サードウェーブ「Prime Note Critea SX」
~13.3型液晶搭載CULVモバイルノート




サードウェーブのPrime Note Critea SX

 サードウェーブの「Prime Note Critea SX」(クリテア エスエックス)は、13.3型ワイド液晶とCULVのIntel Celeronプロセッサ SU2300(デュアルコア/1.2GHz)を採用しながら、重量が1.69kgと比較的軽量を実現したモバイルノートPCで、サードウェーブ系列の小売店である“ドスパラ”などを通じて販売される。

 いわゆるホワイトノートと呼ばれる、ODMメーカーが製造し販売店のブランドで販売される製品と言うことになるが、これまでのホワイトノートにつきまとっていた“大きくて重い”、“完成度がイマイチ”などの印象を吹き飛ばすなかなか完成度の高い製品に仕上がっている。価格も安価な設定がされており、ネットブックではなく、本格的なモバイルノートPCを安価に手に入れたいと思うのであれば要注目の製品だ。

●ホワイトボックス系も高品質で低価格なノートPCへと変わりつつある

 サードウェーブは、PC自作市場の立ち上げ期から秋葉原の老舗PCパーツショップとして知られるドスパラを運営する企業で、現在では秋葉原だけでなく日本各地に展開している小売り業者だ。

 そのサードウェーブが自社ブランドのPCとして展開しているのがPrimeシリーズで、これまでは主にいわゆる“ホワイトボックス”(PCショップや流通業者が自社ブランドで展開するPCのこと)と呼ばれるデスクトップPCがメインとだったが、ここ数年は“ホワイトノート”と呼ばれるノートPCの販売にも非常に力を入れている。今回紹介するPrime Note Critea SX(以下本製品)もそうした製品の1つだ。

 これまでホワイトノートというと、日本のナショナルブランドが展開するようなノートPCに比べるとやや見劣りするという印象を持っている読者も少なくないのではないかと思う。確かに、過去にはそうした時代があったことは否定できないだろう。ノートPCでは製品毎にケースを作ったりするフルカスタム製品だったので、大量に製造するナショナルブランドに比べて価格で不利になり、同じようなスペックでもホワイトノートの方が高いというデスクトップとは逆の現象が起こったりしていた。このため、ホワイトノート市場は、ナショナルブランドのPCには搭載されていないようなハイエンドGPUを搭載する製品中心になり、モバイル向けはほとんど投入されないというのが日本市場の現状だった。

 しかし、そうした状況は明らかに変わりつつある。ホワイトノートの品質は数年前に比べて明らかに向上し、かつ価格はナショナルブランドのノートPCを下回りつつあるのだ。なぜかといえば、業界のリーダーであるIntelがこの市場に非常に力を入れているからだ。Intelは台湾のODMメーカー(ブランドメーカーに変わって製品の設計、製造を行なう企業)に働きかけ、より優れたデザインのホワイトノートを設計し、マザーボードや液晶パネルなど仕様を統一し標準品を使えるようにすることでより低コストでホワイトノートを製造できるような環境を整えてきたからだ。特に今年に入り、そうした製品が多数出回るようになった。

 今回取り上げる本製品がそうした製品の1つかどうかは外部から推測するしかないが、サードウェーブが開催した本製品の発表会には、Intelがゲストとして呼ばれており、Intelからのサポートがかなり手厚いことを伺わせている。

●黒をベースとしたシックなデザインを採用した13.3型ワイド液晶搭載モバイルノートPC

 本製品は13.3型ワイド液晶(1,366×768ドット)を搭載したモバイルノートPCになる。デザインは黒を基調にしたシックなもので、キーボードの周囲と天板にはメッシュが入っており、デザイン上のアクセントになっている。本製品のように持ち歩くPCの場合には、ファッションと合うかどうかも気になるところだと思うが、黒であればどんな色の服とも合わせることが可能であり、そうした意味でも無難な色選択ということができるだろう。

 本体のポート類は左右に集められており、右側面にはオーディオ、USB、eSATA/USB共用、HDMI出力、ExpressCard/34スロット、Gigabit Ethernet端子、左側面にはアナログRGB出力、USB、メモリカードリーダー(SD/MMC/メモリスティック)がそれぞれ用意されている。いずれも、現在のモバイルノートPCとしては不足なく、十分満足できるものと言えるだろう。モバイルノートPCとしては珍しく、eSATAのポートが標準で本体に用意されているのは特筆でき、自宅やオフィスではeSATAのHDDを接続して利用し、外出時には本体だけを外して持って行くという使い方ができる。

