サードウェーブ「Prime Note Cresion NA」
~デュアルコアAtom+IONにより高いパフォーマンスを実現



サードウェーブ「Prime Note Cresion NA」

発売中



 ネットブックは国内では2008年に登場し、急速に存在感を高めていった。その勢いは2009年になっても衰えず、各社から新製品が投入されているが、これらのネットブックは、ほとんどの製品がIntelのAtomプラットフォームを採用しており、PCとしての基本性能にはあまり違いがなかった。

 IntelのAtomプラットフォームは、Atom Nシリーズ+Intel 945GSEという構成と、Atom Zシリーズ+US15Wという構成があり、前者のほうがグラフィックス性能は高いが、後者のほうが消費電力が小さく、HD動画の再生支援機能を持つという特徴がある。しかし、Intel 945GSEの内蔵グラフィックスコアであるGMA 950は、数世代前のコアであり、DirectX 9までしか対応していないため、最新ゲームなどを動かすには力不足だ。

 そこで、ネットブックの弱点であるグラフィックス性能の低さを解消するために、2008年12月にNVIDIAが発表したプラットフォームが、IONプラットフォームである。IONプラットフォームは、AtomにNVIDIAの統合型チップセット「GeForce 9400M G」を組み合わせたものだ。GeForce 9400M Gは、サウスブリッジも統合した1チップ構成のチップセットであり、Intel 945GSEに比べて3D描画性能が高く、DirectX 10に対応する。また、HD動画の再生支援機能を搭載し、CUDAにも対応するなど、数多くの利点がある。

 しかし、IONプラットフォームを採用したネットブックはまだ数が少なく、海外では、Lenovoの「IdeaPad S12」などが発表されているものの、日本国内での発売は、今回レビューする「Prime Note Cresion NA」(以下Cresion NA)が初となる(IONを採用したネットトップやマザーボードは国内でもすでに発売されている)。今回は、日本初のION搭載ネットブックCresion NAを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。ネットブックは価格が安いことが魅力だが、性能面ではCore 2搭載モバイルノートなどに比べると、かなり見劣りしていた。ION搭載によって、どこまでパフォーマンスが向上したのか、興味のあるところだ。ただし、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や性能が異なる可能性がある。

●Atom 330搭載で4スレッドの同時実行が可能

 Cresion NAのボディは、ネットブックとしてはオーソドックスなデザインであり、特別高級感があるというほどではないが、かといって安っぽいというわけではない。サイズは305×225×37.5mm(幅×奥行き×高さ)で、スリムなボディの製品が増えてきている中では、やや厚く感じる。重量は約1.92kgであり、ネットブックとしては重いが、光学式ドライブを搭載した2スピンドルノートPCであることを考えれば、納得できる範囲だ。

 最大の特徴はION搭載ということだが、CPUも一般的なネットブックに搭載されているAtom N280/N270やAtom Z530/Z520とは異なり、Atom 330を搭載している。Atom 330は、Atomシリーズ中、現時点では唯一のデュアルコアCPUであり、動作クロックは1.6GHzである。もともと、Atomシリーズは、1つのコアで2つのスレッドを同時に実行するHyperThreadingテクノロジーを搭載しており(Atom Z500/Z510は除く)、シングルコアでもOSからはデュアルコアとして認識されていたが、Atom 330なら、デュアルコア+HyperThreadingテクノロジーによって、4スレッドの同時実行が可能だ。Windowsのデバイスマネージャやタスクマネージャでも、クアッドコアとして認識されており、マルチスレッド対応アプリケーションを利用する場合など、パフォーマンスの向上が見込める。

 その分、TDPは8Wと大きくなっている(N280/N270のTDPは2.5W)。チップセットは、前述したようにNVIDIAのGeForce 9400M Gを搭載。メモリは標準で2GB搭載しているが、DDR2搭載SO-DIMMスロットが2基用意されており、最大4GBまで増設できる。Intel 945GSEの場合、最大2GBまでのサポートなので、最大メモリ容量においてもIONプラットフォームは有利だ。

