ゲーミングPC Lab.

MSI「GS30 2M Shadow+G-Dock」

~デスクトップ用ビデオカードを接続できる13.3型ノート

MSI GS30 2M Shadow

 エムエスアイコンピュータージャパン株式会社(MSI)は、ビデオカードの増設が可能な外付けボックス「G-Dock」をセットにしたゲーミングノートPC「GS30 2M Shadow+G-Dock」を発売した。

 今回、このGS30 2M Shadow+G-Dockと、AMDのハイエンドGPU「Radeon R9 290X」搭載ビデオカードMSI R9 290X GAMING 4Gを借用する機会が得られたので、その試用レポートをお届けする。

Iris Pro Graphics 5200を採用したゲーミングノートPC「GS30 2M Shadow」

 まずは、ノートPC本体であるGS30 2M Shadowからチェックしていく。GS30 2M Shadowは、13.3型のゲーミングノートPCだ。CPUにHaswellアーキテクチャを採用する4コア8スレッドCPU「Core i7-4870HQ(2.5GHz、Turbo Boost時最大3.7GHz)」を採用し、GPUは、同CPUが備える「Iris Pro Graphics 5200」を利用する。

 その他、メインメモリに16GB(8GB×2)のDDR3L-1600メモリ、システムストレージはM.2接続の128GB SSDを2台で構築した256GBのRAID 0アレイを搭載。無線機能はIntelのDual Band Wireless-AC 7260によりIEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.0に対応する。光学ドライブは搭載していない。

CPU-Z実行画面。最大3.7GHzで動作する強力な4コア8スレッドCPUだ
GPU-Z実行画面。Haswell世代のCPU統合GPUコアとしては最上位となるIris Pro Graphics 5200
M.2接続のSSD 2台を束ねた超高速ストレージを採用。MSIがSuper RAIDと呼ぶこの構成により、シーケンシャルリードは1GB/secに到達している

 ディスプレイには、フルHD(1,920×1,080ドット)表示対応の非光沢液晶を採用。タッチ操作には対応していない。スペック上で液晶の駆動方式は謳われていないが、広視野角タイプとされており、視野角による色や輝度の変化は少ない。ディスプレイ上部には720p/30fpsに対応したWebカメラを搭載している。

 本体サイズは320×227×19.88mm(幅×奥行き×厚さ)で、重量1.2kg。TDP 47Wと発熱の大きいCore i7-4870HQを搭載しながらも、本体は薄く軽く作られており、ゲーミングPCとしては持ち運びやすい大きさと重量であると言える。インターフェイス類は、本体両側面にUSB 3.0、Gigabit LAN、SDカードスロット、音声出力を配置し、画面出力ポートにHDMIを備える。背面にはG-Dockとの接続用端子を備えているが、単体使用時はカバーによって保護されている。

13.3型フルHD液晶を採用。非光沢パネルの採用により、外光の映り込みは気にならない
広視野角タイプの液晶パネルを採用したことで、視野角の変化による色および輝度の変化は少ない
ディスプレイ上部に搭載されたウェブカメラ。720p/30fps対応
天板はマットブラックにカラーリングされており、MSIロゴとMSI Gaming Seriesエンブレムが配置されている
本体底部
本体正面。本体の厚さは最大19.88mm。TDP 47WのCPUを搭載しているとは思えないほど薄い
本体左側面。音声入出力とUSB 3.0ポートを備える
本体右側面。DC入力端子、Gigabit Ethernet、USB 3.0ポート、SDカードスロット、HDMIを備える
本体背面。中央部にG-Dockとの接続端子が用意されているが、写真ではカバーが閉じており確認できない

 キーボードはアイソレーションタイプを採用。キーは白色バックライトを搭載しており、暗い環境でもキーを視認できる。メインのキーは19mmのキーピッチを確保しており、ストロークは約1.5mm。タッチパッドにはボタン一体型を採用。ジェスチャ操作に対応し、操作エリアは105×70mmと広く操作性は悪くない。

 ACアダプタは65Wタイプで、ケーブルを含めない場合のサイズは46×108×30mm(幅×奥行き×厚さ)。重量はケーブル込みで実測320g。ノートPC本体と合わせると、おおよそ1.5kg程度となる重量だ。

アイソレーションタイプのキーボードを採用。バックライトのカラーは白。
メインキーのキーピッチは19mm。
ボタン一体型タッチパッド。
ACアダプタは65Wタイプ。
ケーブル込みでの重量は約320g。本体込と合わせると、ギリギリ1.5kgを切らない程度の重量となる。

