Hothotレビュー

Kaby Lake-GはCore i5でも侮れない性能。Chuwiの小型PC「HiGame」

HiGame。下に比較用としてA10-7850Kを並べてみたが、その小ささがわかるだろうか

 タブレット製造を得意とするChuwiから、CPUにKaby Lake-Gを搭載した小型PC「HiGame」が日本のクラウドファンディングサイト、Makuakeで出資を募りはじめた。定価は135,500円~181,000円だが、早割で最大35%オフ(上位のi7版、ただしすでに終了)となっている。今回はChuwiの協力により、下位のCore i5-8305G搭載版を入手できたので、レビューしていきたい。

 なお、Makuake販売分については、日本国内で無線機能を使うためのTELEC認証、および法律を守って製造もしくは輸入された「特定電気用品」対して表示されるPSEマークを取得するとしているが、今回入手した製品はサンプルであるためか、いずれも表記がない。

 無線LANモジュールに関して確認したところ、M.2接続であるIntel「Dual Band Wireless-AC 3165」が使われており、モジュール上にはTELEC認証マークがあった。このあたりは筐体に表記のないベアボーンやNUCなどと同様の扱いだと見られるが、念のためモジュールを取り外し、Gigabit Ethernetに接続して使用することにした。

 一方でACアダプタにもPSEマークがないが、ACアダプタの製造で定評のあるHuntKey製であるため、表記はさほど難しくないとみられる。いずれにしても、Makuakeで謳われているとおりであれば、少なくとも日本国内出荷分に関しては使用/表記の問題がないはずだ。なお、製品の出荷は2019年1月を予定している。

モジュールはIntel製で技適取得済みだが、今回はこれを取り外し有線を利用した
試用モデルはPSEマークがない

旧Mac Pro似の筐体

 パッケージはシンプルなデザインで、製品名とIntelのロゴが表面に印字されているだけだ。フタを開けるとすぐに本体とACアダプタが取り出せ、本体の下に説明書とACケーブルが収納されている。

 本体は古いMac Proを彷彿とさせる、上下にハンドルがついているタイプ。とはいえ、そもそも本体が小さいため、片手で掴めるし、このハンドルに指が完全に入り込める余地はないので、あくまでもデザインだと捉えたほうがいいだろう。

 ガンメタリック色のアルミ削り出しの筐体は質感も高く、同じKaby Lake-Gを搭載したHades Canyonよりは、よりオフィスに溶け込むような落ち着いたデザインとなっている。ただ、手を切りそうになるぐらいに鋭利なエッジは、気をつけたほうがいいかもしれない。

製品パッケージ
付属品など
本体前面
側面に吸気口、背面に排気口を備える
ハンドルは指を入れる隙間がなく、ほとんどデザインだ
エッジはかなり鋭利なため取り扱いは慎重に行なおう

 気になるところといえば、若干不整合な筐体デザインだ。Mac Proっぽく縦置きが前提かと思えば、縦置きにすると左側面のゴム足と給気口が丸見えとなり、多くのユーザーが置き慣れているであろう右手側に置くと、少し野暮ったく見える。それらが見えないよう左手の位置に置くと、側面の「CHUWI」のロゴが縦になるのが気になる。では横向きは? というと、今度は電源ボタンのアイコンが横になってしまう。どうやって置いてもしっくり来ないのだ。

 前面は電源ボタンとThunderbolt 3ポートが1基とシンプル。背面はUSB 3.0×5、DisplayPort 1.3×2、HDMI 2.0×2、音声入出力、DC INとなっている。こうした小型PCを横置きにした場合、一般的にはマザーボードが下となるため、背面インターフェイスが下、排気口が上になることが多いのだが、HiGameは逆さまとなっている。

 当然、縦置きにすれば、通常のATXタワー型PCのようなポート/マザーボード配置になるため、基本設計に関してはやはり縦置きを想定したものだ窺えるのだが、先述のとおり縦置きだと通気口とゴム足が目立つのが痛いところではある。

 もっとも、本製品は希少なKaby Lake-G搭載機であることを踏まえると、そういった細かいデザインや使い勝手の面はなんとなく許せる気もしてくる。事実上Kaby Lake-G搭載小型デスクトップは、Intel純正のHades Canyonと本製品の2択なので、いずれにしても好みで選ぶことになるからだ。