Cresion NAの上面。ボディカラーは光沢のあるブラックだ。後ろにはみ出しているのはバッテリである「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。Cresion NAのほうが横幅が大きいCresion NAの底面。左上がHDDベイカバー、右側にメモリスロットやCPU部分のカバーがある
メモリスロットやCPU部分のカバーを外したところ。左下にメモリスロットがある。メモリスロットの上の大きなチップが統合型チップセットGeForce 9400M Gで、右上のチップがAtom 330DDR2対応SO-DIMMスロットを2基搭載しており、最大4GBまで増設が可能2GB SO-DIMMが1枚標準で装着されており、Windows Vistaも快適に動く
デバイスマネージャで、ディスプレイアダプタとプロセッサの項目を開いたところ。プロセッサが4個認識されているタスクマネージャを開いたところ。こちらもクアッドコアとして認識されている

●320GBの大容量HDDとDVDスーパーマルチドライブを搭載

 ストレージとして、2.5インチHDDを搭載。容量も320GBと大きく、A4フルサイズノートPCと比べても遜色はない。HDDベイカバーを外すだけで、HDDにアクセスできるので、交換も容易だ。また、光学式ドライブを搭載していることも特徴の1つだ。右側面に、トレイローディング式のDVDスーパーマルチドライブを搭載しており、DVDメディアなどの読み書きが可能である。ほとんどのネットブックは光学式ドライブを搭載しておらず、CDやDVDで供給されるアプリケーションのインストールを行なうには、外付け光学式ドライブなどを用意する必要があったが、Cresion NAなら一般のA4フルサイズノートPCと同じ感覚で利用できるので、メインマシン的に使うにも便利だ。

HDDベイカバーを外したところ。標準で320GBのHDDを搭載しているが、交換も比較的容易だ右側面にトレイ式のDVDスーパーマルチドライブを搭載する

●1,366×768ドット表示の12.1型ワイド液晶を搭載

 液晶のサイズは12.1型ワイドで、解像度は1,366×768ドットである。光沢タイプの液晶で、外光の映り込みはやや気になることがあるが、表示品位については合格点を付けられる。ネットブックの標準的な液晶解像度は1,024×600ドットであり、縦方向の解像度が不足気味だが、Cresion NAならそうした不満はない。液晶上部には、130万画素Webカメラを搭載しており、メッセンジャーなどで利用可能だ。

液晶は12.1型ワイドで、解像度は1,366×768ドットである。光沢タイプなので、発色は鮮やかだが、外光の映り込みがやや気になる液晶上部に130万画素Webカメラを搭載する

 キーボードは全87キーで、キーピッチは約19mmだ。不等キーピッチもほとんどなく、キー配列も標準的なので、快適にタイピングが可能である。剛性も十分あり、中央を強くおしても、たわむようなことはない。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載。2本指でのマルチタッチ操作にも対応しており、拡大/縮小や回転操作、スクロール操作などが行なえる。タッチパッドのクリックボタンはパッドの手前に配置されているが、左右のボタンが一体になっている。ただし、ボタンのスペースが大きく、クリック操作はしやすい。

全87キーで、キーピッチは約19mm。キートップも正方形で、キー配列も標準的なので快適にタイピングできるマルチタッチ操作に対応したタッチパッドを装備。クリックボタンはパッドの手前に配置されているが、左右のボタンが独立しておらず一体になっている
●HDMI出力やIEEE 802.11n対応無線LANを搭載

