ソニー「VAIO J VPCJ119FJ/B」
〜TV機能を充実させた光学式タッチパネルの液晶一体型



ソニー「VAIO J VPCJ119FJ/B」

発売中

価格:オープンプライス



 ソニーは、エントリークラスとして位置付けられている、液晶一体型スリムデスクトップ「VAIO J」シリーズ2010年夏モデルを発売した。シリーズ全モデルでフルHD(1,920×1,080ドット)液晶を搭載するとともに、最上位モデルでは光学式タッチパネル液晶を搭載するなど、従来モデルからのパワーアップが実現されている。今回はその中から、最上位に位置付けられている「VAIO J VPCJ119FJ/B」を紹介しよう。

●フルHD表示対応の光学式タッチパネル液晶を搭載

 ソニーが発売している液晶一体型スリムデスクトップPCは、“ボードPC”と呼ばれており、上位モデルの「VAIO L」シリーズと、エントリーモデルの「VAIO J」シリーズの2製品が用意されている。VAIO Lでは、24型フルHD液晶やBlu-ray Disc(BD)ドライブ、3波対応ダブルデジタルチューナを全モデルが標準採用するなど、デジタルTVからBlu-rayビデオまで、1台でマルチメディアコンテンツをフルに楽しめる、優れたAV性能が大きな特徴となっている。

 それに対してVAIO Jシリーズの従来機種は、1,680×1,050ドット表示対応の20.1型液晶を採用していたり、シリーズの上位モデルにのみBDドライブや地デジダブルチューナを搭載するなど、VAIO Lシリーズに比べ機能面を抑える代わりに、価格を安価に設定したモデルとなっている。もちろん、その傾向は2010年夏モデルでも大きく変わってはいないが、新しいVAIO Jシリーズでは大きな機能強化が実現されたことで、魅力が高まっている。

 その機能強化の最大のポイントとなるのが、液晶パネルだ。全モデルで液晶パネルのサイズが21.5型に大型化されると共に、表示解像度も1,920×1,080ドットのフルHD表示に対応した。これにより、VAIO Lシリーズ同様、地デジなどのHD動画を、クオリティを落とさず楽しめるようになった点は、素直に歓迎できる。液晶表面は光沢処理が施されており、やや外光の映り込みが気になるとともに、上下の視野角がやや狭く、視点を移動させると若干の色合いの変化が感じられるものの、発色は非常に鮮やかで、表示品質は十分に満足できるレベルが確保されている。また、フルHD液晶としてはサイズが21.5型と小さいが、アイコンの文字などが小さすぎて見づらいといった印象もなかった。

 加えて、上位モデルの「VAIO J VPCJ119FJ/B」(以下、VPCJ119FJ/B)では、光学式タッチパネル液晶が新たに採用されている。光学式タッチパネルは、VAIO Lシリーズの上位モデルでも採用されているが、VAIO Jシリーズではこれが初の採用となる。光学式タッチパネルでは、パネル表面に特殊なフィルムなどを取り付ける必要がないので、液晶パネルの表示品質を損なうことなくタッチ操作を実現できるという点が大きな特徴だ。

 また、軽快なタッチ操作が行なえるという点も魅力の1つ。VPCJ119FJ/Bでは、タッチ操作に特化した専用ランチャーやアプリケーションなどがプリインストールされているわけではないが、デジカメなどで撮影した静止画や動画を管理する「Media Gallery」など、VAIOシリーズでおなじみのオリジナルアプリはタッチ操作での快適性も考慮されており、それらをタッチ操作で軽快に利用できるようになった点は嬉しい。もちろん、指を2本利用したマルチタッチにも対応しており、画像の拡大・縮小や回転といった操作も簡単に行なえる。個人的には、エントリーモデルだからこそ、タッチパネル液晶をVAIO J全モデルで採用しても良かったようにも思う。

1,920×1,080ドット表示対応の21.5型液晶を搭載。フルHD液晶の搭載によって、AV能力は大きく強化されている 液晶表面は光沢処理が施されており、発色はかなり鮮やかだが、視野角による色の変化や外光の映り込みは少々気になる
VPCJ119FJ/Bには、光学式タッチパネルを搭載。Media GalleryなどのVAIOオリジナルアプリも、タッチ操作で軽快に利用できる。もちろん、指を2本利用したマルチタッチもサポートしている 光学式タッチパネルを搭載しているため、液晶面はベゼル部のやや奥まった位置に配置されている 液晶パネル上部中央には、31万画素Webカメラ「MOTION EYE」を搭載する

