富士通「ESPRIMO FH550/3AM」
~3D映像対応の液晶一体型デスクトップ



富士通「ESPRIMO FH550/3AM」

発売中
価格:オープンプライス


 富士通は、3D表示対応の液晶一体型デスクトップ「ESPRIMO FH550/3AM」を発売した。Blu-ray 3Dなどの3D映像を楽しむのはもちろん、3D撮影が可能なWebカメラを搭載し、自分で3D映像を作成する楽しみも盛り込んだ、意欲的なモデルとなっている。

●偏光方式の3D表示機能を採用

 「ESPRIMO FH550/3AM」(以下、FH550/3AM)が採用する3D表示方式は、「偏光方式」と呼ばれるものだ。液晶パネル表面に偏光フィルムを貼り付けるとともに、専用の偏光めがねを利用して表示映像を見ることで、左右の目に対応した映像のみが届き、3次元映像として見えることになる。

 FH550/3AMが採用する偏光方式は、ハードウェアとして液晶パネル表面の偏光フィルムと偏光めがねがあればよく、低コストで実現できるという点が大きな特徴だ。映像の1フレームに、左右の目に対応する映像を1ラインごとに表示させるという仕様のために、映像の解像感が失われるという欠点はあるものの、安価に3D表示を実現できるために、エントリー向けのPCでは、有利となる。

 FH550/3AMでは、3D映像再生ソフトとして「Fujitsu PowerDVD9 3D Player」が付属している。Fujitsu PowerDVD9 3D Playerは、標準でBlu-ray 3Dの再生に対応しており、今後続々登場してくるBlu-ray 3Dを、追加のハードやソフトを用意することなく楽しめる。また、サイドバイサイド方式の3D映像にも対応しており、既存の3D表示Blu-rayビデオやDVDビデオなども再生可能だ。

 加えて、一般のDVDビデオなどの2D映像を、擬似的に3D表示する機能も盛り込まれている。擬似的な3D表示のため、映像ソースによっては立体感に違和感を感じることもあるが、2D表示で見る場合とは異なる臨場感が生まれ、思った以上に楽しめる場合もある。

 今回は、手元にBlu-ray 3Dソフトが無かったため、Blu-ray 3Dの視聴を試すことはできなかったが、サイドバイサイド方式の3D DVDを用意して3D映像を試してみた。すると、きれいな3Dで見るには、かなり視聴場所が限定されるという印象が強かった。特に上下に視点がずれると、立体感が失われ、映像が2重に見えるようになる。ただ、視点が合えば、非常にきれいに3D映像が楽しめた。また、もともとがDVDということもあり、解像感が失われているといった印象もそれほど無かった。加えて、液晶シャッター方式に比べて目の疲れもそれほど大きくなく、気楽に3D映像を楽しむには最適かもしれない。ちなみに、基本的には液晶画面からやや離れた位置から見たほうが、きれいに3D映像が楽しめるようだ。

偏光方式の20型ワイド液晶を搭載。偏光フィルターが貼られているが、表示品質は失われていない付属の偏光めがね。Blu-ray 3Dなどの3D映像を楽しむ場合に利用する
Blu-ray 3Dや、2D映像の疑似3D表示が行なえる「Fujitsu PowerDVD9 3D Player」が標準添付しているエントリーモデルながら、Blu-rayドライブが標準搭載されている

●3D Webカメラを利用し、3D写真の撮影や、ソフトのジェスチャーコントロールが可能

 FH550/3AMには、液晶中央上部に2個の130万画素Webカメラが、横に並んで搭載されている。この2個のWebカメラは「3Dカメラ」と名付けられており、通常のWebカメラとして利用するだけでなく、付属の専用ソフト「3Dカメラビューアー」を利用して、3Dで写真や動画を撮影できるようになっている。