GS30 2M ShadowをデスクトップPCに変えるG-Dock

 G-Dockは450Wの電源を内蔵した、外付けGPUボックスだ。PCI Express 3.0 x16スロットを1基備えており、PCI Express用補助電源コネクタ8ピン(6+2ピン)2系統で動作可能で、長さ310mmまで、2スロット占有タイプのビデオカードに対応する。

 外付けGPUボックスと言ったものの、G-Dockの実態はGS30 2M ShadowをデスクトップPCに変換するユニットだ。G-Dockにはビデオカードを外付けする機能のほかに、SATA 6Gbpsポート1基と3.5インチシャドウベイ、Gigabit Ethernet「Killer E2200」、USB 3.0ポート×4、音声入出力を備えている。ここにCPUやメモリなどを備えたメインユニットとして、GS30 2M Shadowを接続することにより、ゲーミングデスクトップPCとして機能する形だ。

 ビデオカードを搭載したG-Dockに接続中、GS30 2M Shadow側のディスプレイは無効化される。SDカードスロットやUSBポート、無線機能など、ノートPC本体が備えるインターフェイスは大半が利用可能だが、Gigabit EthernetとHDMIは使用できなくなる。ちなみに、キーボードやポインティングデバイスも使用可能だが、画面の映らないノートPCを開いて利用するのは不便だ。入力機器はG-Dock用に別途用意した方が良いだろう。

 なお、G-DockにGS30 2M Shadowを取り付けると、G-Dock経由での給電が行なわれるのだが、MSIによるとRadeon R9 290Xクラスに消費電力が大きいビデオカードを利用する際は、念のためACアダプタを使ってGS30 2M Shadowに電力供給を行うことを推奨している。

G-Dock本体。筐体サイズは364.4×209×197.7mm(同)で、Mini-ITXマザーボード対応キューブ型PCケース並のサイズがある
G-Dock正面。5Wステレオスピーカーと、5Wウーファーが内蔵されている
天板部分。ノートPCと接続するためのポートが用意されている
ノートPCの着脱用のスライドロックとレバー
G-Dock左側面。電源ユニットが配置されている。また、ビデオカードのブラケット部はこちら側に位置することになる
G-Dock右側面。USB 3.0ポート×4、音声入出力、Gigabit Ethernet、電源スイッチを備える
前面パネルを取り外した状態のG-Dock
補強用のバーを外すと、電源ユニットやG-Dockのメイン基板が確認できる
PCI Express 3.0 x16スロット
6Gbps対応のSATAポート
450W出力対応のSFX電源ユニット
電源ユニットのコネクタ。G-Dockのメイン基板用の24ピンコネクタの他、PCI Express用の6+2ピン2系統、SATA電源コネクタ1系統を備える。
3.5インチシャドウベイ
G-Dock右側面部に配置された92mm角ファン。回転数が高めであり、動作音は常に風切り音を発している
Radeon R9 290X搭載ビデオカード「R9 290X GAMING 4G」を取り付けたところ
ビデオカードの固定用のネジ穴が1カ所しか設けられていないため、2スロット占有タイプのビデオカードを選ぶ必要がある
G-Dockに接続したR9 290X GAMING 4GのGPU-Z実行画面。PCI Express 3.0 x16で接続されている
GS30 2M Shadow搭載時

ベンチマークテストで性能をチェック

 それでは、ベンチマークテストで性能をチェックしてみよう。今回利用したテストは、「PCMark 8 v2.3.293」、「PCMark 7 v1.4.0」、「CINEBENCH R15」、「3DMark v1.4.828」、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」。

 3Dベンチマーク系のテストでは、Radeon R9 290X搭載ビデオカード「MSI R9 290X GAMING 4」を内蔵したG-Dockを接続した際の性能を測定した他、参考記録として、デスクトップ向けの4コア8スレッドCPU「Core i7-4790K(4.0GHz、Turbo Boost時最大4.4GHz)」ベースの検証機に、R9 290X GAMING 4を搭載した際のスコアも測定した。

 なお、今回R9 290X GAMING 4を利用した際に、3DMarkのIce Stormが完走しないという現象が発生した。このため、R9 290X GAMING 4利用時のIce Storm Extremeスコアに関しては未計測となっている。なお、原因は特定できなかったが、参考比較用に用意したデスクトップPCでも同じ現象が発生したため、G-Dockの不具合というわけでは無さそうだ。

 ベンチマークの結果を確認してみると、CINEBENCH R15やPCMarkの優れたスコアから、Core i7-4870HQが持つCPU性能の優秀さが伺える一方、GS30 2M Shadow単体時の3Dベンチマークテスト結果はイマイチだ。ファイナルファンタジーXIV程度なら、描画設定を落とすことで何とか動かせそうだが、ゲーミングノートPCとしては物足りなさを感じる。