●3波対応ダブルチューナ搭載や2番組同時長時間録画対応などテレビ機能も強化

 VPCJ119FJ/Bのもう1つの大きな進化が、TV関連機能だ。従来モデルでは、上位モデルにのみ地上デジタルダブルチューナが搭載されていたが、2010年夏モデルでは、ラインナップされている4モデルのうち最下位のモデルを除いてダブルデジタルチューナが搭載され、しかも上位2モデルでは、地上デジタル、BSデジタル、110度CSデジタルの3波対応ダブルデジタルチューナが搭載されるようになった。加えて、この3波対応ダブルデジタルチューナには、MPEG-4 AVC/H.264のトランスコーダが2系統搭載されており、MPEG-4 AVC形式を利用した2番組同時の長時間録画が可能となっている。

 TVの視聴や録画などは、付属ソフトの「Giga Pocket Digital」を利用する。こちらも、最新版のVer3.0となり機能が向上。まず、2番組の同時録画や2番組の同時長時間録画に対応するとともに、PSPやウォークマンなどの携帯機器に転送する「おでかけ番組」用のデータは、ワンセグデータを利用するのではなく、フルセグデータから生成されるようになったため、地デジだけでなくBSデジタルや110度CSの番組も転送できるようになった。また、PCをシャットダウンし電源を落としている状態からも、自動で電源を投入し予約録画が行なえるようになった。さらに、野球やサッカーなどのスポーツ中継で、盛り上がったシーンだけを抜き出して再生するダイジェスト再生機能も、ゴルフ、バレーボール、テニス、フィギュアスケートが新たにサポートされた。他にも、チャンネル切り替えの高速化や、録画データのコンテンツ解析を、録画時に同時作成されるおでかけ用データを利用し、録画時に同時に行なうようにすることで、録画終了とほぼ同時にフィルムロールやチャプター操作が可能になる、といった利用時の快適度を高める機能強化が実現された。

 実際に、VPCJ119FJ/BのTV関連機能を利用してみると、とにかく充実した機能に圧倒される。マシン自体の起動や、Giga Pocket Digitalの起動でやや待たされるため、民生用のTVやレコーダのように、電源ボタンを押してすぐにTVや録画データを楽しめるというわけではない。しかし、それさえ終了してしまえば、民生用のHDDレコーダを上回る操作性や機能でTVを楽しめる。一度体験してしまうと、それまでのPCでTVを見たり録画するという概念が大きく覆されるはずで、VAIO JシリーズのTV関連機能の機能強化は、非常に大きな魅力があると言って良さそうだ。

VPCJ119FJ/Bには、地デジ・BS・110度CSの3波ダブルデジタルチューナを搭載。しかも、MPEG-4 AVC/H.264のトランスコーダを2系統搭載し、2番組同時の長時間録画が可能となった 録画時には、放送波をそのまま記録するDRモードと、HDクオリティでビットレートの異なる3モード、SDクオリティの5種類の画質を選択できる おでかけ番組データは、フルセグデータから作成されるようになったため、BSデジタルや110度CSの番組も携帯機器に転送できるようになった。フレームレートも30fpsでワンセグより滑らかだ
おまかせ・まる録をはじめ、機能強化されたダイジェスト機能、録画終了とほぼ同時に利用できるようになったフィルムロールやチャプター操作など、民生機顔負けの充実したTV機能が実現されている TVの視聴や録画、Blu-rayビデオなどの視聴といったAV機能の操作は、付属のリモコンを利用し家電感覚で行なえる

●VAIO Lシリーズと同等の本体デザインに変更

 本体デザインは、基本的には従来モデルを踏襲しているが、見た目の印象は上位モデルのVAIO Lシリーズに近くなっている。液晶下部には大きな空間が用意され、付属のキーボードを収納するスペースとして活用できる点は、VAIOボードPCシリーズに共通する特徴だ。

 本体サイズは、スタンドを最も立てた最小傾斜時で、525×185×398mm(幅×奥行き×高さ)。液晶パネルが大型化したことで、本体サイズも従来モデルより大きくなってはいるが、その差はそれほど大きくなく、省スペース性はほとんど失われていない。本体角度は、背面スタンドを調節することで、8度から30度の間で調節可能。

