大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

ソニータブレットでソニーの「本気ぶり」を感じてほしい
〜ソニーマーケティング・栗田社長に聞く



ソニーマーケティングの栗田伸樹社長

 Sony Tablet(ソニータブレット)が、2011年9月17日から発売となった。

 ソニーマーケティングの栗田伸樹社長は、「ソニータブレットは、将来のソニーの主力打者となりうる製品。そして、ソニーの本格参入なしにはタブレット市場の成長はありえない。タブレットという新たな市場において、ソニーの長い戦いがいよいよ始まる」と、長期的な観点で事業を推進する姿勢をみせる。だがその一方で、「2012年はAndroid市場で50%以上のシェアを獲得するというのが公式なコメントだが、私自身は年末商戦でそれに近いところまで近づけたい」と、短期決戦にも意欲をみせる。

 9月17日から発売したスレート型のSシリーズに加えて、10月〜11月にかけては、2画面タイプのPシリーズを発売。同じタイミングで、NTTドコモの3Gに対応したSシリーズも追加投入する予定だ。ソニーマーケティングの栗田伸樹社長に、ソニータブレットの取り組みについて聞いた。

●タブレット市場に一歩を踏み出す

−−いよいよソニータブレットが発売されました。どんな気持ちでこの日を迎えましたか。

栗田 「期待十分、不安少々」といった感じでしょうか(笑)。ソニーにとっては初めてのタブレット製品です。今年、日本国内のタブレット端末市場は年間200万台と想定されていますが、それが2015年には、800〜850万台の市場規模にまで成長することが想定されている。これだけの広がりを持つ市場に対して、ソニーが参入し、そこでしっかりと事業を成長させていきたい。

9月17日に発売になったSony Tablet

 その第1歩を踏み出したのが、ソニータブレット Sシリーズであり、それを発売した2011年9月17日は、節目の日になったといえます。9月16日の夜から、9月17日の朝にかけて、全国1,700店舗でソニータブレットの展示をしていただいた。販売店の方々にも大きな期待を持ってソニータブレットを迎え入れていただいたことを感じます。また、多くの方々が事前に予約をしていただき、中には発売日の午前3時に店舗に駆けつけていただいた方もいた。7月25日以降のポスト地デジを担う新たな製品が期待されている中で、そこにソニーらしい製品を導入するのがソニーのミッション。それを具現化する製品の1つが、ソニータブレットだといえます。800万台という市場規模に到達するためには、ソニーの市場参入がなければ成しえません。そうした気持ちをもって取り組んでいきます。

−−どれぐらいの事業規模に育てていく考えですか。

栗田 大きな成長が期待される市場ですから、なかなか読みにくいところはあります。しかし、ソニーマーケティングにとって、将来の「主力打者」になるのは間違いがない。4番打者は「テレビ」ということになりますが、その前を打つような打者(=製品)になるでしょうね(笑)。まずは、Android搭載のタブレット端末の中で50%以上のシェアを獲得したい。公式には、「2012年度には、Android搭載のタブレット端末のなかで50%以上を獲得する」という言い方をしていますが、個人的には、この年末商戦でそこに近い水準にまで到達したいと考えています。

−−iPadの牙城に挑むのはその先になると。

栗田 iPadは、大きくて、高い「山」です。すぐに追いつけるとは思っていません。ウォークマンでは、すでにiPodのシェアを超え、2011年の年末商戦では55%以上のシェア獲得を目指しますが、これはもともとウェークマンとして一定のシェアを持っていた上での積み上げによる数字。しかし、ソニータブレットはゼロからのスタートです。まずはAndroid市場において存在感を定着をさせ、その次にタブレット端末市場全体を視野に捉えたい。短期的な勝負をするつもりはありません。まだ戦いは始まったばかり。中長期的にこのビジネスを捉え、取り組んでいく考えです。

●目指すのは「みんなのタブレット」

−−iPadとはどんな違いを訴求しますか。

メッセージは「みんなのタブレット」

栗田 ソニータブレットでは、「みんなのタブレット」というメッセージを発信しています。これまでのタブレット端末の利用環境を分析してみると、65〜70%の購入者が家庭内で利用しています。そして、多くの人が家庭内で共有して利用していることもわかった。ソニータブレットでは、子供はゲーム、お父さんは検索サービス、お母さんはショッピングというように1台のタブレットを家族みんなで共有する、家族みんなのタブレットとして、幅広い層に訴求していきたい。操作性を追求した使いやすさや、サクサク・エクスペリエンスによる軽快な動作は、家族で利用する際にも、初めてタブレットを利用する人にとっても、適したものだと自負しています。

