エムエスアイ「Wind Top AE1900」
~タッチパネル液晶搭載のネットトップ



エムエスアイ「Wind Top AE1900」



 エムエスアイコンピュータージャパンから、タッチパネル液晶を搭載するネットトップ「Wind Top AE1900」(以下、AE1900)が登場した。タッチパネルを搭載することで、一般的な液晶一体型ネットトップにはない使い勝手が期待される。今回、AE1900を試用する機会を得たので、使い勝手などを中心に紹介していくことにしよう。

●タッチパネル液晶搭載で、簡単操作を実現

 エムエスアイは、今回取り上げるAE1900に加え、以前紹介した「Wind NetOn AP1900」の、2種類のネットトップを販売している。双方とも、18.5型ワイド液晶一体型のネットトップという点では同じだが、本体デザインや細かな仕様面などに違いがある。その中で最も大きな違いとなるのが、AE1900ではタッチパネル液晶が搭載されている点だ。

 タッチパネルは感圧式で、スタイラスペンだけでなく、指を使った直接操作も可能。画面上のアイコンを直接タッチしてソフトを起動したり、手書きによる文字入力が行なえる。また、タッチ操作を前提としたオリジナルランチャー「MSI Wind Touch」が標準でインストールされており、登録されているさまざまなソフトをタッチ操作で簡単に起動できるように工夫されている。

 ただし、ランチャーや手書き文字入力対応のスクリーンキーボード「SoftStyrus」以外に、タッチ操作を前提とするようなソフトはこれと言って見当たらず、ほとんどのソフトが通常操作を前提としたものとなっている。また、SoftStyrusの手書き文字入力は1文字ずつの入力しか行なえず、使い勝手は良くない。

 さらに、タッチ操作によるスクロールやページめくりなどを行なうジェスチャー機能も用意されていないため、タッチ操作でのWebブラウザの利用も思ったほど快適ではない。アイコンをタッチしてソフトを起動したり、Webブラウザでリンクをタッチして先に進むといった使い方であれば、十分便利に活用できるのは間違いないが、せっかくのタッチパネルもあまり活用する場面が少ないのは少々残念だ。タッチ操作専用ソフトを充実させれば活用の幅が広がるとともに、製品の魅力も大きく向上するため、今後はソフト面の充実を期待したい。

 液晶ディスプレイの仕様はAP1900と同じで、表示解像度は1,366×768ドット、アスペクト比は16:9となっている。表示品質は、タッチパネルが搭載されている割には悪くない。タッチパネルが搭載されない液晶に比べると、薄いベールを1枚かぶせられているように感じるが、それも言われなければ気にならないレベルで、発色も十分満足できるレベルだ。ただし、指での操作を多用していると、指紋跡が気になる場面もあったため、付属のクリーニングクロスでこまめに画面を掃除するように心がけた方がいいだろう。

18.5型ワイド液晶は、表面にタッチパネルが配置され、スタイラスペンや指で操作が可能液晶パネルの表示解像度は1,366×768ドット、アスペクト比は16:9。タッチパネルが存在するものの、発色は鮮やかで、表示品質は悪くない。ただ、やや映り込みは激しいタッチ操作前提のオリジナルランチャー「MSI Wind Touch」。ビジネス系ソフトや簡単なゲームなどが登録されている。もちろん自由にソフトを登録できる
スクリーンキーボードを利用した文字入力も可能なので、キーボードやマウスを接続しなくても操作が可能「SoftStyrus」を利用して手書き文字入力も可能。ただし1文字ずつの入力となるため、使い勝手は良くない液晶上部には、130万画素のWebカメラが配置されている

●コンパクトかつデザイン性重視の透明アクリルボディ

 AP1900は、一般的な液晶一体型PCに近いデザインだったのに対し、AE1900の本体デザインは背面の支柱を利用するスタンド型ボディを採用。また、液晶を含む本体を透明アクリルボディで囲い、設置時には本体が浮いているように見えるデザインとなっており、見た目の印象はAP1900とは大きく異なっている。特に凝った装飾があるわけではなく、どちらかというとシンプルなデザインではあるが、その中にもデザイン性が追求されているという印象で、安価なネットトップにありがちな安っぽさは感じられない。このデザインなら、リビングルームに設置しても違和感を感じることはないはずだ。

 本体サイズは、476×49×365mm(幅×奥行き×高さ)。液晶サイズを考えると、やや大きいという印象も受けるが、本体周囲が透明アクリルボディで囲まれていることもあってか、実際には数字ほどの大きさは感じない。奥行きの49mmは、本体のみの奥行きで、設置するには背面の支柱を広げる必要があるために、設置時の奥行きは最大で270mmほどとなる。同サイズの液晶ディスプレイを設置する場合と、ほぼ同等の面積があれば余裕で設置可能と考えていい。

本体正面。本体周囲が透明アクリル素材で囲まれ、本体が浮いているような印象を与えるスタイリッシュなデザインとなっている本体左側面。背面の支柱を利用して設置するスタンド型ボディだ本体背面。背面左下にコネクタ類がまとめられている
本体右側面。全体的に凝った装飾はほとんどなく、シンプルで落ち着いたデザインだスタンドを倒して液晶角度を調節できる

