レノボ「ThinkPad T410s」Optimus対応版
~グラフィックス機能自動切り替えでより便利に



ThinkPad T410s
Optimus対応モデル

発売中
価格:232,050円



 NVIDIAが2月に発表した「Optimus Technology」(以下Optimus)は、チップセットやCPUに内蔵されているグラフィックス機能とNVIDIAの単体GPUを、システムを再起動することなくアプリケーションの実行状況に応じて切り替える技術だ。Optimusを採用することで、グラフィックス性能と長時間のバッテリ駆動の両立が可能になる。Optimus対応ノートPCは、数製品が登場しているが、まだ数はそれほど多くはない。

 今回取り上げるレノボの「ThinkPad T410s」(以下T410s Optimus)は、今年(2010年)1月に登場したThinkPad T410sをベースに、Optimus対応を実現したハイパフォーマンス・スリムノートPCであり、Optimusによって3D描画性能が大きく向上していることが魅力だ。T410s Optimusは、BTOによるカスタマイズも可能だが、今回は、固定仕様モデルの「2912R94」を試用した。

●GPUとしてOptimus対応のNVS 3100Mを搭載

 T410s Optimusは、基本的な設計はOptimus非対応のT410sと同じなので、T410sのレビューも参考にして欲しいが、初代T410sから9カ月程度経っていることもあり、基本スペックは向上している。

 2912R94では、CPUとしてCore i5-560M(2.66GHz)を搭載。メモリは標準で4GB実装しているが、SO-DIMMスロットを2基備えており、最大8GBまで増設が可能だ。HDDは、軽さを重視して1.8インチ250GB HDDを搭載する。最大の特徴であるOptimus対応については、Optimus対応のGPU「NVS 3100M」を搭載している。NVSシリーズは、ビジネス向けノートPC用のGPUであり、NVS 3100Mは、16個のCUDAコアを搭載し、グラフィックスクロックは600MHz、プロセッサクロックは1,470MHzである。GeForceシリーズでは、ほぼGeForce 310Mと同じ性能であり、GPUとしてはエントリークラスである。OSとしては、Windows 7 Professional(64bit)がプリインストールされている。

 ボディのデザインは、ThinkPadシリーズ伝統のシンプルなもので、カラーもお馴染みのブラックだ。本体のサイズは337×241.5×21.1~25.9mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.79kgである。11.6~13.3型クラスのモバイルノートに比べるとボディは大きく、重量も重いが、持ち運びもそれほど苦にはならない。

ThinkPad T410s Optimus対応版の上面。ThinkPadシリーズ伝統のシンプルなデザインで、Optimus非対応のThinkPad T410sと外観は全く同じだ「DOS/V POWER REPORT」誌とThinkPad T410s Optimus対応版のサイズ比較。ThinkPad T410sのほうがかなり大きいThinkPad T410s Optiums対応版の底面。ポートリプリケーター接続用コネクタが用意されている
DDR3 SO-DIMMスロットを2基搭載している。標準で2GB SO-DIMMが2枚装着されているが、最大8GBまでメモリを増設できる。SO-DIMMスロットの上には、Mini PCI Expressスロットが2基用意されており、右側のスロットにはWi-Fi/WiMAXモジュールが装着されているNVIDIAコントロールパネルのシステム情報。CUDAコアの数やクロックなどが表示されている

●1,440×900ドット対応の14.1型ワイド液晶を搭載

 T410s Optimusの液晶は14.1型ワイドで、解像度は1,440×900ドットだ。一般的な1,366×768ドット液晶に比べると、一度に表示可能な情報量は約1.24倍になるので、より快適に作業が行なえる。また、他のThinkPadシリーズと同じく、アンチグレアタイプの液晶を採用しているので、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目が疲れにくい。液晶の上部には、白色LEDを採用したキーボードライトが搭載されているので、暗いところでキーボード入力をする際に役に立つ。また、200万画素Webカメラも搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。

 キーボードはThinkPad伝統の7列フルサイズキーボードの最新モデルが採用されている。使用頻度の高いEscキーやDeleteキーが大型化されているほか、クリック感も改善されており、非常に使いやすい。キーボード左上には、スピーカーミュートボタンやボリュームボタン、マイクミュートボタン、ThinkVantageボタン、電源ボタンが用意されている。

