平澤寿康の周辺機器レビュー
SanDiskのUHS-II対応SDカードと高速USBメモリを試す
(2014/5/1 06:00)
SanDiskから、UHS-II対応SDカードや、世界最大容量128GBのmicroSDカード、超高速USBメモリなどの新製品が続々発表された。中でも、UHS-II対応SDカードや超高速USBメモリは、200MB/secを超えるデータ通信速度を実現しており、PC用ストレージデバイスとしての魅力を十分に備えていると言えそうだ。今回は、これらSanDiskの新製品を取り上げ、PCで使った場合の速度などをチェックしてみた。
UHS-II対応高速SDカードなど新製品が多数登場
新製品を紹介しよう。まず、SDカードシリーズ最上位モデルとなる「エクストリームプロ」シリーズ最新モデル「エクストリームプロSDHC/SDXC UHS-IIカード」は、同社SDカード製品として初となるUHS-II対応SDカードだ。2月に開催されたカメラと写真の総合展示会「CP+2014」で発表され、4月より販売が開始されている。今回は32GBモデルを試用した。価格はオープンプライス、実売価格は28,600円前後。
UHS-IIは、SDカードの最新データバス規格で、従来のUHS-Iの3倍となる最大312MB/secのデータ通信速度を誇る点が大きな特徴。エクストリームプロでは、読み出し最大280MB/sec、書込み最大250MB/secと、従来のSDカードと比べ圧倒的なアクセス速度を実現している。UHSスピードクラスは3となっており、最低書き込み速度保証が30MB/secなので、4K動画の撮影にも対応するとしている。
UHS-Iまでは、パラレル転送方式のまま動作クロックを高めることでデータ通信速度を向上させてきたが、その手法での速度向上はほぼ限界に達してきた。そこでUHS-IIでは、データ転送方式をシリアル方式に変更し、通信速度を向上させている。転送方式の変更とともに接続端子も変更されている。UHS-II対応SDカードの裏面を見ると、UHS-IまでのSDカードと同じ9個の端子と、その下方に8個の新たな端子が用意されていることが分かる。そしてUHS-II接続時には、従来の端子の内3端子と、下部の8端子の合計11端子を利用したデータ転送が行なわれることになる。
従来の端子がそのまま残されているのは、UHS-Iまでに対応するSDカードスロットとの互換性を維持するため。SDカードスロットに取り付けると、インターフェイスの互換性がチェックされ、UHS-II対応ならUHS-IIモードで、非対応ならUHS-I以前のモードで動作するようになる。UHS-IとUHS-IIとの間にインターフェイスの互換性はないが、UHS-II対応SDカードにUHS-Iとの互換性が確保されており、UHS-II非対応のSDカードスロットでも問題なく利用可能となるわけだ。UHS-II非対応のSDカードスロットで利用した場合には、SDカードスロット側の対応速度で動作することになる。
次に、世界最大容量となる128GBの容量をラインナップするmicroSDカード「SanDiskウルトラプラス」。こちらは、2月にバルセロナで開催された「Mobile World Congress 2014」において発表された製品。
内蔵するNANDフラッシュメモリのダイを極限まで薄くし、16枚重ねて実装することにより、厚さ1mmのmicroSDカードで128GBの大容量を実現。インターフェイスはUHS-I対応で、データ転送速度は読み出し最大40MB/sec。UHSスピードクラス1に対応し、10MB/secの最低書き込み速度保証を満たしている。
ターゲットとする機器はスマートフォンやタブレットとしており、SDXC対応のスマートフォンおよびタブレットで利用可能。SanDiskでは、国内で販売されているSDXC対応スマートフォン全機種での動作を確認しているとのこと。互換性に関する情報はSanDiskのホームページで公開されている。価格はオープンプライス、実売価格は36,000円前後。
最後にUSBメモリの新製品。SanDiskは過去に日本でUSBメモリを発売していたことがあったが、ここ数年は発売を見送っていた。海外ではSDカードなどのメモリカードと共に大きなシェアを獲得しており、今回、満を持して日本市場にカムバックした形だ。
