大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

マウスコンピューターの修理拠点、埼玉サービスセンター訪問記
〜年度内には24時間以内修理比率50%を目指す



マウスコンピューター カスタマーサポートセンターの重松淳センター長

 マウスコンピューターは、同社製PCの修理拠点として、埼玉・春日部に埼玉サービスセンターを開設している。2011年3月に、春日部近郊の杉戸町の修理拠点から現在の場所に移転。さらに、2012年3月18日からは、新たな修理体制へとシフトし、より短期間で修理を行なえる体制へと強化した。

 マウスコンピューター カスタマーサポートセンター・重松淳センター長は、「対外的には平均6日間での修理体制を唱っているが、すでに約2割の製品で24時間以内の修理が完了している。今年度中にはこれを50%にまで引き上げ、ユーザーを待たせない体制をさらに強化していきたい」と語る。マウスコンピューターの埼玉サービスセンターを訪れ、同社の修理体制を見た。

●「創業の地」で修理を続けるこだわり

 マウスコンピューター埼玉サービスセンターは、東武伊勢崎線一ノ割駅から徒歩約10分の閑静な住宅街の中にある。

 春日部近郊の杉戸町に修理拠点を置いていたマウスコンピューターだが、2011年3月に現在地へ移転。設備などを一新して修理業務を開始している。現在の場所は、かつて靴の物流倉庫として利用されていた施設だという。

埼玉サービスセンター。閑静な住宅街の中にある 埼玉サービスセンターの入口部。修理品を直接持ち込んでも受け付けてもらえるという

 「マウスコンピューターにとって、春日部は創業の地。この地で修理をしていきたいというこだわりがある」と語るのは、マウスコンピューター カスタマーサポートセンター・重松淳センター長。「社内では、長野県飯山市の飯山工場に統合するという議論もあったが、従来通り、春日部で全国からの修理に対応できる体制を維持することで、顧客満足度を高めることができると考えた」とする。

 新たな場所に移転しても、同じ春日部市内であれば、これまで修理業務に当たっていた人材はそのまま雇用しやすい。

マウスコンピューター カスタマーサポートセンター修理作業グループの中木伸一グループリーダー

 修理現場を統括するマウスコンピューター カスタマーサポートセンター修理作業グループ・中木伸一グループリーダーは、「マウスコンピューターに10年以上勤務している熟練の技術者が直接修理を行なっていることも、当社の修理体制の大きな特徴。長年に渡って、マウスコンピューターの製品を知り、ユーザーの気持ちを知った技術者が、これまで同様に修理を行なっている」と語る。

 埼玉サービスセンターの平均年齢は約34歳。これは、熟練した技術者がPCの修理に当たっていることの証ともいえよう。

●日曜日も修理業務を行なう意味とは

 現在、埼玉サービスセンターは、約70人のスタッフで構成され、そのうち、修理業務に携わっているのは、7割を占める約50人。午前9時〜午後6時が勤務時間であり、必要に応じて午後8時までの残業がある。残業時間の制限を午後8時までとしているのは、近隣が住宅地になっていることに配慮したものだ。

 また、土曜日を休日としているものの、日曜日は修理業務を行なっている点も特徴だ。

 「個人ユーザーの場合、土曜日に故障したPCを発送するケースが多く、いち早く修理に取りかかるには、日曜日から修理業務を行なった方がいいと判断した。シフトを組んで週休2日制を維持しながら、日曜日も業務を行なう体制にしている」(重松センター長)という。

 宅配便などによって埼玉サービスセンターに持ち込まれたPCは、すぐに受付処理が行なわれる。午前9時の始業時に集中的にPCが運びこまれることが多いが、宅配便のルート配送などの都合で、終日に渡って、修理依頼品が随時運び込まれ、すぐに受付処理が行なわれることになる。

 受付作業においては、添付品などがその場で確認され、写真に撮影。それを修理部門向けデータベースである「RPFA(Repair Force Automation)」に入力し、修理対象PCの管理を行なうことになる。

宅配便で送られてくる故障したPC。朝の時間帯はもっと多くなる 宅配便会社の配送ルート関係で、1台ずつ運び込まれることもある ここが受付エリア。搬入口の横に設置されている
修理受付が終わったPCはすぐに開梱作業が開始される 1台だけ入庫された状態でもすぐに受付処理および開梱作業を行なう 添付品などをすべてチェックし、写真を撮影しておく

 同社では直販比率が高いことを背景に、ユーザーが購入したPCの仕様に関する情報を顧客データベースに蓄積しているほか、コールセンターへの問い合わせ状況なども管理している。RPFAでは、これらとも連動し、修理作業をより効率的に行なえるようにしている。

