■安心して使えるフリーソフト入門講座■
PCは、Webブラウズとメールに書類作成、動画や音楽の再生にと、ソフト次第でさまざまな用途で活用できる。だが最近の製品、特に低価格モデルでは付属のソフトの数が絞り込まれていて、本格的にPCを活用しようとすると追加の費用が発生することも多い。そこで利用したいのが、無料で利用できる各種Webサービスやフリーウェアの数々だ。
しかし、Windowsで利用できる無料サービスやフリーソフトは星の数ほど存在しており、初心者でなくとも自分に合ったものを探すのは大変な労力が伴う。そこで本連載では、はじめて自分専用のPCを手にした人たちを対象に、無数にあるWebサービスやフリーソフトの中から、主要ジャンルごとに数本ずつ、特におすすめしたいものにスポットを当てて紹介していく。
連載第3回となる今回は、メール関連の無料Webサービスとフリーソフトを取り上げる。
●PCメールをもっと便利に皆さんはPCでメールをどのように活用しているだろうか? ひと昔前であれば、Windows XP付属のメールソフト「Outlook Express」とインターネット接続プロバイダの契約時にオマケで付いてくるメールアドレスの組み合わせが定番だった。しかしWindows 7ではMicrosoftのOS本体と周辺ソフトを切り離す方針にしたがって、メールソフトが標準搭載されなくなってしまった。(PC販売メーカーの方針で「Windows Live メール」などのメールソフトがあらかじめ導入されている場合もある)。PC初心者にはややつらい状況ともいえるが、その分選択肢が広がったとポジティブにとらえたいところだ。
また、職場はともかく自宅ではケータイメールで十分という人も多いかもしれない。しかし、インターネットを本格的に利用していると、通販サイトや各種プレゼントにアンケートなど、PC用のメールアドレスの入力を求められる場面も意外と多い。さらに、これらにメールアドレスを登録していくと、覚えのない迷惑メールなどが大量に舞い込むようになることも珍しくない。こうなってしまうとメールアドレスを変更しない限り大量の迷惑メールに悩み続けるハメになる。しかし、複数の目的に1つのメールアドレスを使い回していると、メールアドレスの変更を連絡したり、登録を変更したりといった作業の手間も馬鹿にならない。
そこで活用したいのが、無料で利用できるWebメールだ。友達との連絡用や国内家電メーカー製品のユーザー登録、大手通販サイト用にアンケート用など、複数のメールアドレスを登録先や用途別に使い分けることで、迷惑メールが届くようになった原因を絞り込めるし、大量に迷惑メールが届くようになったらそのアドレスの利用自体をやめてしまえばいい。
だが、Webメールだとネットに繋がらない場所では受信済みのメールを参照することもできない上、複数のアドレスを活用しようとすると、個々に受信チェックするのが面倒という問題も出てくる、そんなときは高機能メールソフトの出番だ。複数のメールアドレスを一括して巡回したり、強力なメール振り分け機能や検索機能、迷惑メール対策機能などを活用して大量のメールアドレスの中から必要なメールだけを素早くチェックできる。
本記事では、Webメールサービスの代表として、無料かつ無期限で大容量メールボックスを利用できるGoogleの「Gmail」(ジーメール)と、強力な機能を備えGmailとの相性もばっちりの無料メールソフト「Thunderbird」(サンダーバード)を紹介しよう。
●大容量と強力なスパム対策が魅力。Gmailを使ってみようGmail |
「Gmail」は、インターネット検索でおなじみのGoogleが提供しているWebメールだ。無料のWebメール自体はGmailの登場以前から存在していたが、メールボックスの最大保存容量が少なく不要なメールをこまめに消してやる必要があったり、一定期間読み出しを行なわないとメールが全て削除されてしまうなど、いくつかの制限が存在した。そこに登場した、容量1GBかつ無期限で利用できるGmailの存在は画期的だった。その後も「Yahoo!メール」や「Hotmail」といったライバルたちとの競争を繰り広げ、現在の最大保存容量はなんと7GBを超えるところまで拡張されている。これだけの容量があれば、通常の利用であれば一生困らないサイズといっても過言ではないだろう。
Gmailの魅力を語るなら欠かせないのが、強力な迷惑メールフィルタの存在だ。有料のスパム対策ソフトにも負けない検出率を備えており、この機能を利用するためだけに他のメールアドレスに届いたメールをGmailに一端転送してから受信しているという人もいるほど。
また、Gmailはさまざまな環境からのメール閲覧に対応している点も特徴だ。Webメールなので、Webブラウザさえ利用できる環境ならPCのOSを選ばずに利用できるのはもちろん、モバイル向けの表示にも対応しており、携帯電話やスマートフォンからも快適に利用できる。POPやIMAPといった代表的なメール受信形式にも対応しているため、メールソフトを使った受信が柔軟に行なえるのも見逃せないポイントだ。さらに、Microsoftの“Exchange ActiveSync”という技術を利用した“Google Sync”という同期サービスにも対応しており、GoogleのAndroidはもちろん、iPhoneやiPad、Windows Mobileといった対応モバイル機器で、携帯メール風のプッシュ受信も利用できる。
□関連記事
連絡先・予定表データの同期サービス“Google Sync”がWindows Mobileに対応(窓の杜)
