~第3世代Core i7をいち早く搭載した15.6型ノートPC |
各社から2012年夏モデルが発表されつつあるが、今年の夏モデルの目玉の1つが、コードネームIvy Bridgeこと第3世代Coreプロセッサー・ファミリーの搭載だ。第3世代Coreプロセッサー・ファミリーは、段階的に発表・出荷される予定で、現時点では4コアの上位モデル中心のラインナップとなっている。また、ミドルクラス以下向けとして第2世代Coreプロセッサー・ファミリーも引き続き供給されるため、今年の夏モデルでは第3世代Core搭載機と第2世代Core搭載機が混在する。
今回は、NECの夏モデルの中から、第3世代Core i7をいち早く搭載した「LaVie L」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機のため、製品版とは細部や性能などが異なる可能性がある。
●ボディが一新され、最厚部が5.5mm薄くなったLaVie Lは、NECのノートPC「LaVie」シリーズの中では上位に位置する製品であり、今回の夏モデルでは、ボディデザインも一新されている。LaVie Lの店頭モデルは、液晶解像度やワイヤレスTVデジタルの有無によって2モデルが用意されており、上位がLL770/HS、下位がLL750/HSとなる。今回は、下位のLaVie L LL750/HS(以下LL750/HS)を試用した。
夏モデルとして登場したLaVie Lは、ボディデザインが一新され、従来機に比べて最厚部が5.5mm薄くなった。本体のサイズは、283×270×33.2mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約3.1kgである。ボディカラーは、クリスタルゴールド、クリスタルレッド、クリスタルホワイト、クリスタルブラックの4色が用意されており、このうちクリスタルゴールドが新色となっている。試用機のボディカラーは、クリスタルゴールドである。
表面は透明感と光沢感があるパール仕上げになっているほか、天板やパームレスト部分には細かなドットパターンが施されており、高級感を演出している。天板はスクラッチリペア仕様となっており、細かなすり傷がついても元に戻るので、傷がつききにくい。また、液晶と周りのベゼル部分がフルフラットになっており、外観がすっきりとしていて美しい。
LL750/HSの上面。透明感と光沢感があるパール仕上げで、細かなドットパターンも施されている | LL750/HSの背面。左下にHDDが、中央にメモリスロットが配置されており、それぞれカバーを外すことができる |
背面のカバーを外したところ。HDDやメモリスロットにアクセスが可能 | メモリスロットは2基あり、4GB SO-DIMMが2枚装着されているので、メモリ容量は8GBとなる |
●第3世代Core i7と1TBの大容量HDDを搭載
PCとしての基本性能も充実している。前述したようにCPUとして、Intel最新のCore i7-3610QM(2.30GHz)を搭載する。Core i7-3610QMはクアッドコアCPUであり、1つのコアで同時に2つのスレッドを実行可能なHyper-Threadingテクノロジーをサポートしているため、最大8スレッドの同時実行が可能だ。また、負荷に応じて自動的に動作クロックを向上させるTurbo Boostテクノロジーにも対応しており、最大3.30GHzまでクロックが上昇する。
メモリは標準で8GB実装している。メモリの最大容量は8GBとされており、それ以上の増設はできないが、8GBあればほとんどの作業には十分だ。ストレージとしては、1TBの大容量HDDが搭載されており、動画や写真など、サイズの大きなデータを保存しても余裕がある。光学ドライブとしては、BDXLドライブが搭載されている。
液晶は15.6型で、解像度は1,366×768ドットである。上位モデルのLL770/HSは1,920×1,080ドットのフルHD対応なのだが、下位モデルとはいえ、LaVieシリーズの中では上位に位置する製品なので、できればもう少し解像度の高い液晶を搭載して欲しかったところだ。液晶は光沢タイプで、LEDバックライトを採用しており、輝度が高い。発色も鮮やかで、表示品位は優秀だ。ただし、外光の映り込みがやや気になることがある。また、液晶上部には、有効画素数92万画素のWebカメラが搭載されている。
サウンドにもこだわっており、ヤマハ製サウンドシステムを搭載。独自のバスレフ構造で空気流ノイズを低減し、豊かで引き締まった低音を実現する新低音再生技術「FR-Port」が採用されており、高音質なサウンドが楽しめる。
光学ドライブとして、BDXLドライブが搭載されている | 液晶は15.6型で、解像度は1,366×768ドット。光沢タイプの液晶で、輝度が高く、発色も鮮やかだが、外光はやや映り込みやすい | サウンドにもこだわり、ヤマハ製サウンドシステムを搭載。独自のバスレフ構造で空気流ノイズを低減し、豊かで引き締まった低音を実現する新低音再生技術「FR-Port」を採用 |
●印字がかすれにくいクリスタライズキーを採用
キーボードはアイソレーションタイプで、テンキー付きの全106キーである。キーピッチは19mm、キーストロークは2mmと余裕があり、キー配列も標準的で無理なところがないので、快適にタイピングが可能だ。また、キートップの印字面の上にクリア層が設けられた、クリスタライズキーを採用しているため、光沢があって美しいだけでなく、長期間使ってもキーの文字がかすれにくい。キーボード右上には、ワンタッチボタンやズームボタン、ECOボタンが用意されている。
ポインティングデバイスとしては、パッドタイプのNXパッドが採用されている。パッド部分がパームレスト部分とシームレスになっており、外観もすっきりしている。パッド表面には細かな凹凸があり、操作性は良好だ。ジェスチャー機能はもちろん、手書き入力にも対応する。
