山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

アップル「iPad Air」で電子書籍を試す

〜薄型軽量化とRetinaディスプレイの合わせ技でコミックの見開き表示に最適

iPad Air。本体色はシルバーのほか、スペースグレイがラインナップされる。容量は16/32/64/128GB。Wi-Fi+Cellularモデルも用意される
発売中

51,800円〜

 アップルの「iPad Air」は、9.7型の薄型軽量タブレットだ。従来のiPadの後継に当たる本製品は、2012年に登場したiPad miniのデザインを踏襲し、大幅な挟額縁化および薄型化を実現したほか、従来モデルに比べて200g近くも軽い筐体が大きな特徴だ。本稿ではこのiPad Airの基本的な特徴をざっとチェックしつつ、電子書籍端末として見た場合の使い勝手を紹介していく。

従来モデルに比べ、iPhone約1台分を軽量化

 まずは従来モデルとざっと仕様を比較しておこう。第3世代モデルのほか、iPadとしてはこれまで最薄だったiPad 2についても合わせて比較する。

  iPad Air iPad(第3世代) iPad 2
発売年月 2013年11月 2012年3月 2011年3月
サイズ(最厚部) 240×169.5×7.5mm 241.2×185.7×9.4mm 241.2×185.7×8.8mm
重量 約469g 約652g 約601g
画面サイズ/解像度 9.7型/2,048×1,536ドット(264ppi) 9.7型/2,048×1,536ドット(264ppi) 9.7型/1,024×768ドット(132ppi)
通信方式 IEEE 802.11a/b/g/n IEEE 802.11a/b/g/n IEEE 802.11a/b/g/n
内蔵ストレージ 16/32/64/128GB 16/32/64GB 16/32/64GB
バッテリ持続時間(メーカー公称値) Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生:最大10時間 Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生:最大10時間 Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生:最大10時間
価格(発表時点) 16GB:51,800円
32GB:61,800円
64GB:71,800円
128GB:81,800円
16GB:42,800円
32GB:50,800円
64GB:58,800円
16GB:44,800円
32GB:52,800円
64GB:60,800円
備考 2012年10月に、プロセッサ強化およびLightningコネクタを採用した第4世代製品にモデルチェンジ。本稿執筆時点ではいずれも終息 本稿執筆時点では16GBのみ継続販売。価格は31,800円

 目が行くのはやはり厚みと重量だろう。これまで最薄だったiPad 2よりも1.3mm薄く、また重量は132gも軽い。iPhone 5cの重量がちょうど132g、iPhone 4Sが140gなので、iPhoneに換算して約1台分軽くなっていることになる。ちなみに過去の電子書籍端末でいうと、E Ink搭載で本製品と同じ9.7型の画面を持つ「Kindle DX」が約535.8gなので、それよりもさらに60g以上軽いことになる。

 また、第4世代から上位に容量128GBのモデルが追加された。電子書籍や動画を扱う場合、高解像度化に合わせてデータを用意すると大きな容量が必要となるわけで、これは嬉しい進化といえる。もっとも、容量が倍になるごとに価格が1万円上がるので、おいそれと手が出せないのはネックだ。

 このほか、プロセッサはiPhone 5sと同じ「A7」となり、OSが64bitになるなど、パワフルさにも磨きがかかっている。またWi-Fiは、IEEE 802.11acへの対応こそ見送られたが、新たにMIMOにも対応したことで、製品ページ上では「最大2倍」速くなったとされている。本稿は電子書籍端末としてのレビューでありパフォーマンス面の評価は割愛するが、これに加えてバッテリの容量が減りながら駆動時間は10時間と、従来と同じレベルを維持しているのも秀逸だ。

