山田祥平のWindows 7カウントダウン

ファイルの「見える化」を推し進めるWindows 7



 Windows 7の改良点の1つに、事実上の標準となっている多彩なコーデックに対応した点がある。インストールしたばかりの素の状態でも、たいていのメディアファイルを再生できるのは便利だ。

●ついに公開されたRTMと対応メディアの種類

 2009年8月6日、MSDN、TechNetの購読者向けに、Windows 7のRTMが公開された。この原稿の執筆時点では、まだ、英語版のみの公開だが、同時にリリースされたランゲージパックには表示言語として日本語も含まれているため、追加で必要なキャビネットファイルをインストールして設定を整えれば、少なくとも見かけの上では日本語版となる。マイクロソフトのいうことを信じるなら、この環境は、日本語版をインストールした状態と同じであるはずだ。日本語版の公開は8月15日に予定されているので、今回は、日本語化した英語版RTMをベースに話を進めよう。RTMでは、RCまでの壁紙としておなじみだったベタ魚もいなくなり、シンプルなWindowsの旗印がデスクトップ中央に誇らしげにはためいている。

RTMのデスクトップ。デフォルトの壁紙だ。英語版に日本語パックを導入したものだ。試しに入れてみたATOK 2009も正常に使えている

 ちなみに、今回は、DellのノートPC、XPS M1330に英語版のRTMをクリーンインストールしたのだが、このPCに内蔵されているGPU、GeForce 8400M GSを認識せず、標準ビデオドライバがインストールされ、最初はAeroがオンにならなかった。5月の時点のRCでは最初の起動後、Windows Updateからダウンロードされてきたので、これは、ある意味で退化である。仕方がないので、NVIDIAのサイトからドライバをダウンロードし、手動でインストールしたところ、正常にAeroがオンになるようになった。

 さて、Windows 7からは、Vistaまでは標準添付されていたWindowsメールや、フォトギャラリー、ムービーメーカーといったアプリケーションがなくなっている。OSはOSの仕事に専念し、これらのアプリに関しては、Live等のサービス連携を図りながら、別の方法で提供するという方針だ。

 だが、メディアファイルの再生環境としてのWindows Media Playerはバージョン12が添付され、対応するメディアの種類が大幅に拡充された。

 ただし、WMPそのものに大きな期待をしてはいけない。使い勝手そのものは、すでに配布されているバージョン11と、それほど大きくは変わらない。また、一般的なMPEG-2ファイルを再生しても早送り、巻き戻しさえできないのはバージョン11と同様だし、今回のリリースでは、保護された地デジコンテンツの再生も見送られている。

 その一方で、メディアをファイルとして見たときに、そのハンドリングが、きわめてスマートになっている。エクスプローラとの連携が、とてもリーズナブルなのだ。

 たとえば、コンパクトデジカメの多くが採用している動画ファイルフォーマットである、QuickTimeムービーのファイル(.mov)をエクスプローラで見つけてダブルクリックすれば、その場でWMPが起動して再生される。エクスプローラ上でのプレビューも可能だ。また、AVCHD対応のビデオムービーカメラで撮影したファイル(.mts)も同様だし、携帯電話で録画した3GPPオーディオ/ビデオファイル(.3gp)もきちんと再生する。

エクスプローラでmtsファイルをプレビュー表示したところ。その場で再生もできる

 こうしてファイルとしてのメディアを気軽に再生できるとなると、AVCHDが今の仕様になっているのが実に惜しまれる。以前、コラムで書いたことがあるが、mtsファイルにはメタデータがないに等しく、そのファイルの素性等がわからなくなってしまうからだ。

 それでも、これらのコーデックを持つファイル形式に標準対応したことで、ユーザーは、自分が扱っているファイルが、いったいどのような種類のものなのかを意識することなく、少なくとも、その中身に何が映っているのかを手軽に知ることができる。これは、大きな進化だ。アプリケーション満載で、ソフトを追加しなくても何でもできますというやり方よりも、OSとして基本的な部分は担うから、エンドユーザーとの接点はサードベンダーに任せるやり方の方が、ずっといい。

