山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
Googleの7型タブレット「Nexus 7(2013)」で電子書籍を試す
~従来モデルに比べて薄型軽量化、高解像度化を実現
(2013/8/27 00:00)
「Nexus 7(2013)」は、Googleが販売する7型Androidタブレット「Nexus 7」の最新モデルだ。最新のAndroid 4.3を搭載するほか、徹底した薄型軽量化が図られており、さらに解像度の向上、カメラの搭載など、多方面での進化が見られることが特徴だ。製造は従来モデルであるNexus 7(2012)と同様、ASUSが担当する。
ハードウェア中心のレビューは別途お伝えするとして、本稿ではこのNexus 7(2013)を、電子書籍端末として利用する場合の使い勝手を紹介していく。今回試用したのは海外から購入した32GBモデルだが、ソフトウェア上で技適マークが確認できたため、このまま話を進めていく。よって国内モデルとは一部仕様が異なる可能性があることをあらかじめご了承頂きたい。
本体サイズの小型化、および機能強化という2つの方向性
まずは競合製品とざっと比較しておこう。
Google Nexus 7 (2013) | Google Nexus 7 (2012) | iPad mini (Wi-Fiモデル) | Kindle Fire HD | |
---|---|---|---|---|
ASUS | ASUS | Apple | Amazon | |
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) | 114×200×8.65mm | 120×198.5×10.45mm | 134.7×200×7.2mm | 137×193×10.3mm |
重量 | 約290g | 約340g | 約308g | 約395g |
OS | Android 4.3 | Android 4.2→ 4.3 | iOS 6 | 独自(Androidベース) |
解像度/画面サイズ | 1,200×1,920ドット/7型 | 800×1,280ドット/7型 | 768×1,024ドット/7.9型 | 800×1,280ドット/7型 |
ディスプレイ | カラー液晶 | カラー液晶 | カラー液晶 | カラー液晶 |
通信方式 | IEEE 802.11a/b/g/n | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11a/b/g/n | IEEE 802.11a/b/g/n |
内蔵ストレージ | 16GB、32GB | 16GB、32GB | 16GB、32GB、64GB | 16GB(ユーザー利用可能領域は12.6GB)、 32GB(ユーザー利用可能領域は26.9GB) |
バッテリ持続時間(メーカー公称値) | 約10時間 | 約9.5時間 | 10時間(Wi-Fiオン) | 11時間(Wi-Fiオン) |
電子書籍対応フォーマット | アプリに依存 | アプリに依存 | アプリに依存 | Kindle (AZW3), TXT, PDF, 保護されていないMOBI、PRC、DOC、DOCX、JPEG、GIF、PNG、BMP、HTML5、CSS3 |
電子書籍ストア | Google Play ブックスなど | Google Play ブックスなど | iBooks Storeなど | Kindleストア |
価格(2013年8月26日現在) | 27,800円(16GB)、 33,800円ドル(32GB) | 19,800円(16GB)、24,800円(32GB) | 32,800円(16GB)、42,800円(32GB)、52,800円(64GB) | 15,800円(16GB)、19,800円(32GB) |
備考 | LTEモデル(39,800円)も存在 | 3Gモデル、量販店向けの8GBモデルなどのバリエーションも存在 | Wi-Fi+Cellularモデルも存在 | -- |
従来モデルとの大きな違いは、「薄型軽量化」「本体幅のスリム化」といった本体サイズの小型化にまつわるものと、「高解像度化」、さらに上の表にはないが「CPUの強化」「背面カメラの追加」といった機能面の強化および追加、この2つの方向性に分けられる。
中でも薄型軽量化は、従来モデルと比較した場合の大きな進化だ。厚みについては8.65mmと、iPad miniの7.2mmには劣るが、従来モデルが10mmを超えていたことを考えるとかなりの薄型化がはかられている。従来モデルは手に持った際に内部にあきらかに空洞がある印象だったが、今回のモデルは密度が増し、その分本体が薄くなっている印象だ。