 ポインティングデバイスとしては、スティック型デバイスの「TrackPoint」とタッチパッドから構成される「ウルトラナビ」を採用。タッチパッドは2本指でのマルチタッチ操作に対応し、TrackPointとの同時利用が可能である(どちらかを無効にすることも可能)。TrackPointとタッチパッドを併用する際には、それぞれのマウスカーソル移動速度を別々に設定することもできるので便利だ。さらに、パームレスト右側に指紋センサーを搭載しており、指紋認証によるログオンなどが可能だ。

 光学ドライブとして、DVDスーパーマルチドライブを搭載。このDVDスーパーマルチドライブはウルトラベイ・スリムに装着されており、着脱が可能だ。

液晶は14.1型ワイドで、解像度は1,440×900ドットだ。アンチグレアタイプの液晶なので、外光が映り込みにくく、目も疲れにくい液晶上部には白色LEDを採用したキーボードライトが搭載されているので、暗い場所での操作に便利だ。また200万画素Webカメラも搭載されているキーボードは全94キーで、キー配列はThinkPad伝統の7列仕様だ。ストロークも十分で、キーピットも均等なので、快適にタイピングできる
キーボード左上に、スピーカーミュートボタンやボリュームボタン、マイクミュートボタン、ThinkVantageボタン、電源ボタンが用意されている。ミュートボタンや電源ボタンにはLEDが内蔵されており、状況が一目でわかるポインティングデバイスとして、TrackPointとタッチパッドから構成されるウルトラナビを搭載パームレスト右側に、指紋センサーを搭載。指紋認証でログオンが可能
右側面に、光学ドライブとしてDVDスーパーマルチドライブを搭載DVDスーパーマルチドライブはウルトラベイ・スリムに装着されており、着脱が可能

●DisplayPortやeSATAもサポート、ワイヤレス機能も充実

 T410s Optimusは、インターフェイスやワイヤレス機能も充実している。USB 2.0ポートを3基備えているが、そのうち1つは電源供給能力を強化したPowered USB仕様で、もう1つはeSATA兼用となっている。さらに、ミニD-Sub15ピンのミニD-Sub15ピン出力やGigabit Ethernetに加えて、DisplayPortやSDカードリーダも搭載している。

 ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetooth Ver.2.1+EDR、WiMAXの3種類にサポート。右側面にはワイヤレススイッチが用意されており、ワイヤレス機能の有効/無効をワンタッチで切り替えられるのも便利だ。

左側面には、USB 2.0とヘッドフォン出力、SDカードリーダが用意されている右側面には、ワイヤレススイッチと光学ドライブ(DVDスーパーマルチドライブ)が用意されている
背面には、USB 2.0×2(1つはeSATA兼用で、もう1つはPowered USB対応)とミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、DisplayPortが用意されている背面ポート類のアップ。左からGigabit Ethernet、Powered USB、USB 2.0/eSATA兼用、DisplayPort右側面手前には、ワイヤレススイッチが用意されており、無線LANやBluetooth、WiMAXといったワイヤレス機能の有効/無効の切り替えが可能

●バッテリ駆動時間は公称で約4.7時間

 バッテリは11.1V/3,900mAhの6セル仕様で、スリムな角形セルを使っているため、容量はそれほど大きくはない。公称バッテリ駆動時間は約4.7時間となっている。バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定で、バッテリ駆動時間を計測したところ、4時間13分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」に設定し、バックライト輝度は中)。もう少し持って欲しかったところだが、モバイルノートPCとして求められる最低限のラインはクリアしている。ACアダプタも、このクラスのノートPCとしてはコンパクトで軽いほうである。

ThinkPad T410s Optimus対応版のバッテリ。薄型セル採用でスリムだバッテリは11.1V/3,900mAhの6セル仕様だCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ThinkPad T410s Optimus対応版のACアダプタ。サイズはやや大きめだCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●GPU搭載で3D描画性能が大きく向上

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage 64bit版」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にレノボ「ThinkPad T410s」(Optimus非対応版)、パナソニック「Let'snote J9ハイパフォーマンスモデル」、デル「Studio 15 OPIデザイン」の値も掲載した。

 TP410s Optimusの売りであるGPU自動切り替え機能のOptimusは、アプリケーションごとのプロファイルに従って動作するようになっており、基本的にはユーザーが切り替えを意識する必要はない。主要アプリケーションのプロファイルは、ディスプレイドライバに含まれており、NVIDIAコントロールパネルから確認でき、プロファイルの設定(CPU内蔵グラフィックス機能を使うか、単体GPUを使うか)の変更も可能だ。

