUSB 2.0ポートは、PCの電源がオフでも給電が行なえ、ポータブル機器の充電が可能な「電源オフUSBチャージ機能」に対応する。
ちなみに、量販店モデルでは、CPUがCore i5-3317U、SSDが128GBとなる。
左側面には、Gigabit Ethernet、HDMI出力、USB 3.0ポートを用意。Gigabit Ethernetは、コネクタ部を下に開いて利用するタイプだ | 右側面には、ヘッドフォン/マイク共用ジャック、2in1メディアスロット、USB 2.0ポート、電源コネクタを用意。USB 2.0ポートは電源オフUSBチャージ機能に対応 |
●デザイン性重視のUltrabookとしておすすめ
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.0.4」、「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、セガの「ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版」の6種類。比較用として、レノボ・ジャパンの「ThinkPad X1 Carbon」、NECの「LaVie Z PC-LZ750HS」、日本エイサーの「Aspire S5」の結果も加えてある。
HP ENVY SPECTRE XT 13-2014T | ThinkPad X1 Carbon | LaVie Z PC-LZ750HS | Aspire S5 | |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-3517U (1.90/3.00GHz) | Core i7-3667U (2.00/3.20GHz) | Core i7-3517U (1.90/3.00GHz) | Core i7-3517U (1.90/3.00GHz) |
チップセット | Inte HM76 Express | Inte QS77 Express | Inte UM77 Express | Inte HM77 Express |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 |
メモリ | PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB | PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB | PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB | PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB |
ストレージ | 256GB SSD | 256GB SSD | 256GB SSD | 256GB SSD |
OS | Windows 7 Home Premium SP1 64bit | Windows 7 Home Premium SP1 64bit | Windows 7 Home Premium SP1 64bit | Windows 7 Home Premium SP1 64bit |
PCMark 7 v1.0.4 | ||||
PCMark score | 5489 | 5240 | 5159 | 5977 |
Lightweight score | 4327 | 4451 | 4223 | 4569 |
Productivity score | 3643 | 3789 | 3503 | 3712 |
Creativity score | 9947 | 10685 | 10241 | 11708 |
Entertainment score | 4033 | 4130 | 4006 | 4723 |
Computation score | 22713 | 23505 | 20967 | 22825 |
System storage score | 5025 | 5087 | 5093 | 5415 |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a | ||||
PCMark Suite | 13299 | 13422 | 11702 | 12042 |
Memories Suite | 7835 | 7686 | 6876 | 8035 |
TV and Movies Suite | 5194 | 5328 | 4962 | 5466 |
Gaming Suite | 9918 | 10152 | 7694 | 9118 |
Music Suite | 14483 | 17116 | 15598 | 14892 |
Communications Suite | 13751 | 13793 | 12971 | 13483 |
Productivity Suite | 19091 | 17809 | 14868 | 15932 |
HDD Test Suite | 43857 | 39951 | 39029 | 43346 |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 9160 | 9796 | 9113 | 8887 |
Memory Score | 8143 | 8212 | 7055 | 7803 |
Graphics Score | 6320 | 5741 | 4571 | 5492 |
HDD Score | 46947 | 51431 | 53427 | 67133 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | ||||
3DMark Score | 5422 | 5491 | 4322 | 5060 |
SM2.0 Score | 1831 | 1783 | 1359 | 1836 |
HDR/SM3.0 Score | 2382 | 2320 | 1821 | 1967 |
CPU Score | 2603 | 3663 | 3426 | 3189 |
Windows エクスペリエンスインデックス | ||||
プロセッサ | 7.1 | 7.1 | 7.1 | 7.1 |
メモリ | 5.9 | 5.9 | 5.9 | 5.9 |
グラフィックス | 5.9 | 5.9 | 4.9 | 5.8 |
ゲーム用グラフィックス | 6.5 | 6.4 | 6.3 | 6.4 |
プライマリハードディスク | 7.9 | 7.9 | 7.9 | 7.9 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】 | ||||
1,280×720ドット | 2407 | 2320 | 1787 | 2140 |
ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版 | ||||
横1,280ドットフルスクリーン | 616 | 446 | 273 | 339 |
結果を見ると、テストによって若干上下は見られるものの、なかなか良好な結果が得られていることがわかる。同じCPUを搭載するLaVie ZやAspire S5との比較では、多くのテストで上回っており、上位のCPUを搭載するThinkPad X1 Carbonとの比較でも互角の結果となっており、CPUのパフォーマンスがしっかり引き出されている。薄型のUltrabookでは、CPUの放熱が難しく、高負荷時など発熱によってCPUのパフォーマンスが最大限引き出せないことがあるが、XT 13-2014TUではその心配はないと言える。ただし、高負荷時のファンの動作音が若干うるさく感じる点は少々気になった。
次に、バッテリ駆動時間だ。XT 13-2014TUの公称のバッテリ駆動時間は約8時間とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「省電力」に設定し、バックライト輝度を40%、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測してみたところ、約7時間6分の駆動時間を記録した。特に長時間というわけではないが、このクラスのUltrabookのバッテリ駆動時間としては十分に満足できる数字で、外出時の利用も大きな不安はないと言える。付属のACアダプタは、比較的コンパクトなもので、重量もそれほど重くない。電源ケーブルは太く重いものの、HP製ノートPC付属のACアダプタではおなじみの、L字型の電源プラグアダプタ「ウォールマウントプラグ」が同梱されており、そちらを利用すればコンパクトかつ軽量に持ち運べる。
付属のACアダプタ。比較的コンパクトで、本体と同時の持ち歩きもそれほど苦にならない | L字型のプラグアダプタ「ウォールマウントプラグ」が付属 | ウォールマウントプラグ利用時は、重量が実測で275gだった |
XT 13-2014TUは、ボディのデザイン性や細部にわたる仕上げの良さはもちろん、優れたスペック、高音質サウンドなど、“ワンランク上のUltrabook”と呼ぶに相応しい仕様を備える製品だ。高解像度液晶の搭載や重量の軽量化、日本語配列キーボードの搭載など、より強化してもらいたい部分も存在するが、全体的にはバランス良くまとまっている。優れたデザイン性や高音質スピーカー、英語キーボード搭載などといった部分に魅力を感じるなら、十分選択肢として考慮すべき製品と言える。
(2012年 9月 19日)
[Text by 平澤 寿康]