大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

デルに国内コンシューマPC事業の取り組みを聞く
~下期はさらに話題性のある新製品を投入する



デルコンシューマー事業本部本部長、執行役員のジョージ・ケラマン氏

 デルが、国内におけるコンシューマ事業を加速している。デルのコンシューマー事業本部長のジョージ・ケラマン執行役員は、「コンシューマPC市場におけるデルの認知度を高めていきたい。そのための施策を今後も強化していく」と語る。2009年上期は、デザイン性を追求した「Adamo」の投入や、ゲーミングPC「Alienware」の日本上陸など、話題性のある製品の発売が相次いだが、ケラマン執行役員は、「2009年下期は、上期以上にユニークな製品を日本市場に投入することができる」と、今後の製品投入にも期待をもたせる。デルの国内におけるコンシューマPC事業の取り組みについて、ケラマン執行役員に話を聞いた。


【Q】2009年上期は、「Adamo」の投入や、ゲーミングPC「Alienware」の日本上陸など、デルのコンシューマPC事業においては、話題性には事欠かなかったですね。その成果をどう見ていますか

Adamo

【ケラマン氏】確かに、新製品の投入という点では話題を集めることができたと自負しています。ハイエンドゲーミングPCのAlienware、高性能メインストリームPCのAdamo、そして、メインストリームノートPCの「Inspiron Mini10」というように、話題性がある製品を次々と市場投入でき、大変充実した期間だったといえます。

 2009年上期の状況を一言で言えば、「機会」。さまざまな場面から、デルの優れたコンシューマPCに触れていただく機会、そのすばらしさを知っていただく機会が増えたのではないでしょうか。例えば、デルの製品は、価格ばかりがクローズアップされますが、パフォーマンスやデザイン、サポートという点でも、価値を提供できるPCであることをご理解いただけたのではないかと考えています。経済環境が悪化するなかで、価格やパフォーマンスの点でもバリューがあるデルのPCは、むしろビジネスの機会を拡大させ、デルのコンシューマPC事業そのものを拡大させることにつながっている。最高の半年間だったと捉えています。

【Q】この1年間で大きく変わったことはなんですか

【ケラマン氏】組織体制です。デルは、2年前に、コンシューマ事業体制をグローバル型へと移行しました。財務、製品開発、物流、サービス、マーケティング、セールスのすべてを1つの組織に統合し、コンシューマ領域を専門に事業を推進できる体制を整えた。この間、試行錯誤を繰り返してきましたが、いよいよグローバル組織としての体制が確立し、メリットを出せるようになってきています。

【Q】確かに、デルは、今年からは全社規模で、グローバル組織体制へと移行していますが、コンシューマ事業部門は先行する形で、グローバル組織体制を敷きました。その成果はどんな形で表れているのでしょうか

Alienware

【ケラマン氏】例えば、Alienwareの日本上陸は、デルというグローバル組織であるからこそ投入できたものです。かつてのAlienwareの組織体制だけでは、とても日本への製品投入は難しかったでしょう。一方、製品化においては、日本からの要求が数多く反映される体制が整ってきています。コンシューマPC領域においては、日本のユーザーの要求レベルが最も高い。それをグローバルのチーム全員が知っている。日本の意見を積極的に取り入れていこうという意識が強いのです。日本の声を製品に反映することは、世界で認められる製品づくりにつながるという共通認識が、コンシューマ事業を担当するグローバルチームのなかに根づいています。

 また、マーケティング施策1つをとっても、日本だけの陣容を見ると30人規模の体制となっていますが、全世界に何千人ものグローバルチームを持っているわけですから、よりダイナミックに活動することができるようになっている。組織をグローバル化したことで、デルがグローバルに持つ工場、物流の仕組みを活用しやすくなったこともメリットだといえます。