 インターフェイスとしては、USB 2.0×3、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力、マイク入力、ヘッドフォン出力、Gigabit Ethernetを備えている。ネットブックで、アナログRGB出力とHDMI出力の両方を搭載している機種は珍しい。メモリカードリーダとして、「10in1カードリーダ」を前面に搭載しており、SDメモリーカードやSDHCカード、MMC、メモリースティックなどのメモリカードの読み書きが可能だ。ただし、10種類のメモリカードを直接読み書きできるわけではなく、そのうち4種類(miniSDやmicroSD、Mobile MMC、メモリースティックPro Duo)は、変換アダプタが必要となる。ワイヤレス機能も充実しており、IEEE 802.11b/g/nドラフト2.0対応無線LAN機能とBluetooth 2.1+EDRを搭載する。

左側面には、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)とUSB 2.0×2、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている右側面には、DVDスーパーマルチドライブとUSB 2.0、HDMI出力が用意されている前面には、10in1カードリーダを搭載する

●6セルバッテリ採用だが、バッテリ駆動時間は3.2時間とあまり長くない

 バッテリは、11.1V/4,400mAhの6セル仕様で、公称約3.2時間のバッテリ駆動が可能だ。6セルバッテリ搭載のネットブックとしてはあまり長くはないが、前述したように、Cresion NAは、TDPが大きいデュアルコアのAtom 330を搭載しているため、動作時の消費電力も大きいことが予想される。バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、2時間34分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」に設定し、バックライト輝度は中)。Cresion NAは、2スピンドルということもあり、重量が約1.92kgとモバイルノートとしてはやや重く、携帯性を最重視するヘビーモバイラー向けのマシンではないだろう。

標準で6セルバッテリを採用バッテリ仕様は11.1V/4,400mAhで、比較的大容量だCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
付属のACアダプタ。ネットブックの一般的なACアダプタよりは一回り大きいACケーブルのコネクタは3ピンのミッキープラグになっているCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●デュアルコアAtom+IONでCore 2 Solo搭載機を上回るパフォーマンスを実現

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用に日本エイサー「Aspire Timeline AS3810T」、日本HP「HP Pavilion Notebook dv2店頭モデル」、日本HP「HP Pavilion Notebook dv2直販モデル」、NEC「LaVie Light BL350/TA6」、NEC「VersaPro UltraLite タイプVS」、MSI「X-Slim X340 Super」の値も掲載した。

 なお、Cresion NAは、OSとしてWindows XP Home Editionだけでなく、Windows Vista Home PremiumやWindows Vista Business、Windows Vista Ultimateを選択することも可能だが、今回の試用機には本来選択できないOSであるWindows Vista Enterpriseがプリインストールされていた。そのため、ベンチマークスコアはあくまで参考程度にしてほしい。

 Cresion NAのPCMark05の総合値は2402で、Atom Z540とUS15Wを搭載したVersaPro UltraLite タイプVSやAthlon Neoと単体GPU「Mobility Radeon HD 3410」を搭載したHP Pavilion Notebook dv2直販モデル、Core 2 Solo SU3500とIntel GS45を搭載したX-Slim X340 Superのいずれをも上回った。CPU Scoreは思ったほど伸びてはないが、Grapics Scoreは、Intel GS45を搭載したAspire Timeline AS3810Tをも上回っており、GeForce 9400M Gの描画性能の高さがはっきりと表れている。3D描画性能を計測する3DMark03のスコアも、単体GPUを搭載したHP Pavilion Notebook dv2直販モデルと同程度であり、統合型チップセットとしては非常に高性能だ。

 参考のために、Windowsエクスペリエンスインデックスを計測してみたが、プロセッサ4.3、メモリ4.5、グラフィックス5.9、ゲーム用グラフィックス4.3、プライマリハードディスク5.5という、なかなかの好成績であった。やはりデュアルコアAtomとIONプラットフォームの組み合わせは、従来のネットブックとは一線を画すパフォーマンスを持っているといえる。メモリも標準で2GB搭載しているため、Windows Vistaの動作も十分快適であった。