前面は電源ボタンとThunderbolt 3のみ。欲を言えば前面にもType-AのUSBや音声入出力がほしかった。電源ボタンは縦置き前提だ
左手側に縦置きした場合、CHUWIのロゴが縦になってしまう
右手側に縦置きした場合、給気口やゴム足のデザインが野暮ったい
横置きにするとインターフェイスが上、排気口が下となり、マザーボードが上下逆になる。背面インターフェイスはUSB 3.0×5、HDMI×2、DisplayPort×2、Gigabit Ethernet、音声入出力

うまくHades Canyonと棲み分け

 HiGameは、下位モデルでCore i5-8305G、上位モデルでCore i7-8709Gを搭載している。じつは、これはIntel純正のHades Canyonとうまく棲み分けできており、Hades CanyonにはないSKUをあえて選んで差別化していると思われる。

【表】Hades CanyonとHiGame搭載CPUの相違点
製品Hades CanyonHiGameHades CanyonHiGame
モデルNUC8i7HVKi7NUC8i7HNKi5
CPUCore i7-8809GCore i7-8709GCore i7-8705GCore i5-8305G
L3キャッシュ8MB6MB
ベースクロック3.1GHz2.8GHz
Boostクロック4.2GHz4.1GHz3.8GHz
GPURadeon RX Vega M GHRadeon RX Vega M GL
CU数24基20基
PS数1,536基1,280基
GPUベースクロック1,063MHz931MHz
GPU最大クロック1,190MHz1,011MHz
VRAM帯域幅204.8GB/s179.2GB/s
TDP100W65W
単体価格125,000円前後169,200円100,000円前後135,500円
Makuakeでの早期価格-109,800円(売り切れ)~124,000円-90,000円(売り切れ)~102,000円

 また、Hades Canyonはベアボーンであり、メモリ、SSD、OSは別途用意しなければならない。一方でHiGameはPC完成品であり、価格はコミコミだ。Hades Canyonの実売価格とHiGameの定価と比較した場合、コストパフォーマンスはほぼトントンと言ったところ。しかしMakuakeでは大幅な割引が効く早割があり、Hades Canyonの性能面での優位性はわずかなので、この早割価格で比較するとHiGameにコストパフォーマンスの軍配が上がる。

 とくに上位のi7モデルの早期価格は魅力的であり、当初から大容量メモリとストレージのスペックを欲張らないのであれば、HiGameのほうがコストパフォーマンスは高い。

動作音はやや大きめだが温度は低め

 本機の電源を入れすぐに気になったのは動作音である。搭載されているファンはシロッコタイプだが、アイドル時でも2,000rpm以上をキープしており、甲高い音で耳障りである。CPU/GPUの負荷がかかるにつれ回転数も上がっていき、軸音のみならず風切り音も気になってくる。

 音の特性からか、PC Watchがあるオフィス内ではまったくと言っていいほど気にならなかったが、静かな自宅ではかなり気になった。静かな環境で使うのは躊躇するだろう。

 もっとも、UEFI BIOSではある程度ファンのカスタマイズができるようになっており、ターゲット温度を引き上げたうえでファンの回転数が上がるステップを抑えれば、負荷時の騒音をある程度抑えることは可能であった。とは言え、そもそもスタートが2,000rpm前後からなので、これ以上静かにならないのも確かではある。

 ただファンが比較的高速で回転していることが奏しているためか、温度はかなり抑えめな印象である。アイドル時のCPUは37℃で維持されているほか、もっとも高負荷なテストの1つであるOCCTの「Power Supply Test」をかけても、CPUは75℃前後、GPUは57℃前後で推移した(室温23℃の環境)。

CPUからヒートパイプでヒートシンクに接続され、ブロワーファンで排気する仕組み。回転数が高いため騒音はあるが、冷却性に優れている

 Core i5-8305Gの許容温度は100℃となっているため、かなり余裕をもった冷却性能であると言える。実際の利用ではOCCTのような高負荷になることをはまずないが、本製品は騒音よりも冷却性に重視したセッティングであるのは間違いない。とはいえまだ試作段階なので、今後改善される可能性もある。

 本体はプラスドライバでネジ4本外すだけで内部にアクセスでき、DDR4のSO-DIMMスロットとM.2スロットにアクセスできる。また、カバーには2.5インチシャドウベイもあり、付属のSATA+専用電源ケーブルを用いることで、2.5インチのSSDとHDDも1基増設できるようになっている。

 標準ではSamsung製のDDR4-2666メモリ8GBと、Shenzhen Longsys Electronics製FORESEEブランドのSATA接続の128GB M.2 SSDが接続されていた。