発売されるのは、USB 2.0対応の「クルーザー」シリーズ、USB 3.0対応の「エクストリーム」シリーズ、そしてUSB 3.0対応で速度を追求した最上位モデル「エクストリームプロ」シリーズの3モデルだ。今回は、この中から最上位モデルとなるエクストリームプロシリーズを取り上げる。
最大の特徴は、データ通信速度が非常に高速という点。読み出し最大260MB/sec、書き込み最大240MB/secと、SSDに匹敵する高速アクセスを実現している。容量は128GBの1種類のみ。下位モデルのエクストリームシリーズでも読み出し最大245MB/sec、書き込み最大190MB/sec(64GBモデル)と十分に高速だが、そちらと比べてもさらに1段高速となっている。
最上位モデルということで本体デザインにもこだわりが見られる。ボディはアルミニウム製の金属素材を採用し、デザイン性を追求しつつ耐久性も高めている。また、スライド式で収納できるUSBコネクタを採用し、キャップレスでも容易にコネクタを保護できる。コネクタのスライドも小気味よく、利便性も十分。保存データを128bit AESで暗号化する「SanDisk SecureAccess Software」も提供されるため、セキュリティ性も確保できる。価格はオープンプライス、実売価格は18,700円前後だ。
UHS-II対応USBリーダライタで高速アクセスが可能
前述の通り、UHS-II対応SDカードのアクセス速度を引き出すには、SDカードスロットもUHS-IIに対応している必要があるが、現在発売中のPCでUHS-II対応のSDカードスロットを備えるのは、パナソニックの「Let'snote MX3」と東芝の「dynabook T954/89L」のみ。今後は対応PCも徐々に増えていくものと思われるが、それ以外のPCでは、内蔵SDカードスロットではUHS-IIの速度を最大限引き出せない。
そういった場合には、USB接続のUHS-II対応リーダライタを利用すればいい。UHS-II対応USBリーダライタとしては、バッファローの「BSCR20TU3」や、SanDiskの「SanDisk エクストリームプロ SD UHS-II リーダー/ライター」などが発売されている。双方ともUSB 3.0接続のリーダライタで、UHS-II対応SDカードとセットで用意したい。
UHS-II対応SDカードは200MB/sec超の速度を発揮
では、これらの速度をチェックして行こう。今回は、PCでの速度のみをチェックした。用意したPCは、Core i7-4770K搭載の自作PCと、UHS-II対応SDカードスロットを備えるパナソニックの「Let'snote MX3」。自作PCでのSDカードの速度は、バッファローとSanDiskのUHS-II対応SDカードリーダライタを利用して計測した。自作PCの環境は以下のとおりだ。
【自作PC環境】 | |
---|---|
CPU | Core i7-4770K |
マザーボード | Intel DZ87KLT-75K |
メモリ | DDR3-1600 4GB×2 |
システム用ストレージ | Samsung SSD 840 PRO 256GB |
OS | Windows 8.1 Pro(64bit) |
まず、UHS-II対応SDカードであるエクストリームプロUHS-IIカードの速度を見ていこう。自作PCでUHS-II対応SDリーダライタを利用し、CrystakDiskMark 3.0.3bで速度計測した。結果は、シーケンシャルリードが230MB/sec超、シーケンシャルライトが192MB/sec超を記録した。比較として用意したUHS-I対応の「エクストリームプロUHS-Iカード」64GBモデルでは、シーケンシャルリードが95MB/sec、シーケンシャルライトが90MB/secほどであり、UHS-II対応カードではリード/ライトともに2倍以上の速度が発揮されていることが分かる。