【Prime note Cresion NAのベンチマーク結果】

Prime Note Cresion NAAspire Timeline AS3810THP Pavilion Notebook dv2店頭モデルHP Pavilion Notebook dv2直販モデルLaVie Light BL350/TA6VersaPro UltraLite タイプVSX-Slim X340 Super
CPUAtom 330(1.6GHz)Core 2 Duo SU9400(1.4GHz)Athlon Neo MV-40(1.6GHz)Athlon Neo MV-40(1.6GHz)Atom N280(1.66GHz)Atom Z540(1.86GHz)Core 2 Solo SU3500(1.4GHz)
ビデオチップGeForce 9400M G内蔵コアIntel GS45内蔵コアAMD M690G内蔵コアMobility Radeon HD 3410Intel 945GSE内蔵コアUS15W内蔵コアIntel GS45内蔵コア
PCMark05
PCMarks2402計測不可(エラーが出る)16782175N/A18502101
CPU Score1904362918452129152117392435
Memory Score2393357625782713245324563338
Graphics Score189614958202018N/A3191108
HDD Score37845200364239268939182265086
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)3405161515083453N/A(1024×600ドットでは638)4451552
CPU Score424561564714N/A(1024×600ドットでは240)200492
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH1640147615042914N/A3471427
LOW238521722174447414595502094
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP37.0379.3348.5761.3331.978.268.1
HP89.8799.9399.6799.8388.231.299.97
SP/LP99.910099.8399.8799.3799.93100
LLP99.999.9710099.999.9399.97100
DP(CPU負荷)37651001008150100
HP(CPU負荷)38368777805361
SP/LP(CPU負荷)22245343644235
LLP(CPU負荷)16183635383428
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード47.09MB/s66.58MB/s48.22MB/s53.35MB/s83.31MB/s(Cドライブ)、56.50MB/s(Dドライブ)107.4MB/s未計測
シーケンシャルライト45.92MB/s57.82MB/s50.64MB/s41.73MB.s40.39MB/s(Cドライブ)、54.63MB/s(Dドライブ)112.4MB/s未計測
512Kランダムリード25.30MB/s30.32MB/s27.59MB/s24.97MB/s79.24MB/s(Cドライブ)、31.25MB/s(Dドライブ)103.6MB/s未計測
512Kランダムライト29.05MB/s32.58MB/s37.19MB/s32.76MB/s29.44MB/s(Cドライブ)、31.23MB/s(Dドライブ)102.8MB/s未計測
4Kランダムリード0.346MB/s0.452MB/s0.499MB/s0.323MB/s12.43MB/s(Cドライブ)、0.560MB/s(Dドライブ)11.03MB/s未計測
4Kランダムライト0.869MB/s1.147MB/s1.220MB/s1.058MB/s1.928MB/s(Cドライブ)、1.551MB/s(Dドライブ)10.36MB/s未計測
BBench

2時間34分6時間17分3時間15分2時間24分7時間8分未計測未計測

Windowsエクスペリエンスインデックスの結果。最低4.3というのはなかなかの好成績だ

 Cresion NAの価格は搭載OSによっても異なるが、Windows XP Home Edition選択時は7万円を切る。一般的なネットブックよりは2万円程度高いが、パフォーマンスにはかなりの差がある。1,366×768ドット液晶やDVDスーパーマルチドライブを搭載していることもあわせ、ネットサーフィンやメール送受信、文書作成といった比較的軽い処理中心で使うのなら、セカンドマシンではなく、メインマシンとしても十分利用できる。一般的なネットブックに比べて重量が重く、バッテリ駆動時間もあまり長くはないため、常に持ち歩いて使うには向いていないが、携帯性よりも性能重視で、Windows VistaやWindows 7を快適に利用できるコンパクトなノートPCを探しているのなら、Cresion NAは有力な選択肢となるだろう。他社からもIONプラットフォームを採用したネットブックが増えてくることを期待したい。

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(2009年 6月 29日)

[Text by 石井 英男]