 ちなみにCPU内蔵GPUは多くの場合、メインメモリとビデオメモリを共有する関係上、本機のようなシングルチャネル構成では、性能が大きくスポイルされてしまうのだが、Kaby Lake-Gではチップ上にビデオメモリ専用の4GB HBM2が搭載されているため、(少なくとも4GBに収まるサイズでは)メインメモリのバンド幅に性能が左右されにくい。

ネジ4本外せば内部にアクセスできる。2.5インチのSATAドライブを1台増設可能だ
7mmのドライブを入れたところかなり余裕があったので、9.5mmや14mm厚のドライブも対応できそうだ
SATAの電源もマザーボード上から取得する。なお、コネクタは2基あるので、工夫しだいでは2台入りそうではある(ただしSATAケーブルは1本しか付属しない)
メモリスロットは1基空いている
搭載されるDDR4メモリはSamsung製で、2,666MHz、CL19で動作する。が、本機では2,400MHzで動作していた
FORESEEブランドのSSD。Marvell製コントローラ採用のSATA接続だ

Intelロゴ入りのRadeon RX Vega M設定。ReLiveの利用は要BIOS設定変更

 本製品の最大の特徴は、やはりCPUのパッケージに統合されたRadeon RX Vega M GLに尽きる。上位のCore i7-8x09Gに搭載されるRadeon RX Vega M GHと比較して、演算ユニット数で83%、クロックで85%、メモリバンド幅で87.5%と、いずれも8割の規模に抑えられているのだが、それでもGPUとしてはかなりの性能となっていると言っていい。

 性能は後ほど検証することにするが、ここでGPUの使い勝手についてアップデートしておこう。HiGameではデフォルトでIntel公式ドライバである18.6.1がプリインストールされている。これは「Radeon Software Adrenaline Edition」をベースとし、Intel向けのカスタマイズが施されたバージョンだ。

 設定項目としてはAMD GPU向けの「Radeon Settings」とほぼ共通だが、デスクトップを右クリックしたときに現われる「Radeon設定」が「Radeon RX Vega M設定」になっていたり、起動した直後の設定画面でいきなりIntelのロゴが現われ、Intelのコーポレートカラーである青を基調とした画面になっていたり、AMDのソーシャルアカウントへのリンクが、Intelのソーシャルアカウントに代わってたりと、見た目が大きく異なる。

 また、Adrenaline Editionで提供しているモバイル端末との連携機能である「AMD Link」がなく、録画したゲーム動画やスクリーンショットを自らのSNSにアップロードするための「接続」のタブも用意されていない。さらに、ゲームプレイ中にオーバーレイでさまざまな設定を簡単に行なえる「Radeon Overlay」機能も利用できないようだ。

 本機では、Kaby Lake-Gの機能の1つとして大きく謳われている「ReLive」の機能が標準では設定に現われず、利用できなかった。筆者は当初、ドライバを再インストールしたりしてといろいろ試行錯誤したが、結局OS上から有効にすることができなかった。これがCore i5とi7の機能の差別化か? とも推測したのだが、Intel公式ではそのようなことが書かれておらず困惑した。

Intelロゴ入りのRadeon RX Vega M設定。見た目のみならず、上部のIntelロゴをクリックするとIntelのサイトに飛ばされたり、本来「AMDをフォロー」となるべきところが「Intelをフォロー」にきちんと変わっていたりと、芸が細かい

 いろいろ調べていくうちにヒントとなったのが、AMDのサイトに書かれていた「ReLive機能はスイッチャブルグラフィックスではインストールされず使えない」ということだ。そこでHiGameのUEFI BIOSの設定を覗いてみたところ、確かにデフォルトではスイッチャブルグラフィックス(SG)になっているのが確認できた。

 試しに設定を「Auto」にしてみたところ、Radeon RX Vega Mだけが有効となり、ドライバの再インストールで、ReLive機能が利用できることが確認された。この上でBIOS内でIntel HD Graphics 630も有効にすると、Radeonの機能に加え、Intel GPUの独自機能であるQSVも利用可能になることが確認できた。

BIOS上ではデフォルトではSG設定となっている
写真のように、Primary DisplayをAutoに設定し、Internal GraphicsをEnableにすれば、Radeonをメイン出力にしつつIntel UHD Graphicsの機能も利用できるようになる
SGからAutoに変更すれば、Radeon ReLiveが利用できるようになる

 バッテリを利用するノートPCならともかく、なぜデスクトップであるHiGameがデフォルトでSGになっているのかといえば、本機は背面のディスプレイ出力のうち、HDMIの2基とDisplayPort(DP)の1基(GbE寄り)がRadeon RX Vega M GL、残るDP 1基(中央)がIntel UHD Graphicsに接続されているからだ。

