ゲーミングPC Lab.
MSI「GS30 2M Shadow+G-Dock」
~デスクトップ用ビデオカードを接続できる13.3型ノート
(2015/2/20 06:00)
エムエスアイコンピュータージャパン株式会社(MSI)は、ビデオカードの増設が可能な外付けボックス「G-Dock」をセットにしたゲーミングノートPC「GS30 2M Shadow+G-Dock」を発売した。
今回、このGS30 2M Shadow+G-Dockと、AMDのハイエンドGPU「Radeon R9 290X」搭載ビデオカードMSI R9 290X GAMING 4Gを借用する機会が得られたので、その試用レポートをお届けする。
Iris Pro Graphics 5200を採用したゲーミングノートPC「GS30 2M Shadow」
まずは、ノートPC本体であるGS30 2M Shadowからチェックしていく。GS30 2M Shadowは、13.3型のゲーミングノートPCだ。CPUにHaswellアーキテクチャを採用する4コア8スレッドCPU「Core i7-4870HQ(2.5GHz、Turbo Boost時最大3.7GHz)」を採用し、GPUは、同CPUが備える「Iris Pro Graphics 5200」を利用する。
その他、メインメモリに16GB(8GB×2)のDDR3L-1600メモリ、システムストレージはM.2接続の128GB SSDを2台で構築した256GBのRAID 0アレイを搭載。無線機能はIntelのDual Band Wireless-AC 7260によりIEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.0に対応する。光学ドライブは搭載していない。
ディスプレイには、フルHD(1,920×1,080ドット)表示対応の非光沢液晶を採用。タッチ操作には対応していない。スペック上で液晶の駆動方式は謳われていないが、広視野角タイプとされており、視野角による色や輝度の変化は少ない。ディスプレイ上部には720p/30fpsに対応したWebカメラを搭載している。
本体サイズは320×227×19.88mm(幅×奥行き×厚さ)で、重量1.2kg。TDP 47Wと発熱の大きいCore i7-4870HQを搭載しながらも、本体は薄く軽く作られており、ゲーミングPCとしては持ち運びやすい大きさと重量であると言える。インターフェイス類は、本体両側面にUSB 3.0、Gigabit LAN、SDカードスロット、音声出力を配置し、画面出力ポートにHDMIを備える。背面にはG-Dockとの接続用端子を備えているが、単体使用時はカバーによって保護されている。
キーボードはアイソレーションタイプを採用。キーは白色バックライトを搭載しており、暗い環境でもキーを視認できる。メインのキーは19mmのキーピッチを確保しており、ストロークは約1.5mm。タッチパッドにはボタン一体型を採用。ジェスチャ操作に対応し、操作エリアは105×70mmと広く操作性は悪くない。
ACアダプタは65Wタイプで、ケーブルを含めない場合のサイズは46×108×30mm(幅×奥行き×厚さ)。重量はケーブル込みで実測320g。ノートPC本体と合わせると、おおよそ1.5kg程度となる重量だ。
GS30 2M ShadowをデスクトップPCに変えるG-Dock
G-Dockは450Wの電源を内蔵した、外付けGPUボックスだ。PCI Express 3.0 x16スロットを1基備えており、PCI Express用補助電源コネクタ8ピン(6+2ピン)2系統で動作可能で、長さ310mmまで、2スロット占有タイプのビデオカードに対応する。
外付けGPUボックスと言ったものの、G-Dockの実態はGS30 2M ShadowをデスクトップPCに変換するユニットだ。G-Dockにはビデオカードを外付けする機能のほかに、SATA 6Gbpsポート1基と3.5インチシャドウベイ、Gigabit Ethernet「Killer E2200」、USB 3.0ポート×4、音声入出力を備えている。ここにCPUやメモリなどを備えたメインユニットとして、GS30 2M Shadowを接続することにより、ゲーミングデスクトップPCとして機能する形だ。
ビデオカードを搭載したG-Dockに接続中、GS30 2M Shadow側のディスプレイは無効化される。SDカードスロットやUSBポート、無線機能など、ノートPC本体が備えるインターフェイスは大半が利用可能だが、Gigabit EthernetとHDMIは使用できなくなる。ちなみに、キーボードやポインティングデバイスも使用可能だが、画面の映らないノートPCを開いて利用するのは不便だ。入力機器はG-Dock用に別途用意した方が良いだろう。
