山田祥平のRe:config.sys

SIMフリー携帯電話は便利、されど3Gルータも捨てがたし




 日本国内においては、ほとんど24時間365日、なんらかの方法でインターネットに接続できる環境にある。こうなると、海外にでかけているときも同等の環境がほしくなる。今回の中国・北京出張では、3Gルータを試してみた。

●3Gルータをレンタルしてみた

 東京を本拠とした普段の生活では、モバイル時のインターネット接続は、そのほとんどをWiMAXに頼り、どうしてもつながらないときだけ、手持ちの携帯電話にBluetoothで接続してインターネットを使っている。また、地下鉄駅構内などでは無線LANを使うこともある。携帯電話のキャリアはドコモなので、パケホーダイPC接続上限は13,000円で、毎月確実にこの上限に達してしまうが、常用携帯電話ですべてをまかなえるというのは、充電の手間や端末の持ち出し忘れなどのリスクもなく安心だ。

 今回は、5泊6日の北京への出張に際して、新たに3Gルータ貸し出しが始まった海外用モバイルデータ通信レンタルサービス「グローバルデータ」を使ってみた。

 渡航前にWebで申し込む。選んだプランは「NEWカントリータイプMiFiプラン」というもので、料金は1日あたり1,580円だ。申込時に利用する渡航先国を選択し、その期間は完全定額でデータ通信ができるという。なお、中国の場合、利用するキャリアはChina Unicomで、3G(HSDPA/UMTS),2G(EDGE/GPRS)の通信ができ、最大7.2Mbpsを得られることになっている。

 ルータの受け取りは宅配便、渋谷にあるオフィスに赴いて受け取り、空港で受け取りの3種類の手段が用意されている。今回は、受け取りも返却も空港を選択したが、動作チェックのことなどを考えると宅配で受け取り、空港で返却でもよかったかもしれない。ちなみに空港受け取りも宅配も手数料が525円かかる。

 成田空港に到着し、指定された宅配荷物受け取りカウンターで名前を告げると、コンパクトなソフトケースを渡された。中には、モバイル3Gルータと電源アダプタ、中国用のAC変換アダプタ、そして、丁寧に手順が説明された書類が入っていた。

 本体はコンパクトで100g前後といったところだろうか。まあ、もう1台携帯電話を持つ感覚だがカバンの中に入れてしまえば存在を忘れるくらいだ。

 出国してから不良がわかっても困るので、その場で電源を入れ、PCを開いて接続してみた。説明書にあるSSIDが見つかり、接続すると、WEPキーの入力が求められるので、指定されたものを入力するとすぐに接続できた。ブラウザを開くと、ステータスのページが表示される。当然、日本国内なので接続はできない。きちんと作動しているようなので、そのまま出国した。

●あわせて通話手段も確保

 北京の空港に着き、出てくる荷物を待っていると、中国移動通信のSIMカードを販売しているのを発見、きいてみると、プリペイド携帯のSIMカードが35米ドルまたは230中国元だというので購入した。その場で持参していたSIMフリー端末にカードを入れて、係の人にアクティベイトしてもらった。日本円に換算すれば、3,500円程度といったところだろうか。この中に50元の通話料が含まれているという。

 パッケージに入っていた説明書は中国語のみでよくわからなかったのだが、後で中国移動通信のサイトで確認してみたところ、これは、Easyownというサービスで、ローカルコールは発信着信ともに目安として1分あたり0.6元だという。50元分だとすると約80分の通話ができることになる。

 また、日本などへの国際電話は通常1分あたり8元だが、5桁の特番を前置してダイヤルするとIP電話が使われ、1.2元で通話ができるという。いずれにしても、日本から持参した携帯電話でローミングするよりも大幅に安い。SIMフリー端末は1台は持っていると便利だ。ちなみにアクティベイト後の有効期限は半年だ。

 ともあれ、通話の手段も確保できたので、タクシーに乗ってホテルに向かう途中にレンタルしたMiFiルータを試してみた。電源を入れ、インジケータが点滅して電波をサーチしていることを確認、そのままカバンの中に戻し、PCを開く。

 成田空港で1回接続しているので何の作業もいらない。そのままPCとルータ間が接続完了、ブラウザを開くと、そこそこの速度でWebが使えることを確認した。そのままメールを何十通か受信し、必要なものに返事を入れる。こういうことが、海外到着直後に乗ったタクシーの中でできるのはうれしい。ここが日本でレンタルするメリットだろう。

●北京でもいつでもどこでもインターネット

 ルータによる接続を北京市内のいろいろなところで試してみた。市内中心部にあるホテルの部屋は2層と低層階だったためか快適に接続できたし、郊外のオリンピック会場近くにあるIDFの会場ではWi-Fiが提供されていたが、そこでもつながった。また、夕食に訪れたレストランなどでも問題なくインターネットが利用できたし、当然、街角でも平気でインターネットを利用できた。でも、走行中にも乗客が携帯電話を使っているくらいの地下鉄は、どこの駅でもつながることはなかった。おおむね、地上にいれば屋外であれ、屋内であれほとんどの場所で大丈夫という印象だ。

 電源を入れてから接続するまでには1分程度、長いときには2分程度の時間が必要で、ちょっとイライラすることもある。また、ある程度無通信の時間が続くと自動的に電源がオフになるようで、滞在期間中に公称4時間のバッテリ駆動時間を1日で使い切り、バッテリ切れを起こすことはなかった。

 もし、北京に到着したときに、空港でChina UnicomのSIMを購入することができれば、それを選ぶという手もある。そうすれば、そのSIMだけで通話とインターネット接続がまかなえる。日本でやっているのと同じように、Bluetoothで携帯電話にダイヤルアップさせてインターネットを利用できる。

 市内にきてしまえば、同社のSIMを購入できるのだろうが、今回到着したターミナルでは見つからなかった。だから、着いてすぐにインターネットという利便性を得ることはできない。そのあたりが難しいところだ。

 いずれにしても、中国でもほぼ常時インターネット接続ができることが、今回の体験で確認できた。米国出張時は現在、AT&TのプリペイドSIMを使い、携帯電話経由でインターネット接続をしているのだが、次回の米国出張時はどうするか。渡航先に米国を選択した場合、キャリアはAT&Tとなるから、従来と同じ感覚でインターネットを利用できる。1日1,580円というのは、米国内での100MB分の定額パケットプラン料金に匹敵する。5日くらいの滞在で、100MBを使い切ったことはないのだが、それはパケット消費を最小限に抑え、おそるおそるインターネットを使っているからであり、定額で使い放題というのはやっぱり魅力だ。それに、iPod touchからでも気軽にインターネットが使える点もポイントが高い。

 日本国内で普段Bluetoothダイヤルアップを使うのとまったく同じ感覚で、海外でもインターネットを使える気軽さと、機種やOSを問わずに気軽に接続できる3Gルータの便利さ。海外でのインターネット接続も、迷うくらいの時代になったのはうれしいことだ。