~14型1,600×900ドット液晶を搭載したプレミアムUltrabook |
日本HPから登場した「HP ENVY14-3000 SPECTRE」は、同社がプレミアムUltrabookと呼ぶ新たなコンセプトの製品だ。フォームファクターはUltrabookに近いが、よりプレミアムな体験を盛り込んだ製品というのが、そのコンセプトである。同社のENVYシリーズは、もともとプレミアムノートPCブランドであり、随所にこだわりが感じられるが、そのENVYシリーズのこだわりをUltrabookで実現した製品だともいえるだろう。
同社は、すでに13.3型液晶を搭載し、79,800円という低価格を実現したUltrabook「HP Folio 13-1000」を発売しているが、HP ENVY14 SPECTRE(以下、ENVY14-3000)はまた違った魅力を持つ製品だ。なお、この製品は発表当初は、3月中旬の発売を予定していたが、 4月中旬に延期されている。
●ガラス素材を多用した最厚部23mmのスリムボディENVY14-3000は、ボディにガラス素材が多用されていることが特徴だ。天板(トップカバー)と液晶面、パームレスト、イメージパッド(タッチパッド)に、傷に強い強化ガラスが使われており、美しい光沢と高い質感を実現。ボディのシャーシ自体には、軽くて丈夫なマグネシウム合金が採用されている。本体サイズは、327×221×20~23mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.83kgである。13.3型液晶搭載のUltrabookに比べるとややサイズは大きく、重量も重くなっているが、14型液晶搭載ノートPCとしては軽い部類である。電源を入れると、天板のHPロゴが美しくライトアップされる。
Ultrabookの多くは、背面カバーを外すことはできないようになっているが、ENVY14-3000は、背面カバーをスライドさせて外すことが可能だ。ただし、ユーザーによるバッテリの交換やメモリの増設はできない。
ENVY14-3000の上面。天板にはガラス素材が採用されており、高い質感を実現 | 「DOS/V POWER REPORT」誌とENVY14-3000のサイズ比較。ENVY14-3000のほうが奥行きで12mm、横幅で50mmほど大きい | 電源を入れると、天板のHPロゴが美しくライトアップされる |
ENVY14-3000の背面。Ultrabookとしては珍しく、背面カバーをスライドさせて取り外すことが可能 | 背面カバーを外すと、バッテリが現れる。ただし、ユーザーによるバッテリの交換はできない |
●14型液晶と256GB SSDを搭載するなど高いスペックを誇る
ENVY14-3000は、店頭モデルと直販モデルの2モデルがあり、搭載CPUなどのスペックが異なる。直販モデルのほうが高スペックであり、今回は直販モデルを試用した。直販モデルでは、CPUとして超低電圧版のCore i7-2677M(1.80GHz)を搭載、メモリは4GBである(店頭モデルでは、Core i5-2467Mを搭載)。ストレージとしては、256GBのSSDを搭載するが、128GB SSDを2基搭載しており、128GBずつ別のドライブとして認識されている。
液晶は14型で、解像度は1,600×900ドットと高いことが魅力だ。現在登場しているUltrabookの大部分が1,366×768ドットの13.3型液晶を搭載しているが、複数のウィンドウを同時に開いて作業を行なう場合など、解像度がもっと欲しいと感じることも多い。液晶は光沢タイプなので、輝度が高く、発色も鮮やかだが、外光の映り込みがやや気になることがある。液晶上部には、約92万画素Webカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
液晶は14型で、解像度は1,600×900ドット。光沢タイプの液晶で、輝度が高く、発色も鮮やかだが、外光はやや映り込みやすい | 液晶上部に約92万画素Webカメラと近接センサーを搭載している |
●バックライト付きキーボードを搭載
キーボードはアイソレーションタイプだが、英語配列となっており、日本語キーボードモデルが用意されていないことに注意が必要だ(ちなみに、ENVYシリーズのキーボードはすべて英語配列のみ)。キーピッチは約19mmで、キーストロークも約1.8mmと余裕があり、キータッチも良好だ。キーボードにはLEDバックライトが搭載されており、液晶上部の近接センサーにより、使用時に点灯させることが可能だ。キーボードバックライトの輝度は3段階に変更でき、薄暗い場所で操作する場合に便利だ。
ポインティングデバイスとしては、パッドタイプのイメージパッドを搭載する。MacBook Airなどと同じく、パッドとボタンが一体化したタイプである。個人的には、ボタンが分離したタイプのほうが操作しやすいと感じるが、慣れれば問題はなさそうだ。パッドやパームレストにもガラス素材が使われており、外観も美しい。
●mini DisplayPortやHDMI出力、Gigabit Ethernetなどインターフェイスも充実
