~液晶が大型化したEee PCブランドのタブレットノート |
ASUSTeKは、コンバーチブル型タブレットノートの新モデルとなる「Eee PC T101MT」を発売した。従来モデルである「Eee PC T91MT」から液晶サイズが大型化されたことで、タッチ操作による使い勝手が向上している。
●10.1型タッチスクリーン液晶を搭載従来モデルであるEee PC T91MTは、Eee PCシリーズとして初めてマルチタッチ対応の8.9型タッチスクリーン液晶を搭載し、コンバーチブル型タブレットスタイルを採用したことで話題となった。しかも、1kgを切る小型軽量ボディが実現され、標準でワンセグチューナを搭載するなど、常に持ち歩き、外出先で利用することを主眼とした仕様が大きな特徴となっていた。
今回登場したEee PC T101MTは、液晶サイズが一般的なネットブックと同等の10.1型へ一回り大きくなっている。それに伴い、本体サイズは264×181×31mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測で1,396gと、従来モデルよりもかなり大きく、重くなっている。また、仕様面も、ワンセグチューナが省かれ、一般的なネットブックとほぼ同等となっている。つまり、携帯性を重視した従来モデルに対し、大型化による使い勝手を重視したモデルと考えて良さそうだ。
実際大型化したことで、指を利用したタッチ操作でも、表示アイコンやメニューボタンが小さすぎて操作しづらいと感じる場面はほとんどなかった。今回は、従来モデルと直接比較できなかったが、タッチ操作の快適度は向上しているはずだ。
タッチスクリーンは、従来モデル同様、指を2本利用したマルチタッチ操作に対応。スクロール操作や拡大、縮小、回転といった操作が軽快に行なえる。また、付属の「PenWrite設定」により、タッチスクリーンの感度を調節できる点はなかなか面白い。これは、付属のスタイラスでの操作に最適化した感度と、指での操作に最適化した感度を切り替えるもの。スタイラスでの操作に最適化した「ペンモード」にすると、指でのタッチをほとんど認識しなくなり、マルチタッチ機能も無効になる。これにより、手書き入力時に、手のひらがタッチスクリーンに触れて誤動作が起こるといったことがほとんど発生しなくなる。このモードは、スタイラスでの操作時にかなり重宝する。
液晶パネルは、表面にタッチスクリーンが配置されていることもあり、わずかにくすんだような表示品質となっている。また、外光の映り込みもやや激しく、気になることが多い。それでも、全体的には一般的なネットブックの液晶表示品質と比べ、大きく劣っていることはない。表示解像度は、1,024×600ドット。
タッチ操作の様子 |
マルチタッチ操作の様子 |
ペンモード時のタッチ操作の様子 |
●液晶パネルを回転し、ピュアタブレットスタイルで利用可能
液晶パネル部は、従来モデル同様、ヒンジが180度回転するようになっており、ノートPCスタイルだけでなくピュアタブレットスタイルでも利用可能だ。液晶中央下部の1点ヒンジによる回転機構となっているが、液晶面のぐらつきはそれほど大きくなく、使用時に画面のぐらつきが気になることはほぼないと考えていい。
液晶パネルの回転機構を備えているため、ピュアタブレットスタイルでも電源操作が行なえるよう、電源ボタンは液晶パネル左下に用意されている。また、電源ボタン右には、画面の回転を操作するボタンが用意されている。このボタンを長押しすると、画面上にアイコンが表示され、アイコンが90度ずつ回転していく。アイコンが好みの向きになったときにボタンを放せば、その向きに画面が切り替わる。加速度センサーを利用した機器と比較すると、スマートさに欠けるが、実用上問題になることはないはずだ。
また、この画面回転用のボタンは、短く押すことでタッチ操作用のオリジナルランチャー「Touch Gate」が起動するようになっている。写真データの管理ツール「フォトファン」をはじめ、Webブラウザ、計算機、インターネットラジオなどが登録されており、いずれもタッチ操作で軽快に利用できる。
付属のスタイラスは、液晶パネル右下に収納できる。このスタイラスは、不意に収納部から抜け落ちないよう、先端部分に磁石が取り付けられている。また、スタイラスは伸縮構造となっているので、手の大きな人でも扱いやすい。
画面を回転させている様子 |
●アイソレーションタイプのキーボードを搭載
キーボードは、キーとキーの間が離れた、アイソレーションタイプのキーボードを採用している。キーピッチは実測で約17.5mm。全体的にたわみを感じる点は少々気になるものの、主要キーでピッチが狭くなっているものはほとんどなく、キー配列も変則的な部分はない。
ポインティングデバイスのタッチパッドは、ネットブックとして標準的なサイズのものが搭載されている。個人的には、クリックボタンが左右一体型になっている点が気になるが、全体的には使い勝手は十分満足できる。