ランダムリードやランダムライトの結果を見ても、UHS-I対応カードの2倍以上に高速化されている項目が見られる。ただ、PC用SSDに比べると非常に遅い。これは、ランダムアクセスの多いPCでの利用を考慮し、ランダムアクセス速度を高める設計となっているSSDに対し、SDカードはデジタルカメラなどシーケンシャルアクセスが中心の用途をターゲットとしており、それに特化した設計になっているためだ。それでも、HDDよりは快適性は高まる。なお、リーダライタの違いによる速度差は小さく、ほぼ差はなかった。
次に、実際のファイル転送にかかる時間を計測してみた。デジタルカメラで撮影した写真ファイル500個、合計約2.42GBのデータを、SDカードからPCの内蔵SSDへ、またPCの内蔵SSDからSDカードへ転送する場合にかかる時間をストップウォッチで3回計測し平均を出している。
結果を見ると、UHS-IカードではSDカードからPC内蔵SSDへの転送が約36秒、PC内蔵SSDからSDカードへの転送が約79秒だったのに対し、UHS-IIカードではSDカードからPC内蔵SSDへの転送が約21秒、PC内蔵SSDからSDカードへの転送が約41秒だった。CrystakDiskMarkの結果ように2倍以上の速度差とはならなかったが、それでもUHS-IIカードでは圧倒的に高速なデータ転送が可能だった。デジタルカメラの撮影でRAWデータを利用していたり、高画質動画を撮影した場合など、データ容量が非常に大きくなるが、UHS-IIの速度ならPCへの転送も短時間で行なえる。この点は、デジタルカメラ側がUHS-IIに対応していなくとも、UHS-IIカードを利用する大きなメリットになりそうだ。
次は、UHS-II対応SDカードスロットを備えるLet'snote MX3を利用した検証だ。こちらも自作PCでの検証同様に、CrystakDiskMark 3.0.3bによる速度検証と、デジタルカメラの写真ファイル500枚、約2.42GBのデータ転送時間を計測した。
まず、CrystakDiskMarkは自作PCと比べてやや低速な結果となった。シーケンシャルアクセスでは、リードが194MB/sec、ライトが125MB/secと、どちらも大幅に速度が低下している。この原因は、内蔵SDカードスロットのドライバの最適化不足によるものと思われる。筆者が利用しているVAIO Z(SVZ1311AJ)でも、過去にSDカードスロットのドライバを更新することで、SDカードのデータ転送速度が大きく向上したことがあった。UHS-II対応SDカードスロットはまだPCへの搭載が始まったばかりで、今後のドライバ更新により、USBリーダライタ同様の速度が発揮されるようになる可能性は少なくない。
実データの転送時間は、SDカードからPC内蔵SSDへの転送が約22秒、PC内蔵SSDからSDカードへの転送が約44秒と、自作PCでの結果と比べて大幅な速度低下とはなっていない。
最後に、UHS-II非対応のSDカードスロットを備えるノートPCでの速度も検証した。利用したノートPCは、ソニーの「VAIO Z SVZ1311AJ」。ただし、OSがWindows 7 Professional 64bitのため、参考結果として掲載する。
結果を見ると、UHS-IIカードの速度が大きく低下している。CrystalDiskMark 3.0.3bではUHS-Iカードの半分程度の実力しか引き出せておらず、実データ転送時間もかなり遅かった。他のUHS-II非対応SDカードスロットを備えるノートPCでもほぼ同様の結果であった。おそらく、エクストリームプロUHS-IIカードの内部コントローラの仕様が影響していると考えて良さそうだ。UHS-II非対応のSDカードスロットを備えるPCを利用している場合には、UHS-II対応リーダライタの利用が基本と考えた方がいいだろう。
これだけの速度が発揮されるなら、UHS-II対応なら内蔵SDカードスロットを活用し、内蔵ストレージ容量の少ないウルトラブックなどで増設用ストレージとしての活用も十分に視野に入れられる。OSの起動用やアプリのインストール領域としての利用は、リムーバブルメディアという性質上あまり実用的ではないが、データストレージとしてなら全く問題がない。ただし、UHS-II非対応のSDカードスロットでは従来のUHS-Iよりも速度が低下してしまう点は気になる。速度を引き出すためにはUHS-II対応SDカードスロットがPCに標準的に搭載されるようになる必要があり、今後PCメーカーの対応を期待したい。