 パッと見た感じでは、小型のVAIO Lシリーズといった雰囲気で、従来までの柔らかいイメージは失われているが、逆に高級感は高まっている。また、本体ベゼルのカラーは、ブラックとホワイトの2色を用意。中位モデルでは、マットブラックとマットホワイト、ピンクの3色、VAIOオーナーメードモデルでは限定色のブラウンが用意される。加えて、本体カラーに合わせたキーボードウェアを利用し、キーボードのカラーも変更できるので、カラーコーディネートも自在だ。

本体正面。525×398mm(幅×高さ)と、液晶サイズが大きくなった分本体も大きくなった。また、デザインは上位モデルのVAIO Lシリーズに近くなっている 左側面。奥行きは最小傾斜時で185mm、最大傾斜時で310mmと、コンパクトさは受け継がれている 背面。中央のスタンドを操作することで、角度は8度から30度の間で調節できる
右側面。こちらには光学式ドライブがあるだけで、すっきりとしている 電源ボタンは、本体上部右側に配置。隣のDISPLAY OFFボタンで、液晶パネルの表示をオフにできる点は、深夜の録画予約時などに活躍するだろう 本体上部には、空冷ファンの排気口がある。ファンの音は、通常時はほとんど聞こえないが、高負荷時にはわずかに音が気になる

●Arrandale採用で基本スペックも強化

 液晶パネルやTV関連機能だけでなく、基本スペックも強化された。

 CPUは、ノートPC向けのグラフィックス機能内蔵Core iシリーズ、いわゆるArrandaleを採用。最上位となるVPCJ119FJ/Bでは、Core i5-450M(2.40/Turbo Boost時2.66GHz)を採用。下位モデルでは、Core i3-350M(2.26GHz)またはPentium P6000(1.86GHz)が採用される。チップセットは、全モデルともIntel HM55 Expressで、グラフィックス機能は、全モデルCPU内蔵のIntel HD Graphicsが利用される。

 メインメモリは、PC3-8500 DDR3 SDRAMを標準で4GB(最大8GB)搭載。メインメモリ用のSO-DIMMスロットは2スロット用意されており、標準で2GBモジュールが2枚取り付けられている。メモリスロットには、本体背面のフタを開けるとアクセス可能だ。

 HDDは、容量1TBの3.5インチSATAドライブを搭載。試用機では、ディスク回転数が7,200rpmのWestern Digital製「WD1001FAES」が搭載されていた。この内蔵HDDは、背面のスタンドを外すことでアクセスできる。

 光学式ドライブは、BD-R/REの書き込みに対応したBDドライブを標準搭載。スリムタイプのドライブで、右側面に内蔵されている。ちなみに、下位モデルではDVDスーパーマルチドライブが搭載される。

 ネットワーク機能は、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとGigabit Ethernetを標準搭載。そのほかには、IEEE 1394やメモリースティックスロット、SDカードスロットなどが用意されている。

 キーボードおよびマウスは、ワイヤレスタイプのものが付属する。また、TV機能やWindows Media Centerなどの操作が行なえる専用リモコンも付属。この専用リモコンは、PC用のリモコンと言うより、TVやHDDレコーダに付属するリモコンに近いものとなっているので、VAIO JシリーズのTV機能を家電機器と同等の感覚で活用できる。

メインメモリ用のSO-DIMMスロットは2スロット用意されており、標準で4GB搭載。SO-DIMMスロットには背面から簡単にアクセスできる 内蔵HDDは、1TBの3.5インチドライブを搭載。こちらも、背面のスタンド部を外すことで簡単にアクセスできる 光学式ドライブのBDドライブは、本体右側面に搭載。下位モデルではDVDスーパーマルチドライブが搭載される
左側面には、メモリースティックスロット、SDカードスロット、IEEE 1394、USB 2.0×2、ヘッドフォン/マイクの各端子が用意されている 背面には、内蔵チューナのアンテナ接続端子と、USB 2.0×2、Gigabit Ethernetが用意されている BDドライブの奥には、B-CASカードスロットがある
キーボードは無線タイプのものが付属。キーはアイソレーションタイプで、タッチやストロークの深さは、VAIOのノートPCモデルに搭載されるキーボードに近い。キーボードウェアでカラーコーディネートも可能だ マウスも無線タイプのものが付属。スクロールホイール付きの3ボタンレーザーマウスだ