 G-Dockを接続した時の結果はどうかと言うと、こちらは参考比較用に用意したCore i7-4790Kに追いつきこそしないものの、かなり近いスコアを記録している。Core i7-4870HQが持つ高いCPU性能と、ビデオカードとの接続に高速なPCI Express 3.0 x16を採用したことで、ハイエンドGPUであるRadeon R9 290Xの実力を十分に引き出せていることが見て取れるスコアだ。

ベンチマーク結果

GS30 2M Shadow(内蔵GPU)GS30 2M Shadow+ G-DockCore i7-4790K機(参考比較)
CPUCore i7-4870HQ(2.5GHz/4コア8スレッド)Core i7-4790K(4.0GHz/4コア8スレッド)
メモリ16GB DDR3L-1600(8GB×2 デュアルチャンネル)16GB DDR3-1600(8GB×2 デュアルチャンネル)
ストレージ256GB SSD(128GB×2 Super RAID/M.2)128GB SSD(Intel 510 SSD)
GPUIntel Iris Pro Graphics 5200Radeon R9 290X 4GB(G-Dock)Radeon R9 290X 4GB
OSWindows 8.1 Update 64bitWindows 8.1 Pro Update 64bit
PCMark 8 v2.3.293
Home3769
Creative4785
Work4656
PCMark7 v1.40
PCMark score6393
Lightweight score6257
Productivity score5461
Entertainment score5210
Creativity score11455
Computation score20808
System storage score5723
Raw system storage score8341
CINEBENCH R15
OpenGL (fps)53.06
CPU605
CPU (Single Core)141
3DMark v1.4.828 - Fire Strike
Fire Strike Score1351977710233
Graphics Score14141165812006
Physics Score9007961611543
Combined Score51944764493
3DMark v1.4.828 - Sky Diver
Sky Diver Score57662456726980
Graphics Score54903876738712
Physics Score8065891111218
Combined Score54952210123157
3DMark v1.4.828 - Cloud Gate
Cloud Gate Score105192341226897
Graphics Score130117476976207
Physics Score629868788239
3DMark v1.4.828 - Ice Storm Extreme
Ice Storm Extreme Score64234
Graphics Score73334
Physics Score44784
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
標準品質(ノートPC)48612461125348
高品質(ノートPC)31231821618438
最高品質(ノートPC)19691463814650

動作音とバッテリの持ち具合が気になるGS30 2M Shadow

 ベンチマークテストでは、強力なCPU性能が目立ったGS30 2M Shadow。これほどのCPUを搭載しながら20mm以下の厚さを実現していることは素晴らしいのだが、冷却的にはやはり厳しいらしく、CPUに負荷がかかると冷却ファンが高速で回転し、キーンという高く耳障りな動作音を発する。自宅での使用ならともかく、公共の場でCPUに高い負荷を掛けるのは厳しい。

 また、バッテリの駆動時間についてテストを行なったところ、画面輝度を50%、Windowsの省電力設定を「バランス」に設定した状態でバッテリ残量が10%になるまでの時間は、BBench(キー入力+Web巡回)実行時で約3時間9分、ファイナルファンタジーXIVベンチマークのループ実行時で52分だった。バッテリでの長時間駆動を期待するのは少々厳しいようである。

より安価に高性能ノートPCとゲーミングPCを入手できる選択肢

 GS30 2M Shadowは、デスクトップPCに引けを取らないCPU性能とメモリ容量、ストレージ性能が魅力だ。モバイルで使うには動作音やバッテリの持ち具合に厳しいものはあるが、これだけの高性能PCを持ち運びやすいサイズに収めた点は素晴らしい。ただ、ゲーミングノートとしては、GPU性能に対してほかのパーツのスペックが高すぎるというバランスの悪さも否めない。

 一方、G-Dockと組み合わせることで、GS30 2M Shadowは真のゲーミングPCへと昇華する。もちろん、別途高性能なビデオカードを用意する必要はあるのだが、GS30 2M Shadowが持つポテンシャルの高さと、ボトルネックの無い高速な接続により、現行のハイエンドGPUであるRadeon R9 290Xを搭載した場合でも、その性能を引き出せている。

 GS30 2M Shadow+G-Dockは、ゲームをするのは自宅のみと割り切れるユーザーなら、ハイスペックなゲーミングデスクトップPCと、基本性能の高いノートPCを、それぞれ単体で購入するよりも安く入手できる選択肢となりそうだ。

(三門 修太)