アイソレーションタイプのキーボードを搭載。ややたわみが気になるが、変則的な配列やピッチが狭くなっている部分は非常に少なく、使い勝手は申し分ない | キーピッチは、実測で約17.5mm。フルサイズではないが、窮屈さを感じることなく十分快適に利用できる | ポインティングデバイスのタッチパッドは、ネットブックとして標準的なサイズで、使い勝手は十分。クリックボタンが一体型となっている点は少々気になる |
●基本スペックが強化され快適度が向上
従来モデルのEee PC T91MTでは、CPUに1.33GHz動作のAtom Z520が採用され、グラフィック機能はチップセットのUS15W内蔵機能が利用されていたこともあり、利用状況によっては、処理能力不足を感じる場面があった。それに対しEee PC T101MTでは、CPUが1.66GHz動作のAtom N450に強化。Windows 7 Home Premiumでもきびきびと動作し、処理の重さを感じる場面はかなり減った。もちろん、CULVノートなどとの比較では、まだまだ重さを感じる場面が多いのは事実だが、それでも一般的なネットブック相当の処理能力は確保されており、従来モデルに比べると確実に快適度は上がっている。
その他の基本スペックは、メインメモリ容量が標準2GB、HDD容量は320GB、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 2.1+EDRを標準搭載など、一般的なネットブックとほぼ同等だ。
ポート類は、多くが背面側に集められている。左側面には、ヘッドフォン/マイク端子とSDカードスロット、右側面にはUSB 2.0×1のみで、背面に、USB 2.0×2、100BASE-TX対応のEthernet、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、電源コネクタが用意されている。これは、ピュアタブレットスタイルでは側面を手に持って利用することが多いため、周辺機器を取り付けた場合の操作性を考慮してのものだろう。
●安価なタブレットノートを探している人にオススメ
では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類を利用した。また、比較用として、Eee PC 1005HAとEee PC 1101HAの結果も加えてある。ただし、比較用の2機種は、Windows XP搭載の旧モデルのため、参考値として見てもらいたい。
結果を見ると、パフォーマンスは一般的なネットブック相当であるということがわかる。従来モデルと同じAtom Z520を搭載するEee PC 1101HAとの比較は、ほとんどの点で結果が向上しており、従来モデルより快適に利用できる。
それに対し、描画関連の結果はあまり伸びていない。もちろん、比較対象の製品はOSがWindows XPであるため、直接の比較は難しいが、描画能力に関しては、それほど優れるものではないと言っていいだろう。また、GMA 3150はHD動画再生支援機能を持たないため、HD動画の再生に関しては、他のネットブック同様、非常に厳しい。
Eee PC T101MT | Eee PC 1005HA | Eee PC 1008HA | Eee PC 1101HA | |
CPU | Atom N450(1.66GHz動作) | Atom N280(1.66GHz動作) | Atom N280(1.66GHz動作) | Atom Z520(1.33GHz動作) |
ビデオチップ | Intel GMA 3150 | Intel 945 GSE Express | Intel 945 GSE Express | Intel US15W |
メモリ | 2GB | 1GB | 1GB | 1GB |
OS | Windows 7 Home Premium | Windows XP Home Edition SP3 | Windows XP Home Edition SP3 | Windows XP Home Edition SP3 |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||||
PCMark Score | 1617 | 1647 | 1661 | 1104 |
CPU Score | 1420 | 1454 | 1556 | 1232 |
Memory Score | 2419 | 2525 | 2523 | 1972 |
Graphics Score | 528 | 626 | 633 | 270 |
HDD Score | 4933 | 4667 | 4774 | 4110 |
HDBENCH Ver3.40beta6 | ||||