なお、G-DockにGS30 2M Shadowを取り付けると、G-Dock経由での給電が行なわれるのだが、MSIによるとRadeon R9 290Xクラスに消費電力が大きいビデオカードを利用する際は、念のためACアダプタを使ってGS30 2M Shadowに電力供給を行うことを推奨している。
ベンチマークテストで性能をチェック
それでは、ベンチマークテストで性能をチェックしてみよう。今回利用したテストは、「PCMark 8 v2.3.293」、「PCMark 7 v1.4.0」、「CINEBENCH R15」、「3DMark v1.4.828」、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」。
3Dベンチマーク系のテストでは、Radeon R9 290X搭載ビデオカード「MSI R9 290X GAMING 4」を内蔵したG-Dockを接続した際の性能を測定した他、参考記録として、デスクトップ向けの4コア8スレッドCPU「Core i7-4790K(4.0GHz、Turbo Boost時最大4.4GHz)」ベースの検証機に、R9 290X GAMING 4を搭載した際のスコアも測定した。
なお、今回R9 290X GAMING 4を利用した際に、3DMarkのIce Stormが完走しないという現象が発生した。このため、R9 290X GAMING 4利用時のIce Storm Extremeスコアに関しては未計測となっている。なお、原因は特定できなかったが、参考比較用に用意したデスクトップPCでも同じ現象が発生したため、G-Dockの不具合というわけでは無さそうだ。
ベンチマークの結果を確認してみると、CINEBENCH R15やPCMarkの優れたスコアから、Core i7-4870HQが持つCPU性能の優秀さが伺える一方、GS30 2M Shadow単体時の3Dベンチマークテスト結果はイマイチだ。ファイナルファンタジーXIV程度なら、描画設定を落とすことで何とか動かせそうだが、ゲーミングノートPCとしては物足りなさを感じる。
G-Dockを接続した時の結果はどうかと言うと、こちらは参考比較用に用意したCore i7-4790Kに追いつきこそしないものの、かなり近いスコアを記録している。Core i7-4870HQが持つ高いCPU性能と、ビデオカードとの接続に高速なPCI Express 3.0 x16を採用したことで、ハイエンドGPUであるRadeon R9 290Xの実力を十分に引き出せていることが見て取れるスコアだ。
GS30 2M Shadow(内蔵GPU) | GS30 2M Shadow+ G-Dock | Core i7-4790K機(参考比較) | |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-4870HQ(2.5GHz/4コア8スレッド) | Core i7-4790K(4.0GHz/4コア8スレッド) | |
メモリ | 16GB DDR3L-1600(8GB×2 デュアルチャンネル) | 16GB DDR3-1600(8GB×2 デュアルチャンネル) | |
ストレージ | 256GB SSD(128GB×2 Super RAID/M.2) | 128GB SSD(Intel 510 SSD) | |
GPU | Intel Iris Pro Graphics 5200 | Radeon R9 290X 4GB(G-Dock) | Radeon R9 290X 4GB |
OS | Windows 8.1 Update 64bit | Windows 8.1 Pro Update 64bit | |
PCMark 8 v2.3.293 | |||
Home | 3769 | ─ | ─ |
Creative | 4785 | ─ | ─ |
Work | 4656 | ─ | ─ |
PCMark7 v1.40 | |||
PCMark score | 6393 | ─ | ─ |
Lightweight score | 6257 | ─ | ─ |
Productivity score | 5461 | ─ | ─ |
Entertainment score | 5210 | ─ | ─ |
Creativity score | 11455 | ─ | ─ |
