大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

価格下落で1社500億円の利益が飛んだ!?
〜PCメーカー各社が苦戦した2008年度決算を総括



 PCメーカー各社の2008年度決算が出揃った。

 2008年度前半までは好調に推移していたPC市場だが、11月以降の市場低迷の影響を受けて、通期業績は、各社とも厳しい決算内容となった。

●東芝
東芝「dynabook SS RX2」

 国内PCメーカーとして最大規模の出荷を誇る東芝は、出荷台数については相変わらず公表していないが、2007年度に続いて1,000万台規模の出荷台数は維持した模様だ。

 売上高は前年比8%減の9,553億円、営業利益は65%減の145億円。黒字を維持したものの、「売価ダウン、低価格化、欧州市場向けのユーロ安の影響により、減収減益」(東芝・村岡富美雄代表執行役専務)となった。

 2009年度の業績見通しも、売上高9,000億円と減収を見込み、営業利益は150億円と微増に留まる計画だ。

 売上高9,000億円の計画の内訳は上期4,200億円、下期4,800億円。営業利益は上期70億円、下期80億円と見込んでいるが、下期の景気回復がどの程度まで進展するのか、為替の影響がどこまで利益に影響するのかといった不透明要素もあり、慎重な姿勢は崩していない。

●富士通
富士通「LOOX U」

 富士通は、2008年度実績で出荷台数が前年比16%減の736万台。PCと携帯電話、HDDを含むユビキタスプロダクトソリューション事業の売上高は20%減の9,491億円、営業利益が99%減の5億円。そのうちPCおよび携帯電話の合計売上高は18%減の6,833億円。

 ユビキタスプロダクトソリューション事業全体では、携帯電話事業における国内販売制度変更の影響によって、携帯端末の大幅な販売減が含まれているというが、PC事業についても、出荷計画を期中に下方修正したほか、期末の出荷台数の2桁台の落ち込みを見ると、かなり厳しい状況であることに間違いはない。目標としている3%の営業利益率確保には到達しなかったと想定される。

 2009年度は、PCおよび携帯電話の合計売上高は27%増の8,700億円と大幅な増収を見込んでいるが、富士通ソリューションテクノロジーの完全子会社化の影響および為替の影響を除いた実質成長ベースでは前年比6%減とマイナス成長を予測。PCの出荷計画も、12%減の650万台と大幅な前年割れを見込んでいる。

 同社では、「PCの需要低迷、価格競争激化は通期減収に影響する」としており、上期、下期を通じて厳しい事業環境にあることを示した。

 欧州の富士通テクノロジーソリューション(旧富士通シーメンスコンピューターズ)を中核とした海外事業の再編などの影響がどうなるかが注目されよう。

●ソニー
ソニー「VAIO type P」

 ソニーは、前年比12%増の580万台と台数ベースでは伸張したものの、減収減益の業績。「VAIOは、価格下落の影響を受け、大幅な減収となっている」(ソニーの原直史業務執行役)という。

 海外における販売エリアの拡大など、海外事業の強化を図っているVAIOだが、世界規模での価格下落の影響や、ネットブックの登場による低価格シフトが減収減益につながったといえそうだ。

 2009年度は前年比7%増の620万台と意欲的な出荷台数を計画しているが、台数増を、売り上げ増、利益増につなげることができるかが課題だ。

●NEC
NEC「LaVie J」

 国内最大シェアを誇るNECは、国内PC事業は黒字化したものの、海外PC事業は赤字となっている。

 PCを中心としたパーソナルソリューション事業の売上高は13%減の4,622億円、営業損失はマイナス30億円の赤字だ。

 出荷台数は、期中に下方修正した国内250万台の計画は達成したものの、前年実績の267万台を下回った。第3四半期までは前年実績を上回る形で推移していただけに、第4四半期の苦戦が浮き彫りになる。

 国内企業の投資減速や、価格競争激化、海外市場の低迷などによる売上減少が理由とするものの、その一方で、「2008年度は、海外PC事業の撤退による損失止血の手を打つことができたことが成果といえる」と、NECの矢野薫社長は語る。

 PC事業を国内に特化することになる2009年度は、前年並となる250万台以上の出荷計画を掲げるものの、海外事業の収束、国内PC事業の価格競争激化により、売上高は前年比10%減の4,150億円と減収を見込む。しかし、費用削減、ローコストオペレーションによって、10億円の営業黒字を必達目標に掲げる。

 「内製化の推進や、開発、製造の効率化による国内PC事業の収益改善、4月1日付けで設置した新事業開発グループによる新世代情報端末とサービスを含めた新たなビジネス創出を目指す」と、矢野社長は意欲を見せる。