Ultrabookとしてはインターフェイスも充実しており、USB 3.0とUSB 2.0、mini DisplayPort、HDMI出力、Gigabit Ethernet、マイク/ヘッドフォン端子、メディアカードスロットを備えている。Ultrabookは、厚さの制限が厳しく、厚みのあるLANコネクタ(RJ-45)の実装が難しいため、有線LANを備えていない製品が多いのだが、ENVY14-3000では、一部が開くタイプのコネクタを採用することで、スリムボディながら有線LANに対応しているので、オフィスなどでLANに接続する場合に便利だ。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LAN機能とBluetooth 3.0に対応する。
サウンドにもこだわっており、Beats Audioステレオスピーカーを搭載し、右側面にアナログ式のボリュームを搭載していることが特徴だ。また、右側面に用意されている「HP Beats Audio」ボタンを押すことで、イコライザー機能などを備えたサウンドユーティリティ「Beats Audioソフトウェア」が起動する。
左側面には、mini DisplayPort、HDMI出力、Gigabit Ethernet、USB 3.0、USB 2.0、マイク/ヘッドホン、メディアカードスロット(SD/MMC対応)が用意されている | 左側面のポート部のアップ |
右側面には、ミュートボタン、ボリュームダイヤル、「HP Beats Audio」ボタンが用意されている | 右側面のボタン部分のアップ | HP Beats Audioボタンを押すと、サウンドの細かな設定が可能な「Beats Audioソフトウェア」が起動する |
●ACアダプタはスリムでUSBポートも備える
ENVY14-3000は、前述したように背面カバーを外すことが可能だが、バッテリはネジ止めされており、単体発売もされないので、ユーザーによる交換はできない。バッテリは14.8V/58Whという仕様で、公称バッテリ駆動時間は約9時間30分と長い。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、6時間23分という結果になった。無線LAN常時オンで6時間持てば、十分満足できる。ACアダプタは、スリムなタイプで、USBポートも用意されており、USB給電が可能なことも面白い。
バッテリは14.8V/58Whという仕様だが、ユーザーによる交換はできない | 付属のACアダプタはスリムなタイプだ |
ACアダプタにはUSBポートも用意されており、USB給電が可能 | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
●Ultrabookとしてはトップクラスの性能を実現
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用として日本エイサー「Aspire S3-951-F34C」、NEC「LaVie S LS550/ES」の値も掲載した。
【表】ベンチマーク結果HP ENVY14-3000 SPECTRE | Aspire S3-951-F34C | LaVie S LS550/ES | |
CPU | Core i7-2677M(1.80GHz) | Core i3-2367M(1.40GHz) | Core i5-2410M(2.30GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 |
PCMark05 | |||
PCMarks | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 8032 | 4146 | 7709 |
Memory Score | 5761 | 3748 | 8588 |
Graphics Score | 4134 | 3147 | 4580 |
HDD Score | 31003 | 4902 | 5616 |
PCMark Vantage 64bit | |||
PCMark Score | 10428 | 3895 | 5736 |
Memories Score | 5722 | 2625 | 4088 |
TV and Movie Score | 4355 | 2804 | 4271 |
Gaming Score | 7614 | 3086 | 4409 |
Music Score | 12181 | 3980 | 6394 |
Communications Score | 11523 | 3536 | 6305 |
Productivity Score | 11867 | 3153 | 3117 |
HDD Score | 23829 | 3234 | 3669 |
PCMark Vantage 32bit | |||
PCMark Score | 9625 | 3687 | 5317 |
Memories Score | 5404 | 2516 | 3902 |
