安心して使えるフリーソフト入門講座

バックアップソフトで大切なデータを守る



 新たな年度を迎え、就職や入学を機に自分専用のPCを新たに手にした読者も多いのではないだろうか? PCはWebブラウズにメールに書類作成、動画や音楽の再生にと、ソフト次第でさまざまな用途で活用できる。しかし最近の製品、特に低価格モデルでは付属のソフトの数が絞り込まれていて、本格的にPCを活用しようとすると追加の費用が発生することも多い。そこで利用したいのが、無料で利用できる各種Webサービスやフリーウェアの数々だ。

 しかし、Windowsで利用できる無料サービスやフリーウェアは星の数ほど存在しており、初心者でなくとも自分に合ったものを探すのは大変な労力が伴う。そこで本連載では、新たにPCを手にした人たちを対象に、無数にあるWebサービスやフリーソフトの中から、主要ジャンルごとに数本づつ、特にお勧めしたいものにスポットを当てて紹介していく。

 連載第2回となる今回は、前回紹介したウイルス対策ソフトと並んで、大切なデータを守るためには欠かせない存在であるバックアップソフトについて取り上げる。

●バックアップソフト導入のススメ

 大切なデータを守るためには、ウイルス対策ソフトだけでは不十分といえる。現在のところPCのデータはHDDに保存するのが一般的だが、HDDは毎分数千回転する非常に精密な機械だ。3年以上問題なく利用できることもあれば、購入後わずか数カ月で壊れてしまうこともある。故障した場合、補償期間内であれば新しいHDDに交換してもらえる可能性が高いが、壊れてしまったHDDに保存していたデータは二度と帰って来ない。

 このような悲劇的な事態を避けるには、必要なデータをバックアップしておく以外に根本的な対策はない。肝心のバックアップ先だが、これは動画などサイズの大きなデータが大量にあるなら、記憶容量が大きく1byte当たりの単価も安いHDDが便利だ。交換の手間や複数PCでの使い回しなどを考えるとUSB接続の外付けHDDが手軽だろう。特にポータブルタイプなら持ち運べて設置場所もとらず、対衝撃性能を売りにするモデルも存在するなど便利に利用できる。デジカメ写真のJPEGファイルやオフィス文書などサイズの小さなデータが中心なら、最近いちだんと低価格化が進んだUSBメモリやSDカードなどが手軽で使いやすい。

 バックアップは手作業でファイルをコピーすることでも行なえるが、ファイルの数が増えてくると現実的とはいえない。そこで登場するのが今回紹介するバックアップソフトだ。Windowsには標準でバックアップ機能が用意されており、最新のWindows 7では十分実用的な内容に進化しているが、操作の分かりやすさを重視した結果、バックアップ対象を大まかにしか設定できないため、自分が作成した大切なデータだけをバックアップできれば十分といった用途では少々扱いづらい。

 そこで利用をおすすめしたいのが、フォルダ単位のバックアップが簡単に行なえ、しかも豊富な機能を備えたバックアップソフト「BunBackup」だ。

Windows 7標準のバックアップ機能「バックアップと復元」。簡単な操作でバックアップが行えるが、細かな融通が利かない点に不満が残る今回紹介する「BunBackup」は、フォルダ単位でのバックアップが基本。かゆいところに手の届く便利な機能を搭載した非常に使い勝手のよいソフトだ

●BunBackupを使ってみよう

 BunBackupは、指定したフォルダ単位でのバックアップが基本で、必要なデータだけを簡単にバックアップできるのが特徴。手動による実行のほか、スケジュール指定による自動バックアップも利用可能だ。また、2回目のバックアップ以降は、新たに追加されたファイルや変更の合ったファイルだけをコピーすることでバックアップにかかる時間を短縮できる「差分バックアップ」にも対応する。このため、Cドライブ丸ごとといった大規模なバックアップはWindowsの標準機能にまかせてしまい、日々のこまめなバックアップにはBunBackupを利用するといった役割分担に適したソフトといえる。

 バックアップの「対象ファイル」や「除外ファイル」を設定することも可能なので、バックアップするフォルダの中にバックアップしたいファイルとしたくないファイルが混在していても、無駄なく確実にバックアップできるので便利だ。対象ファイルと除外ファイルの指定にはワイルドカードを利用できるので、たとえば対象を「*.jpg」とすることでJPEGファイルを一括して指定することが簡単に行なえる。

 さらに「アプリケーション名から追加」機能を利用することで、対応ソフトの一覧からソフト名を選ぶだけで、各ソフトのデータ保存フォルダを自動的に設定できる機能も用意されている。自分が使っているソフトのデータ保存場所が分からない場合でも簡単に設定が行なえるのは初心者には心強い。

