ゲーミングPC Lab.

デル「ALIENWARE 13」

~外付けビデオカードで性能を向上できるゲーミングノート

ALIENWARE 13

 デル株式会社は今年(2015年)1月より、第5世代Coreプロセッサ(Broadwell)と、MaxwellアーキテクチャベースのGPU「GeForce GTX 860M」を搭載した13.3型ゲーミングノートPC「ALIENWARE 13」の2015年春モデルを発売した。

 今回、ノートPC本体に加え、ビデオカードを外付けで拡張可能な専用ユニット「Graphics Amplifier」を付属した、「ALIENWARE 13 プラチナ」を借用する機会が得られたので、その試用レポートをお届けする。

BroadwellとMaxwell GPUを搭載する13型ゲーミングノートPC

 ALIENWARE 13 プラチナは、標準構成の違いにより4つのモデルが展開されている「ALIENWARE 13」シリーズにおいて、上位から2番目に位置するモデル。Broadwellアーキテクチャを採用する2コア4スレッドCPU「Core i7-5500U(2.4GHz、Turbo Boost時最大2.9GHz※)」に、8GBのDDR3メモリ、1TB HDD、1,920×1,080ドット(フルHD)表示対応の液晶パネルを搭載している。

※CPU自体のスペックは最大3.0GHzだが、デル株式会社のALIENWARE 13のスペックでは、最大2.9GHz動作とされている。

 ゲーミングPCの肝となるGPUには、GeForce GTX 860Mを採用。ALIENWARE 13が共通仕様として採用するGeForce GTX 860Mは、Maxwellアーキテクチャをベースとしたバージョンで、640基のCUDAコアと、128bitメモリインターフェイス、独立した2GBのGDDR5メモリを備えたものだ。

 ALIENWARE 13 プラチナのノートPC自体のスペックとしては、下位モデルのALIENWARE 13 プレミアムは同等。両モデルとの違いは外付けGPUボックス「Graphics Amplifier」の有無にある。

【表1】ALIENWARE 13(2015年春モデル)

スタンダードプレミアムプラチナスプレマシー
CPUCore i5-5200UCore i7-5500U
メモリ8GB DDR3L-1600
(4GB×2 デュアルチャンネル)
16GB DDR3L-1600
(8GB×2 デュアルチャンネル)
SSD非搭載256GB
HDD1TB HDD非搭載
ディスプレイ13型非光沢液晶
(1,920×1,080ドット/IPSパネル)
13型光沢液晶
(2,560×1,440ドット/IPSパネル/タッチ対応)
Graphics Amplifierオプション付属
販売価格
(税抜き/配送料込み)
144,800円159,800円184,800円229,800円
CPU-Z実行画面。Core i7-5500Uは、TDP15Wの2コア4スレッドCPUだ。
GPU-Z実行画面。GeForce GTX 860MにはMaxwell版とKepler版が存在するが、ALIENWARE 13が採用するのはMaxwell版

 ディスプレイは13型の液晶で、ALIENWARE 13 プラチナの標準構成では、フルHD表示に対応した非光沢タイプの液晶を採用する。液晶パネルはIPS方式で、広い視野角が確保されている。なお、液晶パネルについては、購入時に2,560×1,440ドット光沢液晶を選択することも可能だ。

 本体サイズは328×235×27.9mm(幅×奥行き×厚さ)。重量はスペック値で2.058kg。13型のノートPCとしては、重く分厚い印象を受ける。高性能なCPUとGPUを搭載するゲーミングPCでは、これらが発する熱を十分に処理する能力が必要とされる点を考慮すべきだ。ALIENWARE 13では、筐体裏面に大きな吸気口を設けて、CPUやGPUの放熱を冷却を行なっており、長時間ゲームプレイでも苦にならない程度の筐体温度を維持できている。

13型のフルHD(1,920×1,080ドット)液晶を採用。IPSパネルを採用し、表面は光沢の無いアンチグレア仕様
IPSパネルの採用により視野角は広い。また、外光の映り込みが気にならないのもありがたい
ディスプレイ上部にはWebカメラを搭載
天板はマットダークシルバーで指紋は目立たない。ALIENWAREのエンブレムと2本のスリットが発光する
底板もマットな配色だが、こちらはやや指紋が目立つ。ディスプレイ側に吸気口を設けており、CPUやGPUの放熱を行なっている
本体正面。本体の厚さは最大27.9mm
本体左側面。USB 3.0ポート×1、音声入出力、DC入力を備える
本体右側面。USB 3.0ポート×2、Gigabit Ethernetを備える
本体背面。画面出力用のMini DisplayPortとHDMIを各1系統と、Graphics Amplifier接続ポートを備える