 3Dカメラビューアーで撮影した3D写真や3D動画は、3Dカメラビューアーを利用して再生する。つまり、FH550/3AMをはじめとする、他の3Dカメラビューアー付属PCでなければ、せっかくのデータも活用できないわけで、この点はかなり残念。ただ、一般的な3D映像対応PCは、3D映像コンテンツを再生したり、ゲームを3D画像で楽しむというように、既存の3Dコンテンツを楽しむだけのものが多い中で、自分で3D写真や3D動画を作成して楽しめる機能を盛り込んでいる点は、評価していいのではないだろうか。

 そして、この3Dカメラを利用したもう1つの特徴が、体(手)を利用して、DVD再生ソフトなどのマルチメディア再生ソフトの操作が行なえる「ジェスチャーコントロール機能」を実現しているというものだ。例えば、DVD視聴中のチャプタースキップやボリューム操作、TV視聴時のチャンネル切り替えなどを、キーボードやマウス、付属のリモコンを使わずに行なえる。

 ジェスチャーコントロール機能を実現しているのは、「PointGrab」というソフトだ、PointGrabには、あらかじめソフトが登録されており、そのソフトが起動すると自動的に連動して起動する。そして、Webカメラを利用して正面にいる人の手の動きを感知し、手の動きによってソフトの操作を実現している。

 手を顔の横あたりに上げて小刻みに左右に振ると操作メニューが表示されると共に、手のアイコンが表示される。そして、操作したいボタン向かって手を動かし、手のアイコンを操作ボタン上まで移動させることで、ソフトの操作を行なう。

 ジェスチャーコントロール自体は、基本的な操作しか行なえないのと、操作に慣れが必要ということもあり、常用するのは少々厳しい。また、不意にメニューが表示され、邪魔に感じることも多々あった。ただ、手元にリモコンがない場合など、状況によっては便利に活用できるだろう。

130万画素Webカメラが2個並んで搭載されており、3D写真や3D動画の撮影が行なえる3D写真や3D動画の撮影は、付属の「3Dカメラビューアー」を利用して行なう付属の「PointGrab」を利用して、対応ソフトを手を利用したジェスチャーで操作できる

●ダブル地デジチューナ搭載で、2番組同時録画をサポート

 FH550/3AMは、どちらかというとエントリークラスに位置付けられている製品だが、機能面はなかなか充実している。

 まず、冒頭でも紹介しているように、3D表示に対応しているとともに、標準でBlu-ray 3Dをサポートしている点はかなり嬉しい。Blu-ray 3Dへの対応は、3D表示機能だけでなく、再生ソフトやBlu-rayドライブ側の対応も必要となるが、特に追加のソフトやハードを用意せずともBlu-ray 3Dが楽しめるという点は、やはり魅力が大きい。

 また、家庭向けPCでほぼ必須の機能となりつつあるTV機能に関しても、標準で地上デジタルダブルチューナが搭載されているため、裏番組録画や2番組同時録画が可能。TVの視聴や録画は、Windows Media Centerを利用するようになっており、付属のリモコンを利用して家電感覚で操作できる点も嬉しい。

 搭載する液晶パネルは、1,600×900ドット表示対応の20型ワイドスーパーファインVX液晶だ。高輝度かつ発色性能に優れ、非常に鮮やかな映像が表示される。液晶サイズが20型と、液晶一体型デスクトップとしては小型なため、ボディサイズも497×198×391mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトで、省スペース性に優れる。液晶表面は光沢処理が施されており、外光の映り込みはやや激しい。また、表面に貼られている偏光フィルムは、裸眼では視認性をほとんど妨げないため、表示品質が下がる心配はない。

 基本スペックは、CPUがCore i3-350M(2.26GHz)、メインメモリが標準4GB、HDD容量が1TB。グラフィックス機能は、CPU内蔵のIntel HD Graphicsが利用される。このあたりは、エントリークラスのPCとしてほぼ標準的なものだが、実際に利用する上でパフォーマンス不足を感じることはほとんどなく、十分快適に利用できる。ネットワーク機能は、Gigabit Ethernetに加え、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANが標準搭載されている。