また、ワイヤレスレーザーマウスも付属しているので、好みに応じて使い分けるとよい。旧モデルでは、ワイヤレスレーザーマウスを使う際には、付属のレシーバをUSBポートに装着する必要があったが、夏モデルではレシーバが内蔵されるようになり、より使い勝手が向上している。
●USB 3.0を4基搭載するなどインターフェイスも充実
旧モデルに比べて、インターフェイスも強化されており、USB 3.0×4とUSB 2.0、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、有線LANなどを搭載。USB 3.0のうち1つは、電源オフでも給電が可能なパワーオフUSB充電機能に対応している。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n無線LAN機能を装備。前面にワイヤレススイッチが用意されており、素早く無線LANのON/OFFが可能だ。
バッテリは14.4V/3,350mAhの4セル仕様で、比較的小さい。公称バッテリ駆動時間は約4.5時間でそれほど長いわけではないが、基本的に据え置きで使うマシンなので、特に問題はないだろう。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、3時間24分となった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。なお、ACアダプタは、旧モデルに比べてコンパクトになっており、邪魔になりにくいことは嬉しい。
左側面には、ミニD-Sub15ピン、有線LAN、HDMI出力、USB 3.0(パワーオフUSB充電機能対応)、マイク入力、ヘッドホン出力が用意されている | 右側面には、音量調整つまみ/消音ボタンとUSB 3.0×2が用意されている | 後面には、USB 2.0とUSB 3.0が用意されている |
前面には、デュアルメモリースロットとワイヤレススイッチが用意されている | 前面のデュアルメモリースロット部分のアップ。SDメモリーカードとメモリースティックデュオに対応 |
バッテリは14.4V/3,350mAhの4セル仕様で、比較的小さい | バッテリパックの裏側 | CDケース(左)とバッテリのサイズ比較 |
ACアダプタも旧モデルに比べてコンパクトになった | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
●内蔵グラフィックスコアの性能が大きく向上
LL750/HSは、CPUに最新の第3世代Core i7を搭載しており、そのパフォーマンスが気になるところだ。そこで、参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。
比較用として、日本HP「HP ENVY14-3000 SPECTRE」、日本エイサー「Aspire S3-951-F34C」、NEC「LaVie S LS550/ES」の値も掲載した。 HP ENVY14-3000 SPECTREとAspire S3-951-F34Cは、超低電圧版Core iを搭載するUltrabookで、LaVie Sは通常電圧版Core iを搭載するA4サイズノートPCだ。
LaVie L LL750/HS | HP ENVY14-3000 SPECTRE | Aspire S3-951-F34C | LaVie S LS550/ES | |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-3610QM (2.30GHz) | Core i7-2677M (1.80GHz) | Core i3-2367M (1.40GHz) | Core i5-2410M (2.30GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 |
PCMark05 | ||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 11541 | 8032 | 4146 | 7709 |
Memory Score | 9076 | 5761 | 3748 | 8588 |
Graphics Score | 7112 | 4134 | 3147 | 4580 |
HDD Score | 5910 | 31003 | 4902 | 5616 |
PCMark Vantage 64bit | ||||
PCMark Score | 8953 | 10428 | 3895 | 5736 |
Memories Score | 5432 | 5722 | 2625 | 4088 |
TV and Movie Score | 6275 | 4355 | 2804 | 4271 |
Gaming Score | 7028 | 7614 | 3086 | 4409 |
Music Score | 7884 | 12181 | 3980 | 6394 |
Communications Score | 11311 | 11523 | 3536 | 6305 |
Productivity Score | 5434 | 11867 | 3153 | 3117 |
HDD Score | 4190 | 23829 | 3234 | 3669 |
PCMark Vantage 32bit | ||||
PCMark Score | 8531 | 9625 | 3687 | 5317 |
Memories Score | 5199 | 5404 | 2516 | 3902 |
TV and Movie Score | 6201 | 4348 | 2784 | 4297 |
Gaming Score | 6412 | 6240 | 2658 | 4121 |
