レノボ「ThinkPad T400s Windows 7 Professionalモデル」
~Windows 7の起動時間を短縮する機能搭載



ThinkPad T400s

発売中
価格:BTO



 レノボ・ジャパンの「ThinkPad T400s」(以下T400s)は、パフォーマンス・モバイルノートPC「ThinkPad T」シリーズの最新モデルであり、従来のT400に比べて、厚さと重さを削減した、Tシリーズ最薄となるモデルだ。

 T400sは、2009年6月24日にWindows VistaやWindows XPを搭載した初代モデルが登場。その後、WiMAX内蔵モデルやSSDモデルが追加され、2009年10月22日に、Windows 7のリリースにあわせてWindows 7搭載モデルが登場した。Windows 7搭載モデルの基本的なハードウェアはWindows Vistaモデルと同じだが、「Windows 7 Lenovo Enhanced Experience」(以下Enhanced Experience)と呼ばれる、Windows 7の起動時間を短縮する技術が搭載されていることが特徴だ。

 Windows Vista Business搭載のT400sについては、以前レビューしたが、今回はWiMAX対応のWindows 7 Professional搭載モデルを試用する機会を得たので、起動時間やWiMAXの使用感などを中心にレビューしていきたい。


●薄くて頑丈なボディが魅力

 T400sは、14.1型ワイド液晶と通常電圧版のCore 2 Duoを搭載した、パフォーマンス重視のモバイルノートPCだ。ThinkPadシリーズは、海外での安全基準を満たすために、国内メーカーのモバイルノートPCに比べると、やや厚くて重い製品が多いが、T400sは、ThinkPad Tシリーズの中で最薄、最軽量を実現することにこだわっており、厚さ21.1~25.9mmと、T400に比べて最薄部で6.5mm、最厚部で6mmスリムになり、重量も約2.4kgから約1.79kgへと大幅に軽量化された。14.1型ワイド液晶搭載ノートPCとしては、他のモバイル機と比べても遜色のない携帯性である。単に薄く軽くなっただけでなく、天板にハイブリッドCFRPを採用し、耐衝撃性能も従来以上に向上している。

 T400sは、CPUやメモリ、ストレージなどが異なるいくつかのモデルが用意されているが、試用機は、CPUとしてCore 2 Duo SP9400(2.4GHz)を搭載し、メモリは2GB実装していた。HDDは250GBだが、このクラスのノートPCで一般的な2.5インチHDDではなく、1.8インチHDDを採用しているため、ディスクパフォーマンスはやや犠牲になっている。チップセットは、グラフィックス統合型のIntel GS45 Expressを搭載する。光学ドライブとして、DVDスーパーマルチドライブを搭載しているが、光学ドライブは着脱可能で、代わりに付属のウェイトセーバーを装着することで、重量を軽減可能だ。

ThinkPad T400sの上面。表面はつや消しのマット仕上げで、手になじむ「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。一回りほどThinkPad T400sのほうが大きいThinkPad T400sの底面。中央にメモリスロットカバーが用意されている
メモリスロットカバーを外したところ。SO-DIMMスロットが2基用意されている。上部にはMini PCI Expressスロットがあるメモリの上部にIntelのWiMAX/Wi-Fiモジュールが装着されている
光学ドライブとして、右側面にDVDスーパーマルチドライブを搭載するDVDスーパーマルチドライブは着脱可能で、代わりにウェイトセーバー(右)を装着することで、重量を減らすことができる

●Vista搭載モデルよりも起動時間は13秒程度短縮
パームレスト左に、Windows 7の起動を高速化する「Lenovo Enhanced Experience」のロゴシールが貼られている

 まず、Windows 7の起動高速化技術であるEnhanced Experienceの効果を検証するために、ハードウェア仕様がほぼ同一で、OSとしてWindows Vista Businessを搭載したT400sを用意し、電源オフの状態からOSの起動が完了するまでの時間を計測した。計測は5回行ない、その平均を出したところ、Windows 7モデルでは47秒で起動したのに対し、Windows Vistaモデルでは60秒と、その差は13秒にもなった。