●iTunesとWMPが仲良く共存

 さて、オーディオファイルはどうかというと、こちらは、iTunesのデフォルトコーデックであるAACに対応した。iTunesで管理している楽曲は、マイミュージックのiTunesフォルダ内にライブラリ管理ファイル等といっしょに保存されるが、WMPを起動すると、すべての楽曲をWMPのライブラリとして参照でき、再生ができる。

iTunesのライブラリは、そのままWMAでも参照できる

 iTunesの楽曲ファイルは、曲ファイルそのものにアートワークが埋め込まれているものと、iTunesが独自フォルダに保存して楽曲とひも付けしているものの2種類がある。CDから曲を取り込んだ際にiTunes storeから自動的にダウンロードされたものは後者で、WMP上ではアートワークとして認識されない。これは仕方がないだろう。また、DRM保護された楽曲は、はなからライブラリには入らない。

個々の音楽ファイルも、アートワークが埋め込まれていればプレビューできる。もちろん再生も可能だ

 WMPのライブラリ内で参照できる曲については、ちょっと気の利いた機能が用意された。一覧内で楽曲にマウスポインタを重ねると、小さなサムネールつきのバルーンがポップアップし、その場でプレビュー再生ができ、ポインタを外すと再生がキャンセルされる。曲名をうろ覚えのリストの中から目的の曲を探すのに重宝する。

WMPでは曲にポインタを重ねるだけで、プレビュー用のバルーンが表示される。

 また、リモート再生と呼ばれる機能や、インターネット配信に関する機能も追加されている。これらに関しては、以降の回で、ホームネットワークと併せて紹介することにしたい。

●ファイルの種類はWindows 7だけが知っていればいい

 ファイルのハンドリングにおける特筆すべき新機能は、相手先デバイスにあわせたファイルのトランスコードだ。

 たとえば、WMAとMP3にしか対応しないメディアプレーヤーが手元にあるとしよう。秋葉原などで数千円で手に入るメディアプレーヤーはたいていそうだ。

 一方、楽曲に関してはiTunesで管理していて、ファイルはすべてAACだったとしよう。まあ、iPodだけで楽しむ分には不便はないのだが、iPodとは別のデザインのプレーヤーを使ってみたいこともある。

 そこで、iTunesで、お気に入りの曲を1曲選び、それをシードにして、100曲程度をGeniousに選ばせる。リストアップされたファイルを選択し、OS上の適当なフォルダにドラッグ&ドロップすると、それらのファイルが、そのフォルダにコピーされる。

 こうして楽曲ファイルの準備をしておき、iPod以外のメディアプレーヤーをPCに接続する。一般的なメディアプレーヤーであれば、「ポータブルメディアプレーヤー」として認識され、Windows 7に対しては、そのデバイスが再生できるファイルの形式等の情報が伝わっている。

 さて、コピーしておいたファイルを全選択し、それを右クリックしてショートカットメニューを表示させると、「送る」の中に、接続したメディアプレーヤーが見つかるはずなので、それを選択すると、ファイル変換を尋ねるダイアログが表示され、AACファイルはWMAにトランスコードされて転送される。もちろん、WMPそのものの同期機能を使ってもかまわない。

楽曲ファイルを右クリックしてポータブルメディアプレーヤーに送るダイアログが表示され、トランスコードの確認を求められる。

 こうしてトランスコードされるのは音楽ファイルに限られない。手元の環境では、東芝のメディアプレーヤーgigabeatを接続した状態で、HDムービーのmtsファイルを転送したところ、WMVにトランスコードされて転送され、gigabeatで楽しむことができた。これまた実に手軽だ。

 つまり、ファイルの種類を気にすることなく、さらには、手持ちのデバイスがどのような種類のファイルに対応しているのかを気にすることなく、このファイルの内容をこのデバイスで楽しみたいという願望に対して、必要な作業は、すべてOSがめんどうを見てくれるということだ。

 ここまでやるなら、ほぼデファクトスタンダードともいえるPDFくらいはサポートしてもいいんじゃないかとさえ思うくらいだ。だが、さすがのWindows 7も、そこまではやらない。ちなみに、PDFファイルをダブルクリックすると、ウェブで対応ソフトを探すかどうかを尋ねるダイアログが表示され、そこから、アドビのダウンロードサイトに誘導される。これは、Vista時代と同様だ。

バックナンバー

(2009年 8月 11日)

[Text by 山田 祥平]