【Q】ただ、ネットブックの投入が台湾勢に比べて遅れるなど、グローバル組織が必ずしも成功していると思えない部分もありますが

【ケラマン氏】ネットブックへの取り組みは決して遅れたわけではありません。我々は1年以上前から、この分野の製品に注目し、企画をしてきた経緯があります。しっかりとしたロードマップを敷き、市場投入を図ったものです。確かに、製品を市場投入した時期は台湾勢に比べて遅かったかもしれません。しかし、ネットブックの用途を考えると、軽量性、堅牢性、低消費電力などの観点から、HDDよりも、SSDが有効であると考えており、そのタイミングを計っていたという背景がありました。SSD搭載モデルを適切なコストを実現したタイミングで市場投入を図りたいと考えていた。ところが、市場ではそれを前に、HDDを搭載したネットブックが広がりを見せ始めた。そこで、デルはHDDを搭載したネットブックを市場投入し、市場の変化に追随した。この柔軟性もグローバル組織だからこそ実現できたものだと言えます。

【Q】グローバル組織化すると、成長が著しい中国などにフォーカスがあたり、日本独自の施策が後回しになりませんか

【ケラマン氏】その点では、日本のチームは、やはり日本の市場にフォーカスすることになりますから、日本の市場にあわせた施策を展開できる。グローバル組織の強みと、ローカル組織のいい点を活用できる。私も、本社からの出向ではなく、デル・ジャパンの社員ですし、8年以上に渡り、日本に住んでいますから、日本のこともよく分かる。我々は外資系メーカーではありますが、デル・ジャパンである、という意識を強く持っています。日本のコンシューマユーザーの声をよく聞き、それを、世界に向けて投入する製品に反映させることができる。マーケティング施策についても、日本独自のものを開始しています。

 デルが展開するこれまでのマーケティング施策は、すぐに販売につながるようなトランザクション・マーケティングが中心となっていました。しかし、今年に入ってからは、認知を高めるようなブランドマーケティング施策を開始しています。これまでデルを知らなかった人に、デルというブランド認知していただき、一方で、デルを知っている人にも、デルのPCが優れていること、十人十色ともいえるそれぞれのライフスタイルに合致したPCを、デルのなかから選択できることを知ってもらいたい。

JR新宿駅構内のアルプス広場で開催した「YOURS ISHERE」の様子

 先週木曜日から日曜日(7月23日から26日)までの4日間、JR新宿駅構内のアルプス広場において、デルの製品を体験してもらうタッチ&トライイベント「YOURS IS HERE」を開催しました。これも、直接販売につなげるというものではなく、デルの認知度を高めることを狙ったブランドマーケティングの1つです。不特定多数の人が訪れる新宿駅構内を選んだのも、認知度向上には最適な場所であるという観点からのものです。今後も、こうしたマーケティング施策は、継続的に展開していきたいと考えています。

【Q】2009年上期において、やり残したことはありますか

【ケラマン氏】敢えて挙げるならば、リテール市場での認知度向上です。現在、デルのコンシューマPCを取り扱っている店舗は、日本国内で1,000店舗以上となります。昨年の時点では400~500店舗でしたから、1年で倍以上になっている。しかし、量販店におけるデルの認知度はまだまだ低い。とくに地方都市における認知をもっとあげる必要があります。デルの価値をしっかりと紹介できる体制を作らなくてはならない。そして、さまざまなニーズにあわせた製品を用意していることも訴えていきたい。そのためには、量販店の店員のなかに、もっとデルファンを増やしていかなくてはならないと考えています。量販店を担当するラウンダーを現在33人配置し、全国の量販店でトレーニングを実施しています。こうした活動をさらに積極化するつもりです。

【Q】2009年下期はどんなことに取り組んでいきますか

【ケラマン氏】上期は話題性のある製品を相次いで投入しましたが、2009年下期は、上期以上にユニークな製品を、日本市場に投入できると考えています。詳細は、まだお話できませんが、その点ではぜひ期待をしていただきたい。そして、Windows 7の発売が控えていますから、その点でも施策を打っていきたい。いま、デルのWindows Vista搭載PCを購入すると、無償でWindows 7にアップグレードできるキャンペーンを実施しています。これも安心してデルのPCを購入していただくための施策です。デルを購入すれば安心であるという認知度も高めていきたいですね。

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(2009年 7月 27日)

[Text by 大河原 克行]