 Enhanced Experienceでは、BIOSやドライバ、アプリケーションのコードを最適化し、起動直後に必要ではないサービスは遅らせて起動するといった、チューニングを丹念に行なうことで、起動時間を短縮しており、SSDモデルなら20秒程度で起動が完了するとのことだ。今回はHDDモデルだったため、もう少し時間はかかったものの、一般的なノートPCのWindows 7起動時間と比べても、かなり早いという印象を受けた。なお、Enhanced Experienceでは、起動時間だけでなく、シャットダウン速度も短縮されており、全体的な使用感は大きく向上している。

【動画】Windows Vista Business搭載のThinkPad T400s(左)とWindows 7 Professional搭載のThinkPad T400sの起動時間の比較。Vistaモデルに比べて、7モデルは起動時間が10秒以上短くなっている

●液晶がアンチグレアタイプで目にやさしい

 液晶サイズは14.1型ワイドで、解像度は1,440×900ドットだ。コンシューマ向けノートPCでは、光沢タイプの液晶を採用した製品が多いが、T400sの液晶はアンチグレアタイプなので、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目の疲れが少ない。

 ThinkPadシリーズの魅力の1つに、キーボードの出来のよさが挙げられる。T400sもその伝統を受け継ぎ、非常に完成度の高いキーボードを搭載している。キー配列やキーピッチ、クリック感など、ノートPCのキーボードとしては文句の付け所がないレベルだ。また、液晶上部には、白色LEDによるキーボード・ライトが搭載されており、暗い場所でのタイピングを助けてくれる。キーボード左上には、電源ボタンや音量調整ボタン、ミュートボタン、マイクON/OFFボタン、ThinkVantageボタンが用意されている。

 ポインティングデバイスとしては、スティック型デバイス「TrackPoint」とタッチパッドから構成される「ウルトラナビ」を搭載。好みに応じてTrackPointとタッチパッドの使い分けが可能で、カーソル移動速度をそれぞれ別々に設定することもできる。タッチパッドはマルチタッチにも対応しており、Vistaモデルでは2本指での操作が可能であったが、Windows 7モデルでは最大4本指での操作に対応している。また、パッドの表面にUVドット印刷による細かな突起が設けられているので、指との摩擦が適度で使いやすい。

 パームレスト右側には指紋センサーを搭載しており、サスペンドやハイバーネーション状態から、指を滑らせるだけで復帰とログインが可能だ。

ThinkPad T400sの液晶は14.1型ワイドで、解像度は1,440×900ドットである。ノングレアタイプの液晶なので、外光の映り込みが少ない液晶上部に、白色LEDによるキーボード・ライトを搭載。暗闇でのキーボード操作を助けてくれるThinkPad伝統の7列キーボードを採用。キーピッチやキーストロークも十分で、タイピングしやすい
ポインティングデバイスとして、TrackPointとパッドから構成されるウルトラナビを搭載。パッドの表面に細かな突起があり、指との摩擦が適度で使いやすいパームレスト右側に指紋センサーを搭載。セキュリティについても安心だ

●eSATAやDisplayPortにも対応

 インターフェイスも充実しており、USB 2.0×3(うち1つは電源供給能力を強化したパワードUSB 2.0仕様)とeSATA(端子はUSB 2.0と兼用)、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)を備えるほか、デジタルディスプレイインターフェイスのDisplayPortにも対応する。さらに、ExpressCard/34スロットも搭載している。ただし、SDメモリーカードスロットなどの小型メモリカードスロットは備えていない。

 ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetooth Ver.2.1+EDRをサポートしており、さらにWiMAXにも対応。本体右側面には、ワイヤレススイッチが用意されており、ワイヤレス機能の有効/無効を素早く切り替えることが可能だ。さらに、今回試用したモデルは、WiMAX機能も内蔵しており、オンラインサインアップでUQコミュニケーションズと契約を行なうことで、WiMAXサービスを利用できる。