 キーボードにはバックライトを搭載。バックライトの配色はユーティリティソフト「AlienFX」を用いて変更が可能で、各部のロゴなども含め、自分好みのカラーで発光させることができる。13型のサイズを活かしてメイン部分のキーピッチは19mmを確保。ストロークも約2mmと深い。

 タッチパッドはボタン一体型を採用。マウス操作を前提としたFPSやアクションゲームをプレイする際に使える代物ではないが、日常的な操作を行なう上で特に困ることは無いだろう。マウスを利用してゲームをプレイする際は、ユーティリティソフトでタッチパッドを無効にすることもできる。

バックライト付きキーボード
メイン部分のキーピッチは19mm
タッチパッドはボタン一体型
パームレストはマットな配色。指紋が目立たず、さらっとした手触りが好印象だ
バックライトの配色はユーティリティーソフトAlienFXで変更可能

外付けGPUボックスGraphics Amplifier

 ALIENWARE 13 プラチナに標準で付属する「Graphics Amplifier」は、ALIENWARE 13へのビデオカードの増設を可能とする、いわゆる外付けGPUボックスだ。Graphics Amplifier自体にGPUは組み込まれておらず、利用するには別途ビデオカードを用意する必要がある。

 Graphics Amplifierには460W電源ユニットが内蔵されており、最大消費電力375W、占有スロット数が2スロットまでのビデオカードをサポートしている。対応GPUは、GeForce GTX 600シリーズ以降、およびRadeon HD 5000 シリーズ以降。

 Graphics Amplifierは、専用のケーブルによってALIENWARE 13と接続する。ビデオカードはPCI Express 2.0 x4接続として認識される。ディスプレイへの出力は、ビデオカードの画面出力ポートから外部ディスプレイに接続することが可能なほか、ビデオカードにディスプレイを接続しなければ、ALIENWARE 13の画面にGraphics Amplifier搭載GPUで描画した映像を出力することもできる。

 Graphics Amplifierには電源スイッチなどは設けられておらず、電源のオン/オフはALIENWARE 13と連動している。このため、Graphics AmplifierとALIENWARE 13を接続する際は、ALIENWARE 13側の電源をシャットダウンした状態でケーブルを接続する必要がある。

 Graphics Amplifierの筐体サイズは、185.5×409.55×173.5mm(同)。ちょっとしたキューブ型PC並の大きさがある。GeForce GTX 980のリファレンスボード程度の長さであれば、余裕を持って収納可能だ。Graphics Amplifierに内蔵するGPUを選ぶ際、注意したいのは、高さ方向の余裕があまり設けられていない点だ。内蔵する460W電源(ATX電源)を横倒しに配置できるギリギリの高さしかないため、フルハイトを超えるサイズの基板を採用するビデオカードは搭載できない恐れがある。

 この、ALIENWARE 13のディスプレイにGraphics Amplifier搭載GPUが出力できる仕組みについてだが、まず、内蔵GPUのGeForce GTX 860Mが、ディスプレイは直結されていないという仕様がポイントだ。ALIENWARE 13では、GeForce GTX 860Mが描画処理した結果を、Core i7-5500Uの統合GPU「Intel HD Graphics」を介してディスプレイに出力している。Graphics Amplifierは、この仕様におけるGeForce GTX 860MをGraphics Amplifier搭載GPUに置き換えることで、ALIENWARE 13への画面出力を行なっているようだ。このあたりの動作は、Graphics AmplifierとGeForce GTX 860Mが排他利用であること、そして、どちらもPCI Express 2.0 x4接続であることからも伺える。

