Hothotレビュー

ハイスペックで小型/静音なレノボ製ゲーミングPC「Legion C730」

~天板シースルー&LED、便利な持ち手付きオリジナルケースを採用

Legion C730

 レノボ・ジャパン株式会社のゲーミングPCブランド「Legion」に、容積19リットルのコンパクトさを売りにする「Legion C730」がラインナップされている。

 小さなゲーミングPCは日本の住環境にも合っており、需要は高い。小さなゲーミングPCは冷却性能が不安だという人もいると思うが、冷却用のパーツも質が向上しており、コンパクトなケースでもうまく排熱できて騒音も少なくなってきている。

 また、オンボードデバイスの多様化・高性能化や、USBなどの外部拡張機能が充実したことで、大きなケースが要らないことも増えている。

 それだけに、単に小型のゲーミングPCがほしいだけならば、探してみると意外とあちこちで売られている。そのなかにあって、「Legion C730」はどこを向いた製品なのか。性能のチェックと使用感を交えてお伝えしていく。

コンパクトサイズでも最新ゲームに不足のない構成

 Legion C730のスペックは下記のとおり。

【表1】Legion C730(90JH003SJM)のスペック ※3月時点
CPUCore i9-9900K(8コア/16スレッド、3.6~5GHz)
GPUGeForce RTX 2080(GDDR6 8GB)
チップセットIntel Z370
メモリDDR4-2666 32GB
ストレージNVMe M.2 SSD 512GB、HDD 1TB
光学ドライブ-
電源500W 80PLUS Bronze
OSWindows 10 Home
USBUSB 3.0×6、USB 2.0×2
映像出力DisplayPort×3、HDMI、USB Type-C
無線通信IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2
有線LANGigabit Ethernet
その他音声入出力など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)約238×358×305mm
重量約11kg
直販価格294,840円

 CPUはCore i9-9900K、GPUはGeForce RTX 2080、メインメモリは32GB、ストレージはM.2 NVMeの512GB SSDと2TB HDDを搭載。コンパクトでも最新ゲームを遊ぶのに不足のない構成を詰め込んでいる。

 見た目で特徴的なのは、天板がアクリルパネルでシースルーになっていることと、持ち手が付いていること。デスクトップPCは設置したら基本的には動かさないで使うものだが、本機は持ち運ぶことを考慮。LANパーティへの持ち込みや、VRのデモ機として使うなどといった需要を見込んでいる。前面下部にUSB 3.0×2とヘッドフォン端子、マイク端子があるので、VRヘッドセットの接続にも困らない。

 本体サイズは、238×358×305mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約11kg。一般的なタワー型ケースに比べると、高さはないが幅はむしろ広めで、置き場に必要なスペース(フットプリント)はあまり変わらないという点は頭に入れておきたい。また11kgという重量はデスクトップPCとしては標準的で軽くはない。持ち手のおかげでかなり持ち運びやすくは感じるが、運搬時や設置場所にはそれなりに注意が必要だ。

 端子は前面のほか、背面にGigabit Ethernet、USB 3.0×4、USB 2.0×2、ライン出力。USB 3.1 Type-Cはないのかと思いきや、DisplayPort Alternative Mode対応のものがビデオカード部にある。ほかにDisplayPort×3、HDMI×1が用意されている。

CPUが高負荷時には静音寄りに安定化

「Legion Edge」に用意されたオーバークロック機能。スイッチ1つでリアルタイムに切り替えられる

 まずは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていこう。利用したのは、「3DMark v2.8.6546」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 6.0.2」。

 本機にインストールされているソフト「Lenovo Vantage」のなかにある「Legion Edge」にて、CPUのオーバークロック機能が用意されている。機能がオフのときはCPUの最高クロックがおよそ4.7GHzだったのに対し、オンにするとおよそ5.1GHzまで伸びる。ベンチマークテストの結果にも影響をおよぼすはずなので、同機能をオン時とオフ時のスコアを併記する。