左側面には、USB 2.0と音声入出力、ExpressCard/34スロットが用意されている右側面には、ワイヤレススイッチと光学ドライブが用意されている右側面の手前側に用意されているワイヤレススイッチ
背面には、ミニD-Sub15ピンとLAN、パワードUSB 2.0、USB 2.0/eSATA、DisplayPortが用意されている背面の中央部分のアップ。アナログRGB出力とDisplayPortの両方を備えているのは便利だ

●ベイバッテリを装着すれば公称11時間の長時間駆動が可能

 バッテリは、11.1V/3.9Ahの6セル仕様で、一般的な丸型ではなく、厚さが薄い角形セルを利用している。公称駆動時間は約6.3時間だが、光学ドライブを外して、代わりにオプションのベイバッテリを装着することで、最大約11時間もの長時間駆動が可能になる。バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、4時間18分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定し、バックライト輝度は中)。バッテリ駆動時間についても、及第点をつけられるだろう。独自の省電力ユーティリティ「省電力マネージャー」では、パフォーマンス重視か省電力重視かをスライダーで調整でき、現時点の消費電力を知ることができるので便利だ。また、ACアダプタも比較的コンパクトで軽く、携帯性は優れている。

ThinkPad T400sのバッテリ。厚さが薄い角形リチウムイオン電池を採用。11.1V/3.9Ahの6セル仕様で、公称約6.3時間のバッテリ駆動を実現CDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタもこのクラスの製品としてはコンパクトだCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較省電力マネージャーでは、パフォーマンス重視か省電力重視かをスライダーで調整でき、現時点の消費電力を知ることもできる

●WiMAXの使い勝手は良好

 次に、WiMAX機能の使い勝手や接続速度を検証してみたい。T400sでは、「Access Connecitons」という接続ユーティリティがプリインストールされており、接続プロファイル(ロケーション)を選ぶだけで、インターネットへの接続を行なってくれるので便利だ。WiMAXと無線LANは排他使用であり、同時に有効にすることはできないが、無線LANを使っている状態から、Access Connectionsで、ロケーションをWiMAXに切り替え、WiMAXの接続が完了するまでの時間は約14秒であった。

UQ WiMAXへ接続中の様子。右下のトレイに接続状況が表示されている独自の接続ユーティリティ「Access Connections」では、無線LANによる接続も、WiMAXによる接続も一括して管理できるFn+F5キーで、ワイヤレス機能に関する設定画面を呼び出せる。無線LANとWiMAXは排他利用となる

 新宿のビル内と秋葉原駅前の2カ所で、2つのブロードバンドスピード計測サイトを利用して、WiMAXの通信速度を計測してみた。計測は5回行なったが、その結果は下の表にまとめたとおりだ。電波状況に関しては、新宿のビル内よりも秋葉原駅前のほうがよかったが、新宿のビル内でも接続は安定しており、切れてしまうようなことはなかった。秋葉原駅前の場合、スピードテスト/ブロードバンド通信速度測定サイトによる下り速度の実測結果は平均10Mbpsを超えており、なかなかの速度だ。3Gなどと比べて、高速な通信ができることがWiMAXの魅力であり、今後、さらに基地局が増えれば、さらにエリアも広がるだろう。WiMAXの使い勝手や性能についても不満はない。

□WiMAXの通信速度テスト


1回目2回目3回目4回目5回目平均
新宿のビル内
ブロードバンドスピードテストhttp://speed.rbbtoday.com/
下り2.9Mbps3.7Mbps2.4Mbps3.1Mbps2.0Mbps2.82Mbps
上り1.6Mbps850kbps170kbps710kbps1.1Mbps0.89Mbps
スピードテスト/ブロードバンド通信速度測定サイトhttp://speed.rbbtoday.com/
下り5.85Mbps4.73Mbps3.86Mbps5.92Mbps5.21Mbps5.11Mbps
上り958kbps485kbps741kbps856kbps931kbps0.79Mbps
秋葉原駅前
ブロードバンドスピードテストhttp://speed.rbbtoday.com/
下り5.5Mbps5.3Mbps5.2Mbps5.4Mbps5.8Mbps5.44Mbps
上り3.9Mbps3.6Mbps3.6Mbps2.9Mbps4.1Mbps3.62Mbps
スピードテスト/ブロードバンド通信速度測定サイトhttp://speed.rbbtoday.com/
下り11.34Mbps10.91Mbps11.76Mbps10.72Mbps12.02Mbps11.35Mbps
上り1.58Mbps1.52Mbps1.25Mbps1.09Mbps1.72Mbps1.43Mbps

