大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

下方修正が続く国内PCメーカーの苦戦ぶり




 大手電機メーカーから、相次いで第3四半期連結決算が発表された。

 今回の決算発表は、2月6日午後3時30分から発表したシャープが大手電機メーカーでは大トリとなったが、先陣を切った1月29日のソニー、東芝をはじめ、各社の発表内容は、下方修正、赤字見通し、人員削減のオンパレードとなり、連日のように同じ見出しが紙面を飾った。

 上期連結決算時点までは、増収増益、過去最高などの言葉が出ていたにも関わらず、わずか数カ月で、この転落ぶりである。100年に一度の不況という表現通り、一変して、各社の業績は厳しいものとなっている。

 PCに関しても、やはり同様に厳しい内容となっている1月の連結決算発表で、NEC、ソニー、東芝、富士通の4社が、軒並み下方修正を発表しているのだ。

●NECは目標を25万台減少

 NECは、2008年度の期初目標は、275万台としていたが、実は、1月30日の決算発表にあわせて、出荷計画を250万台に下方修正している。

 当日の会見の中では言及しなかったが、これは、前年実績の267万台を上回る計画から、前年実績を下回る計画への修正という点で大きなインパクトがある。

NECの切り札の1つともいえるネットブック「LaVie Light」

 第3四半期までの累計出荷は188万5,000台と、前年同期の186万台を25,000台上回っていただけに、第4四半期はかなり慎重に見ていることがわかる。逆算すると第4四半期の出荷計画は61万5,000台。前年同期比24.1%減と大幅な前年割れを見込んでいるのだ。

 そして、この数字の中には、欧州およびアジアでの出荷数値が含まれていない。

 一部報道では、欧州PC事業を今年夏を目途に撤退するとされており、矢野薫社長も「欧州のPC事業は販売不振により損失が拡大している。抜本的な対策を検討中」とコメント。欧州での苦戦は国内市場以上のものだ。

 また、アジアでも、マレーシアをはじめ、8つの国と地域でPC事業を展開しているが、切り札の1つとしていたネットブックが苦戦しており、やはり事業拡大には至っていない。

 第4四半期に、来期の回復に向けた準備をどこまで進めることができるかが課題といえよう。

【お詫びと訂正】初出時に前年同期比の数字を誤っておりました。お詫びして訂正させていただきます。

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●ソニーも100万台の減少

 ソニーも、連結決算発表前の1月22日に開催した連結業績見通しの下方修正時に、期初の計画として掲げた680万台の出荷計画を、580万台に下方修正した。

1月に投入したVAIO type P

 発表した第3四半期連結決算でも、エレクトロニクス事業における減益要因の1つとして、VAIO事業の不振をあげたばかりか、国内、米国、欧州の各市場において、価格下落の影響を受け、減収となっていることを明らかにしている。

 修正された580万台という年間出荷計画は、前年実績が520万台であったことと比較すると、11.5%増と高い成長を維持することになるが、当初計画の30.8%増という意欲的な計画に比べると、かなりトーンダウンしたことになる。

 同社では、国内外の出荷内訳については明らかにしていないが、2005年以降、ロシア、ブラジル、フィリピンといった国へと、徐々にエリア展開を拡大。2008年度もベトナムをはじめ、4カ国でVAIOの販売を新たに開始し、50カ国への販売体制を整えた段階であり、こうした新興国を中心とした市場拡大への取り組みが、前年実績を上回る計画維持を下支えしたといえる。

 だが、今回の修正によって、2010年度に年間1,000万台を目指す同社の計画に、黄信号が点ったのは事実。今後、VAIO事業において、どんな拡大策を打つのかが注目されよう。

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●東芝は為替が減少要因に

 東芝も、1月29日の決算発表にあわせて、PC事業の計画を下方修正した。

 同社では、具体的な出荷台数について公表していないが、9月19日に公表したPC事業の売上高1兆1,300億円、営業利益400億円を、売上高9,500億円、営業利益140億円へと下方修正している。

 期初計画では売上高で1兆1,000億円、営業利益で300億円としてていたものを、9月19日時点で一度上方修正し、売上高では前年比9%増と強気の姿勢としていたが、今回の修正では、一転して9%減と前年割れへと修正したことになる。

