~SpursEngine搭載の液晶一体型AV PC |
東芝は、3波ダブルチューナーに東芝独自の映像専用エンジン「SpursEngine」を搭載する液晶一体型PCの新モデル「dynabook Qosmio D711/T9B」を発売した。従来モデルの特徴を受け継ぎつつ、Sandy Bridgeベースのシステムに変更され、パフォーマンスが向上している。
●従来モデルの魅力はそのまま、Sandy Bridge採用でパワーアップdynabook Qosmioシリーズの中で、液晶一体型のAV PCシリーズとして位置付けられている、dynabook Qosmio D710シリーズ。3波ダブルチューナや、Cell Broadband Engineをベースとした東芝独自の映像専用エンジン「SpursEngine」を搭載するモデルなどが用意されるとともに、東芝の液晶TV「REGZA」シリーズで培われた高画質化機能なども盛り込まれ、TV機能を重視したAV PCとして人気が高い。そして、その2011年春モデルとなるのが、dynabook Qosmio D711/T9B(以下、D711/T9B)だ。
機能面は、従来モデルの最上位モデルであるdynabook Qosmio D710/T8Aシリーズをベースとしており、地上デジタル・BSデジタル・110度CSデジタル対応の3波ダブルチューナや、SpursEngineはD711/T9Bでも標準搭載されている。もちろん、SpursEngineを利用し、H.264形式で最大約10倍(BSデジタル録画時、地デジ録画時は約8倍)の長時間録画や、録画した番組を解析し、番組内で登場する人物をピックアップ、特定の人物が登場している場面を探しやすくする「顔deナビ」機能など、従来モデルから実現されている機能もそのまま受け継がれている。また、DVDやネット動画などのSD動画を、東芝独自の超解像技術を利用し、解像感を高めて表示するといった機能も盛りこまれている。
そのうえで、CPUが第2世代Coreプロセッサシリーズである、Core i5-2410Mを採用することで、パフォーマンスが向上。特に、内蔵グラフィックス機能がIntel HD Graphics 3000に強化されたことで、3D描画能力が大きく向上している。
本体デザインは、従来モデルと同じだ。サイズは531×190×405mm(幅×奥行き×高さ)。スタンド部は、高さ調節やスイベル機構は用意されていないが、液晶面の角度を下5度から上20度の範囲内で調節可能となっている。
本体下部には、オンキヨー製のステレオスピーカーを内蔵している。外付けの本格的なスピーカーに比べると、さすがに音質は劣るものの、液晶一体型PCとしては、なかなか高音質なサウンドが再生される。
本体正面。本体デザインは従来モデルと同じ。サイズは、幅531mm×高さ405mm。液晶一体型AV PCとしては液晶パネルが小さいため、本体サイズもかなりコンパクトだ | 左側面。奥行きは190mmだ | 背面。スタンド中央には、接続ケーブルをまとめる穴が空いている |
右側面。光学式ドライブはこちらに取り付けられている | スタンドは、高さ調節やスイベル機構は持たないが、角度調節は行なえる。下には5度まで傾けられる |
上には20度まで傾けられる | 本体下部には、オンキヨー製ステレオスピーカーを搭載。液晶一体型PC内蔵スピーカーとしてはなかなか高音質だ |
●ダブルチューナ搭載で2番組同時録画が可能
D711/T9BのTV関連機能は、基本的には従来モデルであるD710/T8Aとほぼ同等。3波ダブルチューナを搭載しているため、裏番組録画や2番組同時録画が可能だ。
TVの視聴や録画は、従来モデルと同じオリジナルソフト「Qosmio AV Center」を利用する。操作は、マウスを利用するか、付属のリモコンで行なう。Qosmio AV Centerは、リモコンを利用する場合には、東芝製レコーダとほぼ同等の感覚で利用できる。そのため、東芝製レコーダを利用している人なら、それほど戸惑うことなく利用できるはずだ。また、マウス操作時には、マウスモードに変更され、リモコンモードと異なる表示レイアウトに切り替わるが、基本的なメニュー構成などはリモコンモードと同じだ。
TV録画は、放送波をそのまま記録するTS録画に加え、最大約10倍(地デジは最大約8倍)の長時間AVCHD録画が可能。録画予約時に、5種類の録画モードを指定できる。また、録画時に、顔deナビデータを同時に作成することも可能で、こちらも録画予約時に指定できる。ちなみに、TS録画したデータを、あとから長時間モードに変換したり、顔deナビの解析を行なうことも可能だ。
ただ、せっかく3波ダブルチューナを搭載し、2番組同時録画に対応しているものの、長時間録画や録画時の顔deナビ解析は、2番組同時には利用できない。同じ時間帯に2番組の録画予約を行なう場合、予約時には双方とも長時間録画や顔deナビの設定が行なえるものの、実際にその指定通りに録画が行なわれるのは一方のみで、もう一方はTS録画となり、顔deナビの解析も行なわれないのだ。顔deナビの解析作業は負荷が高いため、2番組同時で利用できないのは仕方がないかもしれないが、長時間の同時録画に対応してもらいたいところだ。
TVの録画・視聴ソフト「Qosmio AV Center」。マウスモードで操作する場合には、このようなレイアウトとなり、多くの情報が一度に表示される | こちらはリモコンモードで番組表を表示させている様子。番組表をはじめとした各種機能の表示方式や操作性は、東芝製BDレコーダとほぼ同等だ | 付属のリモコン。PC用のボタンもあるが、こちらも東芝製BDレコーダに付属するものとかなり似ている |
