~3D液晶搭載のフラッグシップAVノート |
NECは、ワイヤレス地デジ対応AVノート「LaVie L」シリーズの、2011年春モデルを発表。従来モデルの特徴を受け継ぎつつ、第2世代Coreプロセッサ採用によるパフォーマンスの向上に加え、ボディデザインも一新され、フルモデルチェンジとなった。今回は、LaVie L 2011年春モデルの中から、最上位モデルとなる「LaVie L LL970/DS」を取り上げる。
●ボディデザインを一新、天板はスクラッチリペアを採用LaVie Lシリーズの2011年春モデルは、CPUにIntelの第2世代Coreプロセッサー・ファミリーを採用するとともに、ボディデザインを一新。大幅なデザイン変更というわけではないものの、高さが従来モデルより4.3mm薄い36.2mmになるとともに、本体側面のポート類の配置が変更されている。また、天板部分には、LaVieシリーズのモバイルモデルで採用例の多い、キズが付きにくく、細かなキズの自己修復性能を持つスクラッチリペア塗装を新たに採用。LaVie Lシリーズでは、天板部分に光沢感の強い塗装が施されていることもあり、細かなキズでも目立ちやすい。LaVie Lシリーズはモバイルノートではないため、ボディにキズが付く可能性は低いが、スクラッチリペアにより、キズへの安心感が増した点は嬉しい。
キーボードは、従来モデルと同じ、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプだが、光沢感の強い素材でキー全体を被った「クリスタライズキー」を採用している。パームレストだけでなくキーボード自体も光沢感が高くなったことで、液晶を開いた状態でも高級感が感じられるようになった。
全体的に光沢感が強まったことで、指紋やホコリなどがかなり目立つという印象も受けたが、家庭向けのAVノートでは、デザイン性が重視される場合が多いため、このように光沢感の強いデザインとなった点は歓迎できるだろう。ちなみに、今回取り上げる、LaVie L LL970/DS(以下、LL970/DS)では、ボディカラーはクリスタルブラックのみとなっているが、下位モデルでは、クリスタルブラックに加え、クリスタルブラウン、クリスタルレッド、クリスタルホワイトの計4色が用意される。
キーボードは、光沢感の強い素材で被ったクリスタライズキーを採用するアイソレーションキーボードとなっている。キーボード面もほぼ全体が光沢感が強くなっている | キーピッチは約19mm。変則的な配列は一切無く、テンキーも用意されており、デスクトップ用キーボードとほぼ同等の操作性が実現されている |
●偏光方式の3D液晶を採用
LL970/DSは、従来モデルの最上位である、LaVie L LL870/CSの後継だ。ただ、液晶パネルは、従来モデルの16型から、15.6型へと若干ではあるがサイズダウンしている。ただ、サイズは小さくなっているものの、表示解像度は従来通り1,920×1,080ドットに対応。そして、LL970/DSの液晶パネルは、偏光方式の3D表示に対応している。
液晶パネルが3D表示に対応したことで、Blu-ray 3Dや、BS/CS放送で行なわれている3D放送の視聴に対応。また、DVD再生ソフトの2D-3D変換機能を利用した、DVDの3D再生、富士フイルムの3D撮影対応デジタルカメラ、FinePix REAL 3D W1およびW3で撮影した3D映像の表示などにも対応している。
3D表示品質は、偏光方式を採用しているため、3D表示時の縦解像度は1/2になるものの、3D表示品質は偏光方式の中では優れた部類で、水平方向の視野角は広く、なかなか見やすい。また、2D表示時にも偏光パネルの影響が少なく、水平方向の縞模様もほとんど感じられない。パネル表面は光沢処理が施されているため、外光の映り込みは少々気になるものの、鮮やかな発色が実現されており、表示品質は十分に満足できる。
1,920×1,080ドット表示対応の15.6型スーパーシャインビューLED液晶を採用。偏光方式の3D表示に対応し、偏光パネルの横縞もほとんど感じられない。光沢パネルで、外光の映り込みは少々気になるが、発色は非常に鮮やかで表示品質に優れる | 付属の偏光メガネ。Blu-ray 3DやBS/CSの3D放送、富士フイルムのFinePix REAL 3D W1やW3で撮影した3D映像などを表示できる |
●3波対応ワイヤレスTVデジタルが付属
LaVie Lシリーズでおなじみの、ワイヤレスTV視聴システムである「ワイヤレスTVデジタル」は、LL970/DSにも、もちろん付属している。付属するワイヤレスTVデジタルは、地上デジタル、BSデジタル、110度CSデジタル対応の3波対応。本体にアンテナケーブルを接続する必要がないのはもちろん、ワイヤレスTVデジタルと本体は無線LAN接続となり、無線LANが届く範囲内であれば、好きな場所で本体側には何もケーブルを接続することなくTVが楽しめる。従来モデルと同様の仕様だが、ワイヤレスでTVが楽しめる点は、一度使うと手放せなくなるほど便利だ。