●コンパクトなTV PCとしておすすめ

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の4種類だ。VAIO Jは、ノートPC向けのシステムを採用しているため、今回は比較用として、VAIO Eシリーズの2010年春モデルの結果を加えてある。試用機の詳細なスペックは、表にまとめたとおりだ。

試用機のスペック
CPU Core i5-450M(2.40/2.66GHz)
メインメモリ PC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB(2GB×2)
グラフィック機能 CPU内蔵 Intel HD Graphics
HDD 1TB(WD1001FAES)
OS Windows 7 Home Premium 64bit

  VAIO J VAIO E
CPU Core i5-450M (2.40GHz) Core i3-330M (2.13GHz)
チップセット Intel HM55 Express Intel HM55 Express
ビデオチップ Intel HD Graphics(CPU内蔵) ATI Mobility Radeon HD 5470
メモリ PC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
HDD Western Digital WD1001FAES 500GB HDD
OS Windows 7 Home Premium 64bit Windows 7 Home Premium 64bit
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite 6345 5123
Memories Suite 3724 3104
TV and Movies Suite 4119 3261
Gaming Suite 3568 3977
Music Suite 6651 4852
Communications Suite 5206 3929
Productivity Suite 5709 4246
HDD Test Suite 5189 3108
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score N/A N/A
CPU Score 7080 5669
Memory Score 5738 5236
Graphics Score 2406 4398
HDD Score 7435 4508
3DMark06 Build 1.1.0 0906a 1,024×768ドット
3DMark Score 1497 3661
SM2.0 Score 447 1265
HDR/SM3.0 Score 604 1495
CPU Score 2841 2247
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
LOW 3573 7662
HIGH 2354 4874
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ 6.8 6.2
メモリ 5.9 5.9
グラフィックス 4.7 5
ゲーム用グラフィックス 5.1 6.2
プライマリハードディスク 5.9 5.6

 結果を見ると、ノートPC向けのシステムを採用しているが、十分に満足できるレベルの処理能力が発揮されていると言っていいだろう。比較用のVAIO Eシリーズは、CPUにCore i3-330Mを採用していることもあり、VAIO Jの方が全体的な処理能力はかなり勝っている。これは、動作クロック差もあるが、Core i5ではTurbo Boostテクノロジーに対応していることも大きいはずだ。

 ただし、3D描画能力に関しては、VAIO Eでは外部GPUとしてATI Mobility Radeon HD 5470が搭載されているため、CPU内蔵のIntel HD Graphicsを利用するVAIO Jは大きく劣っている。3D描画のゲームなどは、動作の軽いものを除いて、快適なプレイは厳しいだろう。とはいえ、HD動画の再生支援機能が搭載されているため、VAIO Jの中心的な用途である、HD動画の再生といったAV用途では、描画能力が問題になることはないと考えていい。

 ちなみに、直販サイト「ソニースタイル」で販売されているVAIOオーナーメードモデルでは、CPUとしてCore i7-620M、外部GPUとしてNVIDIA GeForce 310Mの選択が可能となっているので、CPU処理能力や3D描画能力を優先させたいのであれば、オーナーメードモデルがおすすめだ。

 VAIO Jは、従来までの安価な液晶一体型デスクトップから、安価ながら優れたAV能力を備えた液晶一体型デスクトップへと進化を遂げた。特に、今回取り上げた最上位モデルのVPCJ119FJ/Bは、液晶サイズを除き、上位シリーズであるVAIO Lシリーズとほぼ同等の機能が盛り込まれている。つまり、クラスを超えた機能が実現されていると言ってもいいだろう。実売価格は19万円前後と、エントリークラスとして考えるとかなり高価なのは事実だが、それもこの充実したAV機能を考えると納得できる。VAIO Lシリーズの優れたAV能力は魅力だが、24型液晶搭載でややサイズが大きく置き場所に困るという人にとって、ほぼ同等の機能を持ち、ボディもコンパクトなVAIO Jシリーズはうってつけの製品となるはずだ。

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(2010年 7月 16日)

[Text by 平澤 寿康]