SpursEngineを利用し、最大10倍(地デジは8倍)の長時間AVCHD録画が可能 | 顔deナビでは、録画番組を解析し、登場する人物がピックアップされるので、見たいシーンを探しやすくなる |
●BDXL対応のBlu-rayドライブを標準搭載
右側面に搭載されるBlu-ray Discドライブは、BDXLに対応しており、一度にたくさんの録画番組をダビングできる |
従来モデルからの、CPUを含めたシステム以外での大きな強化点となるのが、内蔵の光学式ドライブだ。従来モデルでも、標準でBlu-ray Discドライブが搭載されていたが、D711/T9Bでは、BDXL対応のドライブが標準搭載となった。
BDXLは、記録層を3層または4層に増やし、記録容量を100GB(3層)または128GB(4層)に拡大したBlu-ray Discの新規格だ。これにより、ディスク1枚あたりに、たくさんの番組が保存できるようになる。現時点では、まだBDXL対応メディアや対応ドライブも少なく、ディスクの単価もかなり高価だが、BDXL対応のドライブをいち早く採用しているという点は、将来性を考えても多いに評価できる部分と言える。
また、USB 3.0ポートが2ポート新たに用意されたのも、大きな強化点だ。もちろん、録画データを、外付けHDDにムーブしたりダビングしたりできるわけではないが、USB 3.0対応の外付けHDDを利用すれば、内蔵HDDとほぼ同等の速度でデータ転送が行なえるため、大容量データも非常に扱いやすくなる。液晶一体型PCでは拡張性が低いため、標準でUSB 3.0が搭載されたことは、大いに歓迎できる。
液晶パネルは、従来モデルと同じ、1,920×1,080ドット表示に対応する、21.5型液晶パネルを採用している。AV性能をウリとする液晶一体型PCとしては、やや小型のパネルを採用しているものの、フルHD解像度に対応しているため、地デジやBlu-rayなどのHDコンテンツも画質を失うことなく楽しめる。
液晶表面は光沢処理が施されているため、発色は非常に鮮やかだ。また、東芝のREGZAシリーズで培われた映像技術が応用されており、TV画像も鮮やかに表示される。ただ、光沢液晶のため、外光の映り込みはやや気になる。
ところで、本体背面には、HDMI端子とD端子の2系統の映像入力端子が用意されており、ゲーム機やレコーダなどの各種映像機器を接続して利用できる。映像の切り替えはリモコンの入力切替ボタンを利用し、PCが起動していない状態でもHDMIやD端子に接続した映像機器の映像を表示できる。もちろん、HDMIは音声入力も可能で、D端子には音声入力端子が用意されている。近年、液晶一体型PCでは映像入力端子を備える製品が増えており、もはや基本の機能と言えそうだが、液晶一体型PCとしてだけでなく、液晶ディスプレイとしても利用可能という点はやはり便利だ。
●CPU以外の基本スペックは、ほぼ従来モデルと同等
D711/T9Bでは、CPUがCore i5-2410Mに、チップセットがIntel HM65 Expressに変更されているが、それ以外の基本スペックに関しては従来モデルとほぼ同等だ。
メインメモリは、PC3-10600 DDR3 SDRAMを標準で4GB搭載し、最大8GBまで搭載可能。メモリスロットは、本体背面のフタを開けるとアクセスできるが、標準で2GBのSO-DIMMが2枚取り付けられており、増設する場合には標準搭載モジュールを外す必要がある。
HDDは、容量1TBの3.5インチドライブを標準搭載している。内蔵HDDには簡単にアクセスできないが、USB 3.0ポートが2ポート用意されたことで、HDDの増設も手軽に行なえるようになったため、問題はないだろう。また、ネットワーク機能は、Gigabit Ethernetに加え、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANが標準搭載されている。
ポート類は、左側面にSDメモリーカードやメモリースティック、xD-Picture Cardなどに対応するブリッジメディアスロットと、ヘッドフォン・マイク端子、USB 3.0ポートが2ポート、背面右に電源コネクタ、アンテナ入力、Gigabit Ethernet、USB 2.0×4ポート、背面左にD4入力と音声入力、HDMI入力がそれぞれ用意されている。また、裏面右下には、付属の無線キーボードおよび無線マウスの受信機を取り付ける専用のUSBポートが用意されている。
ちなみに、左側面のUSB 3.0ポートのうち1つは、PCをスリープやシャットダウンしている状態でも電力を供給し、携帯機器などの充電が行なえるスリープアンドチャージに対応している。さらに、左側面のマイク端子は、PCをスリープやシャットダウンしている状態でも、ポータブルオーディオデバイスなどで再生させた音楽を内蔵スピーカーで再生できる、スリープアンドミュージック機能をサポートしている。
電源は付属のACアダプタを利用する | ACアダプタはかなり大きい |
●AV性能が充実した省スペース液晶一体型PCを探している人にオススメ
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」に加え、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」の5種類。D711/T9Bは、ノートPC向けのシステムを採用しているため、今回は比較として、AVノートPCであるNECのLaVie L PC-LL970DSと、ソニーのVAIO F VPCF219FJ/BIの結果を加えてある。