Graphics Amplifier本体
Graphics Amplifier正面は吸気口になっており、発光するALIENWAREエンブレムを備える
側面は部分的にアクリルパネルとなっており、内蔵したビデオカードを覗くことができる
背面はUSB 3.0 ポート×4と、ALIENWARE 13接続専用ポートを備える。上側のスライドスイッチで、筐体のロックを解除する
筐体を開いたところ
筐体前面には92mm角の冷却ファンを装備。確実に冷却を行なうためか、動作音は大きめ
電源ユニット。6+2ピンのPCI Express用補助電源コネクタを2本提供する
USB 3.0ポートは拡張カードで提供されている。その隣がビデオカード接続用のPCI Express x16スロット
GeForce GTX 980を搭載したところ
Graphics Amplifier接続用のケーブル。長さは約2mと長く、Graphics AmplifierとALIENWARE 13の距離を離して設置できる
GeForce GTX 860Mと、Graphics Amprifierで接続したGeForce GTX 980。どちらも接続バスがPCI Express 2.0 x4になっていることが確認できる
内蔵GPUであるGeForce GTX 860Mを利用している際のファイナルファンタジーXIVベンチマーク。GPUはGeForce GTX 860Mを利用しているはずだが、Intel HD Graphics 5500と認識されている。ディスプレイと接続しているGPUがIntel HD Graphics 5500であることが、その理由であると考えられる

ベンチマークテストでパフォーマンスをチェック

 ベンチマークソフトでパフォーマンスをチェックしてみた。利用したのは、「PCMark 8 v2.3.293」、「PCMark 7 v1.4.0」、「CINEBENCH R15」、「3DMark v1.4.828」、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」。

 3Dベンチマーク系のテストでは、Graphics AmplifierにGeForce GTX 980を搭載してALIENWARE 13のディスプレイに表示した際のスコアを測定したほか、参考記録として、デスクトップ向けの4コア8スレッドCPU「Core i7-4790K(4.0GHz、Turbo Boost時最大4.4GHz)」を搭載した検証機にGeForce GTX 980を搭載した際のスコアも測定している。

 テストの結果をみてみると、Graphics Amplifierを使用した場合、3DMark Fire StrikeやファイナルファンタジーXIVの最高品質設定で、2倍を超えるスコア向上が確認できる。ただし、比較的描画負荷の低いベンチマークテストほど、GeForce GTX 860M時とのスコア差は減少する傾向があり、Ice Storm Extremeに至ってはほぼスコア差がついていない。

 描画負荷の軽い場合、CPUがボトルネックとなっている場合が少なくないが、今回の場合はGPUの接続バスがPCI Express 2.0 x4であることの影響も大きいように思える。なお、描画負荷の軽いベンチマークテストの結果が低いとは言え、Ice Storm Extreme実行中のフレームレートは200fps程度で張り付いており、実用上特に問題はない。描画負荷の低い設定でスコアが出ないことより、描画負荷の高い条件での性能向上を評価すべきだろう。

【表2】ベンチマークスコア比較

ALIENWARE 13
(内蔵GPU)
ALIENWARE 13
+Graphics Amplifier
Core i7-4790K機
(参考比較)
CPUCore i7-5500U
(2.4GHz/2コア4スレッド)
Core i7-4790K
(4.0GHz/4コア8スレッド)
メモリ8GB DDR3L-1600
(4GB×2 デュアルチャンネル)
16GB DDR3-1600
(8GB×2 デュアルチャンネル)
ストレージ1.0TB HDD128GB SSD(Intel 510 SSD)
GPUGeForce GTX 860M 2GBGeForce GTX 980 4GB
(Graphics Amplifier)
GeForce GTX 980 4GB
OSWindows 8.1 Update 64bitWindows 8.1 Pro Update 64bit
PCMark 8 v2.3.293
Home3076
Creative3373
Work3951
PCMark7 v1.40
PCMark score3074
Lightweight score2240
Productivity score1636
Entertainment score3119
Creativity score5316
Computation score14167
System storage score1532
Raw system storage score326
CINEBENCH R15
OpenGL (fps)79.61
CPU281
CPU (Single Core)116
3DMark v1.4.828 - Fire Strike
Fire Strike Score3406762211273
Graphics Score38561163313295
Physics Score4936477611806
Combined Score145628185105
3DMark v1.4.828 - Sky Diver
Sky Diver Score96521620528528
Graphics Score120113632643481
Physics Score4729468911196
Combined Score105991102422697
3DMark v1.4.828 - Sky Diver
Sky Diver Score99541182928389
Graphics Score236174561287595
Physics Score329132938435
3DMark v1.4.828 - Ice Storm Extreme
Ice Storm Extreme Score4323143544171584
Graphics Score4524446077362215
Physics Score374093651860374
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
標準品質(ノートPC)78311276228690
高品質(ノートPC)58751201921049
最高品質(ノートPC)45301063416767