●パナソニック/日立
パナソニック「Let'snote W8」

 一方、パナソニックは、2008年度のPC出荷台数は前年比3%増の68万台、2009年度は18%増の80万台を見込む。同社は、PC事業の売上高は明らかにしていないが、公表されている情報機器事業の売上高は1兆1,799億円(前年比20%減)。そのうち約13%がPC事業の構成比とされている。

 また、ビジネスPCに特化している日立製作所のPC事業の売上高(PCサーバーを含む)は、前年比25%減の363億円となった。


 各社とも、市場構成比の約半分を占める企業向けPCの需要回復が1つの鍵となるのは明らか。さらに、次期OSである「Windows 7」の発売を前にした買い控えをどう乗り切り、発売以降の需要拡大に、いかにつなげられるかもポイントとなろう。

 だが、各社が避けられないと考えているのが価格下落の影響だ。実際、2008年度の業績でも価格下落は大きな減益要因として、各社の事業環境を悪化させた。

 全国の主要量販店のPOSデータを集計しているBCNによると、2009年4月のPCの平均単価は、なんと89,000円にまで下落している。2008年4月には120,000円、2007年4月には133,000円、2006年4月には138,000円であったことに比べると、この1年で下落率が一気に進展していることがわかる。

 もちろん価格下落には、ネットブックの躍進が大きく影響しているが、実は、理由はそれだけではないのだ。

 デスクトップPCの平均単価は、2009年4月には108,000円。前年4月の129,000円に比べて、16.3%も価格が下落している。前年の下落率が8.5%に留まっていたことに比べると、下落率が高まっていることがわかる。

□PC平均単価(万円)、BCN調べ


デスクトップ ノート パソコン全体
06年04月 13.6 13.9 13.8
07年04月 14.1 13 13.3
08年04月 12.9 11.7 12
09年04月 10.8 8.5 8.9

 また、A4ノートPCも、2009年4月の平均単価は103,000円となり、下落率は12.0%と2桁台。こちらも前年の下落率である8.6%に比べると、価格下落が進展していることが浮き彫りになる。

□ノートPC平均単価(万円)、BCN調べ


A4 B5 ミニ ノート全体
06年04月 13.6 19.3 15.9 13.9
07年04月 12.8 19.7 10.7 13
08年04月 11.7 19.4 5.9 11.7
09年04月 10.3 12.7 4.1 8.5

 つまり、ネットブックの登場は、数字の上で、PC市場全体の平均単価を下落させただけでなく、デスクトップPCやA4ノートPCの価格下落にも影響を及ぼしていると見ることもできる。

 こうした価格下落は、当然のことながら、各社の収益に影響する。

 仮に、2万円の価格下落が生じた場合、250万台規模のNECに当てはめてると、単純計算で500億円規模の減収インパクトにつながる。

 実際、BCNのデータから、平均単価の変化を、2009年4月と2008年4月で比較してみると、NECは21,000円減少の110,000円となっている。

 また、ソニーは4,000円減の124,000円となったが、東芝は26,000円減の92,000円、富士通は19,000円減の107,000円と、軒並み2万円前後の価格下落となっている。

□PCメーカー別 平均単価(万円)、BCN調べ

  デスクトップPC ノートPC PC全体
NEC 06年04月 15.8 14.3 14.8
07年04月 16.7 13.4 14.3
08年04月 15 12.5 13.1
09年04月 13.7 10.4 11
ソニー 06年04月 16.1 15 15.3
07年04月 15.2 13.7 14
08年04月 15.2 12.5 12.8
09年04月 14 11.9 12.4
東芝 06年04月
13.2 13.2
07年04月
12.2 12.2
08年04月
11.7 11.8
09年04月
9.3 9.2
富士通 06年04月 16.5 14.1 14.8
07年04月 16.6 13.5 14.4
08年04月 16 11.5 12.6
09年04月 12.7 10.4 10.7

 3年前の2006年4月の平均単価と、2009年4月の平均単価を比較すると、NECは74.3%、ソニーは81.0%、東芝は68.7%、富士通は72.3%と、ほぼ4分の3程度の価格にまでに引き下げられていることが分かる。2006年4月に比べて、7掛けから8掛けの価格で購入できるという計算だ。

 ネットブックによる低コストプラットフォームの登場だけでは、これだけの価格下落インパクトを吸収できないというのが正直なところだろう。コスト構造の大幅な改善、低コストオペレーション体質への構造改革が求められているのが、各社に共通した課題だ。

 この点を改善できない限り、PC業界の再編話は止まりそうにない。

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(2009520日)

[Text by 大河原 克行]

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