http://www.forest.impress.co.jp/article/2009/02/10/googlesync4wm.html
次に注目したいのが、フィルタ機能とラベル機能の存在だろう。メールをフォルダに自動振り分けする機能は携帯電話でもおなじみだが、これに似た機能と考えると分かりやすい。フィルタ機能を利用して、送信者アドレスや受信アドレス、件名、本文内容などの振り分け条件を設定し、受信したメールにたとえば“ビジネス”や“プライベート”のように任意のラベルを付けることで、フォルダの自動振り分け感覚で利用できるというわけ。しかもラベルはフォルダと違い、1つのメールに“ビジネス”と“取引先”といった具合に複数のラベルを設定できるので、より柔軟な分類が行なえるのもポイントだ。重要なメールに“スター”を付ける機能も用意されているので、こちらも合わせて活用したい。
また、Web検索で有名なGoogleのサービスなだけに、検索機能も充実している。件名や差出人はもちろん、本文の内容やラベル名などをキーワードに、普段利用しているWeb検索と同じ感覚で、必要なメールを素早く探し出せる。複数キーワードでの検索にも対応するほか、検索結果のキーワード部分をハイライト表示できるので、長文メールから目的の箇所を探すのも簡単だ。
メール転送機能も魅力の1つ。Gmailに届いたメールを別のメールアドレス宛てに自動転送できるのはもちろん、フィルタ機能と組み合わせて指定条件に合ったメールのみを転送できるので、重要なメールだけを携帯電話に転送するのも簡単だ。さらに、GmailはPOP形式に対応した別のメールアドレスを自動巡回して、Gmail上にメールを取り込む機能も備えている。通常、複数のメールアドレスに届いたメールをGmailで一括管理したい場合、まとめたいそれぞれのメールアドレスがメールの転送に対応している必要がある。しかし、このPOP巡回機能を利用すれば、Gmailがそれぞれのメールアドレスからメールを直接取りこめるので、相手がメール転送に対応している必用がなくなる。POPで取り込んだメールをGmailから別のメールアドレス宛てにさらに転送するといった応用も考えられる。
別名アドレス(エイリアス)機能も積極的に活用したい機能だ。Gmailのアカウントを作成する際たとえば「abcd」というユーザ名で作成した場合、メールアカウントは「abcd@gmail.com」となるが、この他にも「abcd+efg@gmail.com」や「abcd+test@gmail.com」のようにユーザ名と@マークの間に「+」記号に続けて文字列を追加したメールアドレスも利用できるようになっている。この仕組みを利用すれば、1つのGmailアカウントで疑似的に複数のメールアドレスが利用できるので、目的別に異なったメールアドレスを使い分けることが可能だ。迷惑メールが大量に届くようになったら、別のアドレスに切り替えるのも簡単だし、フィルタ機能と組み合わせてラベル付けを行なう際にも便利に活用できる。
●メールソフトでWebメールの弱点を補おう! Thunderbirdを使ってみる
Thunderbird |
ここまで紹介してきたように、Gmailは非常に便利だが、PC上でローカルに動作するメールソフトを比較した場合、ドラッグ&ドロップ操作や右クリック操作が利用できないなど、細かなところでメールソフトの使い勝手に及ばない部分もある。さらに、冒頭でも少し触れたように、PC内部にデータを保存しないため、ネットの使えない状態ではメールを閲覧することはできないという弱点もある。
普段はあまり気にならない弱点だが、まれにGmailが何らかの原因で一時的に利用できなくなる場合があり、こんなときにはローカルデータのありがたみを感じることになる。また、同じくWebメールの大手サービス「Yahoo! メール」のトラブルで、サーバー上のメールデータが破損した事例もあるので、大切なメールは自分のPCにも保存しておいた方が安心なのは間違いない。
そこで利用をオススメしたいのが、メールソフトの定番「Thunderbird」だ。人気Webブラウザとしてお馴染みの「Firefox」の前進となったWebブラウザ「Netscape」のメール機能から発展したメールソフトで、Firefoxの姉妹ソフトともいうべき存在でもある。現在のバージョン3系列にアップデートした際に大幅な機能強化が図られたが、その際に「Gmail」との親和性が大幅に向上しており、Gmailと組み合わせて利用するならベストチョイスといえる。
Thunderbirdは、メール受信に広く利用されているPOP形式でのメール受信に加え、IMAP形式での受信にも対応している。POP形式はメールサーバーに届いたメールをPC上に丸ごとダウンロードするが、IMAP形式ではメールはサーバー上に保存したまま、メールの一覧情報を取得して、必用に応じて本文を参照する点が異なっている。
POPの場合、たとえばAというPCからメールを読み込んだ場合、サーバー上のメールを削除していなければBというPCからも同じメールを読み込める。しかし、メールの状態までは共有できないため、仮にAで100通のメールの内80通まで内容を確認した(既読にした)状態で、Bに同じメールを読み込むと、また100通すべてが未読の状態でダウンロードされてしまう。これに対してIMAPなら、一度読んだメールはサーバー上で既読の状態になっているため、途中でPCを切り替えても何の問題もなく作業の続きが行なえる。
実現している仕組みは異なるが、IMAPもWebメールと同様にメールデータの保存場所や状態を気にすることなく、複数のPCで快適にメールが読めるというわけだ。なお、IMAP形式を便利に活用するにはメールをサーバー上に残しておく必用があるが、大容量のGmailなら残り容量を気にしてメールを削除する必用もない。