 登録が終わったPCは、2階の修理エリアへと運ばれることになる。

 ここでは5年間および3年間の修理を行なう「安心パック」の契約者のPCから優先的に修理されることになっている。同社によると、5年保証契約を結んでいるのは全体の1割、3年保証契約は約3割の構成比だという。

修理するPC本体を開梱する 修理品に関する情報を「RPFA(Repair Force Automation)」に入力する RPFAの情報は、販売データやコールセンターのサポートデータとも連動している
1年保証、3年保証といった有償契約の安心パックは優先して修理を進める 開梱したPCは棚に並べられる
PCを取り出したあとの空き箱を保管しておく。基本的には同じ箱で返送する 2階の修理フロアにリフトを使って搬入

●長年のスキルを蓄積したスタッフが作業

 2階に運び込まれたPCは、まず修理診断エリアにおいて、故障箇所の特定が行なわれる。

 診断エリアでは、ノートPCで6エリア、デスクトップPCで6エリアに分かれた全12エリアにおいて、27項目の診断が行なわれ、故障内容が確認される。

 「ゲームをプレイした際の特定のシーンで動作しない、あるいはWebの特定の表示で問題が起こるといったこともある。そのため、時間をかけて故障箇所を再現したり、故障が再現できない場合には、ユーザーに問い合わせて再度状況を確認している。また、ウイルスチェックや、部品単位での不具合を検証することも行なっている」(中木グループリーダー)という。

2階の修理フロアの様子 iiyamaブランドのPCの修理も行なわれている
修理を待つPC。有償サポートである「安心パック」に加入している製品の場合は、優先的に修理が行なわれるように配慮している
修理診断エリアで、ケースを開けて修理すべき箇所を診断する。デスクトップPCおよびノートPCでそれぞれ6つずつエリアがある
赤い皿は磁石となっており、取り外したネジを保管する。こうした知恵が随所にみられる 修理診断工程ではチェックシートを用いて27項目の確認が行なわれる
診断用プログラムはネットワークを介して動作。ウイルスチェックなども行なわれる 部品単位での動作を確認するための部品診断用PCも用意している

 故障内容を確認すると、次に必要となる部品を用意し、修理作業の準備が行なわれる。

 使用頻度が高い部品は、修理作業が行なわれる2階に置かれているが、それほど頻度が高くない部品に関しては、1階に置かれている。

 修理の準備が整ったPCは、修理作業エリアに運ばれ、ここでは5人の修理スタッフがPCを修理している。

修理用の部品が保管されているエリア
キーボードなども用意されている ケースも修理部品としてストックしている こちらは有償での修理見積もりに関してユーザーから返事待ちで保管されているPC
修理作業エリアの様子。熟練の作業者が修理を行っている
部品の組み合わせなどに関する情報も確認できる エアーを吹き付けてホコリなどを取り払うクリーンルームの様子

 先にも触れたように、修理作業は熟練したスタッフが担当しているのが特徴だ。

 「修理に求められるスキルは、生産工程のスキルとは異なる。長年に渡って修理のノウハウを蓄積したスタッフが作業を行なっている」(中木グループリーダー)というわけだ。

 修理作業が終わると、QCラインにおいて、内観検査をはじめとする18項目の内容をチェック。出荷できる品質基準に達しているかを確認する。ここでは6人体制で対応しており、チェックした内容は、修理報告書としてまとめられ、本体に添付されてユーザーのもとに返却されることになる。

 QCラインでチェックが完了すると、1階フロアに運ばれて梱包が行なわれ、その日のうちに出荷する。

作業が終わったPCを動作確認する工程。QCラインと呼ばれ、18項目を確認する 修理が完了するときれいにクリーンアップされる 修理が終わったPCは再びリフトに乗せられて1階へ
修理技術グループでは修理に関するさまざまな情報を収集し、部品メーカーとの緊密な関係を築いている 修理連絡グループ。不具合が再現できない場合や修理見積もりに関する連絡などを行なう窓口
こらちは携帯音楽プレーヤーブランド「iriver」、「Lyumo」の修理エリア
iriverのような小型の商品の修理は袋に入れられて返送される こちらはデジタルフォトフレームの修理の様子
修理が完了したPCを梱包する。 出荷待ちの修理が完了したPC 修理が完了したPCが出荷される