また重量は290gと、従来モデルよりも50gもの軽量化を果たし、このクラスのタブレットの代表格であるiPad miniを18gも下回った。本体面積がきわめて近いKindle Fireが400gを超えていることを考えると、どれだけ軽いかがよく分かる。むしろここまで軽いと、電子書籍向けのビューアとしてはKindle Paperwhite(213g)など、E Ink端末のやや重めの機種との比較も現実味を帯びてくる。
本体幅は、従来モデルの120mmに対し、114mmへとスリム化が図られた。幅134.7mmのiPad miniに比べると、20mm以上もスリムということになる。7型と7.9型という違いはあるにせよ、片手で持つにあたり、この差は大きい。ただしその分奥行きは増しており、かなり縦長という印象だ。写真も併せてチェックしてほしい。
ハードウェア的にはクアッドコアCPUの搭載(Snapdragon S4 Pro 1.5GHz)、500万画素背面カメラの追加、SlimPortを利用したHDMI出力への対応、無線LANのIEEE 802.11aへの対応など、いくつも見どころがあるのだが、電子書籍端末としてもっとも影響が大きいのは画面の高解像度化だろう。1,200×1,920ドット(WUXGA)ということで、実に323ppiという表現力だ。従来モデルおよびKindle Fire HDが216ppi、iPad miniが163ppi、RetinaディスプレイのiPadですら264ppiなので、それを上回る高解像度ということになる。
使い比べるとはっきりと分かる堅実な進化
セットアップ手順は、他のAndroid端末と同様で、電源を投入してWi-Fiを設定した後ち、Googleアカウントを入力、位置情報やバックアップの設定などを経てホーム画面が表示される。以前はこのあたりのステップにも違いがあり、1つずつスクリーンショットを撮りながらレビューしていたが、今回は割愛する。
開封してしばらく使ってみた程度では、従来モデルとの違いを感じるのは主に厚みについてで、重量や幅の違いはそれほど感じない。しかし本製品をしばらく使ったあとで従来モデルを使うと、こんなにも重く、横幅があったのかと驚かされる。動作も、従来モデルはもっさりだったが、新製品はきびきび動作する印象だ。
解像度についても同様で、最初はあまり高解像度化の違いを感じない。「そういえば細かいところはくっきりしているな」といった程度だ。ところが、本製品に慣れたあとで従来モデルを目にすると「なんだこのディティールの粗さは」となる。iPad Retinaを見たあとにiPad/iPad 2を見た際の感覚と同じだ。
従来モデルだけでなく、iPad mini、さらに現行のタブレットでは画面が美しい部類に入るKindle Fire HDでも、同様の体験をすることになる。使い比べてこそはっきりと分かるタイプの進化だ。当面購入する予定がない人は、うっかり本製品に触れると手持ちの端末にストレスを抱くことになりかねないので、注意した方がよさそうだ。
唯一、従来モデルの方が優れていると感じるのはグリップ感で、細かい穴によるディンプル加工によって一定のホールド力のあった従来モデルと違い、本製品はラバーコーティングこそされているもののNexusロゴ以外にとくに凹凸がなく、また軽量化していることもあって滑りやすい。保護ケースなどをつければ評価も変わってくるだろうが、そうでない場合は気をつけた方が良い。
ちなみに電子書籍機能とは直接関係ないが、本体を横向きに持った際、スピーカーが左右に分かれるようレイアウトされたのは、従来モデルやiPad miniと比べた場合の大きなメリットだ。ただ実際に使ってみた限りでは、音が背後に抜けてしまい、正面からは聞こえにくいことが気になった。Nexus 10のように、スピーカーが正面を向いて配置されたモデルに比べると差は明らかで、現実的にはやはりイヤフォンを使った方がよさそうだ。
このほか、CPU性能がアップしたためか、従来モデルでは映像/音声のズレやブロックノイズの発生など、お世辞にも快適とは言えなかったNAS内のフルHD動画の再生も快適に行なえるようになった(無線はIEEE 802.11g、NASはGigabit Ethernet環境)。従来モデルがKindle Fire HDに明らかに劣っていた部分だっただけに、この進化は嬉しいところだ。
音量ボタンによるページめくりが行ないやすく、ハンドリングも良好
さて、電子書籍端末としての使い勝手について見ていこう。
まずストアアプリの対応の可否についてだが、今回試用した電子書籍ストアアプリにおいては、特に非対応もしくは動作の不具合はなかった(具体的に試用したストアは以下)。もしアプリの一部機能に支障があったとしても、本製品は最新Androidのリファレンスモデルであるだけに、バージョンアップ時に手が加えられると見て間違いない。従来モデルも、発売直後はAndroidの最新バージョンとあっていくつかのストアアプリが非対応だったが、その後修正されて動作するようになった実績もある。この点は安心してよいだろう。
・Kindleストア
・koboイーブックストア
・BookLive!
