平澤寿康の周辺機器レビュー

マイクロンジャパン「Crucial MX100」

~16nm NANDを採用し、最もコストパフォーマンスに優れるSSD

マイクロンジャパン「Crucial MX100」シリーズ
発売中

価格:オープンプライス

 マイクロンジャパンは、Crucialブランドの2.5インチSSD新モデル「Crucial MX100」を発売した。CrucialブランドのSSDとしては、3月に上位シリーズとなる「Crucial M550」が登場しているが、今回登場したMX100シリーズは、位置付けはM550よりも下位で、実売価格もかなり安価となっている。しかしながら、実性能はM550シリーズに匹敵するほどで、高いコストパフォーマンスを実現している。

512GBモデルで実売2万円台前半の安価な価格を実現

 CrucialブランドのSSDはコストパフォーマンスに優れる製品が多く、常に高い人気を誇っている。今回登場した「MX100」シリーズも、従来モデルに負けず劣らず、非常に高いコストパフォーマンスを実現している。

 MX100シリーズは、3月に登場した同ブランドのSSD「M550」シリーズの下位に位置付けられる、普及価格帯の製品だ。しかし、アクセス速度などのスペック面はM550シリーズに肉薄しており、下位モデルながら高い性能を実現している。

 表1は、MX100シリーズとM550シリーズ、さらにM550シリーズの従来モデルとなるM500シリーズのスペックをまとめたものだ。シーケンシャルリードは全モデル550MB/secと上位のM550シリーズと同じ。シーケンシャルライトの速度は容量によって差がやや大きくなってはいるが、同じ容量のM500を上回っている。また、ランダムアクセス速度もM500シリーズを上回る部分が多い。M550よりも下位の製品ながら、これだけの性能を実現している点は、大きな魅力と言える。

 加えて、販売価格の安さも大きな特徴だ。MX100シリーズは、128GB、256GB、512GBと3種類の容量をラインナップしているが、登場直後の販売価格は、128GBが8,000円前後、256GBが12,000円前後、512GBが24,000円前後と、他の製品を圧倒する安さとなっている。旧世代の製品などが、製品の代替わりの時期などに安価に販売される例はあるが、MX100シリーズの価格はそれに近いもので、価格の安さは競合製品を圧倒しており、非常に優れたコストパフォーマンスを実現した製品と言えるだろう。

「Crucial MX100」。上位モデルに匹敵する性能ながら安価な価格を実現している
【表1】MX100、M550、M500シリーズの基本的なスペック
容量シーケンシャルリードシーケンシャルライト4Kランダムリード4Kランダムライト
Crucial MX100128GB550MB/sec150MB/sec80,000IOPS40,000IOPS
256GB330MB/sec85,000IOPS70,000IOPS
512GB500MB/sec90,000IOPS75,000IOPS
Crucial M550128GB550MB/sec350MB/sec90,000IOPS75,000IOPS
256GB500MB/sec80,000IOPS
512GB85,000IOPS
1TB95,000IOPS
Crucial M500120GB500MB/sec130MB/sec62,000IOPS35,000IOPS
240GB250MB/sec72,000IOPS60,000IOPS
480GB400MB/sec95,000IOPS85,000IOPS
960GB

2.5インチタイプのみをラインナップ

 M550シリーズでは、2.5インチサイズだけでなくmSATAやM.2に対応する製品も用意し、容量も最大1TBまで4種類を用意するというように、豊富なラインナップを備えている。それに対しMX100シリーズでは、形状は厚さ7mmの2.5インチサイズのみとなる。また、容量は先ほど紹介したように128GB、256GB、512GBと3種類。形状や容量など、製品ラインナップを絞ることで、コストを抑えていると考えられる。接続インターフェイスはSATA 6Gbpsとなる。

 製品パッケージはM550シリーズなどとほぼ同じ。SSD本体に加えて、厚さを9.5mmに合わせるためのスペーサーが付属する。デスクトップPCはもちろん、2.5インチドライブを搭載するノートPCでも、ほぼ問題なく利用可能だ。

2.5インチサイズのSSDで、ケースの仕様などは上位モデルのM550などと全く同じだ
側面。高さは7mm。ネジ穴などは2.5インチHDDと同等
底面側のネジ穴も2.5インチHDDと同等だ
接続インターフェイスはSATA 6Gbpsを採用
製品パッケージもM550などとほぼ同じだ
パッケージには、SSD本体に加えて高さを9.5mmに調整するスペーサーが付属する
スペーサーは、このように本体に貼り付けて利用する

上位シリーズ同様Marvell製コントローラを採用

 では、内部の基板をチェックしていこう。ケースはM550シリーズなどと全く同じもので、裏面のネジ4本を外すことで基板を取り出せる点も同じ。ただし、ネジには封印シールが貼られており、このシールを剥がすと保証が受けられなくなる。

 採用しているコントローラは、Marvell製の「88SS9189-BLD2」だ。このコントローラは、M550で採用されているものと同じだが、リビジョンは異なっており、仕様が全く同じかどうかは不明。キャッシュ用のメモリモジュールは「4GA78 D9RLT」で、チップの表記は異なるものの、パートナンバーは「MT42L256M16D1GU-18 WT:A」とこちらもM550採用のものと同じ。基板のパターンもM550のものとほとんど同じで、M550をベースとしていると考えて良さそうだ。

