~キーボードドック付属のAndroid 3.0タブレット |
ASUSTeK Computerは、専用のキーボードドックが付属し、ノートPCのようなクラムシェルスタイルでも利用可能なAndroid 3.0タブレット「Eee Pad Transformer TF101」を、6月25日より発売する。今回、いち早く試用する機会を得たので、詳しくチェックしていきたいと思う。
●ノートPCのように使えるモバイルキーボードドックが付属Eee Pad Transformer TF101(以下、TF101)の最大の特徴となるのは、なんと言っても着脱式の専用キーボードドックである「モバイルキーボードドック」が付属している点だ。モバイルキーボードドックとタブレット本体をドッキングさせると、一般的なノートPCと同じようなクラムシェルスタイルに変身。この状態だと、ほとんどの人がタブレットとは気付かないと言っていい。開閉するヒンジ部もしっかりとしており、ドッキング時にタブレット本体がぐらつくこともなく、安定感は抜群だ。また、細部までしっかりと作り込まれており、安っぽさを感じさせることもない。
本体とモバイルキーボードドックを外す場合には、ヒンジ部のスライドスイッチをスライドさせてロックを開放し、本体を上に引き抜くだけだ。逆に、ドッキングさせるときには、本体底面とキーボードドックのコネクタ部を合わせて、しっかりとロックされるまで押し込めばいい。特に強い力を必要とはせず、誰でも簡単に着脱できるはずだ。
モバイルキーボードドックのキーボードは、最近のEee PCシリーズのものとほぼ同等のアイソレーションタイプのキーボードが採用されている。当然Android 3.0に最適化されており、Homeや戻るボタンなど、専用のボタンが用意されている。最上段のキーには、無線LANやBluetoothのオン/オフや輝度、ボリューム調節、メディアコントロールなどのボタンを用意。また、スクリーンショットを撮影する専用のキーが用意されている点も大きな特徴だ。
キーピッチは約17.5mmで、しっかりとしたクリック感があり、タッチタイプも余裕でできる。また、キーボード下部にはポインティングデバイスのタッチパッドもある。本体とモバイルキーボードドックをドッキングさせると、画面にはマウスカーソルが表示され、タッチパッドを利用した操作も思いの外しやすい。
キーピッチは約17.5mm。さすがにフルサイズとはいかないが、十分タッチタイプ可能だ | ポインティングデバイスのタッチパッドはジェスチャー機能に対応 |
モバイルキーボードドックを着脱する様子 |
●SDカードやUSBメモリが標準で利用可能
モバイルキーボードドックは、キーボードとタッチパッドの機能を追加するためだけのものではない。モバイルキーボードドック側面には、USBコネクタ(左右側面に1ポートずつ)とSDカードスロットが用意されており、標準でフラッシュメモリなどのUSB周辺機器やSDカードを利用できるようになっている。
実際にモバイルキーボードドックのUSBコネクタにUSBメモリを取り付けたり、SDカードスロットにSDカードを取り付けてみたが、どちらも問題なく認識された。また、タブレット本体側にはmicroSDカードスロットが用意され、こちらも標準で利用可能。試しに、モバイルキーボードドックにUSBメモリとSDカードを、本体にmicroSDカードを同時に取り付けてみたが、同時に利用可能だった。
ところで、Android 3.0には標準でファイル操作用のアプリが搭載されていないため、SD/microSDカードやUSBメモリが認識できたとしても、別途アプリを用意しなければファイル操作が行なえない。しかしTF101には、標準でオリジナルのファイル操作アプリがプリインストールされており、出荷時からファイル操作ができるようになっている。しかも、SD/microSDカードやUSBメモリを取り付けると、画面右下に接続されたことを知らせる通知アイコンが表示され、そのフォルダアイコンをタップすると、ファイル操作アプリが起動し、接続したSD/microSDカードやUSBメモリの内容がすぐに表示されるようになっている。この点は非常に好感が持てる。
●モバイルキーボードドック併用で約16時間の長時間駆動を実現