●スペック面は一般的

 AE1900の基本スペックは、他のネットトップとほぼ同等だ。CPUはAtom 230(1.60GHz)、チップセットはIntel 945GC Expressを採用。AE1900のように、ノートPC向けの低消費電力版は採用されていないが、その点が特に問題となることはないだろう。ただ、発熱はやや大きくなるため、空冷ファンが取り付けられており、本体上部に排気口が用意されている。電源投入時にはファンが勢いよく回転して、ややうるさく感じるが、すぐに回転数が落ちて静かになる。ベンチマークテスト実行時などの高負荷時でもファンの音をうるさく感じることはなく、騒音はほぼ気にならないレベルと考えていい。

 メインメモリは標準で1GB搭載。HDDは160GBの2.5インチドライブを採用。本体左側面にはDVDスーパーマルチドライブも内蔵する。ただし、背面にはメインメモリや内蔵HDDにアクセスするためのフタは用意されておらず、基本的にメインメモリやHDDの交換は不可能。本体を完全に分解すればもちろん可能だが、当然リスクは大きい。AE1900では、メインメモリスロットや内蔵HDDに簡単にアクセスできたことを考えると少々残念だ。

 ネットワーク機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANに加えて、1000BASE-T対応のGigabit Ethernetを標準搭載する。

 コネクタ類は、背面にUSB 2.0×2と有線LAN、マイク/ヘッドフォン端子が、左側面にUSB 2.0×2とSD/SDHC/MMC/メモリースティック対応のメモリカードリーダーがそれぞれ用意されている。右側面には、電源ボタンと、ボリューム、液晶の輝度を調節するボタンが配置されている。DVDスーパーマルチドライブやUSBコネクタなどが右側面ではなく左側面に配置されている点は少々違和感を感じるものの、拡張性や使い勝手は悪くない。

左側面下部に、SD/SDHC/MMC/メモリースティック対応のメモリカードリーダーとUSB 2.0×2を備えるDVDスーパーマルチドライブも本体左側面に取り付けられている背面には、USB 2.0×2と有線LANコネクタ、マイク/ヘッドフォン端子が用意されている
右側面には、電源ボタン(上)に加え、ボリュームと液晶輝度を調節するボタンが用意されている液晶上部に、空冷ファンの排気口がある。電源投入直後はややうるさいが、すぐに回転数が落ち、高負荷時でもファンがうるさく感じることはない
コンパクトタイプのUSBキーボードと、スクロールホイール付きの一般的なUSB光学マウスが付属する電源にはACアダプタを利用する

●タッチパネルの活用度は低いが、デザイン性重視ならおすすめ

 では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、AP1900の場合と同様、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類を利用した。また、比較用として、AP1900に加え、Aspire one D250とAspire one D150の結果も加えてある。

 結果を見ると、Atom N270/Intel 945GSE Expressを採用するAP1900とほとんど同じことがわかる。CPUの動作クロックが同じで、TDPは異なるもののチップセットの仕様もほぼ同じということを考えると、これは当然の結果だ。使用感は、一般的なネットトップやネットブックとほぼ同等と考えていいだろう。

【ベンチマーク】

Wind Top AE1900Wind NetOn AP1900Aspire One D250Aspire One D150
CPUAtom 230(1.6GHz動作)Atom N270(1.6GHz動作)Atom N280(1.66GHz動作)Atom N270(1.6GHz動作)
ビデオチップIntel 945 GC ExpressIntel 945 GSE ExpressIntel 945 GSE ExpressIntel 945 GSE Express
メモリ1GB1GB1GB1GB
OSWindows XP Home Edition SP3Windows XP Home Edition SP3Windows XP Home Edition SP3Windows XP Home Edition SP3
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score1577149214961427
CPU Score1482149815511480
Memory Score2135237424942374
Graphics Score662550590553
HDD Score4301428837314662
HDBENCH Ver3.40beta6
All34654350963897938870
CPU:Integer93600935699737994033
CPU:Float64770647426736164700
MEMORY:Read48266481645001848016
MEMORY:Write48581485735024348447
MEMORY:Read&Write85341855808867784352
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DRIVE:Write43667376475412247805
DRIVE:RandomRead695677741805015168
DRIVE:RandomWrite25491252962283122212
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
LOW1447147515081459

 AE1900は、スタイリッシュなデザインとともに、タッチパネル液晶を搭載する点が大きな特徴ではあるが、タッチ操作に最適化されたソフトのプリインストールが少ないために、せっかくのタッチパネルも標準では活用の場面が少ない点は残念だ。とはいえ、ソフトに関しては別途用意すればよく、タッチパネルの存在自体は、他の一般的な液晶一体型ネットトップに対する優位点となることは間違いない。

 HD動画をスムーズに再生できるパフォーマンスが備わっていない点や、メインメモリやHDDの交換が容易に行なえない点など、他にも気になる部分がないわけではない。それでも、高解像度液晶を搭載していることで、Webアクセスなど快適に行なえる点や、実売6万円前後という安価な価格など、魅力を感じる部分もある。将来的には、タッチ操作に最適化されたソフトを充実させるとともに、IONプラットフォームなど、比較的高い3D描画能力や、HD動画再生支援機能を持つシステムを採用することで、より魅力を高める必要もあると思うが、現時点ではデザイン性重視の液晶一体型ネットトップとしておすすめできる製品だ。

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(2009年 6月 24日)

[Text by 平澤 寿康]