・紀伊國屋書店Kinoppy
・eBookJapan
・GALAPAGOS STORE
・Reader Store
・BOOK☆WALKER
・Google Play ブックス
ではここまで見てきたハードウェア的な特性からしてどのくらい読書に向くかということだが、本体が薄く、かつ横幅がスリムになったことで、読書端末としてのハンドリングは大幅に向上している。従来モデルも手で持った時のバランス自体は悪くはなかったが、やはり厚みがあることは否めなかった。その点本製品は、E Ink端末と遜色のない厚みであり(ベゼル部に限ればKindle Paperwhiteとほぼ同一の厚みである)、ハンドリングがしやすい。
特に最近はタップやフリックに加えて、本体の音量ボタンを使ってページめくりができる電子書籍アプリが増えている。具体的にはKindle、kobo、Google Playブックスがそれに該当するわけだが、本製品のボタンはこうした操作が行ないやすい配置にある。具体的には、本体を左手で握り、人差し指と中指で音量ボタンを押してページめくりができるのだ。電車内などで、片手で吊り革などを持って操作するには、タップやフリックよりも快適に扱える。これまで試したことがない方は、ぜひ試してみて欲しい。
なお自炊端末としての利用だが、microSDスロットがなく自炊データのコピーがやや不自由であることを除けば、特に支障はない。自宅内であれば、ComittoNや、Perfect Viewerなど、ネットワーク上のストレージからデータが読み出せるアプリを使えば、わざわざ自炊データをコピーする必要もないのでおすすめだ。
端末の高画質化により元データの画質がシビアに判断される時代に
323ppiという高い解像度を持つ本製品では、電子書籍の元データの画質が低い場合、それがはっきりと分かってしまうのも、従来モデルにはなかった傾向だ。コンパクトな7型ということで、かつて9.7型のiPadがRetina化した際、200dpi以下のスキャンデータが劣化して見えるようになったほどの大きな差はないものの、同じ本でもストアによってこちらは細い線までくっきりしていて、こちらはややネムい、という違いは見られる。
以下、各ストアで販売されている、うめ氏の「大東京トイボックス」1巻の画質を比較したものだ。ここでは違いをわかりやすくするため拡大表示したものを掲載しているが、紀伊國屋書店Kinoppyはくっきり、Reader Storeはネムい、といった傾向が、実際にはピンチアウトで拡大しなくとも分かってしまう。もちろんこれは「大東京トイボックス」1巻に限った話なので、これだけで各ストアの画質の優劣を判断するわけにはいかないが、7型の端末においても、元データの画質が厳しい目で見られる時期になってきたことは間違いなさそうだ。
端末登録の上限を超えた際の移行作業が煩雑なストアに注意
ところで各電子書籍ストアでは、利用できる端末台数に制限が設けられていることが多い。過去1年でいくつかのストアの制限が緩和され、いまは「上限5台」とされているストアが多いが、今回使用して痛感したのは、この台数制限を超えてしまった場合に解除するための方法の差だ。台数制限を超えてエラーが出た際、アプリもしくはブラウザから他端末の登録解除がすぐに行なえるストアもあれば、登録した端末からでないと登録解除が行なえないストアがあるのだ。本製品と直接関係はないが、この機会に一旦まとめておきたい。
ストア名 | 台数制限 | 解除方法 |
---|---|---|
koboイーブックストア | 不明 | - |
BOOK☆WALKER | 不明 | - |
Google Play ブックス | 不明 | - |
Kindleストア | 6ダウンロード | - |
