山田祥平のRe:config.sys

長生きするつぶやき




 寝ていようが、食事中だろうが、おかまいなしにかかってくる電話のようなツールは同期のコミュニケーションだ。でも、コンピュータの時代になり、非同期のコミュニケーションが主流になった。メールがそうだったし、掲示板システムも同様だ。でも、Twitterのようなサービスはどうなのか。非同期と一言では済ませられない新たな枠組みで考えなければならない。

●読むラジオとしてのタイムライン

 時間帯もよるが、ぼくのTwitterタイムラインは、平日の真っ昼間でおおむね1分に1回更新される。ぼくのアカウントである http://twitter.com/syohei がフォローしているのは、たかだか150ユーザーだから、丸1時間タイムラインを確認しなくても、60~100程度のつぶやきが蓄積されているに過ぎない。ぼくのTwitterの使い方は古い言い方をすれば、ROM(Read Only Member)に近いので、この程度ですんでいるが、積極的に活用しているユーザーは、それどころではないに違いない。

 タイムラインは逐次更新されていく。昼間は移動も多く、1人になる時間も少なくないので、電車の中などでの暇つぶしを兼ねて、スマートフォンなどを片手にタイムラインを比較的頻繁にチェックできる。だから、たまって読み切れないといったことはないのだが、夕方からの会食などで数時間放置してしまうと、読むのがちょっとやっかいになる量がたまってしまう。特に、Tweetの多い時間帯では、蓄積量も馬鹿にならない。できるだけ目を通すようにはしているが、なかなか完全制覇とはいかないのが現実だ。

 理想としては、タイムラインの確認は時系列の昇順がいいのだが、複数の異なるデバイスで読むため、既読未読の管理がうまくいかない。だから、降順、つまり、最新のものから過去にたどっていき、よほどの異変がタイムラインにない限りは、適当なところではしょってしまうことも少なくない。

●タイムラインから時間の概念を取り除く

 何万人ものフォロワーを持つTwitter有名人は、ひとことつぶやくだけで、そのメッセージが一瞬で何万人もに届くとされている。それは、確かに事実かもしれないが、「視聴率」という点ではどうだろうか。重要であろうメッセージに関しては、必ず複数のユーザーがリツィートするだろう。いってみれば再放送だ。だから、時間差でメッセージは手に入る可能性が高い。だから、つい横着になって、タイムラインすべてに目を通そうとは思わなくなってしまうのだ。そういう意味では、読まれる可能性がある1つのTweetの寿命は、30分あるかどうかじゃないかと感じている。

 そもそも、Twitterは、同期のコミュニケーションアプリなのか、非同期のアプリなのか。双方向のコミュニケーションを媒介するものなのか、そうではなく一方通行のブロードキャスト的なものなのかという議論もある。コミュニケーションアプリであるかどうかでさえ、人それぞれでとらえ方が異なるだろう。

 Buildイベントのレポートを書いた番外編で、MicrosoftはWindows 8において、Connected Standbyという新しいWindowsのステータスを導入することを書いた。Intelもまた、UltrabookでSmart Connect Technologyを採用し、同様のことができるようにしようとしている模様だ。あるいは、両方を組み合わせると、もっと便利なソリューションになるのかもしれない。

●リッチな点のための線

 以前、モバイルの点と線に関する考察を書いたことがある。移動先で腰を据えてのコンピューティングを意味する「点のモバイル」と、その点と点を結ぶ移動中のコンピューティングを「線のモバイル」とし、モバイルデバイスに求められるものを考えたわけだ。

 ただ、スマートフォンの台頭で、線のモビリティをPCには求めない傾向も強くなってきている。でも、「点」の体験を、今よりももっとリッチなものにするために、「線」の途上でお膳立てをしておこうというのが今のトレンドということらしい。

 PCを開けば、PCが寝ているはずの間に起こったネットワークトランザクションが完了している。Twitterの例でいえば、タイムラインが完成した状態で、すぐに読み始めることができるわけだ。

 スマートフォンのTwitterクライアントの多くは、タイムラインを自動更新する機能を備えている。個人的には、そんなことをさせようものなら、バッテリでの稼働時間が著しく短くなるので、この機能は使っていないのだが、ノートPCの強力なバッテリ体制ならあまり心配をすることはないかもしれない。実際、電源の心配がない自宅のデスクトップPCでは、タイムラインは、時間と共にどんどんスクロールし続けている。スマートフォンやタブレット、そしてPCごとのTwitterクライアントは個々の同期がとれないので、タイムラインの現在位置が異なるため、複数デバイスでの管理はなかなかやっかいだ。

 Twitterのシステムが、ユーザータイムラインにおける未読既読の境目に相当する現在位置を受け渡しすることができるようにしてくれたら便利には違いない。でも、あまりその気がなさそうに見えるのは、Twitterの方でも、そういう使い方を想定していないのだろう。実際、Twitter本家のサイトでも、タイムラインは降順表示で、最新のものから過去にさかのぼるようになっているし、それを逆順表示させる機能は用意されていない。

●仮想タイムラインを求めて

 TV放送において、HDDレコーディング機能がTVに搭載され、追っかけ再生などができるようになって、TVのリアルタイム性は著しく希薄なものになった。電話が鳴ったら放送を止める、聞き逃したセリフを巻き戻してもう1度聴くといった使い方は、かつての放送の概念からはかけ離れたものだ。

 アナログ放送が終了し、もう使わなくなってしまったが、ソニーのX Video Stationは、ぼく自身のTVに対する概念を大きく変えた。番組表を見るという行為が、番組を見るという未来の予約であったのに対して、複数チューナによるチャンネル根こそぎベタ録りにより、過去を現在に引き戻す行為に変えてしまったからだ。

 コンピュータ的なデバイスにとっても、放送に相当するWebサービスを利用する場面では、そのローカルストレージはキャッシュだ。そのキャッシュを最新のものに保つために、目を通されるかどうかわからないにも関わらず、常に接続した状態を保ち、トランザクションを処理していく。

 その大量のキャッシュをいかに効率的に読み解いていくか。ここでもまた、インテリジェントな検索のシステムは重要だ。タイムラインをユーザーの趣味指向に応じてダイジェスト化するようなシステムがあれば、Tweetの寿命に関する概念も変わっていくことになるだろう。

 GoogleがWebの世界を検索で変えたようなことが、また起こる。あちこちに引用(リンク)されるページの重要度は高いとするページランクの考え方を、SNSの世界に当てはめたときに何が起こるか。Twitterのつぶやきの中で、短縮URLの入ったものをランキング表示する「短縮通信」のようなサービスの登場は、こうしたトレンドを加速するんじゃないだろうか。