左上が初代iPad、右上がiPad 2、左下が第3世代iPad、右下が本製品(本体色が異なるのはご容赦いただきたい)。こうして見ると本製品のベゼルの狭さが際立っている
あらためて、左が本製品、右が第3世代iPad。上下のベゼル幅はそれほど違いはないが、左右の幅が狭いことで精悍な印象がある
本製品(上)第3世代iPad(下)を重ねたところ。幅の違いのほか、スピーカーがコネクタ左右に移動していることが分かる
同じく、重ねた状態で横方向から見たところ。こちらはサイズ的にはほぼ同一。ボタンは配置こそ同じだが、デザインが若干異なる
左から順に、本製品、iPad mini、iPhone 5s。前2つはデザインが踏襲されていることがよく分かる。iPhone 5sで採用されたTouch IDは本製品には非搭載
厚みの比較。左1段目→右1段目→左2段目→以下繰り返しの順に、初代iPad、iPad 2、第3世代iPad、iPad mini、iPhone 5s、Nexus 7(2013)。初代モデルの半分ほどの厚みになっているのがよく分かる

かつてのiPad 2が厚く重く感じられる「ひとまわり大きいiPad mini」

 今回筆者が購入したのはシルバーの16GB。発売日である11月1日に注文し、直後に届いたメールでは11月6日出荷と表示されていたが、実際にはその日の午後に出荷を知らせるメールが届き、翌日配達された。本稿執筆時点の在庫状況は、カラーおよび容量によって差があるようで、都内の量販店でもほぼ同じ状況のようだ。

 梱包箱から取り出した時の第一印象は「ひとまわり大きいiPad mini」だ。デザインが基本的に同じなので、遠目に見た際はもちろん、手にとってすぐは、一瞬どちらなのか区別がつきにくい。7.9型と9.7型ではかなりサイズが違うはずだが、持った際に指先が感じる厚みが同じ(7.5mm)というのが、誤認させる要因のようだ。またエッジ部分の処理がiPad miniを踏襲するデザインであることも、その一因だと感じられる。

iOS 7を搭載。画面の見た目は変わらないが、ベゼルの幅が狭くなり、iPad miniに似たルックスになっていることが分かる
ハードウェアのレイアウトは縦向きを基本としており、上部には120万画素のインカメラを搭載
本体下部にはホームボタンを搭載。Touch IDこと指紋認証センサは非搭載
本体上部に電源ボタン、右上に音量大小ボタンおよび回転オンオフ/音量ミュートのボタン、そのすぐ裏に500万画素のカメラを搭載
反対側にはイヤフォンジャックを備える。裏面へと連なるゆるやかなカーブはiPad miniと共通のデザイン
底部にはLightningコネクタを挟んで2基のスピーカーを搭載する
上が本製品、下がiPad mini。こうして並べるとベゼルの幅が違うことが分かるが、単体だと見分けがつかないこともしばしば
Touch IDこと指紋認証センサは搭載されていないため、ロック解除にはパスワードを入力する必要がある
初期状態のホーム画面。搭載OSはiOS 7

 セットアップについては、最初からiOS 7が入っていることを除けば、従来モデルと大きな違いはなく、起動後のアイコンの並びなども変わらない。ちなみにiPhone 5sで採用されたTouch IDこと指紋認証センサーは本製品には搭載されていないため、ロックの解除にはパスワードが必要になる。モビリティが優先されるiPhoneにのみ搭載するという方針なのか、コストなどそれ以外の要因で見送られたのかは定かではないが、後発の製品ながら搭載していないのは少し不思議だ。

 ボタン類は、デザインこそ変わっているものの、本体上面に電源ボタン、右上に音量大小ボタンおよび回転オンオフ/音量ミュートのボタンという配置は従来と同一だ。スピーカーについては、昨今のAndroidタブレットが横向き時に画面の左右に来るようレイアウトされることが多いのに対し、本製品はホームボタン下の辺に並んだレイアウトを維持している。左右2基の配置へと変更されたことで音質はずいぶんと改善されているが、画面を横向きにした際に一方向からしか音が出ないことに変わりはないので、動画鑑賞を主に考えているユーザは、イヤフォンなどを併用することになるだろう。

 実際に1週間使ってみた感想としては、「とにかく薄く軽い」という1点に集約される。第3世代iPadはもちろん、これまで軽く感じられていたiPad 2がずっしり重く感じるのだから相当なものだ。両者ともiOS 7にアップグレードすればできることに極端な差はないにもかかわらず、使うのが億劫になってしまうのが怖いところだ。このあたりの感覚は、最近で言うとiPhoneのほか、Nexus 7の新旧モデルにも通ずるものがある。