【表2】ベンチマークスコア
オーバークロックオフオン
「3DMark v2.8.6546 - Time Spy」
Score10,13810,066
Graphics score10,0019,960
CPU test10,99310,717
「3DMark v2.8.6546 - Port Royal」
Score5,6605,710
「3DMark v2.8.6546 - Fire Strike」
Score21,63421,763
Graphics score24,12723,908
Physics score24,45425,561
Combined score11,10811,480
「3DMark v2.8.6546 - Night Raid」
Score58,98659,189
Graphics score115,437116,294
CPU score15,64215,648
「3DMark v2.8.6546 - Sky Diver」
Score52,87952,825
Graphics score81,20681,777
Physics score21,67421,218
Combined score36,30437,180
「3DMark v2.8.6546 - Cloud Gate」
Score55,61656,044
Graphics score133,982134,808
Physics score18,25218,406
「3DMark v2.8.6546 - Ice Storm Extreme」
Score189,704198,742
Graphics score394,675399,593
Physics score67,32672,028
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score11,62811,925
Average frame rate253.50fps259.97fps
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score8,5588,522
Average frame rate186.57fps185.78fps
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score3,2513,245
Average frame rate70.88fps70,73fps
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
3,840×2,160ドット4,3044,208
1,920×1,080ドット9,6259,312
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(最高品質)
3,840×2,160ドット7,8107,660
1,920×1,080ドット19,17019,516
「World of Tanks enCore」(超高)
1,920×1,080ドット32,35732,266
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット123,905126,237
「CINEBENCH R20」
CPU4,322cb4,469cb
CPU(Single Core)507cb498cb

 結果はスペックどおりに高い性能を見せている。「VRMark」でもっとも高負荷な「Blue Room」で平均70fpsを超えており、現状のVRゲームであればまず問題ない。4Kゲーミングについても、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」で「普通」の評価となっており、多くのゲームでさほど画質を落とさずに楽しめるだろう。

 オーバークロック機能については、CPUの性能が影響しにくいグラフィックス系のテストにおいてはほぼ変わらず、CPUのベンチマークテストでは5%程度の向上が見られるものもある。ただ、なかにはスコアがやや落ちるものもあるので、原因を検証してみた。

 CPUの温度はオーバークロック機能オフ時は75℃くらいまで上がるのに対し、オン時は85℃くらいまで上がるのが確認できた。CPUに対する高負荷が続くとCPUクロックが低下し、オフ時はおよそ4.4GHz、オン時はおよそ4.5GHzで安定していた。

 ファンは最高クロックになった後、数秒だけ高回転してすぐ低回転に落ち着く。CPUがあらかじめ設定された温度を超えると、ファンを高回転させるとともにCPUクロックを落として熱を逃がし、再びファンの回転数を落として安定させているようだ。

 CPUクーラーのファンをもっと回せば高いクロックを維持できそうだが、どうやら本機は静音を重視した冷却設定のようだ。またファンの設定を操作するツールは用意されていなかった。

 オーバークロック機能をオンにしていると、最高クロックがおよそ5.1GHzほどに上がる分、CPUの温度が急激に上昇して、4.5GHzの安定クロックへすぐに移行してしまう。オフの時は最高クロックが4.7GHzと低い分、CPU温度の上昇も緩やかで、安定クロックの4.4GHzに移行するまでに数秒から数十秒程度の猶予がある。

 このため、短時間のベンチマークテストではオフのほうがいい結果になる可能性がある。高負荷が長時間になれば、100MHz程度の差とはいえオンのほうが高性能なのは確かだ。

 ストレージの性能は「CrystalDiskMark 6.0.2」で計測した。SSDはSamsung製「MZVLB512HAJQ」、HDDはSeagate製「ST2000DM008」が採用されていた。SSDはシーケンシャルリードで3,300MB/s超えの高性能、HDDもリード・ライトとも200MB/sを超えており、ゲームのリアルタイム録画等には十分耐え得る性能になっている。

SSD(Samsung MZVLB512HAJQ)
HDD(ST2000DM008)

3分割された直線的なエアフローで静音仕上げ

 続いて使用感をお伝えする。

 設置に関しては持ち手があるおかげで簡単。外見は正面右側にロゴがあり、ほかは丸い吸気口がたくさん空けられている。サイドパネルは左右とも穴のない1枚板。背面も端子以外に目立つものはない。全体の色はブラックで統一されている。総じてPCっぽさはなく、豪華なツールボックスかなにかに見えなくもない。電源が入っていないときはかなり地味な印象だ。

