山田祥平のRe:config.sys

GALAXY Noteで「なんちゃってXi」にさよなら




 どのタブレットよりも小さく、どのスマートフォンよりも大きい。「GALAXY Note」は、そんな端末だ。この端末を新たに入手し、ようやく「なんちゃってXi」状態から抜け出せた。今回は、この愛すべき中途半端なサイズのスマートフォンについて考えてみる。

●タッチとペンの共存

 GALAXY Noteは5.3型という大きなサイズのスクリーンを持つサムスン製のスマートフォンで、日本では4月6日にドコモ端末として発売されたばかりだ。ターミナル駅周辺の量販店で発表日の翌日に予約し、その翌週、発売日の午前中に入手することができた。この製品、昨年(2011年)秋の発表後、ワールドワイドで500万台を売ったという。個人的には2011年暮れに国際版を入手して、海外出張時に愛用していたので、新鮮さは薄いのだが、ドコモから発売されたことで、ようやく国内でも利用できるようになったのは素直に嬉しい。

 184gという重量は、スマートフォンとしてはかなり重い方だ。また、パンツのポケットに入れて歩くにはサイズ的にも大きすぎる。それでも、シャツの胸ポケットにはスッポリと入る。ただ、それではかがんだ時などに落下させてしまうので、スピーカー孔を使ってストラップを取り付け、首からぶら下げて使うことにした。孔は裏蓋側にあるので、最悪の場合、裏蓋がはずれて本体が落下してしまう可能性もあるが、ブラブラさせて歩くわけではないので、その心配はないと判断している。

 この製品の特徴として大きくアピールされているのが、タッチとペンの共存だ。ワコムのfeel IT technologiesを使ったペン入力をサポートし、本体の右下に収納できるペンで、さまざまな操作ができるようになっている。

 ただ、このペンが抜き差ししにくいこと、そして、細くて使いにくいことで、あまり魅力を感じてはいない。ただ、同じ技術を使ったデバイスはある。たとえば、パナソニックの「Let'snote C1」もその1つだ。試しに、この製品のペンを使ってみたら、本体付属のペンを使うよりも圧倒的にラクで快適に使えることがわかった。もしかしたら、これでペンの魅力を再認識することができるかもしれない。

 この端末は、スクリーンの下に物理ボタンとしてホームボタンが装備され、その左右にタッチ式のメニューボタンと戻るボタンが配置されている。ペンで操作をしている時に、このタッチ式のボタンを、ついペンで押したくなってしまうのだが、残念ながら反応してくれない。だから、ペンを持ち替えて指でタッチしなければならない。とはいえ、戻るはペンのボタンを押しながら左にフリック、メニューはペンのボタンを押しながら上にフリックでできるので、その方法を使えばボタンをタッチする必要はない。

 ちょっと便利に感じるのは、ペンボタンを押しながらスクリーンを長押しすると、その表示画面がキャプチャされ、そこに文字や図形を書き込める状態になる。地図を表示してキャプチャ、注釈を手書きしてメールで送るといったことが簡単にできるわけだ。スクリーンキャプチャに関しては、ペンを使わなくても、スクリーンを手刀を切るような格好でスクリーン全体を左から右にこすると、おそらくスキャンの感覚を模しているのだろうが、それで画面がイメージとして保存され、同時にクリップボードにも入る。これも意外に重宝する機能だ。

 ペンを使ったソリューションとしては、MetaMoJiの7notes with mazecがプリインストールされている点もいい。手書き文字認識のMazecの評価も高い。個人的にすでに購入していたのでだぶってしまったのだが、プリインストールのものではPDF形式での保存などがサポートされていないようだ。個人的には7notesについては必ずMazecで入力するというオプションを用意してほしいと思う。いちいち切り替えるのはめんどうだからだ。

●まさに、らくらくスマートフォン

 この端末を人前で使っていると、大きいですねと言われることが多い。とりあえず「らくらくスマートフォンなんですよ」と答えるようにしているのだが、実際にそうだ。やはり文字の大きな表示は読みやすい。

 電話がしにくそうとも言われるのだが、7型のGALAXY Tabを通話用にも使っていたことを思えば、これで電話をするのにもまったく抵抗がない。

 ただ、片手操作はかなりきつい。アプリが起動した状態で画面をフリックするような操作は大丈夫だが、たとえば、右手で持っているときに、ホームボタン左側のメニューボタンをタッチしようとすると、親指がつりそうになる。まして、通知バーを引き下げる操作はぼくの手のサイズでは絶対に無理だ。この先、Androidが4.xにアップグレードされて、メニューボタンが上にくるようになったら、もっと使いづらくなってしまうかもしれない。