 ファイナルファンタジーXIVベンチマークの結果から考えると、ALIENWARE 13が備えるGeForce GTX 860Mの性能があれば、MMORPGなどのオンラインゲームを1,920×1,080ドットの解像度で楽しむことができるだろう。外付けGPUボックスのGraphics Amplifierに高性能なビデオカードを搭載すれば、より描画負荷の高いFPSなどもプレイ可能となる。

 筆者が試したところでは、高い描画性能を要求される「アサシンクリード ユニティ」をプレイした場合、GeForce GTX 860Mでは、1,280×720ドットで描画設定を「低い」にしても、30fpsを割り込む厳しい動作だったものが、Graphics AmplifierとGeForce GTX 980を利用することで、1,920×1,080ドットで描画設定を「高い」にしても、安定して30fps以上を維持できるようになった。

 Graphics AmplifierにGeForce GTX 980を搭載するのは、コスト的に少々厳しい組み合わせだが、ミドルハイクラスのGPUなどと組み合わせることで、ALIENWARE 13を、一段上のゲーミングマシンへと昇華させられるユニットであることは確かだ。

GeForce GTX 860M利用時。1,280×720ドット、描画設定「低い」
Graphics Amplifier+GeForce GTX 980利用時。1,920×1,080ドット、描画設定「高い」

高性能だけにバッテリの持ちは今一つ

 Graphics Amplifier利用時の性能はもちろん、ALIENWARE 13単体としても優れたゲーミング性能を持っていることが確認できたわけだが、ノートPCとしてはバッテリ駆動についても気になるところ。電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%という設定で、定番のBBench(キー入力、Web巡回有効)で計測を行なった。結果、電池残量100%から10%まで減少するまでにかかった時間は177分47秒、つまり3時間弱だった。

 ゲームプレイ時のデータとしては、筆者がアサシンクリード・ユニティをBBench実行時と同条件でプレイした際、約1時間でバッテリは10%を切った。TDP 15Wの省電力CPUと、電力効率の高いMaxwellアーキテクチャ採用GPUとは言え、バッテリ駆動のみでゲームを遊ぶと言うのは、やはり厳しいらしい。

 ALIENWARE 13用のACアダプタは130Wタイプで、ケーブルを含めない場合のサイズは実測でおおよそ77mm×155mm×26mm(同)。重量はケーブル込みで実測644g。厚みはある程度抑えてあるが、ケーブルを含めるとかなりの大きさがある。本体と合わせて持ち歩くとなると、かなり嵩張ってしまうが、ALIENWARE 13を持ち歩くならACアダプタの携帯は必須だ。

ALIENWARE 13用のACアダプター
ACアダプターは、ケーブル込みで実測644g。130Wの大出力なだけあって、大きさも重量も結構なものだ

1台で自宅と出先のゲーム環境を統一できるALIENWARE 13

 ALIENWARE 13は、13型という持ち運び可能なコンパクトサイズの筐体に、多くのゲームをプレイ可能にするCPUとGPUを搭載したゲーミングノートPCだ。出張などで自宅を開ける機会の多いゲーマーでも、出先で電源供給とネット環境を用意できれば、ALIENWARE 13を持ち歩くことでゲームをこなすことができる。

 さらに、Graphics AmplifierにミドルハイクラスのGPUを搭載しておくことで、自宅では高性能なデスクトップゲーミングPCに匹敵する性能をALIENWARE 13に付与することができる。PC本体としてALIENWARE 13を用意しておけば、自宅と出先のゲーミング環境をこれ1台で賄うことが可能となる。

 Graphics Amplifierが標準で付属するALIENWARE 13 プラチナは、自宅にいる時はもちろん、外出先でもゲームをプレイしたいという生粋のゲーマーにおすすめの1台だ。ヘビーに使いたいユーザーには、標準の1TB HDDから大容量SSDへのカスタマイズプランが用意されている。こちらもお勧めしておきたい。

(三門 修太)