 電源を入れると、前面ロゴの“O”の文字が白く光るとともに、天面も光る。天板はシースルーになっており、光ると内部が透けてよく見える。ただ見えるパーツはビデオカードくらいしかなく、透けて見える部分が光ること自体が演出となっている。確かに薄いメッシュから覗く光はSFチックでおもしろい。

 ちなみに天面の光り方はプリインストールされているソフトで調整が可能。明るさや色、点滅やウェーブなどの光り方も変えられるほか、CPUの負荷や温度によって色を変えるというモードも用意されている。

電源を入れるとロゴと天板のLEDが点灯し、一気に印象が変わる。ちなみに電源ボタンは天面の手前右側にある
天板部分の光り方はソフトで変更できる。あえて光らせない設定も可能

 エアフローについては、製品情報によると、CPUとビデオカードをべつべつに冷却するようになっているという。上から透けて見えるデザインや、筐体の横幅が広いことを考えると、「CPUとビデオカードはマザーボードをはさんで表裏になるのか?」と思ったのだが、そんなことはなく同じ側に装着されていた。

 では実際はどうなっているのかというと、ビデオカードがケース上部にあり、ケース内部を前から後ろまでふさぐほどの長さで収まっている。また側ビデオカードと面パネルもかなり近い。ビデオカード自体がケース内部の仕切りとなっている状態だ。ビデオカードの冷却はブロワーファン式で、上部から吸気してケース後方から直接排気する。

 CPUはトップフロー型のCPUクーラーが取り付けられたオーソドックスなかたち。これにケース前方の吸気ファンと、ケース後方の排気ファンが回り、直線的なエアフローを作っている。サイドパネルに穴はなく、底面にはCPU付近にメッシュがあるものの、あまりエアフローに寄与するようには見えない。

 マザーボードの裏側はストレージと電源が収められている。こちらはケースファンこそないものの、前方のメッシュから吸気して、電源のファンで後方へと排気する。CPUがある部分に比べるとエアフローは弱いが、CPUやビデオカードとはマザーボードで完全に仕切られている空間で、ほかに大きな発熱源もないので十分だ。

 ケース全体で見ると、エアフローを3つにきっちりと分け、それぞれが直線的で無駄のない流れになっているのがわかる。とくにオーバークロック機能を有するCPU部分は、ビデオカードの発熱の影響を受けないようにするだけでなく、ケースファンも含めて手厚く冷却されている。

 騒音については、アイドル時からケースファンなど複数のファンが回るため、動いているのははっきりわかる。ただゲームなどの音が出てしまえばまぎれる程度の小さな音量だ。高負荷時には、CPUの温度が上がったときに一瞬だけファンが高回転するものの、しばらくするとかなり小さな音で安定する。また、GPUへの負荷ではあまり騒音が大きくならない。コンパクトなPCにも関わらず、高負荷時の騒音の小ささは特筆すべきレベルだ。

 本機はゲーミングPCとしては、ことさら性能を追求するのではなく、安定動作と静音性を求める方向だと感じる。ケースが小型なのでオーバークロックは難しいとしても、高負荷時でも騒音を極力を減らしているのは、ヘッドフォンではなくスピーカーで音を出したいゲーマーにはありがたい。独特な形状と可搬性も考慮すると、ほかにはないおもしろいポジションにいる1台だと思う。

前面は吸気用の丸い穴が多数。端子は最下部にある。USB 3.0×2、ヘッドフォン端子、マイク端子
左側面は空気穴もなくただの板
右側面も同様、穴は一切ない
背面端子はUSB 3.1 Type-Cがビデオカード部分にある。左上のハンドルを引くと、右側面パネルが開く
底面は一部だけメッシュの穴が空いている
右側面パネルを開くと、CPUやビデオカードにアクセスできる
CPUはトップフロー型。側面にWistronの文字が見えるが詳細は不明。右に見えるのは背面の排気ファン
長方形のヒートシンクの裏にSSDがある。さらに左側には前面の吸気ファン
ビデオカードはケースの端から端までを覆うような大きさ。エアフローの区切りにもなっている
左側面はネジを回して空ける。こちらはストレージと電源のスペースとなっている