Computation score | 20808 | ─ | ─ |
System storage score | 5723 | ─ | ─ |
Raw system storage score | 8341 | ─ | ─ |
CINEBENCH R15 | |||
OpenGL (fps) | 53.06 | ─ | ─ |
CPU | 605 | ─ | ─ |
CPU (Single Core) | 141 | ─ | ─ |
3DMark v1.4.828 - Fire Strike | |||
Fire Strike Score | 1351 | 9777 | 10233 |
Graphics Score | 1414 | 11658 | 12006 |
Physics Score | 9007 | 9616 | 11543 |
Combined Score | 519 | 4476 | 4493 |
3DMark v1.4.828 - Sky Diver | |||
Sky Diver Score | 5766 | 24567 | 26980 |
Graphics Score | 5490 | 38767 | 38712 |
Physics Score | 8065 | 8911 | 11218 |
Combined Score | 5495 | 22101 | 23157 |
3DMark v1.4.828 - Cloud Gate | |||
Cloud Gate Score | 10519 | 23412 | 26897 |
Graphics Score | 13011 | 74769 | 76207 |
Physics Score | 6298 | 6878 | 8239 |
3DMark v1.4.828 - Ice Storm Extreme | |||
Ice Storm Extreme Score | 64234 | ─ | ─ |
Graphics Score | 73334 | ─ | ─ |
Physics Score | 44784 | ─ | ─ |
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | |||
標準品質(ノートPC) | 4861 | 24611 | 25348 |
高品質(ノートPC) | 3123 | 18216 | 18438 |
最高品質(ノートPC) | 1969 | 14638 | 14650 |
動作音とバッテリの持ち具合が気になるGS30 2M Shadow
ベンチマークテストでは、強力なCPU性能が目立ったGS30 2M Shadow。これほどのCPUを搭載しながら20mm以下の厚さを実現していることは素晴らしいのだが、冷却的にはやはり厳しいらしく、CPUに負荷がかかると冷却ファンが高速で回転し、キーンという高く耳障りな動作音を発する。自宅での使用ならともかく、公共の場でCPUに高い負荷を掛けるのは厳しい。
また、バッテリの駆動時間についてテストを行なったところ、画面輝度を50%、Windowsの省電力設定を「バランス」に設定した状態でバッテリ残量が10%になるまでの時間は、BBench(キー入力+Web巡回)実行時で約3時間9分、ファイナルファンタジーXIVベンチマークのループ実行時で52分だった。バッテリでの長時間駆動を期待するのは少々厳しいようである。
より安価に高性能ノートPCとゲーミングPCを入手できる選択肢
GS30 2M Shadowは、デスクトップPCに引けを取らないCPU性能とメモリ容量、ストレージ性能が魅力だ。モバイルで使うには動作音やバッテリの持ち具合に厳しいものはあるが、これだけの高性能PCを持ち運びやすいサイズに収めた点は素晴らしい。ただ、ゲーミングノートとしては、GPU性能に対してほかのパーツのスペックが高すぎるというバランスの悪さも否めない。
一方、G-Dockと組み合わせることで、GS30 2M Shadowは真のゲーミングPCへと昇華する。もちろん、別途高性能なビデオカードを用意する必要はあるのだが、GS30 2M Shadowが持つポテンシャルの高さと、ボトルネックの無い高速な接続により、現行のハイエンドGPUであるRadeon R9 290Xを搭載した場合でも、その性能を引き出せている。
GS30 2M Shadow+G-Dockは、ゲームをするのは自宅のみと割り切れるユーザーなら、ハイスペックなゲーミングデスクトップPCと、基本性能の高いノートPCを、それぞれ単体で購入するよりも安く入手できる選択肢となりそうだ。