またIMAP形式を利用してGmailに接続すると、Gmail上で付けたラベルがフォルダとして表示されるので、Webブラウザから利用するのと同じ感覚で利用できる。Thunderbird上でメールのフォルダ移動を行なえば、Gmail側にも結果が反映されるので安心だ。
もちろん同様のことは、他のメールソフトでIMAP形式を利用した場合でも行なえる。しかし、通常のメールソフトの場合、ごみ箱や送信済みメールといった特殊なフォルダの扱いや名称がGmailと異なっている場合が多く、Gmailとメールソフトのそれぞれで削除したメールが別のフォルダ(ラベル)に保存されてしまったり、Gmail上に余計なラベルが作成されてしまったりといった、些細だが面倒な現象が発生してしまう。
その点、Gmailに最適化済みのThunderbirdならこのような不便とは無縁だ。また、重要なメールにThunderbird上で「☆」マークをクリックしてスターを付ければ、Gmail上でもスターが付いた状態になるなど、Thunderbird上からGmailの機能を活かすこともできる。
●Thunderbirdの便利な機能たち
この他にもThunderbirdにはさまざまな機能が用意されている。複数のメールアドレスを併用している場合に、本来メールアドレスごとに別々に用意されている受信トレイやごみ箱を1つにまとめて一括管理できる「スマートフォルダ」機能。メールアドレスごとに異なるフッタ(メール末尾の書名)を設定する機能。複数のメールをWebブラウザでおなじみのタブ表示で同時に開けるタブ機能。Gmailのフィルタよりも細かな条件指定が行なえるフィルタ機能。大量のメールの中から素早く必用なメールを探し出せる高速で強力な検索機能などなど、1回の記事では紹介しきれないほどだ。
さらに、Gmailと同様迷惑メールをシャットアウトしてくれる迷惑メールフィルタ機能。HTMLメールのネット上に置かれた画像を非表示にしたり、HTMLメールをテキストメールとして表示することで、フィッシングメールやウイルス付きメールといった悪質なメールからの被害を予防できる機能など、セキュリティ面の機能もしっかりと用意されている。
これだけでも十分に強力なソフトだが、Thunderbirdは姉妹ソフトのFirefoxと同じく、“アドオン”と呼ばれる拡張機能を利用して、本来Thunderbirdには存在していない機能を後付けで追加していくことができる。Thunderbirdのアドオンには、非常に魅力的なものが数多く存在している。たとえばGmailのアドレス帳とThunderbirdのアドレス帳を同期可能にする「Google Contacts」。ThunderbirdにカレンダーやToDo機能を追加する「Lightning」。LightningのカレンダーとGoogleカレンダーを同期できる「Provider for Google Calendar」など、Googleの各種サービスを活用するためのアドオンだけでも紹介しきれないほどだ。興味のある人はぜひ以下の窓の杜の記事を参考にお気に入りのアドオンを見つけて、自分だけのThunderbirdにカスタマイズしてほしい。
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誰もここまで教えてくれない!?「Thunderbird 3」の新機能を徹底解説
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「Thunderbird 3」対応拡張機能リンク集
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「Google Contacts」などのThunderbird拡張3本が一斉に「Thunderbird 3」へ対応
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「Thunderbird 3」のタブとして表示できるようになった「Lightning」v1.0 beta1
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また、GmailがWebブラウザが利用できる環境であれば、利用するマシンのOSなどを問わず利用できることは紹介したが、ThunderbirdにはMac OS X版やLinux版が用意されており、Windows以外の環境でも利用可能だ。もちろんWebメールほどの自由度はないが、MacやLinuxでもWindowsと同じ環境を構築できるのは心強い。さらに、各OS用とも共通のデータ形式を採用しているため、メールデータの移行が比較的やりやすいのも後々のことを考えれば見逃せないポイントといえるだろう。
●Gmailのライバルたちの機能強化にも期待
今回は紙面の都合もあり、GmailとThunderbirdの連携に焦点を絞って紹介してきたが、GmailのライバルたちもGmailに追いつけ追い越せでサービス内容の改良や追加を図ってきている。特にMicrosoftのHotmailは今年の夏に大幅なリニューアルを予定しているので、機会があればこちらもぜひ試してもらいたい。また、6月中にはThunderbirdの次期バージョン3.1の正式リリースが予告されているので、こちらも楽しみだ。
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