Music Score | 7345 | 11849 | 3736 | 5884 |
Communications Score | 11126 | 10924 | 3421 | 6218 |
Productivity Score | 5057 | 10684 | 2898 | 2901 |
HDD Score | 4178 | 23897 | 3317 | 3662 |
PCMark 7 | ||||
PCMark score | 2876 | 3431 | 1552 | 未計測 |
Lightweight score | 2013 | 3560 | 1261 | 未計測 |
Productivity score | 1633 | 2878 | 813 | 未計測 |
Creativity score | 4843 | 6276 | 3156 | 未計測 |
Entertainment score | 3043 | 2500 | 1650 | 未計測 |
Computation score | 12435 | 8773 | 6088 | 未計測 |
System storage score | 1528 | 4310 | 1377 | 未計測 |
3DMark03 | ||||
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 14651 | 7834 | 6983 | 9325 |
CPU Score | 2290 | 1600 | 872 | 1533 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
HIGH | 5704 | 3910 | 2624 | 3586 |
LOW | 7609 | 6378 | 4094 | 5273 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | ||||
DP | 100 | 99.97 | 99.97 | 100 |
HP | 100 | 100 | 100 | 100 |
SP/LP | 99.97 | 100 | 99.97 | 99.97 |
LLP | 100 | 99.97 | 100 | 100 |
DP(CPU負荷) | 6 | 19 | 28 | 14 |
HP(CPU負荷) | 3 | 9 | 14 | 8 |
SP/LP(CPU負荷) | 2 | 7 | 9 | 5 |
LLP(CPU負荷) | 1 | 5 | 9 | 4 |
CrystalDiskMark 2.2 | ||||
シーケンシャルリード | 107.6MB/s | 221.3MB/s | 80.34MB/s | 88.69MB/s |
シーケンシャルライト | 108.5MB/s | 193.2MB/s | 78.84MB/s | 89.30MB/s |
512Kランダムリード | 37.03MB/s | 161.8MB/s | 34.09MB/s | 35.77MB/s |
512Kランダムライト | 55.82MB/s | 195.8MB/s | 28.75MB/s | 55.99MB/s |
4Kランダムリード | 0.436MB/s | 11.52MB/s | 0.448MB/s | 0.456MB/s |
4Kランダムライト | 1.360MB/s | 40.50MB/s | 1.027MB/s | 0.847MB/s |
BBench | ||||
Sバッテリ(標準バッテリ) | 3時間24分 | 6時間23分 | 5時間5分 | 2時間10分 |
Lバッテリ | なし | なし | なし | なし |
CPUの基本的な処理能力を計測するPCMark05のCPU Scoreは11541で、同じクロックのCore i5-2410Mを搭載するLaVie S LS550/ESに比べて5割ほど高い。また、内蔵グラフィックスコアの性能も大きく上がっているため、Graphics Scoreも7112と高い。PCMark VantageやPCMark 7の総合スコアは、HP ENVY14-3000 SPECTREに比べると低くなっているが、これはストレージの違いのためだ(LaVie L LL750/HSはHDD、HP ENVY14-3000 SPECTREはSSD)。
内蔵グラフィックスコアが強化されたため、3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmarkのスコアも、他の機種に比べてかなり高い。そこで、ゲームベンチの「MHFベンチマーク【大討伐】」を実行したところ、1,280×720ドットでは3226、1,360×768ドットでは2945となった。「バイオハザード5ベンチマーク」(DirectX 10、ベンチマークテストB)は、1,280×720ドットでは38.7fps、1,360×768ドットでは37.0fpsとなった。さらに「ストリートファイターIVベンチマーク」では、1,280×720ドットでは81.77fps、1,366×768ドットでは74.14fpsという結果であり、単体GPUに比べればまだまだ及ばないものの、CPU内蔵グラフィックスとしてはかなり高性能だといえるだろう。
●パフォーマンスも高く、使い勝手も優秀LL750/HSは、最新の第3世代Core i7を搭載し、旧モデルに比べてより高いパフォーマンスを実現しているだけでなく、ボディデザインも一新され、よりスリムで美しくなっていることが魅力だ。インターフェイスやユーティリティも強化されたほか、キーボードなどの使い勝手も優れており、デスクトップPC代わりに使うノートPCとしての完成度は高い。初心者から中上級者まで、幅広い層にお勧めできる製品だ。
(2012年 5月 14日)
[Text by 石井 英男]