dynabook Qosmio D711/T9BW | LaVie L PC-LL970DS | VAIO F VPCF219FJ/BI | |
---|---|---|---|
CPU | Core i5-2410M (2.30/2.90GHz) | Core i7-2620M (2.70/3.40GHz) | Core i7-2630QM (2.00/2.90GHz) |
チップセット | Intel HM65 Express | Intel HM65 Express | Intel HM65 Express |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 | GeForce GT 540M |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 | PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2 | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 |
ストレージ | 1TB HDD (ST31000528AS) | 750GB HDD (WD7500BPVT) | 640GB HDD (HM641JI) |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Home Premium 64bit |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a | |||
PCMark Suite | 6486 | 7654 | 7526 |
Memories Suite | 4484 | 4583 | 4924 |
TV and Movies Suite | 4410 | 4775 | 5401 |
Gaming Suite | 4719 | 4904 | 7292 |
Music Suite | 7228 | 6983 | 6334 |
Communications Suite | 6191 | 10439 | 6587 |
Productivity Suite | 5220 | 5166 | 5996 |
HDD Test Suite | 5173 | 3762 | 3410 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 8226 | 9820 | 9067 |
Memory Score | 9211 | 10451 | 8781 |
Graphics Score | 4481 | 5259 | 9001 |
HDD Score | 7721 | 5893 | 5169 |
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1280×1024ドット | |||
3DMark Score | 1248 | 1976 | 4602 |
GPU Score | 971 | 1556 | 3595 |
CPU Score | 8707 | 10339 | 28772 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | |||
3DMark Score | 4099 | 4477 | 8311 |
SM2.0 Score | 1412 | 1520 | 3328 |
HDR/SM3.0 Score | 1607 | 1755 | 2942 |
CPU Score | 3216 | 3813 | 5052 |
Windows エクスペリエンスインデックス | |||
プロセッサ | 6.9 | 7.1 | 7.5 |
メモリ | 7.4 | 7.5 | 7.8 |
グラフィックス | 5.6 | 6.2 | 6.5 |
ゲーム用グラフィックス | 6.2 | 6.2 | 6.5 |
プライマリハードディスク | 5.9 | 5.9 | 5.9 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】 | |||
1,280×720ドット | 2063 | 2248 | 4365 |
1,920×1,080ドット | 1045 | 1138 | 2163 |
比較用のノートPCは、どちらもCPUとしてCore i7を採用しているうえに、VAIO Fでは外付けのGPUも搭載しているため、D711/T9Bのパフォーマンスはそれらよりも劣っている。とはいえ大きな差は無く、パフォーマンスは十分に満足できるレベルと言っていいだろう。
また、3D描画能力は、さすがに外付けGPUを搭載するVAIO Fには大きく劣っているが、軽めの3Dゲームであれば、解像度をある程度落とすことで、十分快適にプレイできるだろう。少なくとも、従来モデルと比較して、3D描画能力が大きく向上しているのは間違いない。
D711/T9Bは、PC、TV、BDレコーダ、ディスプレイと1台で4役をこなす点が最大の魅力だ。液晶一体型AVPCとしては、搭載されている液晶パネルのサイズがやや小さいため、競合製品と比較すると映像の迫力は一歩見劣りするが、当然それだけ省スペースなので、サイズを重視する場合には、かなり有力な選択肢となるだろう。もちろん、TV関連機能が充実している点や、REGZA譲りの高画質、オンキヨー製高音質スピーカーの搭載など、AV PCとしての実力も十分に優れている。そのため、TV関連機能を中心としたAV性能に優れる省スペース液晶一体型PCを探している人にオススメしたい。
(2011年 4月 11日)
[Text by 平澤 寿康]