モバイルキーボードドックにはもう1つ大きな機能が用意されている。それは、内部にリチウムポリマーバッテリが内蔵されており、本体とドッキングさせることでバッテリ駆動時間を延ばせるというものだ。公称では本体のみで約9.5時間、本体とキーボードドックをドッキングさせた状態では約16時間の駆動が可能とされている。そこで、実際にバッテリ駆動時間を検証してみた。
まず、タブレット本体のみでのバッテリ駆動時間だ。バックライト輝度を最低に設定し、無線LANおよびGPSはオン、Bluetoothはオフにした状態で、フルHD解像度のH.264動画(映像ビットレート3Mbps、Baseline Profile)を連続再生させて検証してみたところ、約9時間18分でシャットダウンした。それに対し、モバイルキーボードドックをドッキングさせた状態では、約16時間25分でシャットダウンした。タブレット本体のみでも、他のAndroid 3.0タブレットとほぼ同等の十分に長い駆動時間と言えるが、モバイルキーボードドックを取り付けた場合の駆動時間は圧倒的だ。これなら、1泊2日や2泊3日の旅行に持って行く場合でも、充電不要で利用できそうだ。
ちなみに、充電には付属の充電アダプタを利用するが、この充電アダプタと本体の接続には、付属の専用USBケーブルを利用するようになっている。このUSBケーブルは、本体側の接続コネクタは特殊形状だが、もう一方が通常のUSBコネクタとなっており、PCなどと接続する場合に利用するものだ。この専用USBケーブルを利用して充電を行なうということは、PCなどのUSBコネクタからの充電もできそうなものだが、実際にはできない。実はこの充電アダプタは、5V/2Aの出力に加え、15V/1.2Aの出力が可能となっている。充電には15Vが必要なので、通常のUSBコネクタに接続しても充電が行なえないわけだ。
ちなみに、充電アダプタはUSB充電器としても利用でき、USB充電対応機器の充電が可能。できれば、充電アダプタに2個のUSBコネクタを用意してもらいたかったが、そうでなくても他のタブレットに付属するACアダプタよりも使い勝手は上といえる。
付属の充電アダプタ。USB充電器とほぼ同等で5V/2A出力が可能だが、15V/1.2A出力も可能となっている | 付属の専用USBケーブル。PCとの接続や充電に利用する | 充電時には、専用USBケーブルを利用して本体と充電アダプタを接続して行なう。PCなどのUSBコネクタや、通常のUSB充電器を利用しての充電は不可能 |
●タブレットの仕様は他とほぼ同じ
TF101の本体のハードウェア仕様は、市販されている他のAndroid 3.0タブレットとほぼ同等だ。プロセッサにはNVIDIAのTegra 2 1GHzを採用。メモリは1GB、ストレージ容量は32GB。液晶パネルは10.1型ワイド液晶で、表示解像度は1,280×800ドット。液晶パネルにはIPSパネルが採用されており、視野角が広い。また、液晶パネル表面には強度に優れるゴリラガラスを採用しており、傷がつきにくい。タッチパネルは静電容量方式で、10点マルチタッチに対応している。
無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANとBluetooth 2.1+EDRを標準搭載し、3Gは非搭載。センサー類は、GPS、加速度センサー、ジャイロセンサー、電子コンパス、照度センサーを搭載。カメラは、裏面に約500万画素のメインカメラと、液晶面上部中央に約120万画素のWebカメラを搭載。フラッシュは搭載しない。
本体サイズは、271×177×12.98mm(幅×奥行き×高さ)。同仕様のAndroid 3.0タブレット、XOOMとの比較では、高さはほぼ同等だが、幅が22mm、奥行きが10mm大きく、重ねると一回り大きいことがわかる。また、モバイルキーボードドックとドッキングさせた状態でのサイズは、271×185×28mm(同)で、設置面積はほぼ同等だが、厚さは2倍以上となる。
重量は、タブレット本体のみで約680g、モバイルキーボードドックと合わせて約1.3kgとされている。実測では、タブレット本体が678.5g、モバイルキーボードドックと合わせて1,326gであった。タブレット本体はXOOMより18gほど軽いが、モバイルキーボードドックと合わせた状態では、さすがにかなり重く感じる。それでも、モバイルノートと同程度の重さであり、非常に長いバッテリ駆動が可能になることも合わせると、携帯性は十分に優れると考えていい。