All | 41339 | 38784 | 40797 | 31255 |
CPU:Integer | 96256 | 98572 | 98645 | 78063 |
CPU:Float | 70057 | 68660 | 68702 | 53943 |
MEMORY:Read | 55263 | 51025 | 51204 | 40112 |
MEMORY:Write | 55660 | 50611 | 51552 | 40466 |
MEMORY:Read&Write | 97660 | 90316 | 90180 | 71015 |
VIDEO:Recitangle | 8142 | 18172 | 18158 | 5768 |
VIDEO:Text | 3580 | 9792 | 10192 | 4132 |
VIDEO:Ellipse | 3092 | 4856 | 4880 | 5400 |
VIDEO:BitBlt | 182 | 255 | 208 | 116 |
VIDEO:DirectDraw | 14 | 30 | 29 | 16 |
DRIVE:Read | 64321 | 56952 | 59534 | 58480 |
DRIVE:Write | 60735 | 53696 | 54151 | 33941 |
DRIVE:RandomRead | 22475 | 17018 | 25104 | 14691 |
DRIVE:RandomWrite | 24491 | 21764 | 26202 | 20221 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
LOW | 1250 | 1537 | 1543 | 519 |
Windowsエクスペリエンスインデックス | ||||
プロセッサ | 2.3 | N/A | N/A | N/A |
メモリ | 4.4 | N/A | N/A | N/A |
グラフィックス | 3.1 | N/A | N/A | N/A |
ゲーム用グラフィックス | 3.0 | N/A | N/A | N/A |
プライマリハードディスク | 5.7 | N/A | N/A | N/A |
次に、バッテリ駆動時間のチェックだ。まず、Windows 7の省電力設定を「省電力」に、ASUSオリジナルの省電力ツール「Eee Super Hybrid Engine」を「Power Saving Mode」に設定するとともに、バックライト輝度を40%に設定し、無線機能は無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、駆動時間は約5時間04分だった。カタログ値でのバッテリ駆動時間は約5.4時間だが、それに近い数値が得られており、まずまず満足できる駆動時間だ。また、Windows 7の省電力設定を「高パフォーマンス」、Eee Super Hybrid Engineを「Super Performance Mode」に設定し、バックライト輝度を100%、無線LANとBluetoothをONにした状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)を連続再生させた場合には、約2時間44分だった。常にフルパワーでバッテリ駆動させることは少ないと思うが、それでも2時間40分を超える駆動となっており、バッテリ駆動に関しては満足できると言っていいだろう。
ちなみに、付属のACアダプタは、従来のEee PCシリーズ同様に非常にコンパクトで、重量も電源ケーブル込みで実測217gと軽量だ。本体と同時に持ち歩いてもほとんど苦にならないだろう。
バッテリは、容量4,900mAhのリチウムイオンバッテリが搭載される | 付属のACアダプタは、従来のEee PCシリーズ付属のものと同様、非常にコンパクトだ | 電源ケーブル込みでも重量は実測で217gしかなく、非常に軽量だ |
Eee PC T101MTは、基本スペックこそネットブック相当ではあるが、タッチスクリーン液晶を搭載し、コンバーチブル型タブレットスタイルを採用していることで、ネットブックとは異なる位置付けの製品に仕上がっている。従来モデルよりも液晶サイズが大きくなったことで、タッチ操作がやりやすくなっている点、基本スペックが向上して快適度が高まっている点なども魅力だ。
本体サイズの大型化とともに、重量も重くはなっているが、それも他のネットブックとの比較では、特に大きく重いということはない。実売で6万円弱という価格は、ネットブックとして考えると少々高価ではあるが、コンバーチブル型タブレットノートと考えると間違いなく安価だ。使い勝手に優れる安価なタブレットノートを探しているなら、購入を検討する価値が十分にある製品と言っていいだろう。
(2010年 7月 15日)
[Text by 平澤 寿康]