エクストリームプロUSBメモリはリード250MB/sec超を記録
次は、エクストリームプロUSBメモリの検証だ。こちらも、先ほどのSDカードと同様に、同じPCで同じ内容のテストで検証を行なった。
まず、CrystalDiskMark 3.0.3bの結果を見ると、シーケンシャルリードが253MB/sec、シーケンシャルライトが236MB/secと、非常に高速な結果となった。また、ランダムアクセス速度もSDカードに比べてかなり高速。もちろん内蔵SSDにはかなわないが、この速度ならランダムアクセスの多いOSをインストールしUSB起動でも十分活用できそうだ。
同様に、デジタルカメラ写真ファイル500個、合計約2.42GBの転送時間も、USBメモリからPC内蔵SSDへの転送が約19秒、PC内蔵SSDからSDカードへの転送が約20秒と、UHS-II対応SDカードよりも高速だった。ファイル転送に待たされるという印象はない。
エクストリームプロUSBメモリは、現在市販されているUSBメモリの中でもトップクラスの速度を実現しており、大容量データを手早く他のPCに転送する場合などに大いに活躍するだろう。また、USBブート対応PCでブートドライブとして利用するのも良さそうだ。価格は19,000円弱と高価だが、128GBの容量に加え、これだけの速度を実現していることを考えると、まずまず納得できる範囲。とにかく速度にこだわったUSBメモリを探しているなら、非常に魅力的な製品と言える。
128GB microSDは速度より容量が魅力
最後に、128GBのウルトラプラスmicroSD。こちらもSDカード同様に、自作PCでSDカードリーダライタを利用して同様のテストを行なった。
CrystalDiskMark 3.0.3bの結果は、シーケンシャルリードが47MB/sec、シーケンシャルライトが16MB/secと、UHS-II対応のエクストリームプロSDカードやUHS-I対応エクストリームプロSDカードと比べてかなり遅い。とはいえ、これはほぼスペック通りの速度。ウルトラプラスシリーズのスペックでは転送速度が最大40MB/secとなっているのに対し、シーケンシャルリードの結果はこの数値を上回っている。そういった意味では、この速度でも不満はない。
次に、デジタルカメラ写真ファイル500個、合計約2.42GBのファイルを転送した場合の時間は、microSDカードからPC内蔵SSDへの転送が約63秒、PC内蔵SSDからmicroSDカードへの転送が約195秒だった。もともとの速度を考えると、この程度の時間がかかるのはしかたがないが、やはりかなり待たされるという印象。この速度では、PCのストレージとして利用するのは少々ためらわれる。
とはいえ、それはデスクトップやノートなどの一般的なPCで利用する場合の印象。内蔵ストレージの拡張性が低いタブレットでは、この容量が大きな魅力となる。実際に、8型液晶を搭載するレノボのWindowsタブレット「Miix 2 8」に取り付けてみたが、全容量を問題なく利用可能だった。Androidスマートフォンと同様で、標準でmicroSDXCをサポートするWindowsタブレットやAndroidタブレットであれば、問題なく利用できると考えていい。
なお、Miix 2 8に取り付けた場合の速度は、シーケンシャルリードが23MB/sec、シーケンシャルライトが14MB/secだった。自作PCでの検証よりも遅く、速度だけを見るとやはり頻繁にアクセスするストレージとして利用するのはやや厳しいという印象。それでも、タブレットにとってmicroSDはストレージ増設の重要な手段であり、この速度でも十分に活用できるはずだ。
速度的にはそれほど高速ではないものの、やはりmicroSDで世界最大容量となる128GBを実現している点が最大の魅力。スマートフォンやタブレットなどで、大容量の動画や音楽ファイルを多数保存したい場合などに威力を発揮するはずだ。実売36,000円前後と高価なため誰にでもお勧めできるというものではないが、コストをかけてでも容量を追求したいなら、十分に購入する価値があるだろう。