また、本体側にはハードウェアエンコーダが搭載されており、最大約10倍の長時間AVC録画にも対応。ダブルチューナではないため、裏番組の録画などは行なえないものの、HDD容量を節約しつつTVの録画が可能という点は嬉しい。視聴ソフトのSmartVisionも、登録したキーワードにより番組の自動録画が行なえる「おまかせ録画」機能など、充実した録画機能が盛りこまれており、レコーダ代わりとしても十分に活用できる。
さらに、付属のリモコンが、赤外線方式ではなく無線方式を採用しているため、軽快な操作が行なえる点も大きな魅力。リモコンが本体に向いていなくても、ボタン操作が確実に反映されるのはかなり気持ちがいい。ただ、USB接続の小型受信機を本体に取り付けなければならない点は少々残念。また、SmartVisionの起動に若干時間がかかるため、TVを見たいと思ってから、実際に映像が表示されるまでに、やや待たされる点も気になった。
●ヤマハ製スピーカーによる高音質サウンドを実現
ヤマハ製の高音質スピーカーを搭載。外付けの高音質スピーカーには負けるが、ノートPC内蔵スピーカーとしては非常に優れた品質のサウンドが再生される |
LaVie LシリーズはAVノートということもあり、従来よりスピーカーにはある程度のコダワリがあった。しかしLL970/DSでは、音響メーカーのヤマハとコラボレーションした、新仕様のステレオスピーカーを搭載。独自のバスレフ構造で空気流ノイズを低減し、豊かで引き締まった低音を実現する「FR-Port(エフアール・ポート)」によって、非常に高品質なサウンドが楽しめるようになっている。
さすがに外付けの高音質スピーカーに比べると、低音の迫力は劣るし、中高音域のクリアさも今一歩といった印象だが、一般的なノートPCのスピーカーとは質の異なる、高品質なサウンドが再生されると感じた。これなら、よほど音質をこだわりたい場合を除き、TVの視聴はもちろん、Blu-rayソフトの視聴や音楽ソフトの再生も、本体のスピーカーのみで十分満足できるはずだ。
では、スペック面を確認していこう。CPUは、2コア4スレッド処理に対応するCore i7-2620M(2.70GHz)を採用。メインメモリは、PC3-10600対応DDR3 SDRAMを8GB(4GB×2枚)と、大容量を標準搭載。チップセットは、Intel HM65 Express(B3ステッピング)を採用している。グラフィックス機能は、CPU内蔵のIntel HD Graphics 3000が利用されている。
内蔵ストレージは、750GBのHDDと、Blu-ray Discドライブを標準搭載。HDDは、本体底面のフタを開けることで簡単にアクセスできる。ちなみに、底面のフタを開けると、SSD用のポートが用意されていることがわかる。これは、直販サイト「NEC Direct」専用モデルである「LaVie G タイプL」で、HDDとSSDの同時搭載を実現するためのもの。市販モデルのLaVie Lシリーズでは、SSD搭載モデルは用意されない。
無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANを標準搭載。また、インテル・ワイヤレス・ディスプレイにも対応しており、対応機器を用意することで、大画面TVにワイヤレスで映像信号を送り、映像を表示できる。
側面ポート類は、左側面にアナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、Gigabit Ethernet、HDMI出力、USB 3.0×2ポート、マイク・ヘッドフォン端子が、背面にUSB 2.0×1ポートが、右側面にUSB 2.0×2ポートと電源コネクタ、正面左側にSDカードおよびメモリースティックに対応するデュアルメモリースロットをそれぞれ用意。ただし、PCカードスロットおよびExpressCardスロットは用意されない。ちなみに、左側面のUSB 3.0ポートのうち1つは、電源を落としている状態でも電力を供給し、携帯機器の充電が行なえる、パワーオフUSB充電機能に対応している。
ポインティングデバイスは、ジェスチャー機能に対応する、パッド式ポインティングデバイスのNXパッドに加え、標準でUSB接続のレーザーマウスが付属する。また、パームレスト右側には、FeliCaポートが搭載されており、オンラインショッピングの決済や、対応する携帯電話へのデータ転送などが行なえる。
●AV性能に優れるノートPCを探している人におすすめ
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」に加え、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」の5種類。比較として、ソニーのVAIO F VPCF219FJ/BIと、パナソニックのLet'snote B10の結果を加えてある。
結果を見ると、外部GPUを搭載しているVAIO Fに対し、3D描画能力が劣っているものの、それ以外のパフォーマンスに関してはほぼ互角となっており、十分に優れた処理能力が発揮されていると考えていい。また、3D描画能力に関しても、同じIntel HD Graphics 3000を利用するLet'snote B10に対し、8GBメモリの効果で大きな差を付けている。これなら、軽めの3Dゲームで、解像度を落とせば十分快適に楽しめると言っていいだろう。