 これは、2007年度の1兆404億円を下回るばかりか、2006年度の9,718億円の実績を下回るものとなる。

 だが、同社がコメントする「年間1,000万台を上回るノートPCを出荷している」という大台の出荷台数に関しては、これだけの修正があっても維持できそうだ。

 というのも、売上高の縮小には、為替の影響を多分に含んでおり、とくに、欧州での実績が高い同社の場合、ユーロ安の影響が大きくのしかかっているからだ。ドル建てで多くの部品を調達している同社とはいえども、ユーロの影響は少なくない。

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●2度目となる下方修正となる富士通

 富士通が、1月30日に発表したPC事業の下方修正は、今年度2回目の修正だ。

2008年11月に発表されたFujitsu Siemensの買収により事業体制強化を図る(発表会資料より)

 同社では、期初には全世界930万台のPC出荷計画を発表。そのうち、国内270万台、海外660万台としていた。

 これを10月30日に発表した修正値では、880万台に下方修正。国内出荷の270万台の計画は据え置いたが、海外は610万台へと修正した。

 そして、今回の修正では全世界760万台の出荷計画とし、国内は260万台と、わずか10万台の下方修正に留まったものの、海外では500万台へと大幅に修正したのだ。

 国内での落ち込みは最小限に食い止めてはいるものの、富士通シーメンスが展開してきた欧州市場での影響が大きい。

 富士通の全世界向けPC出荷実績は、2007年度実績で881万台、2006年度が845万台、2005年度が825万台、そして、2004年度が744万台の実績。これと比較すると、期初には過去最高となる出荷計画を打ち出していたが、それが、4年前の水準にまで縮小することになる。

 今年度第3四半期までの出荷実績は、前年同期比9%減の575万台。第4四半期は、さらに厳しい状況になると見方もあり、海外での巻き返しにも注目される。

 今後、富士通シーメンスを完全子会社化するとともに、世界規模でのPC事業の再編に乗り出すことを明らかにしている同社にとって、欧州PC事業のテコ入れが、同社PC事業の回復速度を左右することになりそうだ。

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●唯一好調だったApple

 一方で、好調な決算を発表したメーカーがある。それはAppleだ。

ユニボディの採用で販売が好調なMacBook

 米Appleが1月21日(現地時間)に発表した同社第1四半期(10〜12月)の業績では、同四半期中に252万4,000台のMacを販売。前年同期比9%増の伸びとなった。売上高でも35億5,400万ドルと、前年同期の35億5,200万ドルから若干上昇している。前年同期には、Leopardの発売があったことを踏まえると、その反動を感じさせずに、これだけの成長率を達成したのは特筆できるものといっていい。

 とくに、MacBookは前年同期の134万2,000台から、179万6,000台と、33.8%もの成長となっているのは驚きだ。

 MacBook AirやユニボディのMacBookなどの人気が、成長に大きく貢献しているといえる。

 そして、Macの好調ぶりは、日本でも同様のものとなっている。

 同社の発表によると、日本におけるMacの販売台数は、前年同期の91万台から、99万台へと拡大している。ここでもやはりノートの売れ行きが貢献しているのだ。

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 このように一部のメーカーを除いて、各社のPC事業は大きく減速している。

 それでも国内市場の落ち込みは少ないといえるが、海外ベンダーの価格競争の影響や景気低迷を背景にした買い控え傾向は全世界規模で見られる。世界で戦う日本のPCメーカーは、影響を受けざるを得ない状況だ。

 レノボは、同社第3四半期(10〜12月)に価格下落の影響を受けて、9,700万ドルの赤字転落を発表するとともに、人員削減やCEOの交代を発表。ネットブックで世界規模で事業を拡大している台湾ASUSTeKは、10〜12月期に創業以来初の赤字になるとの見方が出ている。

 また、2月下旬にも発表されるHewlett-Packardの第1四半期(11〜1月)、Dellの同社第4四半期(11〜1月)決算も、PC事業に関しては厳しい内容になるとの見方が、アナリストの間では出始めているようだ。

 PC事業の停滞感はいつまで続くのだろうか。まずは、拡大路線を敷いていた体制から、在庫処分、調達および生産調整といった「火消し」を済ませ、次に向けた体質強化、構造改革といった準備が求められることになろう。

 それは、ネットブックや新興国戦略などによって瞬発力で収益を稼ぐ短期戦よりも、事業構造そのものを変えて、収益性を確保できる長期戦型の体質強化に取り組む時期に入ってきたともいえそうだ。

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(2009年2月10日)

[Text by 大河原克行]


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