 この構成で仮にSGをオフにしてしまうと、中央のDPのみにケーブルを接続した場合、Intel HD Graphicsが描画に使われ、Radeonの性能を引き出せなくなる。SGをオンにすれば、このポートに接続してもRadeonで3D描画を担当しつつIntel HD Graphicsで出力することが可能になるので、ある程度性能低下を抑えられる、というわけだ。

 ただし、これは接続するポートをユーザーが注意すればいいだけのことだし、試しにSGを経由した場合としなかった場合の性能を比較したところ、3割の性能低下が確認できた。おそらくメモリがシングルチャネルであることも効いているのだが、HiGameでRadeon RX Vega M GLの機能/性能をフルに使いたいのなら、いまのところBIOSの設定項目を変更したうえで、接続するポートに注意したほうが賢明ということになる。余談だが、Radeon RX Vega M GLにディスプレイを接続した場合、SGの設定で省電力を選択しても、Intel UHD Graphicsが描画を担当できない。

BIOS設定や接続先によるFinal Fantasy XIVベンチマークへの影響

 もう1つおもしろいのが、Intelのダウンロードサイトで提供されているRadeon RX Vega Mのベータドライバ。こちらは18.9.1が最新のバージョンとなっているが、これをインストールすると、先ほど述べたIntelロゴ入りのUIや、Radeon RX Vega M設定やらの表示が一切消えて、ほかのAMD GPUとまったく同様の「Radeon設定」に変わるのだ。

 おそらくこれは最新ゲームにいち早く対応するために、UIに手を入れずにそのままAMDから提供されたパターンだろう。ベータドライバでは、18.6.1では使えなかった「AMD Link」や「接続」の設定も表示され、普通に利用できる。また「Radeon Overlay」も有効になるようだ。

 さらに言えば、AMDからダウンロードできるRadeon RX 580やRadeon RX Vega用の最新ドライバ(10月16日時点での最新は18.10.1)も、あっさりインストールして利用できる。つまりユーザーは、Radeon RX Vega MがKaby Lakeに統合されたIntel製品であることをまったく意識せずに、あたかもAMD製品であるかのように扱えてしまうのだ。こうもあっさり「Intelロゴ入りRadeon」を切り捨ててしまっていいのだろうか……などと疑問に思わなくもないものの、いち早くAMD最新ドライバのメリットを享受できるのは、ユーザーにとって決して悪いことではない。

AMDのサイトからRadeon RX 580用などのドライバをダウンロードしてもインストールできてしまう。が、当然UIはAMD向けになる
AMDドライバ入れても、SGがオンの場合はReLiveは利用できない
SGをオフにすればReLiveが利用できる
ちなみにSGがオンでもオフでも、AMD版ドライバはモバイルアプリから監視するAMD LinkやRadeon Overlayが利用可能

Core i7-8809Gの7割だが、おおむねGeForce GTX 950を上回る性能

 それでは最後にベンチマーク結果を紹介したい。実施したのは総合ベンチマークである「PCMark 10」、特定の項目をテストする「SiSoftware Sandra」、CPU性能を測定する「Cinebench R15」、3D周りのベンチマークである「3DMark」、3Dゲーム「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」である。

 ちなみに先述のとおり、本機にはグラフィックスに関する設定が複数あるのだが、Radeon側にディスプレイを接続してプライマリにしている分には、SGがオンでもオフでも性能に大差がないので、Radeon側にディスプレイを接続して、BIOSの設定を変更せずに標準状態でベンチマークを行なうことにした。

 比較用に、CPUの動作クロックやキャッシュの仕様が比較的近いXeon E3-1225 v6(ES品)と、GPUの性能が比較的近いと思われるGeForce GTX 950を組み合わせた自作PC環境を用意した。なお、Xeon E3-1225 v6はデスクトップ版の第6/7世代Core i5と同じく、HTが無効で4コア/4スレッドだが、HiGameに搭載されるCore i5-8305Gは、同じCore i5と言えどもHTが有効であり、4コア/8スレッドである点に留意されたい。