バックアップ設定画面。バックアップしたいフォルダを「バックアップ元フォルダ」に、バックアップの保存場所を「バックアップ先フォルダ」として指定するのが基本設定画面の「詳細」ボタンから呼び出せる詳細設定。バックアップの細かな条件を指定できる。設定をうまく組み合わせることでバックアップの無駄を防げる「アプリケーション名から追加」機能。ソフト名とバックアップ先を選択するだけで、簡単にメールソフトやカレンダーソフト、ユーザー辞書などのバックアップ設定が行える

 バックアップ条件を指定したら、「バックアッププレビュー」機能を利用して、実際にバックアップを行なう前に条件指定に誤りがないか確認できるのも見逃せない機能だ。プレビュー時には、バックアップに必要なファイルサイズの総計もチェックできるのも、バックアップ先ドライブの残量不足による失敗を防いだり、バックアップに利用するHDDやUSBメモリを購入する際の検討するのに役立つ。バックアップ終了後には、「バックアップ一覧」やログ機能で、実際にバックアップされたファイルを確認できるのもありがたい。

 また、バックアップ先に外付けドライブを利用していた場合、ドライブの接続順によってドライブのドライブレターがたとえばDドライブからEドライブに勝手に変わってしまうケースがあるが、「ボリュームラベルチェック」機能を利用すれば、ドライブ名の代わりに各ドライブのドライブレターをバックアップ先指定に利用できるので、ドライブレターの変更によるバックアップの失敗を防げるのも気が利いている。

 このほかにも、バックアップ元で削除したファイルをバックアップ先のフォルダからも自動で削除してくれる「ミラーリング」、バックアップの際、変更のあったファイルを上書きではなく新規に保存していくことでファイルの変更履歴として利用できる「世代管理」、バックアップ時にファイルをZIPやLZH形式で自動圧縮することでバックアップファイルサイズを節約できる「圧縮バックアップ」、バックアップデータを暗号化してセキュリティを高める「暗号化バックアップ」、前回バックアップ時のファイル情報を保存しておくことでバックアップ実行時のファイルチェックを省略して作業時間を短縮できる「高速ファイルチェック」など、まさにかゆいところに手の届く便利な機能の数々を搭載している。

 初心者でも簡単に、上級者であればさらに便利に、利用者の知識や用途に合わせて利用できる本ソフトは幅広いユーザーにおすすめできるバックアップソフトだ。また、バックアップしたファイルを元の状態に簡単に復元できる「BunRestore」をはじめとする3種類の補助ソフトも合わせて公開されており、BunBackupとこれら補助ソフトをセットにしたパッケージ「BunBackupPack」も用意されているので、ぜひ活用しよう。

「バックアッププレビュー」機能を利用することで、事前にバックアップ対象となるファイルの一覧や必要ファイルサイズなどをチェックできるバックアップ終了後には「バックアップ一覧」が表示されるほか、バックアップの内容を記録したログを残すことも可能だ「機能表示設定」画面。標準で無効化されている高度な機能を有効にできる。標準では定期的にバックアップを自動実行する「自動バックアップ」も無効になっている

●オンラインストレージサービスをバックアップに活用する

 BunBackupは、手持ちのHDDやUSBメモリなどのローカルなドライブにデータをバックアップするためのソフトだが、最近流行のオンラインストレージサービスをバックアップに活用してみるのも1つの方法だ。

 オンラインストレージサービスとは、オンラインサーバ上の貸しスペースにユーザーのデータを保存できるサービスのこと。インターネット越しに利用可能なHDDと考えると分かりやすいだろう。データをネット上に保存するため、モバイルノートPCやネットカフェなどインターネットに接続したPCさえあれば、場所を問わず必要なデータを取り出すことができるのが特徴。

 SugarSync.提供の「SugarSync」もそんなオンラインストレージサービスの1つだが、専用ソフトを利用することで、BunBackupのように指定したフォルダをネット上の保存スペースと同期する機能を利用できるのが特徴となっている。無料で使える容量が2GBに限られる点や、ファイルの転送にインターネットを利用する関係上ファイルの転送に時間がかかる点を除けば、BunBackupとほぼ同様の感覚で利用できるので、バックアップにも持って来いのサービスだ。

 バックアップ用の外付けドライブを接続するのが面倒とか、大切なデータを自分で管理しなければいけないのは不安という人は利用を検討してみたい。また、ネット上の保存スペースと複数のPCを同期することで、複数のPC間のデータを同期するのに利用できたり、iPhoneなどのスマートフォンから保存したデータを利用できるソフトが用意されているなど、ローカルドライブへのバックアップにはない利点がいくつもある点も見逃せないポイントだ。

オンラインストレージサービス「SugarSync」の専用ソフト「SugarSync Manager」の画面。常駐して、指定フォルダとネット上の保存スペースの間を自動的に同期してくれるSugarSyncにInternet Explorer 8でアクセスしたところ。このように、専用ソフトを入れていないPCからもデータを取り出せるのはオンラインストレージならではの強みだ