 ディスプレイドライバのバージョンアップとともに、新しいアプリケーションに対応したプロファイルが追加されるが、プロファイルに登録されていないアプリケーションでも、手動でOptimusの設定を追加できる。そこでベンチマークテストは、すべて単体GPUを利用する設定で計測した(バッテリベンチマークのBBenchは、CPU内蔵グラフィックスを利用する設定で計測)。

 結果は、下の表に示したとおりで、Optimus非対応のThinkPad T410sと比べて、T410s Optimusは、CPUスペックが向上しているため、PCMark05のCPU Scoreは、1割ほど向上している。また、3D描画性能が結果を左右する3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmarkのスコアは、2倍以上に向上している。その反面、HDDが1.8インチなので、2,5インチHDDを搭載する一般的なノートPCに比べると、ディスクパフォーマンスは低く、PCMark05のHDD ScoreやCrystalDiskMarkのスコアは劣る。

NVIDIAコントロールパネルを開き「3D設定の管理」→「プログラム設定」で、Optimusのプロファイルの確認と設定変更が可能あらかじめ多くのアプリケーションに対応したプロファイルが用意されている

【表】ベンチマーク結果

ThinkPad T410s OptimusThinkPad T410sThinkPad Edge 11"Let'snote J9ハイパフォーマンスモデルStudio 15 OPIデザイン
CPUCore i5-560M(2.66GHz)Core i5-430M(2.26GHz)Core i3-380UM(1.33GHz)Core i5-460M(2.53GHz)Core i5-430M(2.26GHz)
ビデオチップNVS 3100MCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアMobility Radeon HD 4570
PCMark05
PCMarksN/A5677N/A7746N/A
CPU Score81277375297671496677
Memory Score65896184324056295738
Graphics Score36802610149222395234
HDD Score423242915259283194646
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score6268未計測3507未計測未計測
Memories Score3362未計測2129未計測未計測
TV and Movie Score2456未計測2534未計測未計測
Gaming Score4085未計測2279未計測未計測
Music Score5332未計測3645未計測未計測
Communications Score7429未計測2772未計測未計測
Productivity Score4612未計測3050未計測未計測
HDD Score2870未計測3318未計測未計測
3DMark03
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)970041012784334510687
CPU Score1782106862511441604
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH66362458132224455991
LOW92563808195338938933
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP10096.6389.3798.27100
HP10099.9710099.97100
SP/LP10010010099.9799.97
LLP10099.9799.9799.97100
DP(CPU負荷)2221322919
HP(CPU負荷)1412171311
SP/LP(CPU負荷)1071188
LLP(CPU負荷)106968
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード45.62MB/sec36.20MB/sec74.54MB/sec189.4MB/sec60.85MB/sec
シーケンシャルライト42.76MB/sec40.05MB/sec73.84MB/sec154.6MB/sec60.53MB/sec
512Kランダムリード22.60MB/sec23.30MB/sec31.42MB/sec172.5MB/sec27.79MB/sec
512Kランダムライト25.09MB/sec24.25MB/sec33.12MB/sec106.2MB/sec40.09MB/sec
4Kランダムリード0.365MB/sec0.425MB/sec0.422MB/sec12.8MB/sec0.424MB/sec
4Kランダムライト0.842MB/sec0.961MB/sec1.097MB/sec20.91MB/sec1.399MB/sec
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)4時間13分4時間15分6時間12分未計測4時間6分
Lバッテリなしなしなし10時間15分なし

●Optimus対応でより快適に

 T410s Optimusは、Optimusに対応したことで、単体GPU非搭載のT410sに比べて3D描画性能が大きく向上し、OSやアプリケーションも快適に動作することが魅力だ。

 ただし、GPUとしてはエントリークラスなので、最新ゲームで遊びたいという人には向かない。HDDが1.8インチなので、ディスクパフォーマンスがあまり高くないことが残念だが、直販サイトで購入できるカスタマイズモデルなら、1.8インチHDDの代わりに128GB SSDを搭載することが可能で、弱点はなくなる。指紋センサーやキーボードライトを搭載するなど、業務で使うのにも向いている。出張などに持って行くノートPCが欲しいが、パフォーマンスや画面サイズには妥協したくないという人にお勧めの製品だ。

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(2010年 11月 16日)

[Text by 石井 英男]