 もっとも、これは手で持った状態での話なので、例えばスタンドに設置してデスク上で使っているなど、軽さや薄さを感じにくい使い方をしていれば、こうした差を実感することは少ないと思われる。手に取る機会が多いかどうかで、このあたりの評価は分かれるだろうし、デスク上で使うだけならば、多少の性能差には目をつぶり、従来モデルを引き続き使うという選択肢もありそうだ。

コミックの見開きや雑誌の表示も実用的。テキスト本はストアに依存

 一通りチェックを終えたところで、電子書籍端末としての使い勝手について見ていこう。

 まず各ストアアプリの対応状況だが、これは単純にiOS 7への対応に準ずる形になる。試しに著名な10個ほどのストアアプリを試してみたが、ログインして購入済みの本をダウンロードして表示するという操作においては、少なくとも問題はみられなかった。仮に何らかの細かい不具合が見つかっても早いタイミングで修正されるはずで、未対応のまま放置されることは考えにくく、この点は不安視しなくてもよいだろう。

筆者は寝転がった状態で7型タブレットで読書する際、このように持ち上げて使うことが多い(親指と中指で本体を支え、人差し指でページをめくる)が、本製品は軽量であるため同様の持ち方が可能だ

 さて、本製品を使って電子書籍を読むメリットは、まずはその軽さだろう。9〜10型のタブレットとしては圧倒的に軽量なので、長時間持っても苦にならない。さすがに片手で長時間保持するのは難しいにせよ、600gを超えていた従来モデルと比べると、負荷は比べものにならない。持ち方にもよるが、寝転がった状態で片手で支え、ページめくりをしながら読書をするというのも、短時間であれば決して不可能ではないので、読書スタイルの自由度は高い。

 もう1つは、見開きを表示した際の縦横比率が自然ということだ。本製品の画面は4:3のスクエア比率なので、紙の本の縦横比率とほぼ一致しており、無駄な余白もほとんど出ない。昨今の16:9比率のタブレットでは見開き表示にすると左右に大きな余白ができるほか、テキストコンテンツを表示すると不自然に横長になる場合があるが、本製品はそのようなこともない。

コミックコンテンツ(うめ氏「大東京トイボックス 1巻」/Kindle)を、本製品(上)、Nexus 10(下)で表示した状態の比較。画面サイズはNexus 10のほうが大きいのだが、ワイドサイズの左右余白が無駄になるほか、Androidは画面下にメニューバー用の領域が確保されるため、本製品のほうが表示面積が大きくなるという逆転現象が起こる

 もちろんこれだけであれば従来モデルでも実現していたわけだが、本体の薄型軽量化によって取り回しやすさが向上したことで、このメリットを実感できる機会が増えた。Retinaディスプレイであるため、見開き表示によってコミックなどのセリフが縮小されても、十分に視認できるのも強みだ。

 ただ、リフロー型のテキストコンテンツについては、本製品で横向きの表示にした場合、ストアアプリによって表示に大きな差がある。具体的には余白の調節の自由度が低いことで、iBooks、Kindle、BookLive!、koboでそれぞれテキストコンテンツを表示させた場合、合格点と言えるのはBookLive!くらいで、Kindleはもっとも表示領域を広くなるよう設定してもまだまだ余白が大きく、koboに至っては余白の調節そのものができない。一方でiBooksのように、余白の調節はできないが、もともと本を模したデザインということで中央の「のど」の部分も含めて再現されていると、かえって気にならなかったりするのが面白い。

「坊っちゃん」を各ストアアプリで表示した状態の比較。これはBookLive!で表示面積を最大化した状態。画面サイズぎりぎりまで表示できている
これはKindleで表示面積を最大化した状態。上下左右にまだ余裕があり、もう少し広げたいと感じる
koboでの表示。上下左右の余白を調節する機能がなく、画面サイズを生かしきれない
iBooksでの表示。koboと同様に余白を調節する機能はないが、こちらは紙の本のルックスを再現することにこだわっているせいか、それほど違和感はない
先ほどと同じ条件で、Nexus 10のKindleアプリで「坊っちゃん」を表示した状態。こちらはiPad版のKindleアプリより余白を狭く設定できるのだが、そもそも16:9比率(しかもメニューバーなどで上下がさらに切り詰められている)での横向き表示が、あまりテキストコンテンツに向かないことがよく分かる