 キーボードは18mmピッチの6列配列で、一般的なもの。エンターキーの横にPageUpなどのキーが来ていたりという変な配列などはなく、素直で入力しやすいものとなっている。ポインティングデバイスはパッド式で、面積なども十分取られている。ボタンはちょっとユニークで、一見すると1ボタンのように見えるが、実際には左側を押すと左クリックになり、右側を押すと右クリックになるときちんと2ボタンとして動作する。

 モバイル製品ということで気になるバッテリだが、容量は14.8V/2,700mAhで39.96Whとなっており、底面に装着する形式となっている。公称のバッテリ駆動時間は3.5時間となっており、システム全体の平均消費電力は11.4Wと、こうした製品としては平均的なものだと言っていいだろう。

 ただ、付属のACアダプタは写真でわかるとおりやや大柄で、付属のケーブルも日本で一般的な2ピンのもの(通称:メガネ)ではなく、海外で一般的なアース付きの3ピン(同:ミッキー)のものとなっており、壁のコンセントまでのケーブルはやや太くなっている。海外でも安心して利用できるという意味ではこの仕様で正しいのだが、国内で利用することが多いことを考えると、ケーブルの取り回しがよく日本で標準的な仕様である2ピンのものにしてもらってもよかったのではないだろうか。

本体正面液晶は13.3型のワイド液晶を搭載天板はメッシュとブラックのツートンカラーキーボードとポインティングデバイス。ポインティングデバイスは面積も十分に取られており、ボタンは一見すると1ボタンだが、実際には2ボタンとして動作する
キーボードのピッチは18mmとフルサイズになっている本体の右側面。左からオーディオ入出力、USB、eSATA/USB共通、HDMI出力、ExpressCard/34、Gigabit EthernetExpressCardスロットの蓋は、取り外し式
本体の左側面。左からアナログRGB、USB、メモリカードスロット付属のバッテリは14.8V/2,700mAh、39.96Wh
付属のACアダプタ、大きさは大柄ではないが、電源アウトレット側のケーブルがやや取り回しがよくないACアダプタのケーブルはアース付の3ピン(ミッキー)

●超低電圧版のデュアルコアCPUを採用

 気になるハードウェアだが、モバイルノートPCとして十分な仕様が実現されている。CPUは超低電圧版Celeron SU2300が採用されている。Celeron SU2300はCeleronながらデュアルコアになっており、動作周波数は1.2GHz。上位版のCore 2 Duoとの違いは、L2キャッシュが1MBと少なくなっていることと、SpeedStepテクノロジーと呼ばれるCPUの動作周波数、電圧を変動させてより消費電力を下げる仕組みが入っていないことなどだが、ネットブックなどに採用されているAtomプロセッサに比べると圧倒的に性能が高い。

 なお、本製品に採用されているCeleron SU2300は、いわゆるCULV(Consumer Ultra Low Voltage)と呼ばれるカテゴリに属する製品だが、CULVではないCeleron SU2300と機能的な差は全くない。これはそもそもCULVそのものがプロセッサのブランドなどではなく、マーケティングプログラムの総称であり、Intelが規定するある基準を満たすとプロセッサの価格が劇的に安くなる仕組みのことを指しているからだ。従って、カタログなどにもCULVの~プロセッサと書かれていても、CULVではないULVのプロセッサと何ら違いがないので、特にユーザーの側でCULVかそうでないかを気にする必要はないだろう。なお、プロセッサの詳細情報を確認するCPU-Zで確認したところ、本製品はGIGA-BYTEのマザーボードが採用されていることが確認できた。

 チップセットはIntel GS45 Express Chipset(以下GS45)が採用されている。GS45はモバイルノートPC向けに小型のパッケージを採用したチップセットで、Intel GMA 4500 MHD(以下GMA 4500 MHD)というGPUを内蔵している。GMA 4500 MHDは、Direct3D 10にも対応したIntelの最新内蔵GPUで、BDなどのフルHD動画を再生するためのハードウェアデコーダなどの機能を備えている。もちろん外付けのGPUに比べると性能は高いとはいえないが、ハイエンド3Dゲームでもやらない限りは十分な描画性能を備えている。

 メインメモリはDDR3で、標準ではDDR3-800のメモリモジュール(2GB)が1枚挿入される形になっている。メモリソケットは2つ用意されており、標準では1つが利用済みだが、購入後に自分でもう1枚追加したり、購入時にBTOでもう1枚追加することも可能だ。できれば同じメモリモジュール2枚1組で利用したいところなので、購入時にBTOでメモリ増設することをお奨めしたい。HDDは標準で500GBのドライブが搭載されており、モバイルノートPCとしては十分すぎる容量だと言えるだろう。