LaVie L LL970/DS | VAIO F VPCF219FJ/BI | Let'snote B10 | |
CPU | Core i7-2620M (2.70/3.40GHz) | Core i7-2630QM (2.00/2.90GHz) | Core i5-2520M (2.50/3.20GHz) |
チップセット | Intel HM65 Express | Intel HM65 Express | Intel HM65 Express |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 3000 | GeForce GT 540M | Intel HD Graphics 3000 |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2 | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 | DDR3 SDRAM 4GB |
ストレージ | 750GB HDD (WD7500BPVT) | 640GB HDD (HM641JI) | 500GB HDD (HTS545050B9A300) |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Professional 64bit |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a | |||
PCMark Suite | 7654 | 7526 | 6587 |
Memories Suite | 4583 | 4924 | 3730 |
TV and Movies Suite | 4775 | 5401 | 3876 |
Gaming Suite | 4904 | 7292 | 3800 |
Music Suite | 6983 | 6334 | 6620 |
Communications Suite | 10439 | 6587 | 8797 |
Productivity Suite | 5166 | 5996 | 5765 |
HDD Test Suite | 3762 | 3410 | 3287 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 9820 | 9067 | 9175 |
Memory Score | 10451 | 8781 | 7211 |
Graphics Score | 5259 | 9001 | 3746 |
HDD Score | 5893 | 5169 | 5153 |
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1,280×1,024ドット | |||
3DMark Score | 1976 | 4602 | N/A |
GPU Score | 1556 | 3595 | N/A |
CPU Score | 10339 | 28772 | N/A |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | |||
3DMark Score | 4477 | 8311 | 2947 |
SM2.0 Score | 1520 | 3328 | 956 |
HDR/SM3.0 Score | 1755 | 2942 | 1153 |
CPU Score | 3813 | 5052 | 3552 |
Windows エクスペリエンスインデックス | |||
プロセッサ | 7.1 | 7.5 | 7.1 |
メモリ | 7.5 | 7.8 | 5.9 |
グラフィックス | 6.2 | 6.5 | 4.4 |
ゲーム用グラフィックス | 6.2 | 6.5 | 6.0 |
プライマリハードディスク | 5.9 | 5.9 | 5.9 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】 | |||
1,280×720ドット | 2248 | 4365 | 1440 |
1,920×1,080ドット | 1138 | 2163 | 732 |
LL970/DSは、ノートPCとしてトップレベルに近いパフォーマンスと、ワイヤレスTVデジタルによるワイヤレスでのTV視聴や録画機能、偏光方式の3D立体視対応液晶、ヤマハ製スピーカーによる高品質な再生音質など、AV性能が非常に優れた製品だ。欲を言えば、ダブルチューナ仕様で裏番組録画などにも対応してもらいたかったところだが、ワイヤレスでは帯域的に難しいのかもしれない。それでも、AVノートとしての実力は非常に高く、ほぼ死角はないと言える。もちろん、AV用途だけでなくビジネスソフトも快適に利用でき、幅広い用途に対応。家庭で利用するノートPCで、特にAV性能に優れる製品を探している人にオススメしたい。
(2011年 3月 31日)
[Text by 平澤 寿康]