【表】ベンチマーク環境
HiGame i5自作PC
CPUCore i5-8305GXeon E3-1225 v6(ES)
メモリ8GB×18GB×2
ビデオカードRadeon RX Vega M GL(4GB)GeForce GTX 950(2GB)
ストレージFORESS 128GBWD Black2 128GB+1TB
電源付属ACアダプタCooler Master V750(750W、80PLUS Gold)
OSWindows 10 Pro(1803)Windows 10 Pro(1809)
【グラフ1】3DMark Fire Strikeの結果
【グラフ2】3DMark Sky Diverの結果
【グラフ3】3DMark Cloud Gateの結果
【グラフ4】3DMark Ice Storm Extremeの結果
【グラフ5】PCMark 10の結果
【グラフ6】Cinebench R15の結果
【グラフ7】Final Fantasy XVベンチマークの結果
【グラフ8】Final Fantasy XIV 紅蓮の解放者 ベンチマークの結果
【グラフ9】ドラゴンクエストXI ベンチマークの結果

 テスト結果の詳細はグラフを見てもらうとして、ざっくり言ってしまえばCore i5-8305Gの性能は予想以上にいいスコアであった。参考として「NUC8i7HVK」のレビュー(Kaby Lake+Radeonで本格的にゲームを楽しめる高性能NUC「Hades Canyon」も合わせてご覧いただきたいが、CPUのテスト関しては、上位のCore i7-8809Gと比較してクロック/キャッシュの差がそこまでスコアの差に現われない。通常の利用では体感できるほどの差がないと言ってもいいだろう。

 一方で、3D周りのテスト結果はざっくりNUC8i7HVKの7割強の性能にとどまる。GPU規模から計算した演算性能は約7割(演算ユニット数83%×クロック85%≒70.5%)、メモリ帯域幅は8割強なので、この結果は至極当然だ。とは言え、3DMarkでGeForce GTX 950を3~26%程度超える結果を残しているほか、NVIDIA向けに最適化が進んでいるFINAL FANTASY XIVでも9割のスコアを叩き出しているので、評価していいだろう。

 ちなみにこのスコアを現行のGPUに置き換えると、おおむねGeForce GTX 1050~GeForce GTX 1050 Tiクラスであると予想される。よって、高負荷な3Dゲームをプレイしたり、画質を欲張ったりしないかぎりは、1,920×1,080ドット(フルHD)解像度で問題なくプレイできるはずだ。

 サンワサプライの「ワットチェッカー」で消費電力を計測してみたところ、アイドル時は16W前後、3Dベンチマーク時は70~80W前後だった。自作PCはアイドル時で36W、3Dベンチマーク時は126W前後で推移したので、HiGameは消費電力の面でも優れていることがわかる。ことアイドル時の低消費電力は抜きん出ており、バックグラウンドでゲームを動作させて放置しておくような用途には向くだろう。

小型だから応えられる汎用性の高さ

 多少のデザインの不整合や、静かな環境で気になる動作音など、多少の問題はあるものの、この小ささで高いグラフィックス性能を持ち、ある程度の3Dゲームが問題なく動いてしまうのは魅力的だ。PC完成品であるメリットも大きく、PCパーツの知識が不足していたり、PCを組むのが手間だと思っているユーザーにとって有力な選択肢になるだろう。

 ちなみに、Hades Canyonと比較して安価なHiGameであるが、本機を利用するためには別途キーボード、マウス、ディスプレイなど周辺をそろえなければならず、これらをゲーミング製品でそろえるとなると、結局は15万円程度にはなってしまう。ここまでくると、GeForce GTX 1060を搭載したノートやデスクトップも視野に入ってくる。

 しかし「ゲームをやるなら快適に操作できるメカニカルキーボードと大画面ディスプレイがほしい。ただオンラインゲームで結構“放置”したりするので、ゲームをバックグラウンドで走らせておくときは低消費電力がいい」といった、ノートと(普通の)デスクトップのいずれでも満たせないニーズは必ずあると筆者は思っており、HiGameはこのニーズに結構マッチするのではないかと考えている。

 加えて、Radeonは旧来より動画再生の支援機能で定評があり、Steady VideoやFluid Motionといった独自機能が使えるのも魅力の1つ。設置場所はかなり自由度が高いので、リビングのTVと繋いで、3Dゲームのプレイのみならず、ビデオを鑑賞する用途にも応えられそうだ。

 今回は下位モデルをレビューしたが、グラフィックス性能については当然上位モデルのほうが優位だと思われる。下位モデルでも欲張らなければかなりのゲームをこなせる実力を持っており、決して侮れない性能だが、Core i7搭載の上位モデルで3割のグラフィックス性能増となれば、プレイできる3Dゲームの幅はさらに広がる。とは言え、上位モデルは消費電力もその分増加しそうで、このあたりはトレードオフ。自分のニーズをよく考慮した上で、どちらがいいか選択すると良いだろう。