 NANDフラッシュメモリチップは、チップ型番が「41C27 NW656」、パートナンバーが「MT29F256G08CECCBH6-10:C」という、容量256GbitのMLCを採用している。今回試用したのは512GBモデルのため、基板両面に8チップずつ、計16チップが搭載されていた。このNANDフラッシュメモリチップは、16nmプロセスで製造された最新チップだ。M550では20nmプロセスのMLC NANDフラッシュメモリチップを採用していたので、この部分がM550と大きく異なる部分となる。なお、16nmプロセスのNANDフラッシュメモリチップを採用するのは256GBモデルと512GBモデルのみで、128GBモデルは20nmプロセスのチップを採用する。

裏面のネジを外すと基板を取り出せるが、封印シールをはがすことになるため保証が失われる
MX100の基板表面
コントローラはMarvell製の「88SS9189-BLD2」、キャッシュメモリは「4GA78 D9RLT」をそれぞれ採用している
16nmプロセスのMLC NANDフラッシュメモリチップを採用。チップ型番が「41C27 NW656」、パートナンバーが「MT29F256G08CECCBH6-10:C」という容量256Gbitのチップを採用
基板裏面。512GBモデルでは、基板表裏に8個ずつ、合計16個のNANDフラッシュメモリチップを搭載している
こちらはM550の基板。NANDフラッシュメモリチップは異なるが、コントローラやキャッシュメモリ、基板パターンなどMX100とほぼ同じことが分かる

M550シリーズに匹敵する性能を発揮

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「AS SSD Benchmark v1.7.4739.38088」、「ATTO Disk Benchmark v2.47」の3種類。比較用として、M550の512GBモデルとM500の480GBモデルも用意し、同様のテストを行なった。テスト環境は下に示した通りだ。

【テスト環境】
CPUCore i7-4770K
マザーボードIntel DZ87KLT-75K
メモリーDDR3-1600 4GB×2
システム用ストレージSamsung SSD 840 PRO 256GB
OSWindows 8.1 Pro(64bit)

 まず、CrystalDiskMark 3.0.3bの結果を見ると、上位モデルのM550とほぼ同等のスコアが記録されていることが分かる。また、データ形式がランダムの場合と0fillの場合でもほぼ差は見られない。こういった部分は、Marvell製コントローラの性能が遺憾なく発揮されている部分と言えるだろう。

CrystalDiskMark 1,000MB
MX100
M500
M550
CrystalDiskMark 1,000MB 0Fill
MX100
M500
M550
CrystalDiskMark 4,000MB
MX100
M500
M550
CrystalDiskMark 4,000MB 0Fill
MX100
M500
M550

 次に、AS SSD Benchmarkの結果だ。ライト速度はシーケンシャル、ランダムともにM550に匹敵するのに対し、リード速度はわずかに劣っており、M500とほぼ同程度であった。ただ、この程度の差は体感ではほぼ分からない。

AS SSD Benchmark
MX100
M500
M550

 それに対し、Copy Benchmarkの結果は多少異なっており、ISOはM500がトップ、ProgramはMX100がトップ、GameはM550がトップとバラバラの結果となった。製品によって、速度の発揮しやすい用途がやや異なると言えそうだ。とは言え、こちらも体感できるほどの差ではない。

AS SSD Benchmark Copy Benchmark
MX100
M500
M550

 Compression Benchmarkの結果は、3製品ともきれいにほぼ一定の速度が得られていることがわかる。CrystalDiskMarkでデータがランダムと0fillでほぼ差がなかったことと同じで、データ圧縮の有効無効にかかわらずほぼ一定の速度が発揮されると言える。

AS SSD Benchmark Compression Benchmark
MX100
M500
M550

 最後にATTO Disk Benchmarkの結果だ。こちらを見ると、ライト速度はMX100とM550がほぼ同等だったが、リード速度は32KB以上はM550の方が高速だった。これはM550がさすが上位モデルといった結果だ。とはいえ、その差は20MB/sec程度と、1割にも満たない差でしかない。やはりM550と比べて利用時の体感差は非常に小さいと言えるだろう。

ATTO Disk Benchmark
MX100
M500
M550

現役SSDで最もコストパフォーマンスに優れる

 今回は、MX100シリーズのうちアクセス速度が最も高速な512GBモデルを利用したこともあり、テストの結果は上位モデルのM550に匹敵する性能を記録した。ただし、スペック表を見ると分かるように、128Gモデルや256GBモデルではライト速度が512GBモデルより低くなっている。それでも普及価格帯の従来モデルとなるM500シリーズよりは上回っており、低容量モデルでも性能は十分に優れると言えそうだ。

 しかも、販売価格は非常に安価で、コストパフォーマンスは現役SSDの中で最強と言える。特に、上位のM550に匹敵する性能を備える512GBモデルは最もお得と言える。予算の許す限り、512GBモデルの購入をお勧めしたい。

(平澤 寿康)