本体正面。20型と小型の液晶を採用しているため、497×391mm(幅×高さ)と省スペース性に優れる左側面。奥行きも198mmと短く、デスク上に設置しても邪魔になることはないだろう背面。コネクタ類は最小限のものが用意されているだけだ
右側面。デザインはかなりシンプルで、落ち着いた印象が強い液晶面は30度まで角度を変更できる液晶中央下部には、タッチセンサー式の電源ボタンや輝度調節ボタン、Blu-rayドライブのイジェクトボタンが並ぶ
液晶表面は光沢感が強く、外光の映り込みが激しい左側面には、USB 2.0×2とSDカードスロット、ヘッドフォン・マイク端子が用意されている左側面コネクタ奥には、B-CASカードスロットがある
背面右側には、Gigabit Ethernet、USB 2.0×2を用意背面スタンド部奥に、内蔵地デジチューナ用のアンテナ端子がある。左は電源コネクタだ右側面には、Blu-rayドライブとUSB 2.0×1が配置されている
キーボードは、無線タイプの小型キーボードが付属するマウスは、横スクロールにも対応する無線タイプのレーザーマウスが付属するWindows Media Centerを利用したTVの視聴や再生コントロールが行なえる専用リモコンも付属している

●気軽に3D映像を楽しみたい人にオススメ

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の4種類だ。比較用として、VAIO J VPCJ119FJ/Bの結果も加えてある。試用機の詳細なスペックは、下にまとめたとおりだ。

【表】ベンチマーク結果

ESPRIMO FH550/3AMVAIO J VPCJ119FJ/B
CPUCore i3-350M(2.26GHz)Core i5-450M(2.40GHz)
チップセットIntel HM55 ExpressIntel HM55 Express
ビデオチップIntel HD Graphics(CPU内蔵)Intel HD Graphics(CPU内蔵)
メモリPC3-8500 DDR3 SDRAM 4GBPC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB
ストレージHDT721010SLA360Western Digital WD1001FAES
OSWindows 7 Home PremiumWindows 7 Home Premium 64bit
PCMark Vantage Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite50176345
Memories Suite31753724
TV and Movies Suite34494119
Gaming Suite30953568
Music Suite57616651
Communications Suite42975206
Productivity Suite41175709
HDD Test Suite47675189
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score5709N/A
CPU Score58177080
Memory Score53195738
Graphics Score28672406
HDD Score76557435
3DMark06 Build 1.1.0 0906a 1,024×768ドット
3DMark Score17091497
SM2.0 Score521447
HDR/SM3.0 Score695604
CPU Score23212841
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
LOW35113573
HIGH23282354
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ6.26.8
メモリ5.55.9
グラフィックス4.64.7
ゲーム用グラフィックス5.25.1
プライマリハードディスク5.95.9

 結果を見ると、Core i5-450Mを搭載するVAIO Jのほうが、当然だが結果が優れている。とはいえ、CPUのスペックに見合うパフォーマンスは問題なく発揮されており、エントリークラスの液晶一体型デスクトップとして、処理能力に不満を感じる場面はほとんどないだろう。

 また、内蔵のIntel HD Graphicsは、HD動画再生支援機能を備えているため、内蔵地デジチューナを利用した地デジ番組の視聴、内蔵Blu-rayドライブを利用したBlu-rayソフトの視聴時でも、処理落ちなどが発生することは全くなく、スムーズに視聴が行なえた。

 FH550/3AMは、エントリークラスながら、3D表示対応液晶やBlu-rayドライブ、地デジダブルチューナを標準で搭載するなど、充実した機能を実現している。それでいて、既にネットショップなどでは実売価格が15万円を切る店もあるなど、価格も安価に抑えられている。また、使用条件は限られるが、3D Webカメラを搭載し、自分で3D写真や3D動画が撮影できたり、ジェスチャーでソフトの操作が行なえるなど、他にはない機能が盛り込まれている点も面白い部分。液晶サイズが小さいため、迫力のある映像を楽しみたいと考えている人には少々オススメしづらいが、動画関連機能の充実した省スペース性に優れるパーソナル3D PCを探している人なら、十分に満足できる製品と言っていいだろう。

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(2010年 7月 21日)

[Text by 平澤 寿康]