TV and Movie Score | 4348 | 2784 | 4297 |
Gaming Score | 6240 | 2658 | 4121 |
Music Score | 11849 | 3736 | 5884 |
Communications Score | 10924 | 3421 | 6218 |
Productivity Score | 10684 | 2898 | 2901 |
HDD Score | 23897 | 3317 | 3662 |
PCMark 7 | |||
PCMark score | 3431 | 1552 | 未計測 |
Lightweight score | 3560 | 1261 | 未計測 |
Productivity score | 2878 | 813 | 未計測 |
Creativity score | 6276 | 3156 | 未計測 |
Entertainment score | 2500 | 1650 | 未計測 |
Computation score | 8773 | 6088 | 未計測 |
System storage score | 4310 | 1377 | 未計測 |
3DMark03 | |||
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 7834 | 6983 | 9325 |
CPU Score | 1600 | 872 | 1533 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||
HIGH | 3910 | 2624 | 3586 |
LOW | 6378 | 4094 | 5273 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||
DP | 99.97 | 99.97 | 100 |
HP | 100 | 100 | 100 |
SP/LP | 100 | 99.97 | 99.97 |
LLP | 99.97 | 100 | 100 |
DP(CPU負荷) | 19 | 28 | 14 |
HP(CPU負荷) | 9 | 14 | 8 |
SP/LP(CPU負荷) | 7 | 9 | 5 |
LLP(CPU負荷) | 5 | 9 | 4 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||
シーケンシャルリード | 221.3MB/sec | 80.34MB/sec | 88.69MB/sec |
シーケンシャルライト | 193.2MB/sec | 78.84MB/sec | 89.30MB/sec |
512Kランダムリード | 161.8MB/sec | 34.09MB/sec | 35.77MB/sec |
512Kランダムライト | 195.8MB/sec | 28.75MB/sec | 55.99MB/sec |
4Kランダムリード | 11.52MB/sec | 0.448MB/sec | 0.456MB/sec |
4Kランダムライト | 40.50MB/sec | 1.027MB/sec | 0.847MB/sec |
BBench | |||
標準バッテリ | 6時間23分 | 5時間5分 | 2時間10分 |
ENVY14-3000は、超低電圧版のCore i7を搭載しているため、超低電圧版のCore i3を搭載したAspire S3-951-F34Cに比べて、PCMark05のCPU Scoreの値は高く、通常電圧版のCore i5を搭載したLaVie S LS550/ESと比べても上回っている。また、ストレージとしてSSDを搭載しているため、PCMark05のHDD Scoreの値やPCMark 7の総合値であるPCMark scoreの値も高い。Ultrabookとしてはトップクラスの性能といえる。
●通常のUltrabookのスペックに不満がある人にお勧め今回試用したENVY14-3000直販モデルの価格は159,810円であり、他のUltrabookよりも価格はやや高い。コストパフォーマンスよりも、プレミア感を重視したモデルであることは間違いない。
しかし、他のUltrabookよりも一回り大きく、解像度の高い液晶を搭載しており、動作も高速なので、実際の使用感は非常に快適だ。プレミアムUltrabookの名に恥じない、ワンランク上の環境を実現していることが魅力であり、インターフェイスも充実しているので、メインマシンとしても十分に使える。薄くてデザイン性に優れたノートPCが欲しいが、現行の13.3型液晶搭載Ultrabookでは、液晶解像度などに不満がある人に最適なマシンだ。
プレミアムモデルということで採用された、ガラス天板については、指紋のつきやすさという欠点もあるので、賛否両論があると思う。ただし、光の角度によっては独特の美しい表情を見せる仕掛けでもある。迷っている場合は、店頭で確認することをお勧めしたい。
(2012年 3月 21日)
[Text by 石井 英男]