 通信に関しては標準でIEEE 802.11b/g/n(つまりは2.4GHz系)に対応した無線LAN(Wi-Fi)、Gigabit Ethernet、あと特にスペック表には書かれていないのだがレビューした試作製品にはBluetooth 2.1の機能が用意されていた。ワイヤレスWAN系の機能は用意されていないが、逆に言えば自由にワイヤレスWANのキャリアを選ぶことが可能で、USBドングルなどを購入して利用すればいいだろう。

デバイスマネージャによる内蔵デバイスの表示CPU-ZによるCPUの表示。CPUはCeleron SU2300、デュアルコアで1.2GHz。同じくCPU-Zによるマザーボード表示。マザーボードはGIGA-BYTE製だとわかる
メモリはDDR3-800が1モジュール内蔵されている。レイテンシ設定は6-6-6-15。標準搭載されているモジュールのSPDの内容本体底面。蓋を開けると、メモリモジュール、HDD、PCI Express Mini Cardのスロットなどがあることがわかる。PCI Express Mini Cardのスロットはフルサイズ、ハーフサイズがあり、ハーフサイズの方は無線LANに利用されているが、フルサイズの方は空きになっている

●Celeron SU2300を搭載したモバイルノートPCとしては妥当なベンチマーク結果

 ベンチマークテストの結果は以下のようになる

□ベンチマーク結果

Prime Note Critea SX
CPUCeleron SU2300(1.2GHz)
ビデオチップIntel GS45 Express内蔵
メモリ2GHz
OSWindows 7 Ultimate
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score2648
CPU Score2951
Memory Score3031
Graphics Score1044
HDD Score5285
HDBENCH Ver3.40beta6
All58567
CPU:Integer169291
CPU:Float170600
MEMORY:Read92993
MEMORY:Write92005
MEMORY:Read&Write179669
VIDEO:Recitangle2769
VIDEO:Text2186
VIDEO:Ellipse2040
VIDEO:BitBlt69
VIDEO:DirectDraw8
DRIVE:Read66928
DRIVE:Write60771
DRIVE:RandomRead13366
DRIVE:RandomWrite33139
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
LOW1828

 Atomプロセッサを搭載した製品の記事やULVの他の製品の記事を参照していただければわかると思うが、Celeron SU2300を搭載した製品としては標準的なスコアで、Atomプロセッサを搭載した製品に比べると倍近く高い処理能力を実現していることがわかる。

 そのほかの結果も妥当な結果。3DのベンチマークテストであるFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3では、Atomを搭載した製品に比べると高いスコアをたたき出す。これはAtom製品に利用されている統合型GPUのGMA950に比べて、GS45に内蔵されているGMA 4500 MHDが3世代ほど新しい製品になるためで、今回はテストしなかったがHD動画のハードウェアデコーダと合わせ、最新のプラットフォームを採用していることのメリットが垣間見える結果と言えるだろう。

●65,980円でモバイルノートPCをゲットできる

 以上のように、本製品はいわゆるCULVと呼ばれるCeleron SU2300を搭載したことで、Atomを搭載したネットブックなどに比べて高い処理能力を持っていることが特徴と言える。さらに13.3型ワイド液晶、シックな黒のデザインなどモバイルノートPCとして十分なスペックが実現されている。

 なお、今回のレビュー用の機材には、Windows 7 Ultimateが搭載されていた。標準スペックではWindows 7 Home Premiumが搭載されており、この構成で65,980円という価格設定がされているが、BTOでWindows 7 Ultimateに変更が可能であり、その場合には1万円アップの75,980円。これまでのモバイルノートPCに比べると破格の設定だ。

 また、OSなしも52,980円で用意されている。これを購入して自分でLinuxのような無償のOSをインストールしてもいいし、過去に買ったWindows XPなどのフルパッケージ版が残っているというユーザーならそれを自分でインストールしてもいいだろう(ちなみにDSP版のWindowsは一緒に購入したパーツを内蔵させる必要があるので、ノートPCとの組み合わせは不可)。つまり、自分でOSを導入できる自作PCユーザーで、OSのライセンスが余っている場合であればより安価に入手できる。

 このように予算や用途に合わせた構成が可能なのも、ホワイトノートの1つの魅力であり、低価格に自分の望むスペックを入手できるという意味では魅力は小さくないと言える。安価に2台目のノートPCを入手したいユーザーなどは本製品を検討してみるといいのではないだろうか。

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(2009年 12月 25日)

[Text by 笠原 一輝]