 このあたり、縦書き表示そのものが日本特有であるという事情もあろうが、大画面のタブレットで横向きに表示する読書スタイルは、ストアアプリによって自由度にかなりの差がある。16:9比率で横表示だと明らかに違和感のあるAndroidタブレットと異なり、iPadはせっかくの4:3比率ということで、表示の自由度の向上が望まれる。

 逆に言うと、リフロー型でないコンテンツ、すなわちコミックや、ビジネス書によく見られる「右ページが本文+左ページがイラスト」という構成の書籍を見開きで表示するのには最適だ。またiPad miniやNexus 7など7〜8型のタブレットと異なり、大画面および高い解像度を活かしての雑誌やムック本の表示も実用的である。トータルで採点すると、電子書籍を楽しむのに使い勝手のよいタブレットといえるだろう。

雑誌やムック本は、さすがに原寸とはいかないが、拡大表示の必要がない実用的なサイズで読書が楽しめる。これはエムオン・エンタテインメントの「デジモノステーション」(274×206mm)を表示したところ。電子書籍版(GALAPAGOS STORE)の表示領域は実測で194×147mmということで約70%のサイズ
Retinaディスプレイということで、キャプションやノンブルなどの細かい文字もきちんと表示できる。見開き表示でも、細かい文字のつぶれがまったくないとは言えないが、そこそこ読めてしまうので驚く。7型クラスのタブレットでは不可能な技だ

早期に買い替える価値あり。ネックは価格か

 本稿執筆時点で1週間使い続けているが、このサイズにしてこの軽さというのが普通になってしまうと、さすがにほかのタブレットは分が悪い。サイズと軽さだけにフォーカスして対抗できる製品があるとすれば、発売済み製品としてはせいぜいソニーの「Xperia Tablet Z SGP312JP」くらいではないだろうか(10.1型、266×172×6.9〜7.2mm、約495g)。そのくらいの破壊力がある製品だ。

 かつてiPad 2が第3世代iPadにモデルチェンジした時は、Retinaディスプレイのクオリティは秀逸であるものの、本体のこの重量はどうにかならないものか……というモヤモヤしたものがあったが、その点でも本製品は文句なしである。軽さを重視して第3世代/第4世代iPadの購入を見送り、ずっとiPad 2を使い続けていたユーザにもおすすめできる製品といえる。次期モデルでは、今回見送られた指紋認証あたりは搭載される可能性があるが、薄さと軽さが大幅に更新されることは考えにくいように思える。その点でも、早期に買い替える価値は高そうだ。

 ネックがあるとすれば価格で、為替相場の影響はあるにせよ、16GBで51,800円という価格は、初代iPadすらも上回ってしまっている(初代iPadは16GBで48,800円)。また容量が倍になるたびに1万円刻みで価格が上がり、128GBでは81,800円という結構なお値段になってしまうので、これまで「買う時はとにかく最大容量で」という選択をしていたユーザーでも、躊躇する人は少なくないはず。Apple製品にこだわるユーザはさておき、他社のタブレットが付け入る余地があるとすればここだろう。為替相場の影響という点では同じだが、Retinaモデルがまもなく登場するiPad miniも、広い意味での競合となりそうだ。

 なお、本製品よりもひと回り小さい8.9型ながら、本製品よりも100g近く軽い約374gのタブレットが、まもなく日本でも登場する。Amazonの「Kindle Fire HDX 8.9」がそれで、Amazonのコンテンツに特化したタブレットということで本製品と直接競合はしないものの、Kindleストアを利用しているユーザーにとっては気になる存在だ。7型のKindle Fire HDX 7ともども、追ってレビューをお届けするのでご期待いただきたい。

【17時00分訂正】記事初出時、一部画面サイズの表記を9.6型としておりましたが、正しくは9.7型です。また、今回から128GBモデル追加としておりましたが、第4世代からの追加になります。お詫びして訂正します。

(山口 真弘)