●2012年3月から修理体制を大きく変更

 現在、マウスコンピューターでは、平均6日間での修理完了を打ち出しているが、実際には約2割のPCにおいて、入庫後24時間以内での修理が完了しているという。

 「今年度中にはこれを50%にまで引き上げたい。修理にかかる時間を短縮することで、ユーザーがPCを利用できない期間を短くしていきたいと考えている」(重松センター長)とする。

 修理期間の短縮に寄与しているのが、2012年3月18日からスタートした新たな修理体制の確立である。

 従来は1人の作業者が、修理箇所を特定する診断から、部品の調達、交換・修理作業、報告書作成までを行なっていたが、新体制では修理診断と修理作業とを分業。それぞれに専門的に作業を行なうことで、効率化促進を狙った。

 「故障内容を分析したところ、約7割のPCが起動しないなど、電源まわりに関するものだった。修理内容が集中している傾向がわかったため、診断と修理作業を思い切って切り分けてみた。机上の計算では約3割の効率化が図れると予測していたが、現時点で2割の効率化が図られている」という。

 「診断作業に関わる人員を、今後は、1.5倍にまで増やしていきたい。これにより、24時間以内での修理比率を50%にまで引き上げることができると考えている」という。

 診断作業で利用するチェックツールの改善も、効率化を高めることにつながるとみている。

●24時間修理比率の向上に向けた課題は

 だが、24時間以内での修理比率の向上に向けては、いくつかの課題があるのも事実だ。

 例えば、PCの高機能化にあわせて、利用シーンが多岐に渡ることで、不具合箇所の特定が難しくなること、有償での見積もり確認に、一定の時間がかかってしまうことなどは、時間短縮において解決すべき見逃せない課題だといえる。

 また、「今後、タブレットPCやUltrabookといった製品群では、修理しにくい一体成形型のものが増える可能性が高い。すぐに代替機を提供するといったことも、これからは検討していくべき課題になるだろう」と、重松センター長は語る。

 そして、本来は修理をしなくてもいいPCが、ユーザーから問い合わせがあった段階で、故障案件ではないことが特定しきれず、埼玉サービスセンターに入庫してしまい、結果として作業工数を増やし、ユーザーの利便性も損なってしまうという課題も解決していく必要があるという。

 「セルフサポートの仕組みを充実させることも改善につながるだろう。FAQなどを公開し、ユーザー自身が確認できるという提案もしていきたい」(重松センター長)。

 また、PCの仕組みに詳しいユーザーであれば、部品を送付することでユーザー自身が直接部品を交換するといった仕組みの構築も、今後検討していくことになりそうだ。

 また、修理拠点で蓄積したノウハウをもとに、開発や生産における作業を改善し、それにより不良率そのものを下げるということも、修理件数を減らし、ひいては24時間以内に修理できるPCの比率を増加させることにつながることになる。

 「法人向けPCのMouseProでは、生産時の検査項目を増やし、エージングの時間を長くしている。これは埼玉サービスセンターの意見を反映したもの。同シリーズにおいては、初期不良率が大幅に減っている」という。

●ユーザーの「思考」に立った修理体制へ

 マウスコンピューター カスタマーサポートセンターの重松淳センター長は、「壊れたPCをきちっと修理することで、次もマウスコンピューターのPCを選んでもらうというサイクルを作る、いわば縁の下の力持ちという役割は、修理部門にとっては当然のこと」との姿勢を示しながら、「ユーザーの『視点』での修理だけに留まらず、ユーザーの『思考』に立った修理をしていきたい」とする。

 ユーザー「視点」の修理とは、修理期間の短縮や修理品質の向上という点で実現されるものだといえるだろう。しかし、ユーザーの「思考」に立った修理とは、さらにプラスアルファの要素が求められることになる。

 「筐体が壊れていた場合に、単に筐体を交換すればいいのか、それとも長年使った思い入れがある筐体を生かすことを考えるのか。ユーザーの思考に立って、提案をしていく必要がある」とする。

 中には修理をするよりも、買い換えてしまった方がメリットがある場合もある。こうした判断を、ユーザーの思考に立ちながら考え、提案していくことを徹底していきたいという。

 またこうも語る。

 「新製品は3カ月に1度のペースで投入される。最新の技術をいち早く投入することを評価していただき、当社の製品を選択していただいているユーザーも少なくない。修理部門においても、最新の技術に対して、対応できる技能を常に磨いておく必要がある」

 これも、マウスコンピューターならではの求められる要素だといえるだろう。

 熟練の技術者たちが、最新の技術にも対応し、それによってユーザー満足度を高めるという自負が埼玉サービスセンターには息づいている。それは創業の地にいまでも居を構えるという姿勢からも感じることができるといえよう。