 さらに、家庭内のリモコンをすべてソニータブレットに統合して利用するといった使い方もできますし、映画や音楽のコンテンツをソニーエンターテインメントネットワークを通じてダウンロードして利用することもでき、10月以降にはリーダーストアを通じた電子書籍のダウンロードや、プレイステーションストアを通じた初代プレイステーション用ゲームの利用も可能になります。また、DLNAを通じてTVとの連動による楽しさの提案もソニータブレットならではのものになります。そして、見逃せない特徴が、Androidという、オープン性が最も評価されているプラットフォームの上で投入することができたという点です。Androidマーケットを通じて、さまざまなアプリケーションを利用でき、ここにソニーならではのアプリケーションも提供していくことになります。

 ソニータブレットでは、ハードウェアの1つ1つの優位性を訴求するよりも、「なにができるか」というところにフォーカスしていくつもりです。「みる」、「あそぶ」、「よむ・かく」、「つながる」という4つの観点から、ソニータブレットが実現できる楽しさをを提案し、お客様が、こんなことができるんだということが想像でき、実感できる端末に育て上げたい。

−−海外での一部報道では、iPadに比べてプラスチックの材質感が劣る、あるいはパフォーマンスの悪さを指摘する記事が出ていますね。

栗田 どうしてこのような評価になるのかはわかりませんが、とにかく一度、店頭に出向いて、ソニータブレットを触っていただければ、それが大きな誤解であることをわかっていただけると思います。サクサク動く操作感は、ソニータブレットが最もこだわったところですし、質感についても満足していただけるものと考えています。むしろ、ソニーのこだわりを随所に感じていただけるのではないでしょうか。触っていただければ、ソニーが本気で作った端末であるということを、きっと実感していただけますよ。まずは触ってみてください。それだけの自信を持った端末を用意しています。

●Sシリーズは「みんなで」、Pシリーズは「みんなが」

−−10月には2画面タイプのPシリーズが発売されることになりますね。

栗田 ソニータブレットは、「みんなのタブレット」という言い方をしていますが、スレート型のSシリーズは、「みんな“で”使う」タブレットという側面が強い。家族が共有利用するということも視野に入れているからです。しかし、2画面タイプのPシリーズではパーソナルという要素が強くなりますから、そこでは多くの個人ユーザーに利用していただくための「みんな“が”使う」という言い方が適しているかもしれません。みんなが使えるポータブルデバイスというのがPシリーズの考え方です。Pシリーズでは、GPS機能を搭載していますから、外に持ち運び、さまざまな活用ができる。PetaMapを活用し提供しているAR(拡張現実)によるモンスターレーダーのプレイも可能です。こうした点でSシリーズとは利用のベースが少し違ってくると考えています。

スレートのSシリーズ 折り畳み2画面のPシリーズ

−−出荷比率はどう捉えていますか。

栗田 Pシリーズは3Gモデルだけの出荷となりますから、約3割ほどになると考えています。残りは7割はSシリーズになるのではないでしょうか。現在出荷しているのはSシリーズのWi-Fiモデルだけですが、Pシリーズと同時期に、Sシリーズの3Gモデルの出荷を計画しています。ただ、この市場はソニーにとっても初めての市場ですから、どの製品がどれぐらいの出荷比率になるかというのは、正直なところ読みにくい部分があります。

●800万台の市場に向けて長期戦で挑む

−−現時点での手応えはどうですか。

栗田 好調な出足だと考えています。ただ、先にも触れましたが、ソニーは、短期勝負をするつもりはありません。将来の800万台という市場規模に向けて、ソニーはどんなことができるのか、どんな市場を創造することができるのかという重要なミッションを持った上で事業を推進していくつもりです。新たな市場を創造する製品へと育て上げたい。

 またこんなことも考えています。PCのネットワーク接続率はほぼ100%といっていいですし、プレイステーションも75%以上のネットワーク接続率となっています。しかし、TVの接続率はまだ15%程度。この接続率を引き上げるための「接着剤」としての役割を果たすのがソニータブレットとなる。そして、この端末を通じてソニーが提供するエンターテインメントの世界をより身近に感じてもらいたい。

 ソニーが、この製品に「ソニータブレット」という名称をつけたのは、ソニーが提供するエンターテインメントの世界を実感していただくための端末であるからです。ソニーマーケティングが取り扱う製品のうち、テレビ、PC、スマートフォン、タブレットの4つが、エンターテインメントの窓口となる製品。その世界で、タブレットは重要な役割を果たすことになります。ソニーはタブレットに本気です。その本気を感じてもらえる製品を、今回のソニータブレットによって、市場に投入できたと考えています。