紀伊國屋書店Kinoppy | 5台 | アプリから可能 |
eBookJapan | 5台 | アプリから可能 |
BookLive! | 5台 | ブラウザから可能 |
GALAPAGOS STORE | 5台 | ブラウザから可能 |
Reader Store | 5台 | 登録した端末から |
※コンテンツによりさらに制限がある場合がある。 ※解除にあたり年何回など制限がある場合がある。 |
今回試用したストアの中でもっとも制限が緩いのがkobo、Google Playブックス、BOOK☆WALKERで、具体的な制限台数が公開されておらず、手元で行なった実験では、同時に7台の端末から同時にログインし、同じ本を表示させることが可能だった。またKindleは、同時にダウンロードできる数は6台までという制限はあるが、アプリは何台にでもインストールできるので、少なくともセットアップの時点で弾かれることはない。この4ストアは、台数制限にまつわる利便性では非常に良好だといえるだろう。
この次に来るのが、台数制限を超えるとアプリがエラーを表示するが、そのアプリ上で端末を指定して登録が解除できるストアだ。紀伊國屋書店BookWebとeBookJapanがこれに該当する。BookLive!やGALAPAGOS STOREも台数制限を超えると端末上で登録解除が可能だが、アプリではなくブラウザを立ち上げてマイページにログインしなくてはいけないため、利便性は一段劣る。
もっとも利便性が低いのは、他の端末からは登録解除ができず、該当の端末からログインしなければ解除が行なえないストアだ。例えば今回のNexus 7を従来モデルから新型に買い替えた際、まずは従来モデルから登録を解除し、その上でログインしなくてはいけない。もし従来モデルを手放してしまっていると、サポートの窓口に連絡をして解除してもらう手続きが必要になる。今回試用した中では、Reader Storeがこの条件に該当する。台数制限の上限いっぱいまで使っている場合に限られるとはいえ、やはり利便性という点からは問題は大きく、なんらかの改善を望みたいところだ。
幅広いユーザにおすすめできるモデル
筆者は本製品の購入前まで、7型クラスの端末としては、Nexus 7の従来モデル、iPad mini、そしてKindle Fire HDを併用していた。筆者にとってこれら端末の用途は電子書籍と動画鑑賞なのだが、3製品の中でもっとも利用頻度が低かったのが他ならぬNexus 7であった。理由はやはり重さと厚みによるもので、加えて動画再生時のパフォーマンスの低さ、また画面を横向きにした際のスピーカーの配置がいまいちというのが、利用頻度を低下させている要因だった。
その点、従来モデルのマイナス点が完全と言っていいほどに払拭された本製品は、電子書籍端末としての利用はもちろん、動画再生においても、筆者にとって今後メインマシンとなることは確実だ。LTEモデルへの乗り替えという可能性は残してはいるが、早々にお蔵入りになるようなことはまずないだろう。進化が堅実すぎてあまり派手なセールスポイントのない製品だが、それだけに実力は折り紙つきで、幅広いユーザにおすすめできるモデルだといえる。
唯一気になるのが、近い将来にあるかもしれないiPad miniのRetina化だ。本製品よりも薄く、また画面が4:3比率ということで電子書籍の表示に向いたiPad miniがこの先Retina化されることがあれば、強力なライバルになることは間違いない。コストパフォーマンスにおいては本製品の優位性は揺るぎそうにないが、価格面を度外視して製品を選択するならば、もう少し見極めに時間をかけて良いのではないかと思う。リニューアルが噂されるKindle Fire HDとともに、2013年秋の新モデルには引き続き注目していきたいところだ。