●パフォーマンスも十分に高い

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用に起動時間比較でも利用したレノボ「ThinkPad T400s Windows Vista Businessモデル」や日本HP「HP Pavilion Notebook dm3a」、日本HP「HP Pavilion Notebook dm3i」、NEC「LaVie M」の値も掲載した。

 T400sのPCMark05の総合スコアは4480で、AMDプラットフォーム採用のHP Pavilion Notebook dm3aやCULVノートPCのLaVie Mに比べて、2倍近い値となっている。単体GPUを搭載したHP Pavilion Notebook dm3iにはやや及ばないが、重さ2kg未満のモバイルノートPCとしては、トップクラスのパフォーマンスといえるだろう。ただし、前述したようにHDDが1.8インチであるため、CrystalDiskMarkのスコアは、2.5インチHDDを搭載した他の製品と比べるとやや低くなっている。

□ThinkPad T400s Windows 7モデルのベンチマーク結果


ThinkPad T400s
Windows 7モデル
ThinkPad T400s
Windows Vistaモデル
HP Pavilion dm3aHP Pavilion dm3iLaVie M
CPUCore 2 Duo SP9400(2.4GHz)Core 2 Duo SP9400(2.4GHz)Athlon Neo X2 L335(1.6GHz)Core 2 Duo SP9300(2.26GHz)Core 2 Duo SU2300(1.2GHz)
ビデオチップIntel GS45内蔵コアIntel GS45内蔵コアM780G内蔵コアGeForce G105MIntel GS45内蔵コア
PCMark05
PCMarks44804380278150422826
CPU Score60926082311456042966
Memory Score52765254261450163066
Graphics Score20572089135534481397
HDD Score44714495456350514948
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)24932457248484782048
CPU Score9809836481535495
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH24872450217356761995
LOW38683754397686601367
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.9399.962.4799.9776.43
HP99.9399.9799.9799.9799.97
SP/LP99.9710099.9799.9399.97
LLP99.9799.9799.9799.9799.97
DP(CPU負荷)4844705068
HP(CPU負荷)1919542742
SP/LP(CPU負荷)109391928
LLP(CPU負荷)76351722
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード47.04MB/s39.04MB/s92.55MB/s76.27MB/s60.31MB/s
シーケンシャルライト48.16MB/s35.35MB/s85.19MB/s72.82MB/s66.25MB/s
512Kランダムリード26.89MB/s20.32MB/s36.64MB/s34.69MB/s27.50MB/s
512Kランダムライト30.03MB/s21.37MB/s47.96MB/s32.72MB/s31.19MB/s
4Kランダムリード0.450MB/s0.304MB/s0.489MB/s0.516MB/s0.369MB/s
4Kランダムライト1.049MB/s0.799MB/s1.004MB/s1.025MB/s0.984MB/s
BBench
Sバッテリなしなしなしなしなし
Lバッテリ(標準バッテリ)4時間18分4時間58分4時間18分5時間1分3時間39分
Xバッテリなしなしなしなし7時間26分

●Windows 7とWiMAX搭載でさらに魅力が向上

 T400sは、ThinkPadシリーズの最新モデルだけのことはある、完成度の高いモバイルノートPCだ。前回レビューしたのは、Windows Vista Businessのダウングレード権を利用したWindows XPモデルであったが、Atom搭載ネットブックならともかく、これだけの高いスペックを持ったノートなら、やはり最新のWindows 7で使うべきだろう。Enhanced Experienceの採用により、OSの起動やシャットダウンが高速なので、快適に利用できる。

 また、WiMAX搭載によって、モバイルブロードバンド環境を手軽に実現できるようになったことも大きな魅力だ。携帯性も必要だが、メインマシンとして快適に使えるパフォーマンスが欲しいという人にお勧めしたい。

バックナンバー

(2010年 1月 6日)

[Text by 石井 英男]