本体左側面には電源ボタンとボリュームボタンが、右側面にはヘッドフォン/マイク端子とmini HDMI出力、microSDカードスロットが、底面には専用形状のUSB/充電コネクタがそれぞれ用意されている。スピーカーは左右側面に配置されている。
本体背面に約500万画素のメインカメラを配置。フラッシュなどは搭載しない | 液晶面上部中央には、約120万画素のWebカメラを搭載 |
タブレット本体のみの重量は、実測で678.5gだった | モバイルキーボードドックを取り付けた状態での重量は1,326gとかなり重くなる |
●プリインストールアプリも豊富
TF101には、さまざまなアプリがプリインストールされている点も特徴だ。
まず、Office互換アプリの「Polaris Office 3.0」。完全な互換性があるわけではないが、WordやExcelなどのファイル閲覧や簡単な修正程度であれば問題なく行なえる。リモートデスクトップツールの「MyCloud」を利用すれば、外出先から自宅などのPCを遠隔操作できる。またMyCloudには、オンラインストレージサービス「MyContent」や、コンテンツ配信サービス「@Vibe」といった機能も盛り込まれている。コンテンツ関連アプリとしては、DLNA対応の「MyNet」を搭載。ホームサーバーやDNLA対応機器との間で音楽や静止画、動画の共有が行なえる。また、電子書籍アプリとして「Booklive!Reader」を用意。オンライン電子書籍ストア「BookLive!」で扱われている電子書籍の購入や閲覧が可能となっている。そして、日本語入力アプリとしては、富士ソフトの「FSKAREN for Android」を採用。フリック入力には対応しないが、手書き文字認識機能が用意されている。キーボードでの文字入力が苦手な人には嬉しい機能だろう。
●キーボード入力と長時間バッテリ駆動が魅力
パフォーマンスは、Android 3.0タブレットとして標準的であり、快適度もほぼ同等と考えていい。画面の切り替えやアプリの起動など、動作は非常にスムーズで快適だ。また、H.264形式の動画に関しては、他のAndroid 3.0タブレット同様、Baseline Profileのもののみ再生可能で、Main ProfileやHigh ProfileのH.264ファイルは、コマ落ちが激しく視聴に耐えなかった。
最後に、ベンチマークテストの結果だ。利用したベンチマークソフトはQuadrant Professional Editionで、比較としてICONIA TAB A500とXOOM、Optimus Padの結果を加えてある。結果を見ると、XOOMより若干上回っているが、ICONIA TAB A500やOptimus Padにはやや劣っている。とはいえ、その差は小さく、実際に利用していて体感できるほどのパフォーマンス差はないと考えていい。同じプロセッサやメモリ容量であることを考えると、このあたりは当然の結果と言える。
Quadrant Professional Edition総合 |
Quadrant Professional Edition詳細 |
TF101は、Android 3.0タブレット単体のハードウェアは、他の製品とほぼ同等だ。しかし、モバイルキーボードドックが付属していることで、圧倒的なバッテリ駆動時間に、キーボードを利用してノートPCと同等の快適な文字入力が行なえることなど、他の製品にはない大きな魅力のある製品に仕上がっている。もちろん、標準でSD/microSDカードやUSBメモリが利用でき、豊富なアプリがプリインストールされている点もポイントだ。
価格は59,800円と、日本エイサーの「ICONIA TAB A500」が39,800円で発表された今となっては高く見えるが、モバイルキーボードドックが付属していることを考えると、十分にお買い得と言える。キーボードを利用した快適な文字入力や、非常に長時間のバッテリ駆動に魅力を感じる人にお薦めしたい製品だ。ちなみに、Android 3.1へのアップデートは現在検証中で近々に実施するとアナウンスされており、その点も関しても心配無用だ。
(2011年 6月 21日)
[Text by 平澤 寿康]