 バッテリは2,500mAhのものが装着されているが、稼働時間はちょっと心配なので、予備のバッテリを持ち歩くようにしている。幸い、シャットダウンと再起動がスピーディなので、バッテリの交換がけっこう素早くできるのはうれしい。満充電から空っぽになって自動的にシャットダウンするまでに、ぼくの使い方では6~7時間といったところだろうか。だから、予備バッテリが1つあれば丸1日は安心だ。ドコモからはまだ提供されていないようだが、サムスンからこのバッテリを単体で充電できる専用充電器が発売されている。国際版用に通販で購入済みだったので、それをそのまま使うことができ、帰宅後は、本体とバッテリ充電器の両方で翌日に備えている。

●理不尽なテザリング仕様

 LTEについては都内近郊の自宅では使えたり使えなかったりというところだろうか。まれに、地下鉄駅間などで圏外から圏内に突入する際に、LTEはもちろん、FOMA網にもつながらなくなってしまうことがあるようだ。こうなると、永遠に復帰しないので、いったん機内モードにして、それを解除すると再サーチ後にFOMA網につながる。まだ多少の問題があるようだ。

 スピードとしては、はっきりと体感できるほどFOMAより速い。その速いXiを使ったテザリングもできる。ただし、テザリング時にAPNが強制的に切り替わってしまう理不尽な仕様は健在だ。たとえばmoperaをAPNとして使っていても、テザリングをオンにするとSPモードのテザリング専用APNにこっそりと切り替わってしまう。Xiではテザリングに際して別途料金がかかるわけではないのだから、ここはなんとかしてほしかった。

 日本国内でドコモ契約のSIMを使っている場合にはあまり困らないのだが、MVNOを使いたい場合には困る。また、海外SIMを装着したときにも使えない。だから、今回は、SIMロックを解除してもらう手続きはパスすることにした。海外出張の際には素直に国際版を使うことにする。

 ほとんど同じ端末なので、環境内容をまったく同じに維持するのに、さほど苦労するわけではないが、めんどうなことには変わりはない。もし、海外SIMでもきちんとテザリングができるのなら、同じ端末を日本にいても海外にいても使えるのだから、早くそうなってほしいものだ。

●疑問を感じるユーザビリティ

 おおむね満足はしているのだが、ちょっとした使いにくさを感じる点もある。たとえば、本体の右側に電源ボタン、左側にボリューム上下ボタンが装備されているのだが、その位置がほぼ対称なので、電源ボタンを押すときに、本体を両脇からつかむような感じになって、ついボリュームに触れてしまうことがある。ボリュームボタンは+を押すとマナーモードが解除されてしまったり、-の長押しでマナーモードになったり、着信音量の変更に使われたりするので、ちょっとやっかいだ。

 音もよくない。音楽を楽しむのには、ちょっとつらいくらいだ。高品位なピュアオーディオを求めるわけではないが、もうちょっとアナログアンプの質が高くてもいいんじゃないかと思う。ただ、これは、もうちょっと鳴らし込むことで変わってくる可能性もあるので、そこに期待したい。

 ワンセグについては、いい意味で期待を裏切られ、けっこう見られる。画面を横にして表示させると専用のポータブルTVを見ているようだ。もちろん15fps/320×240(180)ピクセルというワンセグ仕様を1,280×800ピクセルに引き伸ばすのだから、フルスクリーンではほぼ16倍拡大となる。決して大きな期待をしてはならない。でも、地震などがあったときに、すぐにTVで情報を見たいというようなときには重宝するだろう。なんだかんだいっても、TV地上波の存在は無視できない。

●全部入りまであとどのくらい?

 結局、これまで使ってきたガラスマは、おサイフケータイ専用に近い存在で、ポケットから引退させることができずにいる。ドコモ版の「GALAXY Note」には、NFCが装備されていて、今後、さまざまな使い方ができるようになるだろう。現時点でもSuicaなどのFeliCaデータを読み取るアプリなどが公開されている。ただ、おサイフケータイとして使えないのは現実で、ぼくが求める全部入りケータイにはなれない。

 本当は赤外線も装備されていればよかった。電話番号を交換するといった用途ではなく、たとえばコンパクトカメラや一眼レフデジカメのレリーズ、TVなどのリモコンに使ったりするのには赤外線はそれなりに便利だからだ。

 そんなわけで、なんちゃってXi状態が数カ月続いていたわけだが、これでようやく本物のXiユーザーになれた。テザリングのコストダウンのための策だったのだが、PCはWiMAXがあれば事足りるので、スマホ端末がこのくらいのサイズであれば、テザリングしたいと思う場面はめっきり少なくなってしまっているのは皮肉なものだ。